そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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39.集まりました。時間下さい。

で、こっからはダイジェスト。同行者(オマケ)が多過ぎて本領を発揮できなかったから特筆するような事件がなかったんだわ。幹部がはしゃいだとも言う。

 

まず30階層からは本格的に戦闘が辛くなった。ブラッドサウルスとかそんなん。

仮にもLv.3になった身だが、アビリティ貯金が少なく力の伸びが悪い上にダマスカス鋼の優位性が消えたようなもんだから通常の狩りなら――魔石一点狙いできなかったら大変だったと思う。超硬金属(アダマンタイト)製の武器に手を出さんと。

他の戦力外(サポーター)は幹部三名が普通に倒した魔物から魔石を回収してるので、アタシも暇を見つけては回収しておいた。いくつかはカーバンクルの餌になるかと思って倉庫に送っておきたいんだが、エルフって魔法の発動を感知出来た気がしたので控えておいた。バックパックにはまだ余裕あるしな。

異界倉庫(ドラ・マゲ)】内部の詳細はわからんけど、意識すると収納物のリストが浮かぶんよね。そこに燦然と輝くカーバンクル(強化種)(気絶中)(ライバルに差を付けろ)って表記があるから魔石送っても食えないのかも。ツッコまんぞ(知らんけど)。とりあえず時流を現在可能な最遅設定1/30倍にしてるので、そう簡単に餓死はしないと思いたい。

 

37階層。深層に下り立った際の重苦しい空気は「逃げろ」「引き返せ」と訴えかけてくるんだが、正直アンフィス・バエナを前にしたあの時に感じた絶望のが強かったので耐えれはした。アタシ以上にビビってる他のサポーター連中がいたからってのもあるんだろうか。とりあえず連中の尻を蹴り上げておいた。

この辺になると今のアタシじゃ一体仕留めるのに全力出して十数撃は必要になるので、戦力にはならない。幹部の邪魔にならないように、少しでも動きやすくなるように妨害メインだ。

サポーター連中の介護するのめっちゃ辛い。一ヶ所に固めてなきゃとてもじゃないが護りきれる気がしない。幸い、素直に従う連中ばかりだったので生き延びたが。

そういえばここに来るまでに凶兆(ラムトン)こと大蛇の井戸(ワーム・ウェール)に二度ほど遭遇した。その二度ともが幹部を狙って返り討ちされる天丼(パターン)だったのは一服の清涼剤だったのかもしれない。

んで、ウダイオス。幹部任せですが何か? 取り巻きの骸骨兵士――多分スパルトイを引き付けるのが精々だった。地面から絶え間なく突き出て来る杭がひたすらウザかった。同士討ち気にしないでバンバン飛び出して来たからな、アレ。

 

そして44階層。目的の火炎石をドロップするフレイムロックが出現し始める階層だ。まぁ、ちょっとしたダンジョンの悪意で45階層へ落とされたから行きの滞在時間は数十分だったわけだが。

 

「おーし、てめえら二人一組作れ。んで(ペア)の一つはアタシらについて来い。【芸術家(ファイアワーカー)】はモンスターが下りて来ねーか警戒、下りてきたら迎撃。それ以外は定期的に壁を傷付けながら部屋を行きしてろ。時間が経ったら別の二名(ペア)と交代だ」

 

44階層に上がる階段まで来ると、ヴァレッタの指示が飛ぶ。それまでに拾った火炎石は六個。最短らしいルートを移動したとはいえ休憩を挟む程度の時間でこれなのに、目標は百個。先は長い。一週間くらいは見ないとダメか。

なんて思ってた時期もありました。お守()りがなくなったLv.5達は非常に生き生きというか活き活きとしていたらしく、半日で二十個近く持って来た。サポーターが死にかけているが怪我じゃなく疲労なので許容範囲内だろう。そして別のペアを引き連れて再び出発していった幹部。タフだなー。

アタシはアタシで44階層から下りてくるモンスターを相手していた。階層を移動するモンスターは群れからはぐれた個体なのか、頻度はそう高くないし一度に現れるのは多くても三体まで。タイマンでもひーこら言うような強敵を三体同時とか拷問に近いが、なんとか捌ける範囲だった。

階層が深くなるとモンスターの知能も上がるのか、魔石を執拗に狙ってると途中で怯えを見せる個体もいた。あるいは『異端児(ゼノス)』だったのかも知れないが、苔の巨人(モス・ヒュージ)強化種みたいな例外(イレギュラー)もあるので手加減はフヨウラ!

まぁ、ここに至ってアタシがまだLv.2だと信じるようなやつはいなかった。やりすぎたんだよ、アタシは!

なんかサポーター連中からはLv.4扱いされてるんだよな。ヴァレッタはちゃんとLv.3だと見抜いちゃいるっぽいが、それでも単独行動を命じる辺り()()()()じゃなく上位だと思ってるっぽい。アタシの冒険者歴を知らんのかこいつら。特に興味なけりゃそんなもんか。ディース姉妹は何考えてるかわからんからパス。

 

そうして幹部が飽きると安全階層(セーフティポイント)である39階層に戻って休んでを繰り返し三日間で百八個の火炎石が集まった。一個爆発させるごとに煩悩が消えていくんだろうか。命ごと消し飛ぶから消えるな、ヨシ!

内訳としては向こうが集めた百個とアタシが倉庫にちょろまかせなかった分の八個だ。倉庫内には九個ほど収まっている。

 

「よーし、集まったから帰るぞ。行きはよいよい帰りは怖い、ってな。変に走ったりして転けて爆発させんじゃねぇぞー」

「アタシは持たなくていいのか?」

「てめえは護衛に参加しろ。守るなんて性に合わねぇ事してストレス溜まってるんだ、少しは楽させろよなー」

「あい、あい」

 

こうして一人辺り十二、三個の火炎石を丁寧に緩衝材で包んで特製ケースに入れ持ち運ぶサポーター連中を護送する任務(ミッション)が発生した。とはいえ行きでもこいつらは草食獣みてーに固まって動かなかったから苦労は変わらない。終わりが見えて逸らない事だけ気を付けて道を戻った。

 

途中、十八階層で夜営したので雲菓子(ハニークラウド)水晶飴(クリスタルドロップ)を採取しておく。リリへの土産だ。直に会うことは許されるか微妙だが、そのときは邪神の護衛さんに依頼しよう。

普通の水晶も倉庫に収納した。生えたのを直接は無理だったので、根元から砕いた物を。生えてる分にはダンジョン=生物扱いで抵抗されたから無理って感じかな。果実もやはり樹から直は無理で、もいでから収納だし。

顔の売れてる闇派閥(イヴィルス)はともかく、アタシは表向き真っ当な冒険者なので普通に宿屋に泊まった。そしてトラップをしこたま仕掛けてからカーバンクルを倉庫から取り出す。

 

「【吐け】」

 

ボフン、とベッドのシーツに落下して転がるカーバンクル。生物は空中に浮かんで手に取られるのを待ったりはしないらしい。表示通りに気絶中らしいので、シーツを被って防音にしたから頬を突いて起こす。ふわもこー!

 

『むにゃむにゃ、もう食べられたっす……』

 

お約束かと思ったら微妙に外して来た。そこはもう食べられないじゃねぇのか。どんな状況なんだよ食べられたって。

 

『んみゅ? ふぁぁ~良()れら(寝た)~っひゅ()

 

引いて駄目なら押してみろと言うし、突いて駄目なら引いてみるべきだと思い頬を伸ばしていたら起きたらしい。とりあえずそっと上から手を被せて背中を抑え後頭部を押し付ける。これで大声を出されても大丈夫だろう。

 

『~!? ~~~!!』

「落ち着け。んで、思い出せ。大声を出したら怖い連中が寄って集って殺しに来るぞ」

『~~~!!』

 

悲鳴っぽいのが止まったのでそっと手を離してやる。カーバンクルは悲鳴を上げたり逃げ出したりせずに恐る恐る顔を上げ、こちらを確認すると大きくため息を吐きながら体を弛緩させた。おぉ、これぞ正に最新の稀少種たれバンクル誕生の瞬間。【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】ステイ、ステイ。出番が欲しいのは分かったが新種のモンスターに改造したりそのままテイムの常識を超越した主従契約に持ってこうとしたりは止めるんだ。正直めっちゃ魅力的だけど。

 

「まぁまずは食え」

『何すか? これ……甘ーい!!』

「声を抑えろ。死にてぇのか」

『もぎゅもぎゅ。いくらでも入るっす』

「聞けや」

 

()()状態のまま雲菓子(ハニークラウド)を咀嚼するカーバンクル。果汁めっちゃシーツにこぼれてるから寝る前に【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】で成分抽出しておこう。出番が増えてこれにはスキルもニッコリ。ついでだし色素も抜いてシーツの漂白しといてやるか。一度知ってしまえばもう戻れなくなって依存せずにはいられなくなるかもしれんし。次回以降は金取ればそこそこの小遣い稼ぎになるべ。

 

『ふぃー、食った食った。っす』

「とりあえず18階層まで来たんだが、この階層なら比較的安全だぞ。このまま居着くなら放流してもいいんだが、どうするよ?」

『このままついていくっす! こそこそ逃げ回るより一緒にいた方が安全だし、魔石も食わせて貰えてお得っすから』

 

満足そうに横たわるカーバンクルに今後どうするか尋ねると、迷いなく同行を申し出てきた。それでいいのかモンスター。ニートンクルとかカー無職ルに変異でもする気か? いやまぁ職業ペット業務は癒し給料代わりに飯、寝床ってなるんだけどさ。

まぁ、リリへの土産ができたと思えば……会えるのはいつになるかわからんが。作業場のセキュリティも帰ったらちゃんと見直す予定だし、専用の魔道具(マジックアイテム)作ったら隠し通せるかな。魔石持ち帰り可なのは闇派閥(ここ)の利点だよなぁ。モンスターいても気配は紛れるはず。後で【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】の提案してきた契約も試しておくか。詳細の確認は必要だが。

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