さて、とりあえず20階層。記憶は薄くて穴だらけだが、未開拓領域は確か入り口になる部屋が緑色の石英云々とかあったよな。食料庫の近くで見かけた気がするから……やっべ、そういや水路あるんだったか。爆弾がっがががが。まぁ倉庫に突っ込めばいいか。
『異端児』経由で情報漏れるとしてもフェルズとウラノスだべ? そこからヘルメスに情報がいかなきゃ問題ないし、仮にいったとしても派閥ごと葬る仕事が増えるだけだし。
胃痛王女とは魔道具談義をしてみたくもあるが、フェルズで代用できるから大して惜しくはない。つーか冤罪すぎて申し訳ねぇけど、今生だと眼鏡ってだけでザニスがチラつくから、対面したら顔面パンチから挨拶を始める可能性が微レ存なんだわ。
探索における問題点……懸念材料としては【アストレア・ファミリア】の追跡か。日数的に考えて連中は遠征帰りなんだが、与えたヒントを活かせず停滞してるならアタシの確保に切り替える可能性もある。その場合は帰還を遅らせて張り込むだけじゃなく下に繰り出す可能性だって――いや、ないな。
あいつら正義を掲げてるせいで規模と活動内容の比率ってーの? 見回りとかばっかりでろくにダンジョンアタックできてねぇっつーか、【経験値】は辛うじて闇派閥相手に稼いでるけど金は稼げてねぇっつーか? とりあえずそんな感じにバランスが悪くて割と運営カツカツだったし。今回の遠征も金庫の中身が結構ギリギリなタイミングで行われてるはずだから、帰るのが遅れたらアストレアが空腹で倒れる可能性がある。残るにしても精々が二、三人だろうな。
まぁ、どうなった所で帰り道は姿隠しを使って人造迷宮まで直帰するから捕まる気がしないが……フラグじゃねぇぞ?
「んー、見つからん」
20階層――『大樹の迷宮』と呼ばれる領域は、その名前から受ける印象を大きくは外れず床や壁が樹皮になっており、草花も豊富に繁っている。そんな中で石英――天然の色つき水晶やオパールを含む――が所狭しと生えてる場所なんてのはそんなに多くはないはずなんだが、どうして中々ある所にはあるもので、それっぽい場所に辿り着いては調査して見事に空振っていた。まぁ指輪やネックレスに加工すれば高値で売れるし、金策としては優秀なんで根元から斬って倉庫に回収してるが。
【異界信仰】使えばアルミとケイ素があれば大体の宝石輝石は作れるからな。戦闘用装備としてのアクセサリーにまで一気に加工されるけど。蛍石……? 知らんな。でも露天とかで普通に小粒のやつ売ってるし、鍜冶系派閥でも取り扱ってるから、どっかに鉱脈があるはず。
よくよく考えたらこの時点で隠れ里? にいるか不明なんだよな。転々としてるとか言ってた気もするし。原作までは……9年か10年? うっわ原作時間軸だと二十歳かー。下積み含めなきゃ二年でLv.4、実質5に届く感じなんだが。このペースだと普通に原作までにLv.9とか10狙えるんじゃねーの。【経験値】的に深層に引きこもらなきゃならんが。『異端児』を説得して50階層だったかにリヴィラの街ならぬゼノスの街でも作れねーかな。とはいえ暗黒期を終わらせてからの話になるかねぇ。いつになるかは知らんが、闇派閥の動き的に割と近そうではある。
で、仕方なく食料庫狩りしてカーバンクルに飯と魔石を食わせてたらノコノコ出て来たよね。武装したモンスター。
前に出て来たのはリザードマンとガーゴイルか。各出入口に展開させてるっぽいから交渉決裂時は煙玉だけじゃなく別の嫌がらせも必要か?
「お仲間みてーだぞエイジャ」
『ほへー、いるところにはいるんすねー』
お、こっちが普通に会話してるの見せたら止まったな。
『なんか止まったっすよ?』
「そりゃあ、おめーが美人だから見とれてるんだろ。恥ずかしいから指摘してやンなよ」
『マジっすか!? いやー何だか照れるっすねぇ』
「はっはっは、モテる女は大変だなァ? ンで、どーするよ?」
『どうする……っすか?』
エイジャは基本食うか気絶するかの二択で過ごして来たので、社会経験がほとんどない。ついでに性格も快活というか天真爛漫というか、ぶっちゃけ本能――ほぼ食い気でできていると言っても過言ではない。
つまり必要なのだ。ダイエットが。このままだとカーバンクルからゼーニンクルみたいな新種のモンスターに突然変異する可能性がワンチャン。それはそれで興味深いが、ギルドの豚みてぇになられても……その、なんだ、困る。頭や肩に乗せときの重み的な意味でも、ビジュアル的な意味でも。
いやね、やればできる子なんよ。それはもう、間違いなくね。深層の魔石食わせまくってるし、気がついたら魔力壁の展開バリエーションが増えて円錐形に展開してクリムゾンなスマッシュみたいなエフェクト出しながらタックルしたり魔力壁を複数重ねて展開しながらピンポイントバリア轢き逃げみたいな事できるようになって、下層のモンスターをワンパンする程度には強いのよ。ついでに敏捷も相応に上がってるから蒼き流星なり最後にGを付けろなりのV-MAXみたいな挙動もする。本来のカーバンクルなら元祖でもある戦闘妖精側の用法なんだろうけどなぁ。さすがにドワォするまでには至ってないので一安心。
『……何故ダ』
『おい、グロス!』
そうこうしてる内に痺れを切らしたのか、グロスと呼ばれた石竜が声を――問いを発した。
『何故! 貴様ハソノ者ト共に居る!?』
「自分で考えてから聞けや」
『ナ……』
「そンでな、答えを聞くンじゃなく自分の考えが合ってるのか聞くンだよ。そうしねーと成長できねェの、おわかり?」
『……グゥ』
「よーし、グゥの音が出るなら上出来だ。ならまずは出会いから今までをダイジェストで……さあ言ってやれエイジャ!」
視線的にアタシへのっぽいグロスの質問に対する回答を先延ばししつつ、そのまま流れでエイジャへ丸投げじゃい! 微妙に駄洒落っぽいな。そうでもないか。まぁいい。
指名しながらエイジャを捕獲、アタシの頭上に二本足で立つような格好で乗せる。クックック、これで迂闊に攻撃できまい。
『僕っすか!?』
『自分で言えよ、そこは!?』
『僕ッ娘……ダト……』
『グロス!? 反応するのそこ!?』
おーおー、リドがツッコミで忙しい。そしてグロスが微妙にキャラ崩壊してるのは何でだ? まさか石竜だから宝石持ちな秘獣は守備範囲内だったりするのか? うーん、わがんね。でもハッキリさせておかんと、今後付け狙われるのは勘弁なんだわ。
『……てなわけで、僕はこうしてラジルカネキと一緒にいる事に決めたんす!』
「ま、互いに利が一致してるわけよ」
『なるほどねぇ……』
エイジャは頑張った。それはもう、アタシの支えありとはいえ、二本足で立ったまま語り終えたからな。割と負担はでかいはずだ。いや、なんていうかね、戻すタイミングを失ったといいますか。後で魔石を貢いでおくべ。
つーかエイジャがこんだけ長く喋ったの初めてだけど、語り部として優秀だわ。声は良く通るし自分事だからかもしんねーけど感情の入れ方も上手いし、普通に内容知ってるアタシまで聞き入ったもんよ。
とりあえず頭上から下ろして肩と腰を持って胸の前で抱えながら後頭部を親指で軽く引っ掻くみたいになでる。うりうり。ぐへへ日々の洗体やマッサージでこいつの弱い所は把握済よ。見るが良い、割とお見せできない感じにうっとりした表情のエイジャを……よくよく考えたらこいつに情操教育とかしてねぇわ。羞恥心ないからされるがままになってるだけで後で振り返ったら黒歴史確定っつーかアタシが怪物趣味扱いされる案件なのでは? てへっ、やっちゃったZE☆
「で、さっきの話に戻るんだが。エイジャ、お仲間っぽいのがたくさんいるけどお前はどうするよ?」
『え? 普通にラジルカネキと一緒にいるっすけど?』
おぉ、即答。いやマジ魔石含むと言えばいいのか甘味含むと言えばいいのかわからんが、飯の世話くらいしかしてるつもりがないんだが。一応、たまに運動させたり風呂に入れたりはしてるが……そのタイミングで来訪した邪神がアタシたちのやり取りを聞いてアタシをまだ一人でおままごと遊びしててもおかしくない年齢だって再認識した事件があったなぁ。あのときは、そう、蹴り飛ばした邪神を捕球した護衛さんごとゴールネットに突き刺さったんだよな。で、申し訳ない事をしたと謝罪と一緒に詫びの品を送ったんよ。迷宮豆から作ったチョコレート各種。
まぁ確かにアタシが同じような状況なら他国の見知らぬ小人族よりはオラリオの友好的な別種族を取るけどさ。そう考えりゃ孤独感くらいしか『異端児』に混じる意味がねぇのか。それすら会話が出来て差別をしない相手を見つけて解決しちゃってるし。モンスター特有の共感できない生態に関して愚痴るとかはあるだろうけど、そんな毎日したいもんでもないだろうしなぁ。
つーか思ったんだけど、向こうからしたら出会って何故か魔石とか貢がれて気を許したと思ったらアンフィス・バエナに襲われて危うく死にそうになったわけで。これって一連の流れのせいで吊り橋効果……アタシにモフられてるのを捕縛と認識すればストックホルム症候群の可能性もあるか? うーん、ここに来て隠れヤンデレの可能性が浮上したか。やりおる。でもリリと競合しない時点で何も問題ないな。うむ、一層大事にしてやる事で釣り合いを取ろう。アライメント調整ってやつだ。