そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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Ex20.振り返りました。時々でいいから思い出して下さい。

今更だが、この夢は原作や現実――これまた原作とは違う、アタシの転生先となるダンまちベースの良く似た世界――とは法則がやや異なる部分がある。

 

例えば原作で明言されていない部分になるが、その原作と比較してどう考えても敷居が低くなっているように見える『神の恩恵(ファルナ)』の【経験値(エクセリア)】関係。特に偉業と言われる上位の【経験値(エクセリア)】に関しては、この夢の場合RPG的な次のレベルアップまでに必要な経験値でしかなく、むしろ通常の【経験値(エクセリア)】はアビリティの熟練度上昇に用いるステータスやスキルまたは魔法を発現させるためのスキルポイントでしかない。

これに関しては確信があって、むしろそうじゃなかったらLv.4辺りからは潜在能力(ポテンシャル)が同等な相手にも一部の格上にも苦戦らしい苦戦をしてねぇはずなのに【ランクアップ】するわけねーだろって話がね。

ウダイオスなんて動かれたら負けるからって瞬殺がデフォだぞ。なんであいつ割られたら即死する弱点の魔石をチラリズム通り越してモロ出しなデザインしてるん? 肋骨動かして防御とか多角的な攻撃の前じゃ無力やん。あいつ全周囲をカバーする視野はともかく並列思考とか持ってないし、普通のパーティーでも散開して弓で狙われれば防ぎきれんぞ。荷物的な意味で持ち込む冒険者は少ないだろうし、満足に扱える冒険者は更に少ないだろうが。器用のアビリティ? 知らんな。

一応、知り合いの冒険者に聞き取り調査したら月平均で勘定したモンスター殺害数の桁が二つ違う異常事態が判明したんで、経験値減衰が起きて落ちた効率を数で補った疑惑というか説はあるが。なおほぼ日で入ダンして食料庫(パントリー)を巡っていた事実を知った周りにドン引きされた模様。解せぬ。全滅させてから姿を隠して休んでる間に自然と強化種が生まれて効率良かったんだぞ。人が来ねぇから危ないと思ったらダマ鞭も使いたい放題だったし。

最初の頃は回復薬(ポーション)も満足に作れんかったし怪我の程度は重く頻度も高かったからちょくちょく休みになってて、一般的な冒険者より少し多い程度でしかなかったはずだぞ。途中から怪我の治療に重きを置いたエリクサーモドキを作り出して使いまくっていた事実からはそっと目を逸らすとして。

 

そして【ステイタス】の公平性。ぶっちゃけここの改変がなければ、原作の直前まで村人だった十四歳ベルがタイマンであっさり倒せたゴブリンを奇襲しなければ倒せず複数相手では絶望的だった六歳リリという、リーチの差だけでは説明が難しい現象の前に、アタシは初回のダンジョンアタックでコボルト相手にポックリ逝ってただろう。オラリオスタートの小人族(パルゥム)って死んだら埋まる縛りで始めるノースティリスのかたつむり観光客みたいなもんなんよね。

例えばリリ。こっちじゃ前世(フィアナ)顔負けというか黒竜討伐を成し遂げる活躍をしてる前衛攻撃役(アタッカー)だが、原作のリリルカ・アーデは才能を持たない代表として設定されていると作者が明言している。実際、原作では零歳時点で『神の恩恵(ファルナ)』を授かり、物心ついた三歳時点で育児放置気味で、六歳に神酒(ソーマ)を飲んで獣に堕ちるも冒険者適性のなさからサポーター落ち。そこから原作のベルに救われるまで何年にも渡って日常的に冒険者から暴力を受けていたのに――種族の傾向もあってか――基本アビリティの耐久は悲しいほどに伸びていなかった。なおゴブリンに一発殴られただけで30近く伸びていたスキル発現後の原作ベル。

とはいえ深層編の後に【ランクアップ】しているし、条件の基本アビリティD以上を満たしたのが魔力で、期間的に十二歳の頃に魔法が発現して盗人暮らしを始めてから原作までの約三年と考えれば十分に才能あり冒険者に区分される事になるわけだが……あとがきでランクアップさせるつもりなかったってのを見て戦慄したのはここだけの話だ。

 

あ、時間切れになって一度は現実で目を覚ました際に何故か空の上で営業してたゲーマーズを発見したんで改めて原作を立ち読みして原作知識補給したんよ。ハハッ、アストレア派ってゼウス・ヘラが黒竜討伐失敗してから五年後のリューが加入する時点ではまだ結成間もなくて、アリーゼですらLv.1なんだってな。この夢でアタシの監視やってた頼れるアイツらは誰だったんだ。ある種のホラーやん。現実でどうだったかの記憶ねぇのがますます怖いっていうね。まぁ直後にちょぼ味の酷い4コマ漫画を発見してしまったんで全部吹っ飛んだし、その世界じゃなくて良かったと胸を撫で下ろす羽目になったわけだが。あと立ち読みが長すぎて目からビーム食らったのもいい思い出。

 

で、話をリリの才能に戻すが、原作のリリは戦闘での貢献がほとんどない。本人が推定する偉業は、ベルの巻き添えと因縁深い神酒(ソーマ)の克服となっていた。

つまり最初から日の当たる場所で適性を見極める指導者と助け合おうと思える価値ある仲間に恵まれてさえいれば、原作リリは第二級くらいになっていた才能は持っているのではなかろうか。この辺が気の持ちようで『神の恩恵(ファルナ)』が忖度する説に繋がるんよね。

ロキ派の【超凡夫(ハイ・ノービス)】みたいなスキルも魔法も発現しない例もあるが、アレはヘスティアが命の自爆しそうな気配を感じて発現させなかったのと似た感じでロキが止めてる可能性もある。流石にそっちのが面白いって眷族をガチの玩具にする事はしないだろうし、デメリットの重そうな気配でもあったんでねーかな。知らんけど。

まぁ仮にリリが陽の当たる場所ですくすく育ったとすれば、その分だけおフィンフィンのお嫁さん適性まで上がってしまいかねない問題が発生する。とはいえ、そこはリリ側のうちら他派閥やぞって常識と【怒蛇(みうち)】の暴走がご破算にしてくれるだろう。

 

つーか有名になったからすり寄るのは宝くじ当たったら湧いてきた見知らぬ親戚みたいなもんだからなぁ。確かに欲しているのは次代にも継承される系譜を持った象徴で、その意味じゃ求める利益で取引できる相手との仮面夫婦的なもんでも可なわけだし、そのやり方のが()()()として機能するからヨシって考えなんかもしれんが……どうせなら横取りするんじゃなく自分で引き取って育てるくらいの困難に立ち向かう勇気を見せて欲しい。人工を自称してる以上はなんかしら歪んでいる部分があるって自覚はあるんだろうがな。

しっかし王女の旗の下に集った同族からなる部隊持ちのエルフと、あるいは地元で誰からも好かれていた兄貴分のガレスと比較して、我らが小人族(しゅぞく)の誇る人工の英雄(おフィンフィン)殿の周りは……おぉ(顔覆い)。

いやまぁ後の勇者ロトはパーティー組んだがその父親や子孫は一人で旅立ったし、アンリも一人で野生化した竜の棲家を突っ切ってメディウスとタイマンしたし、縛りプレイの題材としても勇者一人(ぼっち)旅は鉄板だからな。勇気よりも蛮勇側に見えるのは気のせいだろうか。例に挙げたのの三人中二人は結果出してるのがまた皮肉よな。敵を打倒って意味じゃオルテガは失敗してるが、人々の記憶に名前を残したり後継が世界を救ったって意味では全員が成し遂げてる。

 

えーと、何の話だったか。この世界が所々にバグを抱えてて難易度低めな感じだって話になるのか。

 

「まァ、だからどうしたって話なンだが」

 

そんな言葉で締めたわけだが、リリは首を傾げる。

 

「では何故そのような話を?」

 

もっともな疑問だった。そして実を言えば重要な意味はない。

現実では勝手が違うかもしれないと注意するにも、リリの【ステイタス】は【勇機指令(スキル)】の補正抜きでもオラリオ上位のLv.7なのだ。向こうで大抗争相当の一大イベントが終了した段階じゃ何故か歌って踊れるただし真顔なオッタルくらいしか現役冒険者の中に脅威は存在しない。

いやまぁ転生せずに全快した上に異世界由来の職業を獲得して今が全盛期しかも絶賛ハイペースで更新中なオッサンと姉御がいるし、むしろ異世界由来のアレコレが黒竜に匹敵しそうなんで命を脅かす相手には事欠かない魔境ではあるんだが。なお蘇生や復活の手段。

 

「いやな、昔の食料庫(パントリー)を荒らし回ってる夢を見たンよ。しかも休憩中に集まってきたお代わりの中に元から強化種になってたモンスターが混じってたせいで割と重めの怪我をした苦い経験でもあってなァ」

 

ベル村から出稼ぎに来てたLv.3当時の話で、闘技場(コロシアム)に飽きたからってもう少し下に降りて火炎石集めを並行してたんよ。したら全身が真っ赤に染まり火炎石相当の爆発物と化した敏感肌属性を獲得したフレイムロックの強化種なんてのがいてな……ダマ鞭で斬り捨てようとしたら触れた瞬間に大爆発起こしやがって、危うく巻き込まれて死ぬかと思ったよね。

距離がそれなりに離れてたのに魔力壁の魔道具(マジックアイテム)貫通したからな。発展アビリティの耐爆が威力を大幅に減衰してくれたから万能薬(エリクサー)を使い切ったら動ける程度の致命傷で済んだんだって思うとヒヤリハットどころじゃなかった。エイジャを倉庫でまったりさせてたのも油断大敵ってやつよな。

結果的に見れば耐久の熟練度が伸びておいしいってなったのはここだけの秘密だ。

 

「ほうほう、そのような事が」

「二週目で装備のゴリ押しできるからって【ランクアップ】後のズレを放置して行ったのも悪かったンだよなァ」

「……なるほど、あの時の話ですか」

 

どうやらリリの記憶にもあるらしく、ポンと手を叩いて頷く。コチラとしては自分の失敗を覚えられて恥ずかしくもあり、同時に学ぶべき失敗を覚えて同じ轍を踏む事はなさそうだと安心してみたり。

 

 

「思えば、お姉ちゃんってあんまり苦戦してるの見た事ないですね」

「せやろか?」

 

場所を変えてリビングで軽食(おやつ)を摘みながら駄弁っていると、リリからそんな意見が出てきた。

アタシとしては初ダンジョンのコボルトやゲーミングウォーシャドウを始めとした多くの強敵(とも)との熱い戦いの記憶がしっかりと焼き付いてるんだが。しかし言われてみればリリと合流してしばらくは倉庫で過ごしてもらったし語る時間を持てず、大抗争終結後は史上初であろう階位(レベル)が下がる事態に困惑し焦ってた部分はあるから配慮が行き届かなかった面はあって、何よりリリの前ではデキる姉でいたいからと見栄を張って黙っていた事もあるかも。

オラリオ入りしてからは別行動も多くて向こうにベテランのオッサンと姉御がいたから指導役は任せてたし、報告に合わせた助言や便利道具を与えるくらいしかしてなかったな……黒竜討伐や死者を減らしたい欲に従って色々と手を回してたから仕方なかったが、惜しい事をしたもんだ。

 

「えぇ、まぁ。あ、ちょうどいいところに。ベル様ーちょっと面貸して下さい」

「言い方ァ……」

「え、え? 僕、何かした?」

 

こうして召喚されたベル・クラネル。リリの言葉遣いが堅気じゃない人のソレだったせいか、ビクビクしながらの登場である。

 

「いえ、お姉ちゃんの苦戦した話を聞いた事があるかの確認です」

「ジル姉の? うーん、うちに来た当初は計量しないと調味料の適量を用意できないって泣いてたのは見た事あるけど」

「おうコラ忘れろ下さい」

「はは、無理無理」

 

殴りたい、この笑顔。具体的には記憶が飛ぶまで。でも力技だと既に勝ち目がないんだよなぁ。子供の成長は早い。なおリリ。

 

「えーと、それはそれでリリの知らない貴重なシーンなので後で詳しくベル・尋ねるとして」

「人の姓みたいに発音しないでよ!?」

「まぁまぁ。それで戦闘部門、特にダンジョンでモンスター相手に苦戦した話はないでしょうか?」

「モンスター相手かぁ、そっちはない……かな。うん、僕が知ってる話は基本的にリリも一緒に聞いてたし」

「そうですか……」

 

あの当時はリリも【ステイタス】更新経験なしでまっさらなLv.1だったからベルの護衛を兼ねて相手してもらってたからなぁ。それが今では……子供の成長は(ry

 

「ではお姉ちゃんの口から直接聞くしかありませんね」

「流れ変わったな」

「あ、飲み物取ってくるから少し待って」

「だ、そうですよ? お姉ちゃん」

「……りょーかい」

 

こうしてアタシは思いつく限りの失敗談を赤裸々に語る事となった。第一級冒険者の中でも最上位な二人には不要な心配な気もするが、コイツらが先輩として後輩を教導する未来のためだ。自分の羞恥心など捨ててしまったとも。

ちな、一つ語り終える毎にイベントフラグが立ったかの如くヘスティアやアルテミス、オッサンに姉御、コハクにネーゼム、ヴィトーにルビスといった面々が合流してきて、流石にそっちに聞かれるのは恥ずかしかった。故にこのままで終われるかとゴネて暴露大会へと発展していったわけだが、まぁそれなりに笑いありドン引きありで盛り上がった。またの機会を待ってもいいと思えるくらいには。

とはいえそれぞれストックをそれなりに放出してしまったので、第二回を開くにはまた新たな――活きの良い語り手(いけにえ)が必要になるだろう。なんならギルドを巻き込みながら学区を真似た講演会っぽい催しに変えて、むしろいっそジャンルを日常まで広げてもいいかもしれんね。ギャンブルとか酒とか異性とかは該当者多そうだし……聞かせてもいい範囲なら自然と失敗の部分は笑い話になってくれそうだし。もちろん加減できない湿度の高い参加者も出そうだが……それはそれで感動系の物語っぽくなるし、時間や日程そのものを分けるか?

 

 

 

そんなわけで後日、ギルド長に話を持っていったわけだが、それはもう快く引き受けてくれた。プレゼン資料に載っていた例が名前を伏せたとある組織のお偉いさんによる横領に関する証拠だった事に他意はない(断言)。

胃薬を渡したらマッチポンプには乗らんぞと悔しげに呟かれたが、何の事だか全く分からんな。

ちな、フェルズに打診したら小さく短い悲鳴と共に胸を押さえて蹲ってしまった。ウラノスから「もう少し、こう、何というか、手心というか……」と懇願されてしまったのがその日のハイライト。

なお、新しい話題ゲットだぜと返したらフェルズはうおーんと泣き始めるし、ウラノスは顔を片手で覆いながら無言で天を仰いでしまったとさ。ウケる。




そういえば初投稿から一年経過してたけど特にリアクションしてなかったやーつ。なお他作品。進捗駄目です。
自己満足なのは今も昔も変わらないとして、ラジルカの言う現実に相当する向こうの作品で登場する場面まで進めればいいやと謙虚にチラ裏を選択し、ほぼ日投稿を優先して思い付きだけで書いてたせいで書きたい部分や書くべき部分を飛ばしたり、逆に飛ばしていい部分を書いたりと反省のし所さんがてんこ盛り。
しかも原作小説は漫画喫茶で読んだだけで、十五巻を冒険が見たいからってスルーしたせいでアストレア派が原作より早く結成してオラリオ入りしてランクアップ済ませてるバグ発生。才能ありでも最初のランクアップ三年とか、Lv.2から3への難易度は当然1から2の場合より高いし期間は延びるはずとか、そんな常識はアストレア派の類い稀な才能の前にひっくり返されたよね。ガネーシャ派のオリキャラが代行する形に修正しようとしてたのも今となっては懐かしい。忘れてたのは内緒。
現実を追い越したしアストレア・レコードで一区切りかなと思ってたら、リリをチートキャラにしたい願望が原作時間軸に進ませたという。それでも半年と持たずに原作既刊分に追いついちゃったけど。
一年を濃密にしろって言われてもランクアップに正当性を持たせるために食料庫巡りして強化種狩りなんて原作キャラからしたら自殺と変わらん事を日常的に行うあたおかの民なラジルカにとって特筆するようなイベントなんてそんな頻繁に起こらんし、経験値稼ぎに深層まで狩りに行ったら往復一週間は消えるだろうし、暦が進む進む。
ラジルカ以外の人物視点とかメインストーリーに絡まない閑話とかで膨らますべきだったかなーと思いつつ、それやると頭がおかしくなってエタる未来しか見えなくてやめた当時の記憶。

お気に入り700超え感謝です。あと評価0が入って全種コンプしてました。やったぜ?
チラ裏時代からお気に入りと高評価をくれた人々には感謝しかありません。ありがとうございます。時期に関係なく低評価していったのは話数と内容から正当な理由を推測できそうな一名を除いて感謝のかの字もありません。本当に、本当にありがとうございました。
UA160kの達成も確認しました。感謝の極み。
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