そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

28 / 202
28.仕様書来ました。出てって下さい

作業場兼住居になる空間を整え終わり、こっそり壁からオリハルコンやアダマンタイトをちょろまかして装備を強化し、意外と順調な滑り出しの闇派閥(イヴィルス)生活。でもまぁ、世の中そんな上手くはいかないもので。

 

「仕様書できたよー」

「おー、どれ、見してみ……普通だな」

 

渡された羊皮紙に書かれた要求は至ってシンプル。爆炸薬(バースト・オイル)と同程度の、想像していたよりも随分と大人(慎ま)しい威力をした爆弾だった。いやまぁ中層のモンスターくらいなら一発で葬れるってことで、大半の人間相手なら十分だが。でも割と範囲狭いんよこれ。あくまで単体攻撃。試験管一本と考えれば上等か。爆弾にすると標的へ中ダメージ周囲に小ダメージみたいな感じ。

因みに火炎石を使う発想は闇派閥(イヴィルス)としても持っていたらしく、そちらで使うので回せないときた。完成品も見せてもらったが、威力はあるし構造も使い方も非常にシンプルなもので、だからこそ正直もったいないと思った。言わないけど。

 

「それはそう。誰でも扱えるんじゃなきゃ意味ないし。普通じゃないと扱えないよ一般人は」

「一般人?」

 

邪神の発言に首を傾げて聞き返す。家族を人質にでも取ったか? だとしたらワンパターンすぎて呆れるが、効果があってコスパもいいとなれば多用もするか。相手(ギルド)民の味方(感情への配慮)を崩せないしな。

 

「そ、信奉者って言ってね。今もせっせとタナトスが――」

「ここが爆弾作る奴の居場所かぁ?」

 

おっとここで説明キャンセル。しかし信奉者かー響き的に狂信者の仲間だよな。タナトスって聖剣2のケチャだっけ。自爆テロ待ったなしな感じだな。そりゃ良い子ちゃんのアーディが死ぬわけだ。グレッグみたいなパターンで子供を保護しようとしてやられるんだろうな。目の前で自爆されたら生き延びても呆然としてる所をサクッと狩られて遺言の一つも残せなそう。

なんて現実逃避してたが、闖入者の姿を確認しよう。くすんだピンク……薄紅色の髪をした凶悪な風貌のヒューマン。ギルドのブラックリストにも載っている特徴を備えた最上級の危険人物。

 

「ヴァレッタちゃん。いらっしゃい」

「あん? なんだいたのか」

「ひ、酷い……およよ」

「んで? てめえが例の魔道具制作者(アイテムメイカー)か。はっ、陰気臭ぇ面してやがるぜ」

「【殺帝(アラクニア)】……」

「おーおー、良くできまちた。十歳って聞いてたが大人びた眼をしてやがるじゃねぇかよ」

「用件は? 爆弾なら仕様書届いたばっかで作ってねェぞ」

「んなもんこの私が必要とするわけねぇだろうが。群れるだけの弱ぇ奴らに使わせるんだよそれは」

 

目的が読めない。パッと見めっちゃ短気で気紛れそうだから下手な反応すると癇癪起こしそうで面倒なんだよな。その癖強さは上等(Lv.5)だから引き際は見誤らない程度の理性を常に残してる。あるいは、逆境を切り抜ける悪運。強い小物って厄介よな。

しかし、爆弾に興味ないなら目的はアタシ自身か? あるいはもっと面白い玩具とか言って頭悪い性能の何かを作らせようとしてるのか。

 

「まぁ、良い感じに淀んだ眼をしてるしな。目的は済んだ。後は~」

「……チッ」

「へえ! 反応も中々……【ランクアップ】し(殻を破っ)たばっかりでLv.2(尻についたまま)って話だったが」

 

仕掛けては来ると思っちゃいたから反応できたが、殺気をほとんど感じなかった。本当に、今日の天気を話すみてーに相手を害せるタイプ。生粋のシリアルキラーだわこいつ。

試す目的よりは傷つけて脅すつもりだったんじゃないかとは思うが、つい防いじまった。札を暴かれたなー失敗、失敗。

 

「ちょ、ちょちょちょ、ヴァレッタちゃんってば! 何してんのさ機嫌損ねたら爆弾作ってもらえないじゃん!?」

「馬っ鹿じゃねーの。せっかくの人質なんだからいくらでも脅して従わせるだろうがよー普通。パルゥムのLv.2ごときだぜ?」

 

凹まされてた邪神が再起動してヴァレッタに食いかかったが、当然のように聞き入れられそうにない。つーか、だ。

 

「あのねぇ。俺の見つけてきた子よ? 横から奪おうってんなら――」

「おい」

「あん? 雑魚(てめえ)は黙って――」

「ぶべらっ!?」

「――ろ?」

 

会話する二人に割って入ると、ヴァレッタが不機嫌そうな声を上げる。が、テメーじゃねぇのよ。ということで邪神をぶん殴る。なんでかヴァレッタがあんぐり口開けて驚いてるけど、まさかこいつこれで神には遠慮するタイプか? 邪神神質作戦が現実味帯びてきたな。

 

「アタシが話してたンだよ横から入るなン億歳児」

「ひ、酷い。助けに入ったのに」

「マナーの問題だっつってンだろ髪剃り上げて額に肉って書くぞ?」

「止めてよ! え、何で? 俺が悪いのこれ!?」

 

悪いに決まってる。何が悪いって、こいつ愛しいリリを拐ったって事はだよ? リリに触れたんだぞ。許せねぇよなぁ、許せるわけねぇよなぁ!

というわけで殴るタイミングをうかがってたところにナイスタイミングでいかにもなお客様が来たわけだ。スッキリしたので未だに固まってるヴァレッタには舌出してウィンクしながらサムズアップ送っといた。硬直は解けたが気持ち引かれた感じがする。解せぬ。

 

「こいつ本当に人質盾にしなくて大丈夫なのか? いつかマジで殺されるぞ神様よぉ」

「はは、今こうして生きてるって事はなんだかんだ手加減してくれてるからね。少し過激なスキンシップと思えばふぉっ」

「……あれ?」

「えぇ……」

 

スキンシップとかリリに触れた禁忌(殴られた理由)を蒸し返すような事を口にしたせいか、アタシは気づけば邪神の顎を擦るように拳を振るっていた。気のせいじゃなかったら今、音のが後に起こらなかったか?

笑顔のまま首を強制的に傾けられながら崩れ落ちる邪神と、不思議そうに自分の拳を眺めるアタシを交互に見比べて、ヴァレッタは得体の知れない物を見る目をして疑問のような呻き声を漏らしていたらしい。

でもってこれだけやられても無言を貫いたままそっと邪神の体を支えて横たえるだけの護衛さんマジプロフェッショナル。

 

 

 

「いやぁ、酷い目にあった」

 

復活して状況の確認を終えた邪神の第一声がこれである。地味に器デカいな。なんで邪神やってんのこいつ。

ヴァレッタは要件済ませたって行ってたのもあって帰ってった。なんか釘刺してったっぽいんだけど、負け惜しみに聞こえて笑うの我慢してたわ。それが怯えてる風に見えたらしくて満足そうにニヤついてったのが最高に滑稽だったわー。あれがLv.5とか冗談止めてくれ。しかも確か参謀なんだろ? 自分の信じたいもんだけ信じるとかアカンやん実際の戦闘以外アドリブめっちゃ下手そう。不測の事態(イレギュラー)起きたらめっちゃキレ散らかして仲間に憂さ晴らししてるぞあれ系は。なんつーの、占いの結果に一喜一憂する一般人感が半端ない。

 

「いやでもなーこんな酷い目に遭ったんだから謝罪の一つも欲しいなーチラッ、チラッ」

「めんご」

「三文字ぃ! ぐっ、だが俺は負けない。ゴホン、あー真顔で棒読みじゃなかったら謝罪を受け入れるのもやぶさかじゃなかったんだけどな~。真顔で棒読みじゃなかったらな~、かーっ!」

「とりあえず仕様書もらったし製作に入るぞ。ねェとは思うが火薬の状態とかで爆発しねェとも限らンからとっとと出てけ」

「扱いが雑ぅい」

「今更だろーが」

 

ソーマ印の真心たっぷりで完璧な謝罪を済ませた事だし、アタシは製作に取りかかるので邪神を追い払う。いやね、前世の記憶持ちなせいか、宿題を終わらせないままみたいな状況って気持ち悪いのよ。

大人になってたら手持ちの業務を終わらせては周りから手空いてるじゃんって仕事押し付けられて残業続きになる社畜街道爆進して、残業が多い=要領が悪い使えないって評価を受けて首切られそう。そして唐突に主力を失った会社は傾き潰れそうになり他社に吸収され、アタシは心を病むが猫を飼い部屋の様子を垂れ流すチャンネルを開設して貧乏人なりに生活できる程度には稼ぐのだ。ざまぁにしては弱いがリアル人生なんてそんなもんよ。タブンネ。

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