そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
オラリオにバニー旋風を巻き起こした十五夜が過ぎて約二週間、アタシとリリは完全休養日という事で大聖樹見習いの下に繰り出し栗拾いをしていた。
何を隠そう、おせちの準備である。きんとんにするためのサツマイモは既に掘り終わってる。そして葉と茎は天ぷらにして食った。いやまぁ芋も結構な量を天ぷらにしたり焼き芋やらクリームシチューやら芋けんぴやら本命の芋餡やらにしたが。
なんならヘスティアは焼き芋にドハマりしてる。ガスの心配がないからって食いすぎてるが、太りもしねぇからなぁ。
「さて、拾い終わったか。そろそろ切り上げるぞー」
「わかりました。お姉ちゃん」
大聖樹見習いが気合で結実させた栗は、高さ160
作業するのがアタシとリリの二人だけでも、どちらも『
「えー、それでは第一回『二百話に相応しい内容決定会議』を開催します。司会進行はアタシ、実況解説は愛しいリリでお送りします。よろしくお願いします」
「お姉ちゃん、最初の一行で落とすのは手抜きではないかとリリは疑問に思うのですが」
恐ろしく速いツッコミ、アタシじゃなかったら言葉に詰まってるね。
はい、そんなわけで一仕事終えたし、午後はお休み。折角なんでちょっと焚き火で焼き栗を作りながらメタい話でもしようかって事になったわけだぁな。いや、なんでさ。
「よくぞ言ってくれた愛しいリリ。アタシとしても本当ならいい感じのIF話でも、と思ったんだがな」
「何か問題が?」
「原作に喧嘩売るならどのタイミングが一番良いか悩ましいンよ」
これに尽きる。各種物語の始まりに合わせるか、途中のおいしいタイミングで乱入するか。あるいはあえての平穏な一瞬をかき乱すのもありだろう。はて、少しくらい穏当に済ます気はないんだろうかアタシは。
「なるほど。わかりやすいのは原作ベル様がアイズちゃんにフォーリンラブするミノタウロス事件や【ロキ・ファミリア】が初めて極彩色モンスターと遭遇した遠征、あるいは七年前や十五年前も候補でしょうか」
「なんならもっと前のアルゴノゥトやフィアナ騎士団、いっそ三千年前でチート爆盛エピメテウス爆誕させて漆黒モンスターでも物足りないから大穴も制覇とか見てェのよ」
「あ、最後のすごく見たいです。さておき、全部やるのではいけないのですか、お姉ちゃん?」
三千年前の時点で
「どれも展開としてはワンパターンになりそうでなァ。候補を絞りてェのよ」
「あぁ……基本的にモンスターや私欲に塗れた悪人を力で黙らせて、今後は自力で暮らしていけるようにと補填をするだけですもんね」
「だべ? なンかもう定型文の細かいところだけ変えた詩か何かになりそうで嫌なンよ」
「それはそれでやはり一度だけなら見てみたいですね」
どうにも残ってる人類の歴史を振り返ってもモンスターに蹂躙されてるのがメインだからなぁ。もうどうしようもないくらい暴力が価値を持ちすぎるんだわ。
そこへ極たまーに天界の喧嘩で落としたとか気紛れに投下してみたとかで神授物が下界へドーン、手に入れた人間が調子に乗っては自浄作用で失敗して、精霊やらを送ったらそれなりに見れるようなのが出てきて、段々と下界の人間が娯楽足り得そうだって口コミでじわじわ広がってたところにアルバートがズバーンで一気にバズって降臨開始だろ。うーん、やっぱ神とかろくでもねぇな!
まぁそんなわけでどこに介入してもモンスター掃討しましたー人類助かって喜びましたーこれから頑張って盛り立てていこうー、で話の流れが固定なんだわ。マジで名詞を変えるだけでどの時代にも通ずるあらすじになるんよ。
「ンな事するくれーなら犬のおまわりさんを元にした猥歌、犬のおさわりマンを大声で音程外しながら歌うね」
「やめて下さい。法律が変わった都合で著作権がまだ生きてるんですから」
「リリもすっかり向こうの知識に汚染されてンなァ」
「そこはお姉ちゃん色に染まったと言って下さい」
「あら情熱的」
まぁ候補としては三千年前のエピメテウスを魔改造だな。時間を飛ばしながら見守り要所要所で手伝いして、本来なら天の炎が通じなかった漆黒モンスターも薙ぎ倒して大穴も攻略させる。途中から漆黒モンスターしか生まれないクソゲーになりそうだが、さてはて。
「ときにですね、お姉ちゃん。シル様のお料理教室再びとかで良いのでは?」
「あれか……」
「リリが振っておきながら何ですが、嫌な事件でしたね……」
思い出すのは、十五夜でやらかしたらしいシルの矯正をするために行った現状確認。
レシピ通りにしっかり作れるようになったなら後はもうアレンジに走っても問題ない……と、そう考えての合格だった。だが奴は……弾けた。
「お題デザートで迷いなく
「ですがイカの塩辛ではなく隣の
「様子見だな」
「お姉ちゃんも大概じゃないですか」
「世の中にはわさび味のチョコレートもあるんだよ。好みは分かれるとしても」
「それでもタコの部分がどうにもならないと思います」
「ふむ、そういう意味じゃ塩辛を洗ってナタデココ代わりにするとかなら意外と……?」
「デザートとはいったい……」
わからない。アタシたちは雰囲気でデザートを開発している。いや実際、味のイメージを作って確かめて修正しての繰り返しだからな、基本は。
「思ったよりも決まりませんね」
「だなァ。もう一声欲しいっつーか、決め手に欠ける感じあンな」
「いっそアイデアを混ぜるのはどうでしょう?」
「混ぜる……三千年前のオリンピアでシルが料理してエピメテウスを食中りで殺すのか……」
自分で言っといてなんだが、喜劇なのか悲劇なのかわかんねぇなこれ。
「いえ、そこは穢れた炎に焚べましょう」
「んっふ、余りのマズさに負の感情も
いかん、想像したら完全にギャグなんだが。いっそプロメテウスもエピメテウスも試食に巻き込まれて纏めて倒れて欲しい。天に還らん程度に抑えて、な。
「どうしましょうお姉ちゃん。考えてみるとギャンブルではありますけど、そこまで分の悪い賭けでもない気がしてきました。派閥大戦に挑む原作リリ程の悲壮感を感じられません」
「それ単に感覚麻痺してねェか?」
「ではまず第一候補と言う事で」
「決まりなンか」
原作の派閥大戦は完全にオッタルが飛び抜けた頂点で、幹部のLv.6もそれぞれ対抗できる同格すら少ないって戦力不足がなぁ。クラフトチートやれそうな【
実質的な指揮官のリリルカ・アーデはそりゃ胃が痛かっただろうし常に吐きそうだったろうな。ベルを失いたくないだけに【
いうてロキ派が参戦してたらフレイヤ派の油断が消えて最初から最後まで蹂躙して逆に負けてた気もするんよね。なんつーか、まず対ロキ派の構図が邪魔だからロキ派の主力を全滅させるまで白エルフ寝返り起きなそう。その分だけ黒エルフの消耗が激しくて説得される事もなく退場……いや、なんだかんだ【
【
それに本来の根性見せた連中もロキ派がいるからって楽観から凡ミスして脱落しそうだし、魔剣も使い切る事なくまとめて退場されたら敵が減らず味方が減りで神を守る戦力が足らんのよな。
なんならオッタルもベルの鍛錬中にアイズ辺りが横槍入れたせいでちょっと加減間違えちゃったり、ベルがアイズを庇って死亡とか二重の意味でフレイヤの脳を破壊しかねん。もちろんその場でフレイヤ自己送還からフレイヤ派発狂で大戦終了、戦力不足で黒竜倒せませんでダンまち完。
まぁそんな
二十世紀末のSTGみたいな絶望的な背景いいよね。いや二十一世紀のSTGも素敵だけどさ。
つーか原作は大戦に勝利したけどフレイヤが表向きは追放されてフレイヤ派の戦力が据え置きになって、ロキ派は最古参三名が【ランクアップ】してLv.7になったが……いや黒竜に全然届かんやろこれ。どうすんだよ。フェルズの作る賢者の石っぽいのは生成時間が足りずに不完全な状態で使う羽目になってお役立ち度は映画版ナウシカの巨神兵くらいだぞきっと。
あるいはゼウス・ヘラの連合がボロ負けしたって情報がオラリオを奮起させるための嘘で本当は善戦してて、追い詰めたが故にアルバート時代に取り込んだアリアが乗っ取り返せたけど勢い余って穢れた精霊化してペルソナ覚醒イベント並に初回限定の大暴走したから敗走したのが真相でしたみたいなちゃぶ台返しなきゃ無理だろ。
うーむ考え始めたらめっちゃ気になる。まさか原作に劇場版のアンタレスとアルテミスやオリンピア挟んでヘスティア・ナイフを神殺しの武器に昇華させつつエピメテウスを止めて世界を救う偉業達成したから
「愛しいリリはどう思うよ?」
「と、言いますと?」
「原作の今後」
「そうですね……とりあえず最後はベル様とアイズちゃんが一本の武器を二人で振って決着だと思います」
「前世リスペクトか、わかる」
「ただ、途中は全く予想できませんね。もうガンダムシリーズ終盤並の在庫処分でポンポン人が死んでいくんじゃないでしょうか。なんなら初戦で一度アイズちゃんが死んで心が折れたまま引っ張られて敗走からのいい感じな覚醒イベントを挟んで、再戦時の窮地に実は死んでませんでしたってピンチを救われて、後はウィニング・ラン……のような王道を進む気もします」
「あー、フェルズの蘇生魔法はウィーネでやったから、絶望してもらうためにも遺体が残ってないから無理って断られて、実際は死んでないからそもそも不要的なシーン挟んで?」
「なんなら黒竜に食べられて、何故か潰された側の眼窩に裸のアイズちゃんがうずくまってる宝玉っぽいのが収まってるんですよ」
「少年漫画特有の謎現象……!」
ちなみに、会話の途中から栗の焼ける香りに誘われて、いつメンが集まってきてたりする。おかげで話題にされてるけど散々な扱いを受けてるアイズがものすごいジト目でアタシらを見てるんだな、これが。まぁ、後でジャガ丸くんミルキーウェイ味を差し入れれば許してもらえると思います(慢心)。
「先生?」
「プレーン味でいいか?」
「……頂きます」
当座は凌いだな、ヨシ!
「ラジルカくん、そいつはいくらなんでも酷いぜ?」
「というか何の話? 新しいシミュレーターのミッション?」
「いんや、並行世界の話」
「ぶっ!? なん、えぇ……君、それ他所で絶対に漏らさないでくれよ?」
「ま、面倒は避けるさ」
まーVRで色んな体験してるベルからすればそういう捉え方もするか。ヘスティアへのからかいにネタバラシするがな!
案の定驚いてくれてるし、アルテミスまでもらい事故で頭を押さえてるが、コラテラル・ダメージってやつな。
「ねぇジル
「平たく言や、アタシが死ンでるとか最初からいねェとかもしもの世界群だな」
「その世界ではリリは冒険者の才能がなくて【ソーマ・ファミリア】で底辺サポーターをしてますし、ベル様はオラリオへ来るまで特に何の訓練もしてない農民です。ヘスティア様もヘファイストス様のところで怠惰に過ごしていたら追い出されてしまいベル様と奇跡の出会いを果たすまで眷族ゼロで極貧生活ですし、アイズちゃんは……あんまり変わりないですね」
「「「
リリの台詞に思わず全員が引いた……おっと、約一名ジャガ丸くんを喉に詰まらせてんな。背中を叩いて擦って……落ち着いたっぽいか。もしかしてリリってば、少しでも仲直りを早めようと狙ったりしたんか?
「まー、気になるならお望み通りシミュレーターにミッション追加しとくから確認してみればいいさ。難易度的にゃ物足りンとは思うがな」
「うーん、気になるけど何だか怖いというか、嫌な予感が」
「ボクは見ないぞ! 誰が好き好んで自分の落ちぶれた姿なんて見たいもんかい!」
「天界」
「よすんだ」
「神威全開で言う事じゃねェだろ。アルテミスが呆れてンぞ」
と、いうわけで。後日になってシミュレーターに原作ベル体験ミッションが追加された。基本的にはベルの立場になるか、架空の助っ人枠での参加だ。
言うまでもなく今のアタシらじゃヌルゲーになるが、自分のあり得た姿は考えさせられるんでねーかなー、と。
なお、派閥大戦にワクワクしてたら敵の強さが最大でもLv.7なせいで鎧袖一触して終わったベルは肩を落としてた。
アイズが助っ人枠で大戦に参加したらロキ派の参戦に応じてフレイヤ派がバフ盛りバーサーカーになったが、それでも現在めでたくLv.7かつアリアとの契約で風の出力が上がってるアイズの相手はオッタル以外には務まらなかった。むしろ務まるオッタルがおかしい。Lv.8目前偉業待ちは伊達じゃなかったようだ。それでも全然足りない黒竜怖いわぁ。
あ、会話の後は焼き栗の試食会したぞ。ホクホクして甘みもあったんで焼いてない分も期待が高まったよね。栗とカボチャとさつまいもは秋スイーツの定番だし、なんなら栗以外はそこそこ日持ちするから冬まで食い込むくらいだが。栗も甘露煮にして瓶詰め保存せんとな。
通算二百話ですが、間にステイタスを挟んでいるので実質次回が二百話。第一候補にされてしまった三千年前エピメテウスの運命やいかに。
ステイタスも
アニメ見れてません!