そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
先に言っておくと、現状でアンフィス・バエナとタイマンした場合の勝率はほぼ0だ。仲間を呼ばれたら更に低くなる。逃げるにも難しく、一番生存の目があるのはどうにか時間稼ぎをしてこっちの仲間……とは言えないが先行したLv.5三名が来るのを期待する事だ。仮に来てもアタシが殺されるまで見学してそうな事からは目を逸らすしかない。
これむしろ火炎石って餌をぶら下げて食い付いたアタシを合法的に始末するための計画だったりするんだろうか。合法的にする意味がわからないから違うか。でもリリへの言い訳って意味じゃ遠回りする場合もあるか? うーむ、分からん。なんにせよ生き延びてからだ。
Lv.2でLv.4相当のゴライアスをソロ撃破したアタシならLv.5相当のアンフィス・バエナをLv.3でソロ討伐いけるんじゃないかって思いたくなるが、残念ながら現実は非情である。
アンフィス・バエナ戦がゴライアス戦と違うのは、まず
で、次の相違点。アンフィス・バエナは遠距離攻撃を持っている。炎の吐息だ。しかも『竜肝』なる器官で
しかも粘性でもあるのか、一度炎が移るとその辺をゴロゴロ転がっても消えにくいらしい。地形ギミックとして残る炎は爆弾使えば可燃物ごと吹き飛ばせるし一時的に真空度が上がるから消火も可能っちゃー可能なんだが、誤爆や誘爆が怖い。
「つまりは先手、ケースごといっとこーかねって話だ、よっ!」
景気よく手持ちの爆弾を簡易ケースごと全部ぶん投げる。熟練度がI0でもLv.3の力だ。そこそこに速く、遠くまで届く。狙いも外さずしっかりと飛んでいった。
ぶっちゃけこんだけの爆弾をブレス吐かれる前に口の中へ放り込めれば、ブレスに合わせて起爆して内側から破裂して――その前に魔石が圧壊して――死ぬとは思うんだが、それを許してくれる相手でもない。
『――オオオオオッ!』
吐き出される蒼炎は、しかし爆弾を巻き込んだことでこちらにはほとんど届かず吹き飛ばされた。しかし一部の爆風で吹き飛ばされた、顔に近い部分の
火を吐くなら耐熱性は高いはずなんだが、物が違うっちゃー違うから何かしらあるんだろう。黒ゴライアスのローブは内部の
とか思ってたら、頭部が吹き飛んだ。内側から。炎を吐いた方。
いやまぁ原理的には火吹き芸と同じだろうから口内から吐き出す勢いが弱まったら口内まで炎が伝って燃焼、内部の空気が急膨張、耐えきれずに内側からドカン、なのはわかるけどさ。なんつーか、こう、もっと頑張れよファンタジー。
ほれ見ろ多分その燃料作ってる竜肝にまで引火して大爆発起こしてんじゃん。体弾けて大惨事だよ。魔石も砕けて飛び散った体の破片が空中で灰化していくのって割と幻想的ね。
普通こういうのって貯蔵器官では無害化っていうの? 空気がないから酸素なくて燃焼しませんとか、あくまで吐き出す時に別の液体と混ぜたから可燃物になって純度が高いと発火点が高いから燃えたり爆発したりしませんとか、上手くできてるもんじゃねぇの?
つーかどうすんだよ前振り全部無駄じゃん道化にもほどがあるだろ。現代ダンジョンものの配信なら大バズりするわこんなん。
でね、今ね、盾を持ってねェのよ、盾を。目の前で起きたコントみてーな現象がどうやっても致死性らしくてミノ群爆殺劇の再来みたいなスローモーションなう。
実は爆弾が景気良く弾けた時点で始まってたんだけどね。火炎石使った爆弾じゃねぇしいけるいけるとか思ってたアタシって、ほんとバカ。威力が低くても距離が圧倒的に近いのよ。おまけに階層主が大爆発とかいう体張ったギャグ追加されてんのよ。つまりは単純にヤバみがヤバいって事だ。もう語彙が先行して死ぬくらいヤバい。
「死にたくねェなら気合入れろオラァ!」
「――――ッ!!?」
確かに盾を持たないアタシは爆発に耐えきれず死ぬしかなかった……だが今は違う!(ギュッ)
抱き締める力を強めたアタシの腕の中でもがく小動物が悲鳴を上げながら額の宝石を輝かせると、そこを基点に全周囲――球状の
ふつくしい……ハッ!? こ、これぞアタシ達の即興
いやー、ここが26階層で良かった。アンフィス・バエナの乱入前にアタシが戦っていた相手とは何を隠そうこの
オラリオ生まれオラリオ育ちとはいえ、アタシは現代日本人の魂を持っている。モンスターへの忌避感が希薄なアタシは以前も角なしアルミラージを散々にモフったが、貴重な愛玩動物枠に区分されそうな小動物を見てモフらずにいられるだろうか。いや、ない。つまりアタシはその毛並みに、感触に、マーメイドの歌なんぞ比較にならないグレードの魅了に抗うのに必死だったのである。まぁ、そこに辿り着くまでにこの警戒心バリバリなモフモフに魔石たらふく食わせたりしたから、多少はね?
んで、
しかし悲しいかな、アタシは冒険者。コイツはモンスター。テイム技術を持たないアタシはコイツを安全な状態に仕上げてリリに捧げる事ができないのである。強化種になっても毛艶が良くて毛質も柔らかとかどうなってんのコイツ。本気で生き延びる気あるのか。ダンジョンは何を考えてこんな人類の益にしかならんモフモフを作りたもうたのか。リリの次くらいに信仰するぞダンジョン。
「しかしこのままだと
『マジっすか! そりゃねーっすよ!』
「キェェェェアァァァァァシャァベッタァァァァ!!」
なんということでしょう。アタシがさっきまでモフモフしていたこちらの愛玩系小動物型モンスターはまさかの『
ちな、♀だそうな。つまりさっきまでここでは濃厚な百合が繰り広げられていて、乱入してきたアンフィス・バエナは俗に言う百合に挟まる男だったから大いなる意志の逆鱗に触れてあっさり爆殺されたということなんだろう。謎は全て解けた!(混乱)
「まぁ、
『ヒェェェ、な、何とかならないっすか!? 僕まだ死にたくないっす!!』
おいおいおい、ここで更に僕っ娘とか属性乗っけてしてきやがりましたよこのケモメス。ただでさえ~っす口調の元気系後輩キャラなのに。どう考えても過剰搭載ですわ。しかし今から逃がした所で……あっ、そうだ。
「よし、今からちょっと試すからアタシを信じて抵抗せずにいろよ」
「了解っす!」
「よーし、良い子だ。【呑め】」
……はい、成功です。生物も――少なくともこのサイズのモンスターは収納可能のようだ。テロ適性が更に上がったな! まぁ実際にはテロ適性というよりはゲリラ適性なんだが。そこになんの違いもありゃしねぇだろうが! よくわからないのだ! へけっ。
このまま取り出せるのかも試したいが、下手に取り出したカーバンクルや、取り出す瞬間を見られるのもまずい。カーバンクルには窮屈な思いをさせるが我慢して貰おう。帰りに