そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「えー、山の日です」
「山火事ですか? 噴火ですか?」
「
あれか、単なる誤解だけじゃなく八月十一日を数字にすると811だから119に似てるとかそんな連想も含んでたり? さすリリ。崇めねば。
「急に正座して両手を上げながら繰り返しお辞儀をされてもリリは困るのですが……」
「はは〜っ!」
「いえ、そんな「はは〜っ」とかどうでもいいので。お姉ちゃん?」
いかん、リリの視線が温度を下げていらっしゃる。でもジト目はご褒美。冷たい視線を受けて心は熱くなるとかドライアイスかな?
「うむ、説明しよう! 実は前回依頼にかこつけて海に行ったわけだが、関連してレジャーを楽しみたかったロキ派の一部からクレームを受けたり山派から避暑地での過ごし方について熱いレクチャーを受けたりがあってな」
「なるほど、それで霊峰アルヴ山脈を踏破しようとなる辺りが流石ですと言えばいいのでしょうか」
そう、アタシ達は現在エルフの聖地と呼ばれているらしいアルヴ山脈の道なき道を登頂していた。
言い訳させてもらうと、一応は
特筆すべきはリヴェリアを含む同行するエルフ達への配慮だが、そこはぶっちゃけ守る気ナッシング。達成判定になる方があたおか系エルフのイミフ要求が増えそうだし。リヴェリア様のお役に立てない愚図共だったって切り捨ててもらえる方がまだ楽なんよ。
そもそもの話、同行するエルフはロキ派の
本来ならばエルフだけで行うべき一大事業なのだが、何しろ先天的な
今となってはモンスターも弱体化しただろうが、聞けば一族の悲願なんて言ってる割に大して先天性の魔法を発展させてないし古代の英雄並の
あるいは『恩恵』なしだけで考えるなら種族違いだし属性的な問題で環境への影響から候補に挙げられんが、先日ヘルメス経由でゼウスからヘルプコールが来たんで事態を収めてきたオリンピアの生きた化石状態な
さておき、聖地を取り戻すにもそれができるエルフの該当者は軒並み年配連中の閉鎖的な様子を嫌って森を飛び出したやんちゃキッズとガールズなわけで。まーそんなんでも自分の種族に誇りを持ってるから使命感的なのはあるんだろうが、地味にみんな大好きハイエルフのモチベーションが死んでるっていうね。見合いはしたくないが言いなりになるのも悔しいらしい。そんなんだから卒寿超えしておきながらアイズの子育て失敗してんだぞ。
つーか『
その意味じゃおフィンフィンは意気込みだけならいい線いってるが、種族単位での成り上がりだけを考えてる童貞気質なのがなぁ。順番とか数とか気にせんで沢山いる中の一人二人が純血の真なる後継者とかでえぇやん。どうせ純血より混血のが優秀になると思ってるから計画が破綻しないようにって考えなんだろうが、人工英雄の系譜を作り出して
まぁ、サバイバーズギルト的な義務感から人工英雄を目指し始めた疑惑があったり、初恋が破れた後に女装して男風呂に突撃してガレスに迫った経験を持つ男だからな(悪意のある解釈)。ついでに言えば確か後釜(意味深)に【
まぁいいや。今回の面子はロキ派の主力女性達と主神、助っ人でアタシとリリ。ついでに他所のエルフ達がいたら面倒そうだから牽制役に連行してきた精霊のコハクとネーゼム。どっちも教会と大聖樹見習いのいる元倉庫を行き来する程度の引きこもりにならざるを得なかった身の上だったが、都市外の人里離れた環境ならば誘拐の危険は限りなく薄いし、自然が厳しくも豊かな山であれば居心地も悪くないはずだ。まぁ蓋を開ければ面子はロキ派とアタシらだけだったわけだが。
ちな、案の定ロキが精霊二体にセクハラしようとしてたが、上位存在で割と権限強めなはずなのに反抗され鎮圧されてた。本人(?)達は触れ合う機会の少なさから加減を間違えただけで、あくまでも電気マッサージや泥パックによる奉仕だと言い張ってるのが微笑ましい。ロキも口の上では納得してたし諦めない旨を宣言していたし。そのせいで眷族からぐるぐる巻きにされて雑に運ばれてたが。
「……お姉ちゃん」
「だな」
休憩中の暇潰しをしていたら、モンスターの気配を察知した。まだ
「おん? なんやなんや」
付き合いの少ないアタシらのやり取りを興味深げに眺めてたロキが、空気の変化を感じ取って尋ねてくる。有事と悪ふざけする場合は有能になるんだなコイツ。
「敵?」
同じくロキへの護衛と牽制を兼ねてアタシらのやり取りを眺めてたアイズが剣に手を掛ける。その位置だとロキに斬りかかりそうで怖いんだが。
「まだ遠いがな。いやまァ神と『恩恵』持ちなら見えるか。ほれ、あっちだ」
「……森しか見えんけど」
「遠い、ね?」
指を差してモンスターの方向を教えたが、どうやらロキは木々に目を奪われているようだった。アイズは見えてるのか微妙だが、あるいは『
「大体3
「いや遠すぎるわ!? オラリオからメレンまであるやないかい!」
「せやで」
ロキは遠いとツッコミを入れてくるが、定義からすると視力1.0は大雑把に言えば1km先にある30cmの物体を視認できる程度で、2.0なら2km先になる。
つまり直線距離3〜4K程度先から接近してくる130
「まぁ見とけ……よっ」
倉庫から先端の尖った木の枝――グランド・トレントのドロップアイテムを加工した物――を取り出して、投擲。
「グギャァァァ!」
「あ、いた」
「マジかー」
「さすがですお姉ちゃん!」
うむ、実は当てる自信なかったが普通に当たったな。ビギナーズラックってやつか?
「逃げずに向かってくる、か。外敵がいなくなると自然下でも野生が薄れるンかね?」
幸運は続くようで、襲撃がバレているにも関わらず、モンスターの群れは止まらなかった。
「ふむ、巣があるなら潰しときてぇし、全滅させずに案内させるか。そっちは休憩終わったら先進んでていいぞ」
「はいよー」
「リリが向かいましょうか?」
「いや、雰囲気的にはそっちのが大物と当たりそうだしな。任せた」
「……! わかりました、お任せください! ふんす!」
そんなわけで別行動。こちらから打って出て、ルー・ガルーの群れにダマ鞭を振るう。一振りで十を超える頭が宙を舞う光景はいっそシュールギャグのようだが、これでも形が残る時点で相当な手加減をしている事を補足しておく。地上のモンスター相手にLv.8はオーバーキルなんよ。
んで、今度は首から下を串刺しにしていき、趣味の悪い鯉のぼりみたいな形で死体を振りかざして脅しつけてみた。槍投げで狙撃されたのに逃げない連中だ、普通に殺した所で食欲の赴くまま全滅するまで向かってきそうな予感がしたんで、恐怖ってもんを思い出してもらわんとないかなー、と。休憩してる方向からドン引きしてるのに叫ぶ声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。レフィーヤは後で泣かす。
しかしながら蛮族ムーブはモンスター相手にも効果抜群で、まずは臆病風に吹かれたのか一体が叫びながら逃げ出し、それを見聞きした他の連中も後に続く。殿がいない辺りに獣の価値観を見て失望を覚えなくもないが、
「さて、拠点は幾つあるのやら。その上で複数ルートに分かれて逃げたりするのかねェ」
結論から言えば、まとまって逃げたし見つけられた拠点は一つだった。犠牲を最小限にって考えならそもそも逃げずにその場で討ち死にしろって話だし、恐らくこの群れは全滅だろう。
肩透かしを食らった気分ではあるが、仮にも深層出身のモンスターなんで、都市外においては間違いなく難敵だ。苦戦必至で怪我人続出な結果に収める場合を想定しても同数の連携を取れるLv.2が必要になる。そんなやつらの住処を潰せたのは大きな成果だろう……くらいに考えとかんとやってられん。
「つーわけで追いついたわけだが……どういう状況だ?」
先行させてたロキ派に合流できたのはいいんだが、ちょうど戦闘中で、しかも苦戦中……苦戦中か? よくわからん状況になってた。なんというか、接近中から悲鳴は上がってるのに悲壮感がなかったんよね。
で、追いついたら何名かのエルフ達がほぼ全裸になってしゃがみ込み、無事なエルフも弓矢を放つ数名を除けば棒立ちに近い。前線では猛々しい気合の咆哮が聞こえて来るが、攻撃の巻き添えにでもなってるのかワーワーキャーキャーと姦しい。
「いやーリヴェリア達の魔法を中心にモンスター退治しとったら魔法の効かんモンスターを見つけてな、なんと伝説の『服だけを溶かすスライム』らしいねん」
「なンだそのエルフ特効モンスター」
少し離れた場所で少数の護衛を置いて眺めているロキに尋ねれば、予想の斜め上をいく回答が返って来た。
ダンまち世界におけるスライムは、37階層に出現するウーズの異名でもある。色別に体液の成分が変わり微妙に厄介なモンスターだ。アタシやリリにとっちゃラピスの種族ってイメージが強ぇがな。いやアレは最早ウーズのような何かか。
そんなウーズだが、通常であれば焼いたり凍らせたりといった魔法は有効な手段である。半端な温度で焼くと異臭がしたり目や肌を焼く毒を発生させる場合もあるんで、個人的に炎は推奨しないが。ともあれ、魔法が効かないとなれば、後は武器の耐久を気にしながら斬るか突くかで処理するしかないだろう。この時点で
まぁ今回は服だけを溶かす性質らしいので、武器の耐久度や生命の危機に関しては気にしなくても良さそうだ……自尊心が高いのに他人の目を気にする羞恥心の塊でもあるエルフにとっては(社会的な)致死性の非常に高い攻撃手段を持つ天敵なわけだが。
当然ながらウーズは体液を飛ばす遠距離攻撃手段を持つため、固定砲台的な運用が染み付いた後衛魔導士が弓矢で応戦するのも危険だ。狙いをつけるために停止する隙を狙われるからな。
と、なると返り血を浴びない戦い方を熟知している者が対応するのが一番なわけだ。つまり活躍しているのはアイズやヒリュテ姉妹、そしてリリだが……アイズは風を纏ってるし、ヒリュテ姉妹は開き直ってるのか漢らしく避ける素振りなし。でも倒す際や武器を振り回す際に体液を撒き散らしてて被害の拡大に一役買ってるのウケる。リリは
「なァ、普通に『服だけ』溶かすなら『鎧』や『盾』は無事なンじゃねェの?」
「あ」
このあと滅茶苦茶
まぁ、女性オンリーな集団だったのと、掃討が終わった後で倉庫に入ってる服を大放出したんで、全裸エルフ集団の尊厳は最悪の二歩くらい手前で守られた。ロキに見られたから三歩手前とはいかなかったらしい。無念じゃ……本音を言えば心底どうでもいいが。
「いやぁ、スライムベルは強敵でしたね」
「ぶっふぉ!?」
敵を殲滅して一息ついてたら、リリがとんでもない発言をした。人が飲み物を口にしている時に言うのは卑怯なんよ。つーか誤嚥性肺炎に繋がるからやらない癖をつけてプリーズ。
「何よその名前」
「でも言われてみたらアルゴノゥト君にちょっぴり似てたかも?」
「えぇ、半透明な白い体とそれを通して赤みがかって見える魔石。更に素早いとなれば、最早アレはベル様のスケベ心が分離して生まれた
【
「で、でも、山から脱出したのは何千年も前ですよ?」
「えー、あんなヘンテコなモンスターが何千年も生き延びるかなー?」
「そ、それは……」
恐らくベルハーレムメンバーになっているであろうレフィーヤがリリの説を否定しようとすれば、これまた【
「どうでもいいが仕事はまだ終わってねェぞ。残党やら別の棲息してるモンスターやらがいねェか確認せにゃいかンからな」
「【
「ティ、ティオナさ〜ん」
「よーし、じゃ休憩終わりっと! 残りもドンドンやっつけちゃおー! おーっ!」
こうしてアルヴ山脈のモンスターは軒並み駆除され、エルフ達の聖地は奪還されたのである。勇敢な同胞達を率いて見事偉業を成し遂げたリヴェリア・リヨス・アールヴの名声は跳ね上がり、エルフ達の忠誠心と自尊心もまた同様に跳ね上がったんだとか。
まぁ、おかげでロキ派やアタシらの同行は話題にならなかったんで結果オーライってやつなのだろう。
ちなみに、リヴェリアからの報酬はこちらから持ちかけたアルヴ山脈でキャンプする権利である。エルフの聖地? 知らんな。
一応名目はモンスターの討ち漏らしを確認する遠征だし、主催は前回参加できなかったエルフ代表って事で【
まーフレイヤ派がロキ派の後塵を拝する形になってるが、そこは当の
つまりこの話は前振りだったわけだが、当然のように起きたキャンプでの一波乱については……覚えてたら来年にでも語られるんじゃなかろうか。知らんけど。
ところで今更感のある疑問ですが、あくまで恩恵は可能性の実現で、いつかは辿り着ける境地なんですよね。そこで改めてリリの変身魔法を考えると、人間が変装だとか
ちなみに、ラジルカの場合は異世界転生した実績があるから異世界由来の技術や法則も持って来られる可能性を有しているって理屈で、何でもありな中で更に何でもありな状態だったり。その意味じゃこっちのリリは『
そうなると可能性だけならこの世界の全員にラジルカ≒異世界と魂が繋がる可能性を秘められてるから発現させる内容の範囲も想像力の許す限りとかになるのか。願望器か何かかな?
でも考えてみたら原作時点で全知全能の神が用いる万能の『神の力』が存在してる上に【ランクアップ】が魂の昇華に耐える器の強化で神に近付く行為なわけだから、後天的な魔法は『神の力』を操る神に至る可能性からの引き出しにもなって、実質的に何でもありになるのかも。その場合、神や人間の正体に関して色々と想像が膨らんで楽しくな〜る楽しくな〜る。いうて既出の神って全員ン億歳っぽいんよなぁ。