そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
ある日、ギルドから
本当は
で、内容としてはある意味タイムリーな、ダンジョンの危険をまとめたドキュメンタリー風の番組を制作するんで、現役冒険者にインタビューして再現VTRを撮影する事。交通安全教室か何かかな?
どうにも学区の講義に使用するらしく、三年に一度の帰港に合わせた半年程度の
まー確かにアレって情報収集から探索の準備そして実践というか実戦と、やる事は多いしな。戦技学科の脳筋共に大して興味もないダンジョンの情報を集める頭脳労働は辛いだろうし、予め単位を餌に知識を叩き込んでおくのはアリか。
いうて学区は学ぶ意思を重視してるから生徒の目は前や上を向いてるし、主神は偏見を持たず個人を見てくれる善玉だし、アタシの経験則による――この夢における『
都市外の遭遇頻度は低めでモンスター自体も弱い初心者向けな環境。しかも裏切りの心配が除外できそうな仲間と一緒だし先輩や教員の見守りまで付くとか至れり尽くせり。
比較的安全に成功体験を積めるから自信に繋がって、天狗になる危険性すら世の中チョロいって思い込みがちょっとした願望でも魔法やスキルが発現する可能性の向上に繋がるんでねーかな。
何より『
滅ぼされた村や難民、国同士の衝突って人間の愚かさを見て精神的なダメージを受けるのだって、王道を進む生徒達には奮起する燃料になるだろうし。
都市外の多様さに触れるってのもオラリオのモグラには経験できん有利な点か。いやまぁ冒険者も大半は外から来てるから経験済みなんだろうが。アタシやリリみたいな地産地消のが珍しいのよ。
その意味じゃ他派閥にいるんかな、オラリオとダンジョンしか知らねぇで育ってる二世三世のサラブレッドなモグラ。ダイダロス通りの孤児とかは割と両親が冒険者で、捨てられたり先立たれたりなんよな。イシュタル派の庇護下で眷族じゃない娼婦が親な場合も多かったが。
つーか冒険者というか『
まー総じて良い子ちゃん育成の理想的な環境ではあるんだわ。流石の学び舎って感じ。
まぁ、そんなキラキラ輝いて夢見てる規則正しい若人集団の学区がダンジョンのハイリスクな環境に心折られた破落戸の溢れてる冒険者界隈と相性悪いのもしゃーない。言ってみれば使用前使用後で、互いに一番見たくない未来または過去の姿なわけだし。
関係性から言うと税金で不自由なく暮らすお貴族様とそれを支えるために重税課せられてる領民にも似てるんだよな。学費無料に飛び付く生徒も多いらしいが、財源どこだよって気にならんのかね。自力で稼いだ経験があるなら疑問に思うはずなんだが。
いやまぁ運営資金に関してはオラリオのギルドだけじゃなく世界勢力に数えられる各国や道すがら助けられた村なんかからも支援を受けてるんだろうがな。逆にそっちは発表されるけどオラリオは義務だから発表されなくて知らない生徒も多いとか? うーん、わがんね。つーかどうでもいい。
その意味じゃ学区出身の冒険者代表の、ある意味で平民落ちキメたとも言えるレフィーヤ大明神だって、主神の面食いとリヴェリアの存在から
まー裏を返せば学区ってワンパターンの集まりで想像力も応用力も足りんお子ちゃましかいねぇわけだが。目に見えるものが全てで背景や隠された意図を見抜けない力だけ強い奴とか、体の良い操り人形にされる未来しか見えんわ。むしろオラリオの代わりに世界各国の問題解決してるわけだから操り人形に関しちゃ絶賛実践中とも言える。意外に腹黒いな……この場合、学区よりはギルドがか?
理念的に相性良さそうなアストレアがオラリオを選んだ辺りにこういった学区の歪さというか後ろ暗い面が透けて見えなくもないんだよなぁ。いうてアストレアも武闘派だから強くならないと正義を貫けないって思考で蛮族の仲間入りしに来た可能性高いがな。現にこっちじゃもう都市外で無双できるやろって飛び出してったし。
その意味じゃ
例えばの話だが、
つーか資金力不足で稼働できねぇか。魔石関連事業を独占してるオラリオのギルドにしかできんわ、あんな似非チャリティーみてぇな真似。
仮にギルドの協力が得られてもリヴァイアサンがいたら海上移動は現実的じゃねぇし、陸路もベヒーモスいたからなぁ。あと黒竜もアーニャの故郷滅ぼしたり比較的元気に活動してるか。デカい移動する建物とかどう考えても狙われるよなぁ。むしろリヴァ×要塞とかジズ×要塞のドラゴン要塞◯ックスが始まってなんだコレ状態になる怖さがある。いやねーよ。
本末転倒だけどホント邪魔だな三大
もしかして神々の権力闘争ばっかで技術が失伝しまくったニア暗黒期でもあったんかな。ありそうだな。
トートとか歴史を記録してそうなタイプの神は……記録を改竄させようとした脳筋神のせいで送還されてそうだ。なんなら十五年前の結果出してるゼウス・ヘラ連合の最高戦力も実は歴代だと二番手三番手で、途中でもっと上の戦力状況だったのに神々の権力闘争に従って人間同士で争い同士討ちした事実を神々総出で隠してる可能性まで疑ってるからな、アタシは。
基本的に
そもそも自分らで設計したとしても今まで目を向けてなかった下等生物に規格を合わせるとか難しいだろ。ウラノス達先発がバベルの前身を降臨がてら破壊したなら設定肉体強度間違えてた可能性あるし、そのまま力加減も間違えて当時の貴重なつよつよ人類ハグで爆散させたりとかしたんじゃねーの。初めての玩具にはしゃいだ挙げ句に壊すまでワンセットとか三歳児じゃねぇんだぞ。でもそれがアタシのイメージしてる
しかし、ふむ、初期の名残が消えた神時代始まって数百年前後の空白期を考えた場合、まずゼウスとヘラが頂点で追いつけ追い越せしてる治安的には修羅の国だけど、最強がLv.5とか6とかものっそい期待外れで、ダンジョンもウダイオスを犠牲多数で討伐したぞーとかはしゃぐような感じだろうか。でも小さくまとまる分だけ戦力差の少ない死闘というか勝ちの目があるからこそ同盟や裏切りが多発するまともな戦争が起きて見応えありそうな? そのせいで神々が夢中になって気付けば数百年は割とありそうじゃね?
そう考えたら十五年前のゼウス・ヘラが成した偉業も夏休み最終日にようやく宿題こなし始めた感があるな……少なくとも建前上は歴代最高の眷族達をギリギリまで粘って成長させた最適なタイミングで仕掛けたんだろうが。黒竜討伐失敗は空いてる店のない深夜帯に原稿用紙が裂けて読書感想文を書けなくなって頓挫辺りだろうか。
ダンまちぼくのなつやすみアフター説……来るぞ、コレは。
しかしゼウス・ヘラの眷族育成が神々の計画だとすると見事に失敗して、挙句の果てに
とりま、恐らく黒竜もいなくなったけどダンジョンと約束の刻は残ってるしそっち側でも力入れるようギルドから要請でもあったんでねーかな。そんで改めてダンジョン潜った際にhageたりパトったりしないよう足場固めしようぜって話になって今回の依頼が発行された、と。
あるいは黒竜討伐されたし、天敵のモンスターも弱体化の一途を辿る事が確定してる。そうして人類の天下が始まったら神も順次天界に送還されるだろうし、相互安全保障のために暴力の必要性が薄まっていく。そうなるとこの依頼の納品物も用済みになるが、だからこそ単なる資料として後世に記録を残したい意図もあるのかね。動画の記録媒体自体は百年と持たんから、別途書き写す必要がありそう。学区の変人共なら喜んで絵や文字にするか。
さて、そんなあるかもないかもわからん背景はともかく、この依頼には一つ問題点がある。
ギルドの援助で運営できてる学区と、あのギルド長が舵を取るギルドのタッグがお客様なだけあって、報酬が非常にしょっぱいのだ。
そこはまぁ、オラリオで一番稼いでる個人なアタシの出番なわけだが。余計なお世話と言われようと、ヘスティア派の
その甲斐あってと言うべきか、完成した動画は交流のある上級冒険者と一部『
これにはバルドルやイズンもにっこりなはずだ。『
まーぶっちゃけダンジョン内の危険とか言ってるけど出演者のせいで頭に入ってこないっつーか、都市外にまで名前の知られてる有名冒険者達の人外じみたアクションを楽しむ動画が爆誕してしまった。犯人としては反省も後悔もしていないが。出演者の主神を集めた試写会での評価も上々だったし。見せる対象が間違ってる? それはそう。
それじゃここからはメイキングってーの? 舞台裏の制作秘話の様子を見てみよう。
「つーわけで希望者はいるか?」
「いや、唐突すぎるよジル
「出演者がシナリオの脚本も担当、か。遠征は僕が立候補しようかな」
「はい【
「えぇ……」
ダンジョン内の危険を知らせる目的なら、単なる一般論よりも経験談の方が話に重みが出て、受け取る側もしっかり受け止めてくれるだろう――そんな目論見から、シナリオは出演者の実体験を反映させたエピソードって事になった。
「エキストラに派閥の者を出演させるのは問題はあるか?」
「普段なら報酬の相談があるから難しいかもだが、今回はアタシが出すから問題ねェぞ。一人頭百万ヴァリスで三十人くらいまでな」
「う、うむ」
どうやら【
そうなると
「では、
次に声を上げたのは【
「……言っとくが、階層主ってのは
「……むぅ」
気になったんでツッコミを入れたら、案の定だった。
テメー既にバロール単独達成済だし【ランクアップ】も済んでるからもう上位の【
それともまさかこの機会にもっと下の階層主を狙ったか?
「学区に見せるならゴライアス?」
「それもいいが、どうせなら見る機会のなさそうなバエナもアリだな。つーかここにいる面子は忘れてるかもしれねェが、深層は冒険者でも心折れるからってギルドが情報封鎖してっからな?」
「あー」
「……そうか。ならば他に任せよう」
ベルのアシストを受けて階層主の範囲を決めたら、あっさり引き下がった。まぁ、素直なのは美点だと思う。
「ゴライアスならリヴィラの街の冒険者にお願いしてみては?」
「あー、アイツら下層ツアーで【ランクアップ】したから【
今度はリリの意見だが、これまた微妙な問題が。アタシのテコ入れが足を引っ張るとは……ぐぬぬ。
「ならばアンフィス・バエナを地上だけでなく水中戦も行うのはどうだろうか? 学区は水上戦闘も多いと聞くし、
「なるほどな。そうなるとシナリオとしちゃ戦闘内容か。
「うちのヒリュテ姉妹なら『潜水』持ちだ。アンフィス・バエナ相手でも食らいつけるだろう」
「ふーむ……」
「何か問題が?」
「問題と言えば問題なンだが……」
案としてはかなり良い。願ってもないというやつだろう。
問題は、ほとんどの危険についてロキ派だけで撮影できてしまう事に気づいてしまった点だ。
集めた手前、何かしらの項目に主役として出演してほしいのだが。
「なンつーか、そもそもアタシの考えが足らンかったわ。学区向けだと確か
「「「………………」」」
もうロキ派だけでいいんじゃないか――そんな台詞に言葉を失うメンバー。漂う企画倒れの雰囲気。すわ解散かと思われた、その時だった。
『単に手加減すればいいだけの話じゃないっすか?』
「それもそうか」
「確かにね。失敗した当時の再現なら全力で動くわけにもいかないだろうし」
話し合いに参加せずお茶請けの素揚げそら豆をサクサクしていたエイジャの提案に、一同はどこかほっとした様子だった……なんでだ?
「不思議そうだね」
【
「我々の場合は資金難の問題がな」
まさかの金欠。世知辛いぞトップ層。フッ、とか鼻で笑って雰囲気出しても格好つかねーのよ。
いやまぁ最近だとロキ派は遠征すると赤字になって帰って来るジンクスが生まれてるからな。去年の極彩色キモ虫に武器を溶かされて泣きを見る羽目になってから不運続きというか。
いっそ厄払いでもしたらと言いたいが、神の眷族とかいう御利益満載なはずの身分だしなぁ。なお全知零能。
あ、でもアリアがアイズに協力してるから、悪いものは風で飛ばされた的な感じに厄払いされてそうな気もする。知らんけど。
最近だと61階層まで到達階層を更新したが、運悪く
いやね、こう、ダンジョンの意思に魔改造を提案した身としては思うところがないとは言い切れんの。
61階層ってアレだろ、毛皮モッサモサなサスカッチ風だけど胸が脂肪でたゆんたゆん、しかもセクシーポーズ取ったりわざと胸を張ったり揺らしたりで挑発する視覚的な嫌がらせを仕込んだモンスター『メスガッキ』が出現し始めるネタ階層。
視線を誘導された男性陣の自己嫌悪や揺れない震源地がコンプレックスな女性陣の怒りを一身に集めるタンクとして設計したら、何故か『
面白かったからそのまま採用されたが、アレ初見だと混乱して隙を晒すから割と洒落にならん致死性の初見殺しな罠でもあるんだよなぁ。『
「ところでオッタル、演技は得意かい?」
「真剣に取り組む事と全力で取り組む事の違いはわかっているつもりだ」
一応は恥になる事情を明かしたと思ったら、何やら【
ところで返答が猪らしからぬ遠回りな肯定なのは演技か? 演技できますアピールか? そんで勇者様は何を口の端は上がってるけど全体的にお硬い感じで汗まで流してコイツやるなみたいな表情してるん? とりま無視するわ。
「ところで提案があるのですが、まずはダンジョン内の危険を列挙してみてはいかがでしょう」
「あー、その中から該当しそうなエピソードを絡めて担当を決める感じか?」
「はい。同じ危険であっても複数の例を出す事でより多くの情報を提供できますし、対策を考える側も助かるかと」
「名案にごつ」
言われてみれば一つの危険に複数の例で問題点を浮き彫りにというか深掘りというかしてやるのは頭になかったわ。確かに対応してる例が一つだけだと解決しない疑問とか応用できない特殊な解とかあるもんな。さすリリ。
てなわけで意見を出し合う事に。ベテランや新気鋭の集まりだけあって、あれもこれもそれもな感じでポンポン出てくる。
「……多くね?」
「多いね」
「多いな」
そして書き出された危険の数というか種類を改めて見ると多いのなんの。都市外でも潜んでいる種類を除いてなお、結構な数が残っている。
「だが、実際にこれら全てを警戒して注意を払いながら進んでいるのが我々だ」
「そうですね。一つでも抜けてたらそこを突かれる形で危険な目に遭うわけですから」
いうてリヴェリアとベルの言葉通り、これらの確認が習慣になってるのがアタシらなわけだが。実は凄かったんだなアタシら。
まぁ、中には荷物の運搬だとか長い移動時間だとか一部を力技でスキップしてる【
さておき、動画の時間を考えたら絞らんと無理な気がするが、そもそも講義は何コマ分の時間を割けるんだろうか。このままだと全十五巻とかになって新しく科目を立てる勢いになるぞ。まぁ講師は【ナイト・オブ・ナイト】にやらせればいいから問題ないか。単位が増えるよ! やったね生徒!
「よし、そンじゃ担当決めるか。危険項目に対して該当するエピソードを軽く語ってもらって、それが別の項目にも該当するか判断してくぞ」
そうして今度は自分の持ってる体験談を軽く説明し、担当を決めていく。これも一つのエピソードに複数の危険が絡んでたりするんだが、逆に別口で解説を撮影して編集すればシーンを増やすよりお得なんで積極的に採用していった。
ちな、アタシは他者より慣れてる自覚があるからと営業かける得意先状態な
そんで強化種を押し付けられた。掛け持ちでもいいのよって言ったのに、全力で首を横に振られた。解せぬ。
そしてなら自分がと
俳句の日も、埴輪の日も、バニーの日も逃したでござる。語呂合わせは楽し。
記念ついでに一話どんなんだっけと見返したら、なろう系を書いてみたくて始めた物語だったなーと。その割に冒険というかダンジョンアタックちゃんとしてないのはガッカリポイントではなかろうか。そんな気持ちで過去エピソードを捏造、披露する前振り。肝心の過去エピソードはこれから気が向いたら考えます。
あと文字数が伸びてって途中から五千文字が基準になってたせいで一話に話題が複数入ってたりもして、目標は見えてるけど常に迷子の状態であちこちふらふらして進んで行ったなぁ、と。でも考え始めると連想ゲームになって話題が迷子になるのは仕様通りではあったり。そこにパズルゲームも混ざって答えを出すはずなんだけど、そっちは上手くいかないという。
それとラジルカの前世は高校生までなので、初期と最新とでキャラが変わってるのも仕様。オラリオ生活に合わせながら成長していった。その意味ではこれから大人になっていく多感な精神状態だったのに現代日本からオラリオは割と酷かったと反省のし所さん。
なお、去年の八月時点では前世がちゃんと現代日本だったのに、今月になってフルダイブVRMMORPGの実現してる神話やフィクションが実在するローファンタジーな現代ダンジョンものに改変され、色々と前世において悲しみを背負った模様。