そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
100C……1Mちょいしかない
遠くから手伝うか声が掛かるものの、解体に手間取ったからって大した邪魔にならないんだし、関わらせたら取り分を請求してくるのは目に見えているので聞こえない振りして掘り進む。引き上げるのは面倒なので周囲の組織と切り離すと、巨体が灰に変わり浮遊感。宙に投げ出されたアタシと魔石は、灰に包まれながら落下していき、積もった灰によって受け止められた。
勝利から一転、気分は最悪である。シンデレラすげーな、継母来てからずっとこんな気分だったのか。そういや
んで、灰塗れになって超絶不機嫌なアタシはしばらく動く気にならなくて、そうこうしている内にリヴィラ組が灰に隠れて見えなくなったまま出て来ないアタシを心配して地雷の処理をしながら――といっても実際には仕掛けてなかったわけだが――駆け付けて来た。灰を掻き分けながら探してくれた面子に申し訳なさも覚えたが、まぁそんな気持ちを表に出せない状態だったんで、発見されたアタシの表情が完全に無だったらしくめちゃくちゃビビられた。いつか笑い話にできるいい思い出になるんでねーかな。
で、無事を確認されたらベシベシ叩かれたり胴上げされたり歓迎っぽいムーブをされたんだが、灰がダンジョンに吸収されていったらドロップアイテムを残していた事が分かった。まぁ、軽いお祭り騒ぎになったよね。しかし意外にもボールスが所有権はアタシにあると断言して空気を締めた。その理由としては、恐らく前代未聞な二種類のアイテムが同時ドロップした事か。
モンスターのドロップアイテムは異常発達した魔力を多く含む部位で、理論上その体を構成する部位の数だけ種類を持つ。もっとも、その多くは爪や牙、皮や鱗、翼や羽といった戦闘パラメーターに大きく関わる部位であり、例えば消化器官を残した記録のあるモンスターはほとんどいない。
そんな複数の可能性を持っているドロップアイテムだが、通常は一度に一種類だけしか残さない。仮にスキルや発展アビリティに関係ない条件で一度に複数入手できるのならば手法を聞き出したいと思うのは当然で、だからこそ下手な分け前を要求するよりも得になると考えたんだろう。他言無用で情報を売るだけでも相当な儲けが期待できるしな。条件が不明でも話し方次第じゃこんな事が起きたって情報だけでも金取れるのかも。
そんな思惑はさておき、魔石もドロップアイテムも単純にでかくてかさばる。一人で持ち運ぶのは中々に難しいので、結局はリヴィラの街で売り払うしか道はなさそうだった。正直悔しいが。滅茶苦茶悔しいが。何故この世界にはマジックバッグが存在しないんだ。作るにも空間に干渉する能力を引き出せる素材が無いから無理だし。だからって【
荷運びと護衛を雇って地上を目指す手もあるが、目立つので避けるべき……いや、噂そのものは流しておいた方がいいのか。やっぱりリヴィラにおるやんけって輝夜がキレ散らかす様を想像するだけでご飯が進む。でもコスト考えたらアタシが依頼するよりは所有権を手放して街主体でやらせる方が気楽だな。しかし今回落ちなかった硬皮や落ちた歯牙はともかく、もう一個の大腿骨って需要どこだよ。無駄にでけぇし。こんなん背負って地上目指すとか何の受難だよどこぞの救世主じゃねーんだぞ。石ころ投げてくるんじゃなくモンスター突っ込んで来るし。つーか何か、あいつ走跳に自信ニキだったん? 私立ダンジョン学園陸上競技部期待のエースだったりしたん?
リヴィラの街では犠牲者もけが人もなく討伐できた事を祝って酒宴が開かれた。
「あー、そンじゃあれだな。獲物を譲って貰ったわけだし今日の分は奢りだバカヤロー! 飲ンで食って騒げオラァ! かンぱーい!」
「「「乾杯!!」」」
一応は主賓扱いなので乾杯の音頭を取り、その後は思い思いに過ごさせる。といってもいつもの面子で固まってるみてぇだが。
「――と、まぁ、こンなところか」
「なるほどな。条件を満たして倒す、か。言われてみりゃ、切り落とされたはずの角をドロップアイテムで残したらどっから生えてきたんだって話だもんな。かーっ、未だに人の知る部分は少ねぇんだって思い知らされるぜ」
アタシはボールスに戦闘の経過と軽い考察を説明したが、ダブルドロップに関して再現性を確認できる箇所が首を切り裂く、気絶中に倒す、頭部を吹き飛ばす……といったものであり、それらの条件を単体または複数満たす場合と仮定しても検証にはそれなりの時間がかかると予想された。
アタシとしては【
世界樹の迷宮みたいに倒し方でドロップアイテムが変わるとしたら大発見なんだが、がむしゃらな大穴到達を済ませて権力闘争とかやれちゃうくらい安定してから今の今まで欲深い人間達が検証していないのは不自然なんだよなぁ。データを独占してる可能性はあるが。
つーか原作だか外伝だかのアイズがウダイオスのソロ討伐報酬で大剣確保したんだったか。巡り巡ってベルが黒ゴライアスを倒す最後の一手になったやつ。やっぱ条件次第であるな。
「ここ最近でゴライアスが単独撃破される事はあったのか?」
「単独で、か……そういや無かったかもなぁ。
ヒントを与えるつもりで疑問をぶつけたら、ごもっともすぎる答えが返って来た。
うん、ボス周回は基本だよな。月二でゴライアスや取り巻きの相手する生活なら魔石だけでもそこそこ稼げるし、魔石の質で見てもゴライアスを狙う方が下層や深層に潜るよりローリスクなのは確かだし、上位の【
「それもそうか。一人だと戦闘時間が長くなって通行の邪魔になるしなぁ」
「まぁ、そこはダンジョンだからな、自己責任ってやつだ」
「大抵は負けそうになるから、削ってくれた所を助けに来てやったぞ、ってか?」
「はっはっは、そういうこった!」
豪快に笑っちゃいるが立ち回りは強かなもんだ。でも言っちゃ悪いがリヴィラの街住みって生活スタイルは田舎暮らしに近いんだよな。野性動物と日夜攻防を繰り広げ、時折戦利品や収穫物の換金と日用品の買い込みに街まで出る。たまに自然災害で住み家を追われるとかも田舎暮らしあるあるだし。
宴会は昼前から始まったが、水晶の光が消えて夜になってもまだ続いていた。奢り効果にしても長ぇなオイ。アタシは途中で切り上げて元の形を取り戻していた宿屋に泊まった。うーん、主人の作り笑いが実に白々しい。リヴィラの街から拠点移すときに爆破してくか。
一日遅れたけど一カ月連続投稿できて、話の進み的にも分岐地点の炊き出し襲撃まで来れたから満足。
ラジルカの戦いはまだまだこれからだ! 次回(明日予定)以降の活躍をご期待下さい!