そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「つーわけでいよいよやって来たぞ七夕だオラァ!」
「「「おー(パチパチパチ」」」
実に雑な導入だが、願いを書いた短冊を吊るすくらいしかやる事ねえし、一般的な神頼みで願う先の神々が下界降臨中なこの世界じゃ果たしてやる意味あるのかって感じではあるんよね。まぁ商機と見れば突っ込むのが
「じゃあまずは着替えして集合な。精霊達がノリノリだし任せて安心……な、はずだ」
「うん、行って来る」
「うへー、窮屈な格好は合わないニャ」
集合したんで第二段階、ドレスコードをクリアするためのお着替えタイムである。この日のために着付けできるよう特訓したアリアや豊穣の女主人のモブ店員達が気合を入れてドレスアップとメイクアップをしてくれる事だろう。
ちな、アタシとリリは既に着替えてるんでアイズとアーニャを見送りつつ待機。春姫はイシュタル派の着付けでてんやわんやしてるそうな。アマゾネス辺りは窮屈とか言って着崩しそうだし、手抜きでいいと思うんだがな。
「しかし相変わらずオラリオは行動が早いですね」
「仮にも世界の危機に対応するための場所であり組織だかンな。物資自体は大半がアタシ持ちで相談すンのは分配を決めるくらいだし」
「確かに、アルテミス様の一件でダンジョンが活性化したときや、ベヒーモスの劣化版が復活したときに比べたら猶予もありますね」
今回の七夕イベントは春先に山菜の天ぷらが食いたくなった頼んで生やしてもらった際に存在を思い出して計画したんよね。提案したのは先月半ばだが。ついでだからと夏祭りを混ぜ込んで、いつもの屋台をちょっと飾り付けして夜でも営業する感じ。射的やくじ引きなんかも導入したんで、それなりに物珍しさはあるんでねーかな。
ジャガ丸くんの屋台なんかはこの日のためにミルキーウェイ味なる新商品を引っ提げてたんで、相変わらず攻めてるなーって。内容としては夜空をイメージしてイカ墨を使い黒くした上で砂糖を入れて甘くしたポテトに、星をイメージしたらしい甘露煮の栗を砕いて混ぜたスイーツタイプ。揚げたら仕上げに練乳を一掛けして天の川を描くのがポイントらしい。
ちな、試食したアイズの採点は77点だった。高いのか低いのかは不明。七夕の日付に合わせただけかも知れんし。商品開発部門の名誉アドバイザーをしているヘスティアは悔しがってたが。
あと、七夕のメインは願い事を書いた短冊を飾り付けた笹に吊るして彩る事だろうし、とりあえずギルド本部前と中央広場にデカい笹を設置しておいた。肝心の短冊は有料だがな!
まぁ筆記用具は記念品として持ち帰り可だし、炊き出しの素麺と七夕ゼリーをもらえる権利をゲットできるんで、値段的にはお得だ。
つーか最後には短冊も笹もまとめてファイヤーでお焚き上げして天まで届けするのが習わしなんだが、実行委員会の暴走により祭の締めは燃え盛る笹を囲んで踊るとかいう文化祭の後夜祭みたいな事になってる。どうしてこうなった。
いやまぁヘスティアが神のノリを紹介したら人間の実行委員がそれだってなったせいだが。この世界においては珍しくヘスティアのやらかしだ。当の本神は頭を抱えてたが、いざとなったらガネーシャ派がインド映画よろしく踊ってくれると思う。なお
「今回のMVPは頑張って笹を成長させてくれた大聖樹見習いですよね」
『割と何でもありっすよね』
「まァ、そうな」
そう、リリの言葉通り、行事に一枚噛ませろと言って来た
その際に先日行った儀式を気に入ったらしく
あと地味に大聖樹見習いを鑑定すると進化までに必要な経験値というか何かしらのポイントが表示されるんだが、結構前からカンストしてるのか『あと−−』ってなってるんよね。クラスチェンジアイテムとか専用の儀式とかでも必要なんだろうか。オラリオで唯一のハイエルフに聞こうと思いつつも、今まで機会を逃し続けてるんよね。
ちな、山菜の話をアイズ経由で聞いたリヴェリアが自分の知ってる大聖樹と違うって頭を抱えてたらしい。この程度で驚いたり悩んだりしてて、果たしてこの土地の管理者をやれるのだろうか。
そう、てっきり数日もせずに身の程知らずな野良
個人的には噂を鵜呑みにした一団がレフィーヤ大明神を神輿に立ち退き要求してくるのを想定してたんだよなぁ。アイツは
まぁ、その辺は世代交代というか新規にオラリオ入りして来た若者のやらかしに期待だぁな。リヴェリアが在住する限り、オラリオに集まるエルフは後を絶たないだろうし。
いうてダンジョンとの契約はこないだ自称意思と新規に結んだわけだが。中身に古い契約は破棄されるって文言を入れてもエラーとか起きんかったし、勝ったなガハハ。なおこっそりと深層深部の難易度は上げられたし、上層中層の
いやね、そろそろ下層や深層にも街を作って欲しいわけよ。下地は『
ただでさえこの夢は【ランクアップ】の条件も原作より緩めっぽいし、モンスターの脅威が遠退けば人口爆発は目前だし、それなら数撃ちゃ当たるで死地を潜り抜けさせて質を狙いたいよねっていうのもある。
現にリヴィラの街に住んでる連中は格上相手がゴライアスオンリーになってて【
まぁ、そんな構想は今じゃなくてもいい。大事なのは七夕夏祭だ。
「それにしても
「あー、まァ、笹は土地を侵食しがちな部分はあるが、大聖樹見習いの方でコントロールするから大丈夫だろ。他の使い道もあっし」
『
「一応作ってあるが、一通り回って来たらな?」
『了解っす』
七夕は毎年やる予定だし、たけのこ呼びしてる山菜扱いの幼い笹も欲しいからな。一応水煮は大量に確保してあるが、やっぱ旬に採れたてを食わんと。とりま、わざわざ不思議パワーで生やしたり伸ばしたり枯らしたりするよりは、住民に慣れてもらう方が安上がりなはずだ。
後は抗菌作用や香り目的で笹の葉に包む食べ物は割とあるし、お茶にしてもいい。風呂に浮かべたりもありかね。こういうのは時期や鮮度が大事なんだが、大聖樹見習いの影響で葉は常に青々としているし落ちもしないからな。ついでにサイズも大きい。
「おーい、着てやったニャ!」
「……どう、かな?」
「ほォ、存外……」
こういう場面だと思わず馬子にも衣装と言いたくなるが、アーニャの場合は豊穣の女主人の制服を悪く言う事になるからバレたらミアさんにボコられるんよ。思った以上に似合っててオチ要員の名が泣いてる気もするが。
アイズは服装もそうだが、髪をアップにまとめてるんでイメージ変わるな。うなじが色っぽい。アイズの癖に。
「そこは最後まで言葉にしてあげましょうよお姉ちゃん」
「全くニャ。おミャーはもっとミャー達を褒めて甘やかして楽させるべきニャ」
「はいはい。全員とも似合ってるぞ、浴衣姿」
うむ。夏祭りのドレスコードといえばやはりコレ、この一ヶ月せっせと作り広めた浴衣なのである。アタシは着付けできんかったから春姫に講師役を頼んで学んだよね。
念のために補足しておくと、アーニャは猫の絵がプリントされた浴衣に肉球柄の帯。アイズは安定のジャガ丸くん柄オンリー。リリはデフォルメされたエイジャやラピスで、アタシはデザインお任せにしてたら割と定番な花火柄になってたよね。履物は下駄にしたかったが、転んで大惨事な未来が見えるんで草履を推奨しておいた。
「そンじゃ、改めて出店荒らしに行くか」
「「「おー」」」
ちな、当の春姫はぽっくりを選択する予定なんだと。オチが読めるわぁ。つーか前もって分担できるよう教えとけって言ったんだがな。まー終わったら合流予定なんで、その際は労いがてら褒めてやるべきか。
で、適当にぶらついたわけだが……まぁ身体能力が関係する店は『
「金魚救いニャ?」
「文字が違ェよ。助けてもらったお礼とかされてェのか?」
「そしたら唐揚げにでもなってもらうニャ」
「ちなみにリリ達限定の必勝法は泣き落としです」
「先生、
「ソレは泣き落としと違うンだよなァ。つーかアタシに使ってどうすンよ」
『所詮アイズ・ヴァレンシュタインは四天王の最弱、一匹も掬えなかったっす』
「挑戦済かよ。しゃーねェな」
金魚掬いでは完全におやつを見る目をしたアーニャを止めたり、ステイタス任せに振るって空気中の段階でポイに穴を開けたアイズに呆れたり、金魚を入れる容器の代わりにそのポイに開いた穴を通すように掬って遊ぶリリの勇姿を見届ける後方腕組み姉妹面したり。
とはいえ大事な商品である金魚達へ負担を掛けたお詫びに栄養剤を垂らしてきたんで、元気になった金魚を掬える猛者が現れるのかは不明だ。店側としてはプレイ料金が稼げて商品も無事なら万々歳なんでねーかな。知らんけど。
「ちょっと待てや【剣姫】ィ! そいつはルール違反だぞ!?」
「え……」
「アイズちゃん、コルク銃に
「そう、なの? ごめんなさい」
「お、おぅ。そんな簡単に【ロキ・ファミリア】の幹部から頭下げられるのもそれはそれで恐縮するんだが」
射的では先の敗北を糧に新戦法を試そうとしたアイズがいたが、実施していたら店が吹き飛んでいた可能性もある。未遂で済んで良かった。
「言ってる間にエイジャが全部の景品を落としたぞ」
「まだミャーが撃ってないニャ、早く次の景品を並べるニャ」
「よし、お前ら出禁な」
そしてそんなやり取りを尻目に――あるいはアイズを嘲笑うかのように――エイジャが魔力壁を手の代わりにして商品に接射をかましてた。重り入りの景品は射撃じゃなく突きで落としてたのは内緒。なお見学していた野生の神に告げ口されてバレた模様。
そんな感じでそれなりに楽しんでいるところに春姫が合流。通信用
「皆様、お待たせしました」
「よォ、お疲れ。普段から極東仕立てだが、浴衣も良い感じだァな?」
「あ、ありがとうございます」
ぶっちゃけ普段の傍目にも高価な着物姿を見慣れてるせいで、浴衣はランクダウンしてるように見えるんよね。新鮮さはあるし、見なれてるって事は着こなしもバッチリなんだが。とりま、褒められた春姫の尻尾は犬の如く振られていたんでヨシ!
「春姫様、早速ですが流れる水ヨーヨー掬いが春姫様を待っています」
「こんっ!? わ、わかりました。不肖、春姫。挑戦させて頂きます!」
てやー、と気の抜けた掛け声と共に釣り針を引っ掛け損ねる場面を想像しながら眺めていたら、視線の先では現場に辿り着く寸前で石に躓く
いやまぁ普通に助けは間に合うんだが、面白そうなんで見捨てようって事で話がまとまったんよね。ちな、アーニャとアイズは既に惨敗してて戦線離脱済。しゃがみ込んで地面にのの字を描いてる。エイジャはアタシの頭の上で釣った水ヨーヨーをバインバインして遊んでて、アタシが動かなかった理由の一つでもある。
「で、ビニールプールに突っ込んだから帰って来たわけよ」
『相変わらず狐っ娘は愉快ねー』
「申し訳ございません……」
「……どんまい」
「ま、屋台の食べ物は手に入ったから問題ないニャ。とりあえずこのままだとお腹が苦しくなるからミャーは着替えて来るニャ」
帰宅したアタシ達を迎えたのは、リビングで一人ジェンガをして遊んでたコハク。ネーゼムや低位精霊は大聖樹見習いの近くで集まって何かしてるそうな。
アーニャは屋台で買って来た焼きそばやらたこ焼きやらで食い倒れるつもりらしく着替えに向かったが、地味にずぶ濡れになって着替え必須な春姫を気遣ったのだろうか。多分マイペースなだけだが、結果的に物事が上手く運ぶタイプだからなぁ。
『一人だと脱ぎ散らかして来るからネキは監視して来た方がいいっす』
「ラッキースケベのフラグなンでパス」
「……はっ、その手が……!?」
「ねェよ」
エイジャの台詞は実に的を得てるんだが、片付けはハウスキーパー型に
色ボケ気味なアイズは一刀両断しておく。コイツ結婚から初夜しかも複数名とかいう初めて尽くしが原因なのか、上位の【
一応は感情表現なんだが、果たして前進と呼んでいいのか判断に困る。まぁ主神からしてセクハラ魔神だしある意味
黒竜討伐済だし強さはもう不要なのでは……って質問に対しては、ダンジョンがあるからまだ必要って冒険者の顔で答えてた。交流は狭いが【ファミリア】への所属意識が育まれてるらしい。情操教育的に考えて遅くはあるが望ましい方向への成長だと思い頭を撫でてやったら押し倒されたのは忘れたい出来事だ。
さておき、春姫をハブらない名目で全員で着替える事にした。
「もう食えねぇニャ……」
で、
「そンじゃ外の倉庫に行くぞー。短冊とかは精霊達が用意してくれてるから手ぶらで構わねェ」
「手ブラ……」
「アイズ、後で説教な」
「ガーン」
ダウンした
『すーぐ下ネタに走る辺り、
うぐぅ、アイズを煽ったエイジャの言葉がこっちにも突き刺さる。顔には出さんように頑張るが。
「モンスターを退治する以外に興味関心を持たなかったせいもあるかと。それと春姫様の影響ですかね」
「その上で【
いうて貴族や王族は役割に血を残す事が含まれてるから、儀式的な認識で床の作法やら性教育は受けてても不思議ないんよね。アイナさん情報だと家出したのは七十一歳だし、お転婆姫扱いとはいえ見合いという名のブリーディング話は一つや二つあっただろ。なお三桁目前または到達済な現在も独身記録を更新中で野生のユニコーンも大満足な模様。アレって清らかな乙女だけど容姿や年齢は関係あるんだろうか。
ぶっちゃけ
そうなるとレフィーヤ経由でベルハーレムに組み込むくらいしないと行き遅れたまま若い連中を妬む御局様が爆誕しそうなんよね。なおアイズ経由や土地関係、同族への当て付け等でこっちに来る可能性は考えないものとする。アタシ、性別、女。
むしろ兄弟姉妹いねぇのかな。潔癖が過ぎてたり後継者問題の予防で一人っ子政策だったりすんのか?
「えぇと、こちらがクラネル氏一同から預かった短冊です。願い事はなるべく見ないで頂けると助かるそうです」
「あい、あい。まァ、内容は見られる前提で無難なのにしとけって言っといたンで平気だろうさ。真面目に考えた内容って時点で気恥ずかしさはあるだろうが」
てなわけで集合場所でもあった広場に再集結して、願い事の記入と短冊吊るしを行う。
本来ならベル達も合流しする予定だったんだが、少し前に合流したエイナさんから聞いた話では何やらダンジョンの
具体的にはリヴィラの街にLv.5相当と思われる階層主級の超大型モンスターが出たらしい。ウダイオスの
「よっしゃ、誰が何を書いたか見て回るニャ」
「『兄様が素直で優しくなりますように!!』さん、はい!」
「「『兄様が素直で優しくなりますように!!』」」
「ニ゛ャ゛ア゛ァァァァ!?」
マナー破りを決行しようとした猫がいたので先手を打ち大声で読み上げ続かせてみたら、無事撃沈した。やったぜ。
ちなみにアタシは無病息災で、リリは運気上昇。エイジャは友達百人だった。ここまでは妥当なんだが、アイズと春姫は……安産祈願と子沢山。見られる前提でって言っといたのにコイツらは……実質的に要求して来た図太さは見習うべきなんだろうか。
とりあえず
そんなで感じにわちゃわちゃしてたらベル一行が戻って来たんで、改めて流しそうめん大会を開きつつ他の食べ物をつまみながら歓談して楽しんだ。
向こうもダンジョンに行って来た帰りなんで浴衣から着替えてて、パッと見は七夕とか夏祭り関係ねぇ雰囲気ではあったな。それ以前には浴衣や甚平を着て屋台巡りしたし、一通り騒いだ後は行事の予定に時間を合わせて短冊ごと笹を焼いた辺りで始まった打ち上げ花火を眺めたりもしたが。
余談だが、ベルたちの合流時に労いつつ詳細を聞いた際の会話がこちら。
「そういや18階層の大型ってどんな感じだった?」
「あぁ、タケノッコーンさんの事?」
「なンて?」
「タケノコ魔神タケノッコーンさんだよ。七夕の短冊を吊るすのが竹じゃなくて笹だから、むしゃくしゃしてついやっちゃったんだってさ」
「……そうか」
「会話できるってわかったから話し合ったら和解できたんだ。そのまま18階層に住むみたいだし、後で紹介するね」
「あー、その内な。そン時は頼むわ」
アタシは考えるのをやめた。