そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

201 / 202
Ex26.のんびりしました。スマイル下さい。

ハロウィン、それは仮装した子供集団がトリトリ言いながらお菓子を求め練り歩くイベントである。嘘。

 

「いやまァなンかそれなりに歴史のあるイベントとして広く知られてるわけだが」

「単なる収穫祭と見せかけて地域ごとに謎の踊りや掛け声を合わせた奇祭として成立してますもんね」

「ゾンビやら吸血鬼やらで感染爆発(パンデミック)起きてみたりな。退屈しねェよ毎年」

 

この時期は女神祭があるから大騒ぎする機会はあるはずなんだが、どうしてか仮装(コスプレ)部分がピックアップされて独立した行事として成立してる。まぁ、超越存在(ゆかいはん)共の仕業だとは思う。

そう考えると、先月オラリオで開いたバニー限定のコスプレ祭は割と低い確率が通ったんだろうか。半分くらいは男共の助平心に助けられたんだろうって予想はできるがな。むしろ女側の助平心やら死なば諸共精神やらで一部男性もバニー姿だったわけだし。線が細い男神の脚線美に敗北感を味わった女性は多かったそうな。なんならパッドで盛った胸にすら打ちひしがれてたとか。色々と度し難いぞオラリオ。

そういや助平心で思い出したが、アタシの知らん場所でバニーダンスとか言って元気良くぴょんぴょん跳ね回る軽快な踊りが爆誕してたらしいんよね。バニーコスで跳ね回ってポロリを狙った男神連中が考え出したらしくて、風紀を乱すとガネーシャ派に引っ捕らえられたとか、その前にエルフ達から私刑に遭ったとか、そんな報告が上がってきてたのは記憶に新しい。

 

「お姉ちゃんは女神祭に配慮して今まで介入してませんでしたよね?」

「まーな。ついでに今後もそうだろうさ」

 

何しろ女神祭の食べ放題プランで食いすぎた連中が節制を心がける(ダイエットにチャレンジする)時期だからな。食い物系はスイーツだろうと伸びが悪い。

その意味じゃ、十五夜はタイミングが女神祭どころか挽歌祭(エレジア)よりも前だから成功した部分もあると思う。

 

「あれ、では今回は?」

かぼちゃ系統(パンプキーン)のお菓子を豊穣の女主人に納品するくれェで基本的には干渉せンぞ。年に何度かは徹頭徹尾参加者側でいてもいいだろ」

 

なお納品は半分くらいが黒猫魔女(リュー)羞恥心(おもいで)煽る(ひきだす)悪戯目的である。おらっ、テメーも開き直った感じにニャーって鳴け!

ちな、実際にそんな台詞を吐こうもんなら妄想力高めなアホ猫(アーニャ)から捨てないでって泣きつかれそうなんで口にはできなかったり。事故(トラブル)は未然に防ぐもの。だがMODで差し替えられがちな機関車も事故は起きると仰ってるんで覚悟だけはしておくべきだろう。いやなんの覚悟よ?

 

「なるほど……つまりデートですね?」

「おン?」

 

言ってるそばから事故が起きた件。

 

 

 

 

 

「と、いうわけでデート当日ですよお姉ちゃん!」

「アタシの記憶が確かならジューンブライドをキメて一妻多妻とかいう意味不明な関係なはずなンだが」

 

しかも正妻が実妹という事実が全周を囲ってどう目を逸らせばいいのかわからん状況っていうね。

なお正妻の決め手になった理由が『同じ派閥だから』な部分にはオラリオ味を感じなくもなかったりする。繁殖には関係せずとも最初から同じ親の神血(イコル)を練り込まれてる血縁同士って考えたら十分に爛れてるよな眷族同士の婚姻。まぁ他の面子もロキ派、一応フレイヤ派、イシュタル派で順位付けすると主神(モンペ)が出張ってくる未来しか見えんのもあるが。

 

「チッチッチッ、男女が待ち合わせして一緒の時間を過ごすなら、それはいつだってデートなのニャ」

「男いねーよ」

 

とはいえ実際問題、気が付いたら外堀が埋まってたというか不意打ちで挙式(セレモニ)ったからな。一足飛びかつ非常識な関係ではあるが、間をすっ飛ばして思い出が不足してる部分に関しちゃ扶養者として軽く負い目な感じがあるんよね。

流石にダンジョン潜るのをデートとは言いたかねーし、人生に彩りをって考えたらデートの一つや二つは付き合ってやるかって気分にもなるよね。なるもんだろうか。うーむ、よぐわがんね。

女神祭は例の如くシルとしてベルとのデートをしたいからってヘルンに女神役(しゅやく)を押し付けて、その上でリューを誘ってシェアする作戦を立てて、それをフレイヤ派が見守ってたせいで街中が剣呑な雰囲気を醸し出してなぁ。

 

「先生、あれ買って」

 

なんて過去を振り返ってたら袖を引っ張られた。

思うんだが、出会った当初から実はアイズの方が背は高いし途中から気軽に人を犬猫みてぇに担ぎ上げるのに、頼み事するときだけ袖を引っ張ってくるのはなんでなんだ。

そんでアイズの言う『あれ』を確認すれば、そこには案の定と言うべきか安定のジャガ丸くんの屋台。そしてデカデカとのぼりに書かれて宣伝されている期間限定パンプキーン味の文字。いやそれ単なるかぼちゃコロッケじゃん、挽肉は入ってないタイプの。しかも女神祭で期間限定のパンプキン味やってたよな。パンプキーンとパンプキンって何が違うんだ。全然わからない、アタシ達は雰囲気で名を決めている。

 

「……まァ、大きく外れる事はねェか。おばちゃん、五つくれ」

「あいよー。だけどいいのかい? 五つじゃいつものお嬢ちゃんだけで食い尽くしちまうよ?」

 

振り向けば、真剣な表情で力強く頷きを返すアイズ。シリアスの無駄遣いが酷ぇ。

 

「……もう五つ追加で」

「まいどあり」

 

そんなわけでアイズに半ダース、その他に一個ずつで分け合った。どうせなら家族サービスで恋人がやるような食べさせ合いをするもありなのでは、なんて思ったものの、複数人相手にするのは絵面が間抜けすぎると思い直したよね。

 

「お姉ちゃん、リリのジャガ丸くんを一口あげるのでお姉ちゃんのジャガ丸くんを一口下さい!」

「あざとすぎるぞ愛しいリリ」

 

却下した直後に向こうから切り出してきやがったよ。しかも弾けんばかりに鮮度抜群で瑞々しい笑みを浮かべながら。うーん、守りたい、この笑顔。

それはそれとして同じ味なんだよなぁ。せめてプレーンなジャガ丸くんも買っておけば不自然さは少なくなってたように思うんだが。

 

「し、仕方ねーニャ。ミャーのも一口やるから代わりにおミャーのを一口寄越すニャ」

「ホラ見ろアホが釣れたじゃねェか」

「はわわわ……そのように大胆な行為が!? いえ、ですがよくよく考えれば私達は既にあれ以上の事をした仲……はふん」

「この往来で気絶すンなよー」

 

アーニャが便乗し、春姫が妄想を膨らませて意識を飛ばしかける。いつもの流れではあるが、同じ味の食い物をシェアとか狂気の沙汰でしかない行為を当たり前に受け入れてるコイツらの頭は大丈夫なんだろうか。アイズを見ろ、黙々と自分のジャガ丸くんを貪ってるぞ。しかも既に最後の一個を半分以上。

 

――ネキは今日もモテモテっすね!

――モテる……モテてしまう……

――オイコラ面倒が嫌いな人

――はい(光が逆流しそうな声)

 

倉庫内からの野次も飛んでくるし、なんつーか、密度が高い。そりゃ思わず溜息も出るって話なんよ。

 

「先生」

「あァ?」

「食べないなら、ちょうだい?」

「変化球で来たかー」

 

このあと滅茶苦茶食べさせ合い(あーん)した。なんかこの言い方だと性的な事を致したみてぇだぁな? まだ日は高いぞ。いや夜になろうと公衆の面前じゃ慎むべきだが。アタシは【象神の杖(アンクーシャ)】に睨まれたくないんだ、色んな意味で。

 

 

 

「「あ」」

 

街中を練り歩いていたら、デート中のベル(メイド)達と遭遇した。ぶっちゃけるまでもなく女装ベルとかほぼ短髪にした姉御なんだが大丈夫かコレ。

連れてるのはシル(ゴースト)リュー(マミー)だけだが、代わりに両方の腕に抱き着かれている両手に花状態だ。事前に聞いた話だと時間を決めてそれぞれ別の面子で回るらしい。忙しそうで大変な。

まだ誰とも結婚してないが、だからこそ女性陣は独占したい部分もあって自分達だけの時間を欲してるんだそうな。その割にシルとリュー、アーディとティオナ、ヘスティアとアルテミスみてぇにペアが多いわけだが。その意味じゃ【悲観者(ミラビリス)】は【月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)】が恋愛に興味薄いから一人あぶれて大変そう。今回もベルとのデートはしないでナァーザがミアハを引きずり回してる間は店番して、戻ったら女二人で街を巡るらしい。クロエはライバルが多いからこっそり尻を堪能する程度に考えてるらしいが、果たしてシルを出し抜けるんだろうか。まぁ、どうでもいい話か。

つーか人数多くて大変よな、ベルも。変なスキル生える程度には苦労してるっぽいし。当時はあんまりに不憫だったから栄養剤の差し入れしたけど、逆効果だったかもしれんって気を揉んだくれぇだかんなぁ。

 

「ま、そういうこった。じゃあな」

「どういう事!?」

 

向こうは時間制限ありなんで引き留めるとシルに恨まれそうだし、軽く流してベル達とは別の方向へ歩いていく。

基本的には仮装して街の様子を眺めつつ屋台を冷やかすだけなんだが、まぁ屋台も輪投げの輪がフラフープ並に大きくて標的がどでカボチャ大会にでもエントリーするのかってくらいデカかったり独自色を出そうと頑張ってるんでそれなりに楽しめるんでねーかな。今更だが本家の神がなんで(カブ)じゃないんだよってキレたりせんのだろうか。それこそもう千年前に通った道だから今更の話なんだろうかね、知らんけど。

ちな、今回の仮装はリリがツギハギ系ゾンビでアイズが吸血鬼、アーニャが着物姿な猫又で春姫が実質普段と変わらん恰好な九尾の狐だ。いずれの衣装も例の如く深層素材をふんだんに使った高級品で、このままダンジョンに突っ込んでも問題ない装備品として機能する。獣人二人が単なる着替えで済んでるような気もするが、アーニャは尾を増やす部分にアタシの製作した薬品を使ってるんで見た目以上に覚悟は決まってたりする。なんなら春姫は【ココノエ】を待機状態で保ってるんで滅茶苦茶に高度な技術を用いてると言って良い。自前以外の非実体で揺らめく熱くない炎のような八本は幻想的だ。ガネーシャ派やギルドに叱られないかビクビクしながらの行軍だがな!

 

「へぶっ!?」

「お? 悪ぃニャ」

「アーニャ様、気を付けてください」

「わーってるニャ、でもこんな長い尻尾してる方が悪いニャ」

「それはリリも同感ですが」

 

はい、怪獣(ゴ○ラ)のきぐるみでコスプレしてたら尻尾を踏まれました。おのれ、とある資料じゃ数いる怪獣達の尻尾攻撃の中では最強とか言われてたり、切断されても自立して光の巨人に一矢報いた由緒ある尻尾だぞ。あれ、逆に言えば千切れてもいいのか? ギミック仕込まなかったのはアタシの発想が足らんかったか。

本来ならここで「怪獣王だと思った? 残念! ゴモたんでした!」とか言うべきかもしれんが、キャラじゃねぇから無理っすわ。そういうのが似合いそうなのは天真爛漫に言ってのけそうな【象神の詩(ヴィヤーサ)】とかドヤ顔してそうなアリーゼだな。

前者はベルハーレム入りしてるっぽいが、後者……そもそもアストレア派は男っ気がねぇから割と心配なんよなぁ。本気でリューがベルくらい。ライラは前から【勇者(ブレイバー)】どうこう言ってるが、あれは憧れ半分な感じあるからなぁ。最近は都市外を中心に回ってるせいもあって本気度がわからん。商人経由で入ってくる情報だと、剣製都市(ゾーリンゲン)を拠点にしちゃいるが基本的に各地を回ってるから縁を育む機会がなさそうなんだとか。年齢的には同年代……よりちょっと上なんだよな、この夢じゃ。『神の恩恵(ファルナ)』の影響もあるし晩婚でも問題は少なそうなのがせめてもの救いか?

それこそ眷族だから、強いから平気だろって舐め腐った考え方してる愚民共の相手で疲れてるところをベルみてぇになよっとしてるが優しい男に引っかかるくらいしねぇのかな。しねぇんだろうな。文通とか面倒に思いそうだし、結局は住む世界が違うなら余程じゃねぇと続かんか。

何が怖いって、妥協して性転換薬に走りそうなところなんだよね。輝夜はあれで出産願望持ちだったはずだし、他の面子もこの際だからって手近な相手で済ませるとしたら……アリーゼ枯れるんじゃね? 親近感湧くわぁ。

 

しかしまぁハロウィンらしさを感じる事件とか起きねぇなぁ。フェルズや『異端児(ゼノス)』が暴走したりしないもんか。あるいはダンジョンに迷宮南瓜が大量発生したり、モンスターがコスプレしてたり?

まーダンジョンの意思にモンスターの見た目や種類を季節イベント用にアレンジできんか聞いたけど、運営がカツカツだから無理らしいし。もっとたくさんの優秀な冒険者がダンジョン内で死んでくれると助かるらしいが、さすがにそんなおふざけのために上級冒険者を謀殺するような真似もできんからなぁ。自然発生する身の程をわきまえない三下の不幸な事故で我慢してもろて。

 

 

『ネキっち! 助けてくれ!』

 

とか思ってたらリドからヘルプが届いた。フェルズから強請った眼晶(オクルス)経由で。どうやら事件は会議室(オラリオ)じゃなく現場(ダンジョン)で起きてたらしい。

 

『見つけましタよ、リド!』

『げぇーっ!?』

『リド、ちゃんと着替えなきゃダメ!』

 

まぁ、何かが間違って伝わったらしく仮装は人間かつ異性の格好をするものだって『異端児(ゼノス)』達の間では信じられてて、女装を拒否した性自認含めて雄な連中が逃げ回ってるって心底アホらしい事件だったんだが。ちょうど女装ベルを見た後だから勘違いとは言い切れない感があって無駄に気まずいのは内緒。

 

『リド……諦メロ』

『グロスゥゥゥゥ!?』

 

ちなみにレイが持っていたリド用の衣装はスケスケで布面積が小さい踊り子っぽい服だった。破壊力が高い。そして疲れ果てた声を出すグロスは既に全身がリボンだらけでフリフリなドレス姿。ヘッドドレスも完備な辺りにこだわりを感じなくもない。

どっちもアタシ製じゃないのは確かなんで、多分ラーニェとかの『異端児(ゼノス)』が自作したんだろうなぁ。デザインの独創性は合わせる種族の都合で自動的にクリアしてるし、染色も上手くできてる。人間相手に作るかは微妙なところだが、余裕で金取れる作品だな。

そんで追手のレイはシルクハットとタキシードにモノクルで紳士然とした格好だったが、ウィーネは何故か葵の紋が入った長裃姿だった。ちょんまげのかつらとかどっからアイデア仕入れたんだろうか。

つーかダンジョン内で動きを制限するような恰好はどうなんだ。ウィーネだぞ、めっちゃ自爆し(ころび)そうなんだが。後からでも転ばぬ先の杖みたいな魔道具(マジックアイテム)作って渡そうかな。

そんな感じで他の『異端児(ゼノス)』も軒並み女装または男装してる中、アルルだけはほぼ普段通りの格好でどことなく寂しそうだったのが印象に残った。後でベルに慰めさせよう。

あと推定フェルズが某大墳墓(ナザリック)の主になってたけど、そっちはスルーしといた。夢だからって何でもありだと思うなよ。ただでさえ創作世界とはいえリアル環境の悲惨さに何の対策も打ち出さず文明の恩恵を享受してる過去の日本人として思うところがないわけじゃないキャラなのに、未使用のまま男性の象徴(○ン○○)を失って異世界転移した非業の男やぞ。いやまぁ世界線(スピンオフ)次第じゃログから再現された自分をPCだと思ってるAIとかの可能性もありそうだが。

 

最終的にリドは踊り子装備になり、みんなに笑顔をお届けしていた。オラリオは今日も平和である。

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