そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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20.ランクアップしました。恩赦下さい

近く酷い目に遭う未来が確定したが、アタシは無事に【ソーマ・ファミリア】の本拠へと帰還した。

 

「お姉ちゃん!」

「リリ!」

「「ひしっ!」」

 

汚れは星屑の庭(誘拐先)でシャワー借りたから問題ないし、服もライラから借りた。おかげで清潔な格好をしてリリと抱き締め合える喜び。

 

「スンスン……知らない牝の臭い」

「どこで覚えたよ、そンな台詞」

「ソーマ様に会いに来た神様の下さった本に」

「そうか……アタシにやるのはいいけど、使いどころを間違えないようにな」

「はい! リリはしっかり学んでお姉ちゃんのお役に立つのです! フンス!」

 

昨日の今日で愛しいリリが愉快な性格になってるんだけど何があった。とりあずソーマに犯神の正体を聞き出したら制裁を加えておこう。そしてまさかとは思うが【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】の仕業じゃ……ないのな。信じるからな。頼むぞ。というか無関係だとそれはそれである意味一層まずいんだがな。どこのどいつだ。

 

「それで、ごめんな、リリ。黙ってダンジョンに行って」

「謝らなくてもいいんですよ。お姉ちゃんは必要だからやったんでしょう? リリはお姉ちゃんの重荷にはなりたくありません。」

「重荷に思うわけないさ。リリがいるからアタシは頑張れる」

 

はー癒されるー。こんな健気な妹を持てたアタシなら発展アビリティに幸運あっても不思議と思わねーむしろ当然……そうだった、【ステイタス】の確認。

 

「よっしゃリリ、アタシはソーマ様に用事あるから向かうが一緒に行くか?」

「はい、リリもご一緒します」

「おう、じゃあ手繋ごうなー」

 

と、いうわけで三下(ザニス)に【ステイタス】更新の費用を払ってからソーマの元へ。この辺、変にスケジュール組まれててこの時間に出直せとか言われねーのは楽なんよな。金さえ払えば後はフリーパス。まぁ単にザニスがソーマのスケジュールを把握してないだけなんだが。ソーマはソーマで酒造りのために畑と酒蔵と執務室を行き来する毎日ではあるんだが。アタシもリリもソーマの一日は把握済なので、畑へ直行。ついでだし仕事手伝ってやるか。

 

 

 

「……終わったぞ」

 

畑仕事を手伝った後で【ステイタス】の更新をしてもらった。体を起こして内容を書き写した羊皮紙を受け取りながら、本題について尋ねる。

 

「あざます。ンで、【ランクアップ】の方はどうなりました?」

「あぁ、しっかりと条件を満たしていた。おめでとう、アーデ」

「凄いですお姉ちゃん!」

「うす、ありがとうございます。リリもあンがとな」

 

目的は達成した。後は一応、基本アビリティの貯蓄を視野に入れるか実際の数値と伸びを見て決めるとしますか。

 

「早速【ランクアップ】もしておくか?」

「ちょっと【ステイタス】確認してから決めます……」

 

 

ラジルカ・アーデ

Lv.1

力:G209→E420 耐久:E467→C651 器用:B709→B794 敏捷:E415→C629 魔力:B703→B727

 

《スキル》

職人技巧(オート・マイスター)】←New!

・ものづくり時に一時的な【ステイタス】への高補正。製造工程の一部自動、簡略化。

・作製物への命名権。名前により効能変化。

 

 

うーむ、微妙と言えば微妙か。ネームドじゃなくモブとして見れば上々なんだろうけど。

成長限界に達した感じはしないんだが、今更の話だがそもそも【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】が働いているアタシの成長は果たして正規の仕様なのだろうかと疑問に思っていたりする。ソーマが【ステイタス】の更新時に何も言ってこない以上は問題なしだと思いたいんだが、いかんせん趣味神故の無頓着な可能性が残ってるんだわ。

異界信仰(こいつ)】のことだから、レベルシステムがそんな刻み大きくて別物になるとか風来人の敵じゃないですかーやだーとか言って表記は合わせるけど内情は一般的なJRPGのレベルシステムを適用している可能性がなきにしもあらずなんよ。今もこう考えていると明後日の方向を向いて下手な口笛を吹こうとしているイメージが届くし……やらかしはほぼ確定だな、こりゃ。バレたかーじゃねぇ禁忌の業(テヘペロ)してるイメージよこすなや。

新しく生えたスキル? アタシには何も見えねーな。知らん知らん。つーかこれ【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】から分離しただけで元から機能してたよな? ブリューナクはまだしもスリンガーとかダマスカス鋼とか。だからバレたかじゃねーのよ何が←New!だコラ。あれ、でもこれソーマが書いてんだよな……?

 

「うん、ソーマ様、【ランクアップ】もお願いします」

「かしこま」

 

とりあえず女は度胸、何だって試してみるのさ。しかし、なんだな。こういう反応を見るに、ソーマもやっぱ神なんだなって。

 

 

ラジルカ・アーデ

Lv.2

力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:I0

工芸:I

 

 

こうしてアタシは【ランクアップ】を果たした。この判断が吉と出るか凶と出るかは未来のアタシが判断するだろうさ。

選んだ発展アビリティの『工芸』は詳細不明――少なくともソーマは知らないらしいが、恐らくは鍛冶や調合、彫金に神秘といった系列――美術的な価値を持つ品物を作る際に役立つのではないかと言っていた。金の成る木ってやつだな。【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】もサムズアップしてるから正解なんだろう。

でもこの場合は戦闘に役立つ効果を付与なんだろうなぁ。工芸品……壺……背中、トド、倉庫……やべぇな夢が広がりまくりじゃねぇか。トドは投げて割って中身を倒す方を優先で。

他にも狩人やら対異常やらの定番が候補にあったが、一度勝った相手に優位性(マウント)示す(取る)のって小物っぽいし、状態異常はアクセサリーや薬品で対応予定だし、神秘や調合も候補にいたけど……スキルとの違いが成長方法の差だけならば、発展アビリティなどフヨウラ! てなわけで残ったのはレア感の溢れる『工芸』に。じゃあこれはスキルに含まれてないのかって思ったけど、どうにも我がファーストスキル殿は戦闘一辺倒なクラフトスキルのセットっぽいので含まれていないような気がしなくもないかもしれない。じゃあ壺は実現不可能なのか……いや、奇跡は起こすものだってばっちゃが言ってた。目指せそっち方面の偉業。でも賢者の石作ってもLv.4なんだよな。果てない。

しかしそうなるとどうして発現できたのか、なんだが、思えばポーション一つ取っても試験管は割れにくい石英ガラス製。しかも他のハイポやエリクサーモドキと間違わないよう薬品名の略称を色ガラスの模様で書いてた。ダマスカス鋼なんかも特徴的な木目調の紋様入ってて工芸品としても通用する。知らず戦闘用に作ってきた品々が熟練の技術を要する美術品としての側面を持っていたわけだ。

まぁ、単純な工芸品の場合はスキルの恩恵に預かれないとかだと製造するための設備や技術が必要になって宝の持ち腐れになりそうなんだが。【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】の進化に期待しよう……戦闘用でもあれば問題なく取り込める? あら、そう。

 

 

 

で、ギルドに対する報告義務があるからギルドのお姉さんに伝えたら、これまでの歩みをまとめる系のお仕事が追加された。思い出しながら書いて提出したんだが、目を通したお姉さんには物凄い怪訝な顔をされた。

まぁ自分から頼んだ監視(パーティー)振り切っ(無視し)て、単独でダンジョン中層まで潜って、途中でインファント・ドラゴン狩って、最後に爆発物を使って群れを爆殺した。とかどう贔屓目に見ても危険人物だからな。

つーか普段の内容的にも食料庫(パントリー)殲滅とか一般的な冒険者からは離れてるからなぁ。こっちは事前に監視役(アストレア・ファミリア)の報告で把握してたはずだし、先輩冒険者の言葉を信じるなら技巧が並外れてるらしいし。絶対的な差であるはずのレベルを覆す手段を持っているなんてのは他の連中と比べて圧倒的と言えなくもない有利な点(アドバンテージ)を持ってるに等しいわけで、真似できる範囲にはないんだし。

 

「それじゃ、今後ともよろしく」

「えぇ、多少は落ち着いて下さるとこちらとしても助かるのですが」

「それができたら冒険者やってねーッスわ」

 

背を向けて手を振りながらその場を去る。一度はやってみたかったムーブである。惜しむらくはパルゥムなので背伸びしてる子供感が半端ないところか。

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