そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
さて、エイジャは言い切ったものの、リドたちへの説明にもう少し踏み込むか。
「いいのか? 別に会えなくなるわけじゃねーンだし……ねーンだよな?」
『え、あぁ……一ヶ所に長く住むと色々バレやすくなるから、住む場所は転々としてて、いつでもってわけにゃいかねぇけどな』
「らしいぞ。で、だ。今のお前の実力なら、オラリオにいる冒険者の誰からでも余裕で守れる。もしかしたら今まで頑張って仲間を守ってきたところをぽっと出のお前にお株を奪われて嫉妬されるかもしれんが、そいつにだってお前を傷つけられやしねーし」
『んー、ネキの言う事は難しくてよくわかんないっす。けど、だからこそ僕はネキに色々学んでおかないとないと思うんす』
おぉ、聞いたか? アタシは今、猛烈に感動している。食って
妹の座はリリの物だし譲らんが、妹分と認識してるエイジャの成長を垣間見た気がしてアタシは涙がちょちょ切れそうじゃ。そんな妹分の名前保留し続けて妹にぶん投げた姉のクズがいるってマジ?
とりあえずこれだけは伝えておかねば。学びの第一歩だ。
「いいか、エイジャ。これだけは言っておく……馬鹿は考えると弱くなるから考えなくてもいいんだ」
『ひどいっす!?』
いやだって休むに似たりだぞ? まぁ、それでも、と言いながら進み続けてくれとは思うが。
「まぁ、アタシとしてもいてくれると助かるからな。おまえが望んでくれるなら責任持って面倒見るさ」
『えへへ……なら決まりっすね! 今後ともよろしくっす!』
「つーわけだ」
リドもグロスも呆気に取られてるな。アタシとしてもエイジャからの矢印が思った以上にでかくてむずがゆい気持ちはあるんで気持ちはわからなくもないが。いやわかってるかは反応次第か。
『はー、思った以上にしっかりした関係なんだな。オレっちはてっきり奴隷とか道具とかみたいに使われてると思ってた』
『最初から魔石たくさんもらったりなでられたりで友好的だったっすよ?』
「その途中でアンフィス・バエナに襲われて共闘したから一気に距離が縮んだのはあるだろうな」
『初めての共同作業だったっす!』
なんだろう、なんか、こう、どことなくギャルゲーのヒロインムーブというか、仲良しアピールして牽制してる感が。あれか、喋るモンスターって同胞に出会った事で取られるって危機感や焦燥感を覚えた的な? なんだこいつ可愛いじゃん(ラブコメ主人公感)。
『ハ、
『グロス? お前ちょっと交替してこないか? 休んだ方がいいって』
なんかめっちゃダメージ受けてるんだが。ウケる。それでいいのか人間嫌い代表。弱味見せすぎぞ。リドもめっちゃ困惑してんじゃん。
『とりあえず僕は幸せなんで心配とかはいらないっす。ネキは僕の存在が霞むヤバいネタがたくさんだからすごく慎重だし、ちゃんとバレないように立ち回ってくれるっす』
「まァ、ぶっちゃけバレても
『お、おぅ。要は心配するなって話だな?』
『っす』
アンフィス・バエナ爆散事件を無傷でやり過ごせる程度には耐久力が保証されてるわけで、そこから更に魔石食ってるわけだし。原作オッタルの全力やリヴェリアの魔法でもそう簡単には破れないと思う。ベルの
『……
『グロス……』
『ダガ、
グロスも折れたらしい。これはエイジャに嫌われる可能性を感じて思い止まった感じか? つまりは弱味、追撃せねば無作法というもの。
「いいか、エイジャ。あれが腐れ神々の言う『ツンデレ』というやつだ」
『おぉ、素直になれなくて遠回しな言い方をしたり変に強がって心ない暴言を口にしたりのやらかしから嫌われやすいし自己嫌悪に陥りがちな不器用な性格の事っすね!』
『グハァ!?』
『グロスぅー!?
素晴らしい。集団の初期メンバーでもあるグロスを抑えられるなら他の人間嫌い派閥の面子に対しても無害アピールできたと見ても……いやめっちゃ崩れ落ちてるから無害ではないな。でも殺したり捕まえたりってのに対する警戒は緩むんじゃねぇかな。自分達と敵対しない人間とか何だかんだで貴重だろうし。こっちとしては種族単位じゃなく個人の関係が結べればよくて、敵対さえしてなきゃビジネスライクな中立で十分なんだし。
「とりあえず連絡手段が必要だな。どっかの
『
『あー、連絡手段なら丁度いい奴がいるぜ』
「ほぅ?」
ぶっちゃけここで採取した石英から通信用
まぁフェルズフラグが立ったっぽいし、水晶テレビ電話の作り方を教えてもらう方が早いか。何にせよ『
原作みたいな『試し』がないのはエイジャと普通にコミュニケーション取って魔石食わせてるから敵対の可能性は低いと見たか、あるいはソロで
『許可が出るかはわからねぇから詳しくは言えねぇけど、協力者がいるんだ』
「へぇ……よく
『まぁ色々あるのさ。とりあえず新しい同胞が人間に受け入れられてるってだけでオレっちは嬉しいんだ! ありがとな!』
「礼を言われる事じゃねぇさ。それにアタシはアタシで例外だと思ってくれ。未だに人間は外見でしか判断できねぇのがほとんどだ」
前世の記憶がなかったら、言い換えれば現地の価値観100%だったなら、人間のように考え話すモンスターに対して抱くのは恐らく恐怖や嫌悪感だろうと思う。
人間はナチュラルに傲慢だから、知性を自分達の特権だと考えてる節がある。それが最大の武器だから仕方ないっちゃーないが、だからこそそれを持つモンスターってのは人間のお株を奪う上位互換に映るわけで。
そんなん脅威以外の何物でもないし、自分がその立場ならってのを考えて――支配と迫害の未来を見てしまう。そりゃ排除一択よな。そう考えたら既得権益にしがみつく老害や権力者に近い心理を自然と備えちまうんだよな人間。唯一持っているとするならばって前置きされる生存本能に直結するんだもん。だからってそれらを許すつもりにもなれないが。
『……そうだよな。それでも、全員じゃないってだけで嬉しいんだ』
うーん、聖人。この時点でも【イケロス・ファミリア】辺りの暗躍で散々に被害を受けてるはずなんだが。中には友好的な振りして騙すパターンもあったろうに。それでも信じたい気持ちを失わず言動を準じるとか並大抵じゃねーわ。一歩間違えれば頭お花畑でしかなくなるけど、その辺の線引きはしっかりしてるしな。
「……名乗ってなかったな。ラジルカ・アーデだ。好きに呼んでくれていい」
『おう! オレっちはリドってんだ、よろしくな! えーと、ネキっち!』
おいィ? 名乗った音に一文字も掠ってないんだが? アタシはこれでリドをリドっちと呼ぶ事を決めたあもりにもぶれいすぎるでしょう?
「あァ、よろしくな、リドっち」
とりあえず言いながら自分から手を差し出す。なんか固まってるな。トカゲの顔で声を出さずに口をパクパクさせるの微妙に怖いからやらん方がいいと思うぞ。
とか思ってたら飛びかって来て、エイジャの張った魔力壁にぶつかって地面に倒れ込んだ。これ周りから見たらこっちが何か挑発したから襲撃して、反撃されて倒されたように見えない?
あ、ほら。出入口塞いでた面子が駆け寄って来たわ。強化種が普通にモンスターの叫び声でこっち走ったり飛んだりで来るから威圧感がすごい。みんなエイジャの広域展開した魔力壁に激突して伸されたけど。ウケる。
『一応、弁明を聞いてやるっす』
『えーと、嬉しくなって、つい』
『周りから見たら襲いかかったようにしか見えないっす! リーダーならもっと周りに目を向けて――』
復活のリド、エイジャに正座されられ説教受けるの巻。ちなみに他の『
なんでも、握手を求められただけじゃなくリドっち呼びが琴線に触れたらしい。思わずハグしようとしたのがあの飛びかかりだったんだとか。体格差的に無理があるんだよなぁ。こちとら
ちな、正座メンバーには以前出会った角なしアルミラージもいた。あるいはこいつの証言もあったのかね、試しがなかったの。とりあえず人数分の
待てよ、今後も増えるとしたら追加で狩っておく必要あるな。この後26階層で狩りして、そのまま28階層でキャンプと行くか。