そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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35.知らず果たしてました。感慨下さい。

闇派閥(イヴィルス)の使い走りに連れられて地上へとんぼ返りして、ダイダロス通りへ入ったら懐かし(二ヶ月ぶり)人造迷宮(クノッソス)へ。そこで待っていたのは過労を形にしたかのような邪神の姿だった。

 

「やっほー、元気ィ?」

「すこぶる快調だったよ。門番に追い返されて自由を満喫するしかなかったからなァ」

「聞いたよーゴライアスを単独討伐したんだって?」

 

一周回って楽しくなってるのか、はたまたキレてるのか、ヘラヘラ笑いしながら挨拶してきた邪神はアタシの返答を意に介さず次の話題を切り出して来る。

 

「まーな。闇派閥(おまえら)の金で作った爆弾で倒すゴライアスは美味かったぜ【経験値(エクセリア)】的な意味で」

「へー、じゃあ【ランクアップ】なんかもしちゃったりとか?」

「テメーの知る眷族でいンのかよ、Lv.2から3まで半年のやつ」

「……いや、いないけどさぁ。でも、だからこそ期待しちゃうじゃん?」

 

嫌味も通じないときた。なんかあったんだろうか。実は護衛さんが爆発に巻き込まれて双子の兄弟姉妹に代替わりしてたりする?

護衛さん(推定)に視線を向けたら、ひどく疲れた笑みを返してきた。あ、これ単に責任おっ被せられて後始末に奔走しただけだな多分。僅かばかりの後ろめたさが完全消滅したわ。

 

「それに()える義務なンざねーよ。勝手に期待して勝手に裏切られてろ」

「ぬぉぉぉぉん! せめてそこで【ランクアップ】してたら挽回のしようもあるのにぃ!」

 

この邪神、立場相当危うそうだな。アタシを引き入れたせいで不要な被害を出したんだから当然だが。

でも不法侵入からの無断使用による自爆だからアタシ云々じゃなく組織の引き締め不足なんだわ。引いては邪神達の怠慢。アタシは悪くない。

 

「知ったことかよ。リリを出せ、リリを」

「無理だよ。他の邪神(連中)ってば【芸術家(ファイアワーカー)】の事めっちゃ怖がって妹ちゃんに助けを求めて側にいるようになったと思ったらいつの間にか崇め始めてるし」

「何してンだ超越存在(デウスデア)

 

常々リリを崇めよと口に出してるアタシとしては喜ばしい事態なんだろうか。いや、だからって闇から一番遠い輝ける一等星のリリを闇派閥(まっくろくろすけ)の御輿みたいにされても困るんだが。

つーかどこまで本気なのか分からんがアタシを怖がってリリに助け求めたのにリリを崇めるようにって、これ今度はアタシが邪魔になってもリリの姉だから排除したくてもできなくなってるとか逆転現象起こしてんじゃねぇよな。アタシの中で神の株が底値を更新し続けてるんだがどうすりゃいいんだ。

 

「いやだって、いつどこにどんな形の爆弾が仕掛けられてるかって疑心暗鬼になっちゃってみんな気が気じゃないんだもん」

「怖がるくれーなら始末すればいいだろ。アタシなンぞ手持ちのLv.4なりLv.5に命令すりゃ簡単だろーが……勝手に震えてる分にはいいけどよーリリに変な事仕込んだら消し飛ばすぞ」

 

言うてLv.3になったのでLv.4までなら比較的余裕を持って逃げ切れる自信はあるし、Lv.5でも欠損覚悟でなら逃走……敗走できると思う。Lv.3は炊き出しへの襲撃で輝夜(Lv.3)相手にして逃げ帰ってるのを他の襲撃犯共も知ってるからね。同格以上が複数人で来られたらマズイが。

 

「あー、そこは大丈夫。仕込もうとしたみたいだけど姉への信頼というか全肯定が凄くて空振ってたから」

「よっしゃ新作試してみるか!」

「止めて!!」

 

腰にしがみついてくる推定セクハラを司る邪神を引き摺りながら、アタシは台詞とは裏腹に作業場があった場所へと向かう。だって邪神の居場所とか知らんし。

シスコンパワーでリリの居場所を探せばいいって? だから今の闇堕ち一歩手前な状態なんかでリリに会ったら心配されちゃうだろ。会うにも準備は必要なんだよ言わせんな恥ずかしい。

行き先を察した邪神が何やらわめいているが、気にしたもんじゃあない。そして無言で付かず離れずを保つ護衛さんは相変わらずのプロフェッショナルだった。大丈夫? 邪神の靴っつーかサンダルっつーかの先めっちゃ削れてると思うけど。

 

 

「さて、弁明を聞こうか」

 

作業場があったはずの部屋は綺麗さっぱり何もない空間に戻っていた。引っ越しでもしたのかな? いや、壁にヒビ入ったりはしてるな。こっそり薄くしたからなー爆発の熱と膨張した空気の圧力に耐えきれんかったか。そうでなくても衝撃が貫通して地盤が緩んだりしただろうから崩落の危険性がありそう。

薄くなった原因、抽出した超硬金属(アダマンタイト)で作った装備品は爆心地にあっただろうから熱で溶けたっぽいなぁ。数がそこそこあったとはいえ爆弾の威力がヤバい。

アタシが使う前提だからそれなりに丁寧な扱いしなきゃない繊細な代物多かったし、一見すると爆弾に思えないがらくた風の見た目のやつも結構無造作に置いてたからなぁ。拾ってその辺に放り投げるとかしたら間違いなく報復とばかりに爆発するやつ。

 

「いやね、そのー、別の邪神(とこ)眷族()が「同じ闇派閥(イヴィルス)の同胞が作った物ならば共有の財産であり自分達にも使う権利がある」とか言って押し入ったみたいで。その後はものすごい爆発が起きて大混乱。生存者がいないから詳細は不明、です」

「あー、まァ、下手人の主張は分からなくもないがよ。アタシは人質取られて協力させられてる奴隷と変わンねー身分だから余計にやりやすかったろうし」

 

超硬金属(アダマンタイト)製品が残らない爆発だ。いくら『神の恩恵(ファルナ)』持ちであっても人間如きが耐えきれる威力じゃなかったんだろう。むしろ意味のない仮定だけど爆心地にいたら黒竜も無傷じゃ済まなかったんじゃねーか?

 

「そう言ってもらえると少しは気が楽になるよ。ほんと困るよねぇ【白髪鬼(ヴェンデッタ)】ってば」

「……なんて?」

「ん? あぁ、主犯は【白髪鬼(ヴェンデッタ)】だよ。オリヴァス・アクト」

 

もう死んじゃったんだけどね、と苦笑する邪神の言葉はしっかとアタシの耳に入ったが、そのまま逆側から抜けていった。

伏線回収が早いと言うか、マジであっさり死にやがった。アタシの財産を巻き込みながらだから、ある意味また奪われたわけで、頭に血が上ってくるんだが、ぶつけるにも対象はもう死んでるわけで。

しかも爆心地にいたんなら死体なんて残らなかっただろうし、ダンジョン内じゃないから怪人(クリーチャー)や『異端児(ゼノス)』の形で復活する奇跡も恐らくは見込めない。

 

こうしてアタシは知らぬ間に自分の手(?)で親の仇を取ったのだった。

 

「か、か……」

「か?」

 

言葉に詰まるアタシの様子に首を傾げる邪神の声を聞いて、自然と顔を向ける。目が合った邪神の瞳に映るアタシは驚愕と呆然のない交ぜになった間抜けな面を晒していたが、取り繕う余裕もない。結局、溜め息にも似た本音を吐き出すしかできなかった。

 

「勝ち逃げ感が半端ねェ……」

 

いやまぁ、ね? 邪神(こいつ)がアタシの事を調べたんなら親の情報だって出てくるだろうし、犯人がオリヴァスだってのも知ってるはずだ。だからこれは一芝居打ってる可能性もあるんだよ。あるんだが、外伝の怪人化した(クリーチャー)オリヴァスってなんかメシア教徒の狂信者みたいな感じだったじゃん。こっちの話聞かないから会話にならない系の芝居がかってて自己陶酔までしてるどうしようもないゴミクズだったじゃん。親の仇だって分かって軽く調べたときも同じ感じだったから引いた記憶あるし。でも、だからこそ間抜けな爆死とか演技でも嫌がるっしょ。多分。つまり事実(ガチ)

うわー、感情の処理が追いつかない。どっかの漫画のノストラダムスじゃねーんだから死んだ後も立ちはだかってくるんじゃねーよ。でも言語化できない経過(プロセス)で辿り着いたトンデモ結論に繫げようと屁理屈こねくり回す癖がついたのあの漫画のおかげなんよな。アレを紹介して来た前世の友人の罪は重い。仮に会わなくても型月でその道に流される気もするが。そういやそっちも歌月十夜を紹介されたのが始まりか。前世の友人は見つけたら爆破しよう。よし、爆破する脳内シミュで落ち着いた。何でか黒焦げアフロになった以外は無事で笑ってたけど。

 

「不思議な感想だけど、まぁ終わった事だから諦めてねー。最終的に責任のほとんどは本人の許可も俺の許可も取らずに無断で入った【白髪鬼(ヴェンデッタ)】に押し付けたし」

「うーい。意識の低いド素人が入っていい場所じゃーなかったのは確かだわ」

「無関係な付近の構成員にも相当犠牲者が出たからねーてんやわんやだったさ」

 

空虚な笑いを上げて遠い目をした邪神と追随するように遠い目をした護衛さん。ご愁傷さんってやつだぁな。

しかしこうなると物資的な余裕はどうなるんだろうか。もし材料がないならアタシは既に用済みな気がするんだが。

 

「アタシは今後どうなるンだ? テメーらの内輪で馬鹿がやらかしただけだがアタシが作ったもンが原因なのは違いねェんだし」

「あー、それね。悪いんだけどさぁ……」

「死んでくれる? ってか?」

「違うから! 何でそんな物騒なのさ!? いやまぁそういう意見も出なかったわけじゃないけどね!?」

「だろうなァ」

 

とはいえここでアタシを始末しても更に戦力が減るだけではある。馬鹿のやらかす理由を絶つって意味じゃ始末も視野に入れたくなるだろうけどさ。どう贔屓目に見ても闇派閥(ここ)って馬鹿のが多いし。リリ効果で保護されてる可能性からは目を逸らそう。

 

「そんでね、まぁ、材料集めから手伝ってもらうって話にまとまったんだよね」

「ふぅん」

 

まぁ妥当などころか。製作者なら目利きもできるから取捨選択が必要になった場合は現地での厳選も可能だし。

 

「だからさ、行ってらっしゃい。4()4()()()だって」

「準備するもンねェし今すぐ行くぞ」

「わーお予想外に乗り気だぁ。でも深層だよ~? 分かってるのかな~?」

「ん? あァ、面子はどンなだ? 適正Lv.4なんだろ?」

「そうだね。メインはヴァレッタちゃんだよ。他には――」

 

火炎石がアタシを呼んでいる。それはそれとして、まーたダンジョンへ逆戻りなわけで。闇派閥(イヴィルス)ぶっ潰したい指数が急上昇してますわ~!

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