そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

30 / 202
30.襲撃しました。報酬下さい。

さて、そんなこんなで襲撃開始したんだが……事前説明と違って【殺帝(しきかん)】様が最前線でシャクティとアーディのコンビ相手にドンパチしちゃってるんだよなぁ。ヴァレッタっていうかバカレッドAが現れたって感じ。いやまぁシャクティ(Lv.4)相手に足留めとか来てる面子じゃ不可能なんだが。実際に近くいた面子まとめて吹き飛ばされたもんなぁ。

 

「よそ見とは余裕ですわ、ねッ!」

 

おっと。模擬戦じゃない全力で仕留めに来てる輝夜を相手にするのは初めてだが、普通に命の危機だ。身バレ防止のために認識阻害してるんだし、戦い方も多少変えなきゃないのが困る。スティレットの二刀流なんてオサレ極振りな暗殺者スタイルだからバレないとは思うが、何か言われたら弟子とか言っとけばいいか。つーかアサシンだのニンジャだのやるには敏捷足りんのよ。武器で真正面から受けたら普通に切断されたし。斬鉄だーキャッキャ。

と、いうわけで増援の【アストレア・ファミリア】相手なう。初期配置のドワーフ(アスタ)アマゾネス(イスカ)は早々に拘束した上で場外へ吹き飛んで貰ってる。一般人やギルド職員を直に襲うよりは護衛の冒険者を相手にする方が気楽なので、途切れずやって来た輝夜とライラはお手柄だ。

ちな、ライラには自働で亀甲縛りする金属製捕縛ワイヤーの詰まった(ボール)魔道具(マジックアイテム)を使ったので晒し者になってもらってる。なので後は更なる増援に気を付ける必要こそあるが、基本的には輝夜の相手だけしていられる。ちょくちょく捕縛されて転がってるライラに向けてネズミ花火ぶん投げて輝夜に庇わせてるから凌げてる感はあるので、手持ちがなくなる前に終わって、どうぞ。

 

「はははっ、今日のところはこの辺で勘弁しといてやるぜ! 次回を楽しみにしとくこった!」

「は? えっ、ヴァ、ヴァレッタ様!? くそっ、撤退、撤退だー!!」

 

そうこうしてる内に指揮官様が追い込まれるか飽きたかしたらしく撤退命令が出される。アタシとしても切り上げたかったのだが――

 

「逃がすとお思いですか?」

 

敵側の事情なんて気にしない輝夜は執拗に攻めてくる。まー今回の襲撃面子じゃ上から数えた方が早い強さだから情報源として期待できそうだし、向こうとしても手柄欲しいしで逃がしたくはないよなって。ヴァレッタからすれば自分以外は捨て駒の認識だから援護は期待できないし、ネズミ花火は尽きてガチ爆弾しか残ってないし、仕方ないから精神攻撃しておく事にする。

 

「見逃してくれるなら【芸術家(ファイアワーカー)】から預かっている伝言を残してもいいのだがな」

「はぁ? 奴は拠点を移しただけだろうに」

「……クッ、ククク、そうだったな」

 

悲報:特大のガバやらかす。やっベー完全に忘れてたわ。いや、あんだけ姉なる者(シスコン)の誇りに賭けて布教していたアタシがダンジョン篭るとか普通に考えてありえないだろ。食料庫(パントリー)で狩りするあたおかの考える事なんて分からない? それはそう。部分的にそう。

 

「自分から調べなければそんなものか。いや、違うな……その程度の仲ならば納得もいく。あぁ、ならばわざわざ聞かせてやる必要もないか」

「……そんなものは捕まえてから吐かせれば良いッ!」

 

何でもないように攻撃は続いているが、その動きは先程に比べてやや大振りになって精細を欠いていた。疲労というわけでもなし、動揺は誘えたと見て良さそうだ。

 

「ふむ、ならば報酬の押し付け(前払い)だ。勝手に置いていくとしようか」

「逃がさんと言って――」

「助けてくれなかった正義なンざ今更頼りにするわけねェだろボケが」

「――ッ!?」

「ククッ、止まったな。では――さらばだ」

 

すげーな、声真似っぽく話したのもあるかもしんねーけど時間を奪おうって止めたらみてーに一瞬で『ビタッ!』って止まった。もしやアタシはスタンド能力に目覚めた……? すぐに動きを再開したけど、まぁ煙幕取り出すくらいの隙はあったよね。中にヒント入ってるから頑張って推理して当てろよアディオス!

 

 

 

で、逃げ帰った先で門番から止められているアカウントがこちら。

 

「おっせーな。伝令やるならそれっぽい『スキル』なり『発展アビリティ』なり生やしとけや」

「いいから黙って待ってろチビがばおッ!?」

「はぁ~~~、伝言係にするから命は勘弁してやる。リヴィラにいるから用事あるならそっちから来いって伝えとけ雑魚。あとリリに何かあったらテメーら全員面白おかしい事にしてやるからな」

 

はーつっかえ。やめたら門番。リリにも会えねぇし踏んだり蹴ったりだよ全く。姿隠しは作業場だし……もしかして闇派閥(あいつら)作業場の捜索(家探し)してたりする? セキュリティ気にしてなかったからやりたい放題されるじゃん。どうすっかな。間違いなく問題が起き――地震?

小さく、しかし明らかに地面が揺れてる。しかも段々と強くなっている。日本人の記憶があるアタシからすれば大した事はないが、例えウサギ型モンスター(アルミラージ)の配色が白毛赤目で日本人特有のうさぎ概念を滲ませてたりしてもナーロッパベースなオラリオの現地民にとっては世界の終わりを告げる現象のように思えたらしく周囲は大パニックだ。

 

「あー、逃げるか」

 

まぁ、十中八九空き巣がトチって爆弾を起爆、誘爆させたんだろうな。アタシ知らねーっと。

そりゃあリリは心配だけど、それこそ爆発に巻き込まれたくない邪神共が付き添ってるはずだし、天に伸びる光(アルカナム)は見えてないから平気っしょ。外伝のタナトスは割と深くから地上までぶち抜いたわけだし。

つーかそもそも現場に入れてもらえねーし。混乱してる今なら強行ワンチャンありそうだが、どっかで邪神に神威ぶつけられたら制止というか下手したら平伏せざるを得ないからリスクが高い。放置もリスクが低いわけじゃないが、全部門番のせいにするから許せカツオ。いや、リリがカツオってわけじゃねーぞ。うん、誰への言い訳だよアタシ。微妙に混乱してるから思考停止しておくべ。

てなわけで早速ギルド寄って真正面から堂々とダンジョン潜って狩りするわ。いや待てよ。どうせなら素知らぬ顔で『星屑の庭』に行って何事も無かったかのようにポーション卸すのもありか? 駄目だ輝夜にヒント渡してるんだった。やっぱりダンジョンだな。これは運命がダンジョンへ行けと言っている。刺突剣(スティレット)なんて持ってたら冒険者連中に怪しまれるかもだし、予備も束ねてトンファーに変えとくべ。唸れ【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】アタシの『精神力(マインド)』を持っていくがいいのだー。うぇっ、胸焼けっぽい不快感が。

 

 

 

『ブゥモ!』

『グルルル……ギャウン!』

『キィー! キキッ!?』

「ハァ~心が洗われるようだぜ。オラもっと悲鳴を上げるォ!?」

『ヴモオォォォォ!?』

「ふっふっふ、っはっはっは、はーっはっはァー!!」

『キュウーン……』

『キッ、キィー』

 

狩りは楽しいなぁ! 今だけは愛しいリリの無事と安寧以外の何もかもを忘れてしまいたいんで。割と切実に。だからもっとだ、もっと()を寄越せ。あ、でも武器がトンファーしかないんで程々にお願いします。

つーか長巻はともかくダマ鞭は誰にもバレてねーんだから襲撃にも持ってきゃ良かったわ。作業場で爆発事故起こされたんならまとめてロストしただろうし。なんか【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】も気落ちした感じがあるから望み薄な気配がひしひしなんよ。そう考えるとアタシの手持ちはこのトンファー形態な少量の金属と爆弾少々だけか。爆弾分解して武器に変えるかなぁ。

 

そのまま気が済むまで食料庫(パントリー)狩りをして、アタシはあえての地上へ持っていってバベル内で換金、一部を預金した。そして食堂で食事を済ませて飲み水を購入すると、ダンジョンにトンボ返りしてまっすぐリヴィラの街へと向かう。

途中、インファント・ドラゴンと遭遇したがトンファー縛りだと割と苦戦した。なのでやはり新しい武器が欲しい。

リヴィラ行くまでにミノの革なり角なり集めて、リヴィラで鉄屑とか破損した装備買い集めて、最低でも槍を作ろう。なんならネイチャーウェポンの棍棒を加工して木槍を何本か持っておくのもありか。リューさんだって木刀で戦ってたんだしいけるいける。素材の格が圧倒的に落ちるけど使い潰し前提なら大丈夫っしょ。

つーかポーションくらい買ってくるんだったな。割と心身共に疲労がたまり気味。疲労が抜けるポーション……略してヒロポん゛んっ、これ以上はさすがにまずい。とっととリヴィラで宿屋取って【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】の最早錬成って呼んだ方が近いやつで武器作って寝落ちすんぞ。でもこんな時に限ってゴライアスの湧きとかち合ったりするんだよな。爆弾足りるかなぁ。




珍獣がいる世界だと捕まった炊き出しへの襲撃。
【アパテー・ファミリア】の壊滅という致命打を受けていないためヴァレッタの機嫌が悪くなっておらず人当たりが良く(当社比)、壊滅させたらしい珍獣への警戒もないのでラジルカへの先行命令も下されず普通に……指揮官自ら嬉々としながら率先して仕掛けた。炊き出しの護衛面子もバタフライエフェクトでネームドが配置された。
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