そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
早いもので、海の異常が確認され関係しそうな怪しい島を巡る旅も残すところ一箇所となった。事故で飛ばす事になった最初の島だな。
巡った島々では特に手がかりとなるような情報を得られず空振りに終わり、しかし今後の世界で学術的に見て貴重な資料となる日が来そうな結果は得られた。もっとも、島々を繁殖地としていた水棲モンスターや飛行モンスターは殲滅しといたんで価値は半減した気もするが。
モンスターはそこらの害獣と比較しても影響が大きい割に益がなく、危険度も段違いだ。一応は千年かけて生態系に組み込まれているとも言えるが、恩恵持ちの人間以外だと大型の獣くらいしか害を及ぼせる存在がいない上に雑食が多く、捕食者の役割である間引きにしても襲う対象を問わない時点で存在意義が薄い。
つーか人類以外の動物は良く生き残ってんな。人類圏ですらどんどん縮小してた古代のモンスター分布は広くて密度も高かったと思うんだが。基本的に人間を狙う習性のおかげで被害を免れたか? まぁ人間の生息域ではない海は悲惨の一言に尽きるわけだが。
ぶっちゃけ海のお掃除を考えた場合、探知魔法相当の効果を組み込んで魔石をピンポイントで狙う性質と破壊した魔石から回収したエネルギーで分裂する魔弾的な
「で、最後の島に来たわけだが……」
「上陸前から迎撃準備万端ですね」
うん、優秀なのは
「【永伐せよ、不滅の雷将】――【ヴァリン・ヒルド】!!」
まぁ、どうするか相談しようと思った頃には白エルフの雷砲が轟いてたわけだが。
「おー、砂浜がガラス化してやがる。愛しいリリ、すまンが恩恵を持ってねェ連中に落ち着かすまで降りるなって言って来てくれ」
「わかりました、お姉ちゃん!」
ここだけ物理学が仕事した場面なのか、
何だったか、砂浜に落雷でガラス化したやつに名前あったよな。アレってこっちじゃ価値を認められてんだろうか。
「いや、いっそ地表を焼き払ってから探す方が早ェな?」
「やっておいてなんだが、構わんのか?」
「アタシは気にしねェが受注者次第だァな。おーいベル! どうするよー!?」
「いいんじゃなーい!? お祭りの締めはキャンプファイヤーって神様も言ってたー!」
あらやだこの子ったら天然ボケかましてやがるわ。白エルフが侮蔑を隠さない視線を向けてるの気づいて?
「わ、すごいですね」
「光栄です」
「あー、シルの希望はどンなよ?」
「キャンプファイヤーするならベルさんの
「えェいこの傾国街娘が」
返事の後で歩いて来たベルにエスコートされながら様子見に来たシルに意見を伺ったら、燃やすかどうかじゃなく一段飛ばしに
つーか、目の錯覚じゃなかったら、アレだ、なんか揺れてね?
『ネキ、ネキ、なんか島が動いてるっす』
「あ、気のせいじゃなかったか。とりあえずこのパターンは島がモンスターの可能性高ェから離れンぞ」
『面舵いっぱーいっす』
「ヨーソロー、っと」
どうやら他の面子も島の異変に気づいたらしく、船の上は大騒ぎ。会話からするに大半が強敵イベントを期待してるっぽいのは感心すればいいのか呆れればいいのかわからんな。あるいは笑いどころなんだろうか。
で、島を視認するには問題ない程度に距離を離したタイミングで、島の一部が浮上した。
「……亀?」
「亀ですね」
「亀だなァ」
『亀っすね』
「カメェェェッー!」
そう、浮上したと思ったのは、巨大な亀のモンスターが立ち上がる動作がそう見えていたのだった。いつぞやの劣化ベヒーモスくらいないかこれ。そして遠くで叫ぶオッサンは何故そんなテンションになってんだ。食欲か?
「向こうが亀ならば話は早い。行け、愚兎。シル様のために勝って来い」
「いやいやいや、独り占めしたらみんなに叱られますって!」
「何を軟弱な事を……と、言いたいが、今回ばかりは心がけだと褒めてやろう」
「雑魚ばかりで味気なかったからな。少しは歯応えが欲しいと思っていた所だ」
ウサギとカメの寓話が伝わってるのか、ベルを繰り出そうとする白エルフ。対するベルは他の強敵を望んでいた面子への配慮を見せた。何かがおかしい気もするが、微妙にテンション上がった感じで前に出てきた姉御とオッサンが言い分を認めたんでヨシ!
「ンじゃ、船を近づけっか?」
「構わん。ここから跳ぶ」
「そういう事だ。先に行ってるぞ」
「あい、あい。ご武運を、っと」
船の縁に足をかけたと思ったら、次の瞬間には重めの衝撃が走ったと思わせる音。既存の船だと木製だから砕けてたんでねーかな。こちとら最新式なんで凹みもしてねぇし、誰も動揺しない程度に揺れも小さかったが……なんとなく勝った気分だわ。
ルンルン気分に浸かりながら空中遊泳する三人を見送り、改めて船を島に近づけた。砂浜はまだ熱々なんで上陸するためにちょっと回り込まなあかんがな!
「しかし無駄にでけェな……よく見たら獅子顔だし」
「動きは鈍いが体は頑丈、守りも堅牢なようだな。貴様の肝煎りが三人揃って攻めあぐねるとなれば、残る我らが攻撃に参加しても効果は薄いだろう」
「順調に削っちゃいると思うがな。って、マジか閉じこもってスピンアタックって……は? えぇ……」
「飛んだ……だと……!?」
あかん(あかん)。亀が甲羅に閉じこもったと思ったら独楽みてぇに回転しながら周囲を荒らし始めて、しまいにゃ浮いた。もうこれわかんねぇな。炎を吹き出したり刃物を出したりしない事を祈ろう。
ところで獅子顔の亀だし、仮称はタラスクでいいかね? 今回の調査は
「まァ、驚かされはしたが好都合だな。エイジャ、念のため守りは頼むわ」
『お任せっす!』
「こちらラジルカ、今から援護射撃いくぞーしばらく休憩しとけー」
宙に浮いたなら巻き込む事もねぇだろうし、早速通信用の
その意味じゃ白エルフに雷撃も効果は高そうなんだが、地上で島の一部と化してたやつだからなぁ。甲羅の上に土が堆積して樹木が生えるような有り様じゃ木を通して落雷被害に遭ってても不思議じゃねぇし、それでも生き延びてきてるんだよなぁ。いや、土の中に隠れてるなら周囲が接地されてて流れて来ないのか? うーむ、わがんね。
まー主目的は直接的なダメージじゃなく
「どれだけの在庫があるのだ、これは」
「そろそろ一割減るくらいだな」
「私、ラジルカさんは本気で怒らせないようにしますね」
「冗談でも怒らせンなや……そろそろベル達が飽きるか」
撃ち続ける事、十数分。途中で炎色反応を利用したカラフルな爆発を混ぜたりもしたが、昼間の花火は視認性が今一つ。それとさすがにワンパターンすぎるんで、別途とっておきを放って終わりにする。他の火炎石と違い山なりな軌道で放たれたソレは、しかし音速の八倍強の速度であったがために、打ち止めにした火炎石よりも先にタラスクへと着弾し――そこに太陽を生み出した。
「うぉっまぶし……」
「貴様は世界を滅ぼす予定でもあるのか?」
「いやでもこれシミュレーターの改訂版黒竜倒しきれねェからな?」
「……貴様の妹には心底感謝する」
「そりゃドーモ」
白エルフがドン引きしてるんだが。なんなら船の後方でもどよめきが起こってる。ベルたちが巻き込まれてないかって心配が聞こえて来る辺りは善人揃いでほっこりするな。
いうて黒竜どころかリヴァイアサンより弱いであろうタラスクも倒しきれねぇんじゃ虚仮威しにしかならんのよなー。クリーンな兵器だと限界に近い威力なはずなんだが。本来なら数撃つとはいえ、だ。
参考までに、威力と被害の規模はLv.8オッタル獣化魔法使用時の全力で振り抜いた一撃よりも大きい。あっちは連撃して来るが。剣を防いでも衝撃波で吹き飛ばされるし。
ちな、それまで白エルフ同様に軽く引いていたシルの、とっておきを見た際の反応がこちら。
「私、ラジルカさんだけは本当に怒らせないようにしますね」
真顔だった。目からハイライトが消えてた。それでも自力で立ってるし震えもしてない辺りはさすがだな、と。それはそれとして、リューは白エルフに遠慮してないで護衛に回ってくれてもいいんよ? コイツ一人勝ちしてるからフレイヤ派の非モテ男共からの文句がこっちにも飛んできそうなんよ。
肝心のタラスクだが、外見上は無傷だった。甲羅に引っ込んでても呼吸の必要があるんだし顔は露出してるはずなんだが……とはいえ最後の一撃はダメージが通ったらしく、あるいは回転が止まって浮力を失ったのか、ゆっくりと傾きほぼ真下へと墜落した。
そこを少し離れて物陰に隠れながら様子見していたベルたちが突撃したんだが、それぞれの全力を叩き込んだ事で甲羅が砕け散り
一言断ってから体を挟みシルの視線を遮った白エルフの
しかし敵もさる者、内臓がはみ出たくらいでは止まらなかった。元から鈍い動きが一層鈍くなってはいたが無事な尻尾を振り回し、頭の右側が半分近く吹き飛んでいたのに口から炎を吐く。大した暴れ具合だったと言えよう。意図したのかは不明だが、吐いた炎が体内を逆流して破れた内臓から噴出させる自爆技になっていたのは、驚かされると共に、不謹慎だが笑ってしまった。だってそれがトドメになって灰になったんだもんよ。
「お疲れ。ドロップアイテムの回収に来たぞ」
「ジル姉もお疲れ様」
「恐らく向こうは寝ぼけていたな。まぁ被害が出なくて結構な事だろう。退屈凌ぎにはなった」
「まー、あの感じは相当長く寝てたろうしなァ」
「焼けた脚肉は鳥肉っぽかったぞ」
「さいで」
軽くハイタッチやフィスト・バンプで健闘を称えつつ会話を交わすも、三名は至って平静。怪我もなし。完勝ですな。
倒し方というか倒れ方の都合で魔石は砕けたし、甲羅も割れてドロップアイテムは期待できんかったが、跡地を浚ったら甲羅の破片と獅子顔の牙を回収できた。どっちもそのまま盾と剣になりそうなサイズで、数もそれなり。尾は残念ながら駄目になってたわ。
複数種が同時にドロップってのは珍しいが、原作または外伝の時点で学区に使われてる鰭とロログ湖の封印に埋め込まれた骨が確認できるリヴァイアサンの存在により実証されてるし、黒竜の鱗だって本体から離れ魔力の供給源を失ってるのに千年経った今も効果をそのままに存在してる。いやまぁ大英雄に撃退された帰り道に落として行った鱗は、これが本当のドロップアイテムとか言い始めそうな物ではあるんだが。なおシミュレーター稼働当初の黒竜。
その意味じゃ黒ゴライアスは所詮Lv.5相当と深層のある程度深い場所にいるモブ並でしかない上に、再生を繰り返して魔力が枯渇してたんだろうな。そうなるとあの硬皮は下半身由来って事になるんだが……原作面子の誰一人として気にしてる風はなかったからヨシ!
ちな、この夢だと深層深部のモンスターは当たり前に複数ドロップするし、その強化種に至っては全身丸ごとドロップアイテムなんて事態も起きてる……三大
これで仮に『
とりあえず後片付けにタラスク跡地を整地して、周囲を含めて先行調査を行ったら安全らしいと確認できたんで、改めて待機組も合わせて上陸した。
そこから本格的な調査をしたら、洞窟に手を加えたらしい
日誌もあった。読んでみると、リヴァイアサンのドロップアイテムは所在が判明してるものの、回収は難しいと判断されて断念。そんで次点の討伐戦が行われた場所を探索したところ、細かく砕けた骨の欠片を見つけたそうな。海底の砂に混じってて浚うにも苦労したらしい
まぁ、それを使って実験したら劣化リヴァイアサンを復活できたものの、逃げられて行方不明とか超級の厄ネタが記載されてたわけだが。てへぺろじゃねーのよ。妙に丸っこい文字で書きやがってムカつくなぁおい。
「どうするの? これ」
「とりあえず情報をギルドに上げて世界に発信だろ。一番危険なのは
ベルとしてはリヴァイアサンの処遇――しかも戦闘に参加するメンバーの選定を言ってる気もするが、あえて情報の取り扱いだと解釈しておく。周りと価値観を合わせてやらんとベルが孤立するのは気の毒だ……こうなった原因の片棒担いでるわけだし。
「メレン……?」
「あ、私、知ってますよ。湖にダンジョンと繋がってる道があって、今は封印されてるんだそうです」
「そそ。ギルドご自慢の『
首を傾げるベルに、シルが自慢気味に情報を与える。女神情報なんだろうが、白々しいとは言うまい。ハーレムメンバー増員に関する決起集会とやらでシルは自分から正体を告白しちゃいるが、あくまでもシルとして振る舞うし扱ってほしいと願って受け入れられてるんよね。
ちな、ここのベルは
なお、お約束を網羅しているが故に発展アビリティを過信しラッキースケベを狙ってしまうせいで逆に失敗するポンコツにもなってしまっている模様。ベルはアタシの手を離れた。
「つまり放置しておくと封印が破壊されて、ダンジョンからモンスターが出てきちゃうって事だよね?」
「まー日誌の日付を信じるなら脱走が半年前で、今になって目撃例だから焦る必要があるかは微妙だがな。人前に出たのは準備が整ったからって可能性もあるンで楽観もできンが」
研究資料と日誌から、復活リヴァイアサンは思ったほどの強さはないが大人しく従順でしかも賢いと認識され、色々な面で役に立つと見られていたらしい。そんで実は強さを偽ってたらしくてある日の夜中に檻やら隔壁やらを破られて脱走を許したんだそうな。
賢いって事は悪辣って意味なんで、オリジナルより厄介かもなぁ。どこぞの
にしても、報復で皆殺しにしなかったのは意外だな。逃亡を優先したのか、恩を感じていたのか、あるいは自分がいなくなれば
砂浜での出落ちといい、ここの残党って戦闘向きではないが能力は高いポンコツ揃いだったんかね。制御はできんだろうから滅ぼして正解だとは思うが、割と惜しい事をしたかもしれん。
「なんていうか……世知辛いですね」
「ですね……」
「どーでもいい。しかし、なンだ、予算不足だけしか記載がねぇって事は、だ。触媒にできる骨の欠片は残ってンかね」
「探してみる? 他の残党に確保されても厄介だし」
「あるいは誘き寄せに使えるかもしンねェしな」
追加で戦利品が得られるなら嬉しいし、欠片であってもリヴァイアサンの骨なら価値としては十分だろう。その意味じゃ埋まってたタラスクの上に生えてた草木は薬効成分強めだったりしたのでは。こっちも惜しい事をした可能性、ぐぬぬ。
まぁ、いずれにせよ終わった話だ。少しでも足しにするべく読み終わった資料を始めとして本棚やら家具を鑑定しつつ倉庫に突っ込んどいた。目的の骨は見当たらなかったが。
他にも隠れ家がないか追加の探索をするも、場所として発見できても骨に関しての成果は上がらず。資料の読み漏らしでもあったかと確認もしたが、特に記述は見当たらず。お手上げってやつだぁな。
仕方ねぇんで、その辺を掘り返したり残党を一掃した砂浜の確認作業に従事したりする
ちな、メレンで見覚えのない船が入港してきたって騒がれる一幕もあった。ついでに商人やギルドからアタシ宛に船の改造または建造依頼も来たが、代金を吹っ掛けたんで取り下げされたよね。
そして数日後、
「いや、なんでやねん」
「お姉ちゃんが神ロキの餌食に!?」
「ロキ……許さない……!」
「あわ、あわわわわ……!?」
「おミャーら落ち着くニャ」
いやホント、
気付いたらUAが150kを超えてたり、結構前からお気に入りが666を超えてたり、さっき公開お気に入りが555超えてたりしてました。感謝。