そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「やっほー【
「……緊張と不安で一睡もしてねェ……」
「ダメじゃん!?」
一夜明け、いつも通りに無警戒にやって来て吹き飛ばされた邪神が再侵入してくるなり騒ぎ出した。頭に響くから叫ばないで欲しい。
「えー、せっかく感動の再会を特等席で見られる役得なのに。ちゃんと演出できそう?」
「演出なんざいらねーンだよボケ。愛しいリリの前にはどンだけ上等だろーと小細工なンざ意味をなさねェ……!」
「なんだかよくわからないけどすごい気迫だ」
ピーピーやかましい邪神を叩きのめしたい所だが、リリとの再会に流血沙汰を起こすのも気が引けるのでグッと我慢。そして
「あ……」
「……お姉ちゃん!」
「り、リリ……リリー!」
少し緊張しているのか、やや固めな動きで姿を現したのは最愛の妹にして我らがご本尊、リリルカ・アーデ終身名誉大明神である。リリを崇めよ。本来なら今すぐ平伏して祝詞を上げたいが、今は姉妹の時間なので拝謁ではなく再会を喜ぶ。
互いに名前を呼び合いながら駆け寄る姉妹。実に美しい光景である。これが前世の友人相手だとおもむろに懐から取り出したおもちゃのナイフや包丁を腰だめに構えて突撃し合う光景になるんだが、リリが相手なのでそうはならない。
「「ヒシッ!」」
カチッ
「あ」
「え?」
さて、ここで考えてみよう。小人族の体重では反応しないように設定された侵入者撃退用トラップ。だが抱き締め合う二人分の体重ではどうなるだろうか。まぁ、音が鳴った時点でお察しだよね。
そして起動した罠はバネ床。床下に縮められた状態で固定されたバネが仕込まれているだけのシンプルな構造で、スイッチが入るとバネを固定していた部品が外れてバネが戻る勢いを利用して踏んだ者を吹き飛ばす効果が期待される。
「きゃああああ!?」
内容を知っているアタシはリリを庇うために体勢を整える。しかし、リリの悲鳴は初めて聞くかもしれんな。ふぅ……。
「ぐえっ」
「ひゃん!」
ひゃん、だってよ。かーわーいーいー!
重量級のモブでもちゃんと吹き飛ばせる仕事量を誇るので、小人族二人分という起動するギリギリな質量ならば天井直撃は免れないわけで。
アタシが上になって抱え込む形にしたので、リリへの衝撃は最低限に抑えられたはずだ。代わりにアタシはリリヘッドがみぞおちに埋め込まれたが、その辺はLv.4の耐久が仕事をしたので何も問題はない。着地に関しても同様で、落下し始めの時点でお姫様だっこに移行したので怪我一つさせずに済ませたとも。
「怪我してないか? ご飯はちゃんと食べてるか? 今まで会えなくてごめんな、ホントごめんな」
お姫様だっこ状態からそっと下ろして、肩に手を置きながら様子を確認する。リリはうつむいたままだったので、どこか痛いのかと心配になって問いかけるも無言。ちょっとぷるぷるしてるのは怒りか? 怒りなのか? そういえば謝罪をしていなかったと思い実行に移したところで、リリは姿勢を落とし勢いの乗ったタックルで応じて来た。んほぉぉぉぉ全体的に柔らかぁぁぁい! ここが楽園か。
「……会いたかったです」
つぶやきのように小さく漏れた言葉を聞いて、心臓をわしづかみにされた気分になった。直前までの喜びは吹き飛び、罪悪感が支配する。
「……ごめんな。アタシも会いたかった。言い訳にもならねェけど、アタシは弱かった。今だって弱いままだ。もっと力があれば無理矢理にでも会いに行ったり助け出したりできたのに」
「違います。リリも……リリが弱いから! お姉ちゃんの自由を奪ってしまいました。お姉ちゃんの活躍は邪神様達の間でも噂になっていました。階層主を一人で倒したり、深層で戦ったり、お姉ちゃんはすごく怖、強いって」
「リリ……ありがとう」
謝罪したら謝罪されちゃったわ……妹に? 謝罪を? させた? アタシがか、アタシの、せいでか。ふおぉぉ、し、死にたい。けど受けなきゃ謝罪合戦になって先に進まないからな。お姉ちゃんとして私心を殺すのは当然。
つーか邪神連中の噂話とか絶対にろくでもねぇよな。怖いって言いかけたし。これが教育の成果か? お気遣いの達人やんもう。かくなる上は諸々の噂を噂じゃなくするしかねぇな。邪神滅ぶべし。
「それでリリ。アタシが会いに行けない間、どんな風に過ごしてたのか、聞かせてくれるか?」
「……はい! お姉ちゃんにお話できるのを楽しみにしていました。リリの頑張りを聞いて下さい!」
尊い。死ねるわ。なんだこの可愛い生き物。信じられるか? アタシの妹なんだぜ。人生勝ち組過ぎてリリの家族じゃないやつらに申し訳ないくらいだわ。ハハッ、ざまぁ。
そんなわけで今まで会えなかった分を取り戻すべく色々と語り合い、そのままお泊まりする流れに。
焦って止めに入った邪神がいたような気もするが、護衛さんの首トンで黙らされたし、そのまま一礼して去って行った護衛さんに引きずられて行ったので気のせいだろう。GJ護衛さん。サンキュー護衛さん。そのままだと邪神の缶詰めが流通するところだったので実にファインプレーだ。
「それでな、リリにプレゼントを用意したンだが……受け取ってくれるか?」
「プレゼント……いいんですか!?」
うむうむ、素直に喜んでもらえるとこちらも喜びに満ちる、むしろ溢れるというものである。そんなわけでアタシは保管室へリリを招き入れると、作業台の上に被せてあるシートを取り払う。
「えっと……これは?」
「ダンジョンの26階層に出る
「ほえぇ」
何も『
つーか、最初は
でもなんか上手くいかないというか捕獲する個体が軒並み♀だったので頓挫したんよね。御三家の♀比率よりもさらに低いってどういうことなの……仮に生物としてなら数の確保に必要な生態って事で納得するんだけど、生息地ダンジョンぞ。とりあえずの精神で試したけど倉庫に突っ込むのも無理だったし、無理矢理魔石食わせて強化種にしたらFF5のカーバンクルっぽい猛々しい姿や黄色いあれっぽくなったから即狩ったりもした。後者はカレーが手元にあったらテイムできたかもと思えば痛恨の極みよな。
で、秘晶や毛皮がそこそこ集まったので色々と実験してたらいつの間にか出来上がったのがこちらの
神秘モリモリの紛う事なきオーバーテクノロジーの産物なんで、対神用に一定距離内で一定量以上の神威を検知すると威嚇モードに入り、魔力壁を展開しながら「この神痴漢です!」「助けて下さい!」と大きなバリトンボイスで告知して社会的に抹殺する機能を付けてある。一応、オンオフ可。
動力源は魔力なので、餌として魔石を与える必要がある。ペット代わりにもなればいいなーとリリの情操教育も兼ねているため、口から取り込んで腹部で魔力を吸い出し、砕いてから先に送り出し最終的には尻から排出する仕組みだ。魔石もモンスターの体には違いなく、魔力を空にすると灰になってしまうので、魔力を僅かに残す事で欠片の状態で排出されるようになっている。
護衛目的なのでリリから一定距離離れると肩に飛び乗るし、エネルギーの残量が減って規定値を下回ると餌をねだるように設定されている。攻撃能力はほぼないが、閉所であれば壁や床に魔力壁で押し付けて圧殺したりもできる。あと腹部から魔力による無線制御できる秘晶を射出する機能もある。つまり魔力壁と魔力壁で挟んでプチッ、という最終手段もあるぞ。リリに見せたくない光景が広がるんでガチの最終手段だが。
「……と、まぁこんな感じだ。マスター登録は済んでるからリリの言う事にはある程度反応できるぞ」
「ほへー」
今一つ理解してないっぽいリリ可愛い。やっぱりリリは最高だぜ。リリしか勝たん……そういや『