そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
意図せずフィクションに片足突っ込んだ素材の鎌槍を手に入れたわけだが、これを一体どうしろと。
ダマスカス鋼の組成自体は調査されてて、確か鉄に炭を混ぜた鋼を基本にクロムとかバナージとかコボルトとかモリブリンとか、なんかそんな感じの名前した元素がちょっとずつ混ざってやべー性能になってるっぽいってのはどっかで見た。むしろソシャゲでレアアイテムだったのにネットで調べたら包丁が出て来て吹いた。学校でダチに1%未満で変わるのかよって嘘扱いしてたら半導体の話されて半分も理解できなかったのは良い思い出。
そっから異世界転生のチート貰う理論を
この盛りだくさんな【
いやまぁ確かにファンタジーな世界で科学はどこまで通じるのか、とか考えてオリハルコンやアダマンタイトの固さに思いを馳せてる途中でダマスカス鋼って実物残ってるし科学カテゴリなんだよなとか考えはしたけどさ。だからっておめー実現するのはよー異なるアプローチの解釈幅が広すぎるだろうに。
とりあえず思った事を一つ。
「ブリューナクではないよなぁ完全に」
なんかスキルがショックを受けてる気配がしたけど無視だ、無視。
「それじゃリリ、良い子で待っててな」
「あい。いってらっちゃい」
「気を付けてな、アーデ」
「はい、今日もよろしくお願いします」
昨日の内に買って来てたパンを割りハムと野菜を挟んだ惣菜パンにして、木のマグカップに果実水を注げば朝飯の完成。食べ盛り育ち盛りなリリのためにもう少し奮発したいので稼ぎたい気持ちはあるのだが、今日は軽く武器の確認をしたら早めに上がって適当に金属インゴットやちょっとした薬品を買って来るつもりだ。
鎌槍が使えそうならそのまま使って、ダメそうなら買って来た材料でスキル任せに何か作れないか試す。どちらにせよ、スキルの確認は急務だ。
はい、本日もやって参りました。ダンジョンのお時間です。
なんかここ来るまでに周りの冒険者がジロジロ見てっからやっぱり珍しい見た目なんだろな。品質も相応に高い事を祈るばかりだ。今更だけど元の槍だった頃よりすげー軽いのよ。サイズ差的には少し短くなってっけど、鎌が増えた分だけ感じる重みは増してて当然なはずなんだが。
『ゴッ!?』
「いやこれやべーだろ」
なんで槍を振ったのに柄が
「蛙とトカゲも試しておくか……?」
意識を集中すると、なんとなく武器の状態が分かる。未熟な腕で振るわれても損耗はほとんど感じられない。威力的にも集団戦を十分にこなせるし、二層で狩ってたら荒らしと言われそうな雰囲気がある。
まぁ、武器頼りの戦闘になってる自覚はあるので封印かなぁ。安物の槍で下手なりにちゃんと技術を磨いて、ウォーシャドウに挑む勇気が持てたら改めて世話になろう。その後も初進出する場合の様子見に使う感じで。
てか
「良いもん持ってんじゃねーか、小人風情がよ」
「お前にゃもったいねーから俺らに寄越しな!」
「素直に渡したら命だけは助けてやっても良いぜぇ」
はい、三層で狩りしてたら汚っさんが釣れました。ファ○ク。
「……チッ、黙ってねぇでさっさと置いてけやゴルァ!」
「もうやっちまおーぜ、誰か来る前によ」
「あーあ、早く渡さねーから。お前が悪いんだぜ?」
ギルドに判断を任せたら正当防衛は認めてもらえるだろうが、身の丈に合わない武器を持ってソロとか誘ってる様なもんだって注意されそうなんだわ。冒険者的に考えてもソロのパルゥムとか好意的に見ても戦力に不安有だろうし、追い剥ぎ連中からすればカモでしかない。
「オラッ、いい加減……」
「うぜぇ」
ヒュン、と風切り音が一つ。次いで、ポスン、と何かが落ちた音。
まぁ、鎌槍振って手を伸ばして来たモブAの手首落としたよね。
「ぎ、ぎゃああああ!?」
「な、なんだテメェ、やんのか!?」
「舐めた真似してくれるじゃねぇかガキがぁ!」
悲鳴と怒声を発してはいるが、完全に腰が引けてるのは草なんだわ。言い訳するけど親父とペアでやってた時もちょくちょく絡んできたのがいて痛い目に遭ってたから対人に躊躇いないんだわ。喋る強化種のゴブリン扱い。『
力関係はわからせたしこのまま帰っても良いけど、今のままじゃすげぇ武器持ったソロのパルゥムってカモの情報が流れて終わりだよな。後で闇討ちされる危険性もあるから潰すか?
「人顔した毛皮のない喋るコボルトとか初めて見たわ。しかも三匹。新種か?」
「んだとコラァ!?」
「おい、こいつ実はやべぇんじゃ……」
「俺の手ぇぇぇぇ!」
なんだろう。声が重ならないよう順番に喋るのすげー違和感。余裕の表れか何かか? とりあえず発言が弱気になった奴は残してもいいかも……いや、喉元過ぎればで仲間集めてリベンジしに来る未来しか見えねぇわ、殺そう。
「とりあえずお前は黙……あ」
「あぁ?」
『グルァゥ!!』
「あぁぁぁぁぁあぱっ!」
「ひ、ひぃぃぃぃびっ!?」
「モ、モンスター!?」
なんということでしょう。ずっと叫び続けてモンスターを呼び寄せているナチュラルトラップコボルトモドキを一突きして黙らせようと思ったら、今まさに本家コボルトが向こうから集団で走って来るではありませんか。とりあえず警戒態勢のまま待機してみたよね。
その結果、ちょうど目覚まし時計を止めるが如く叩かれた頭が胴体にめり込み死んだ。どこぞの司教による経典アタックを思わせる力強い一撃だった。
それに驚いている内に後続コボルトが押し寄せて来て、前門のアタシ後門のコボルツって感じに挟み撃ちされてた。弱腰君は叫びながらそのままビンタされて首がフクロウみたいな角度で回転して事切れた。
「た、たす……」
何か言いかけてた最後の一人に至っては前後から首を噛み千切られて終了。実に呆気なく片付いたが、こいつら普段どうやってモンスターと戦ってたんだろう。まさかその歳でピカピカの一年生だったのか?
まぁ、そんな強者ムーブのコボルトも強化種とかでは全然なかったので鎌槍の前に倒れた。アタシが凄いんじゃない、武器が凄いんだ。
戦闘終了という事で武器に付着した血肉を振り払い、推定レアコボルト(迫真)三匹の遺品を物色する。予想通りではあるが、金銭は少ないしポーションも飲み掛け。まぁ無い袖は振れないから仕方がない。この端金で勘弁してやるぜ、ぺっ。
一応、リーダー格の武器だけ持ってギルドに報告しておくか。死体はダンジョンが吸収してくれるはずだから放置で。一瞬ゴールデンなカムイを思い出して『
防具も皮鎧だし、落ちこぼれた食い詰め者って感じ。家族もいなそうだし、こんな奴らのために気分を損なうとかもったいねーからどこまでも貶めて自己肯定させてもらうわ。来世では絡んでくるんじゃねーぞ。
「つーわけでして」
「なるほど。災難でしたね」
絡まれたんで逃げ切れないと思って応戦した。途中でコボルトの群れが乱入して来たので警戒してたら、向こうがロクな抵抗もできずに全滅させられてた。コボルトの群れはこちらで始末したので、せめて遺品をと思い武器を持って帰って来たが、パルゥムの体格では一人分が限界だった。
神に真偽確認されるかも知れないし、こちらの責任を問われるような内容でもないので素直に受付のお姉さんに報告した。
外見の特徴も合わせて報告したので、意外と見つかったりしてな。神は『
「冒険者やってると日常だろうけどな。今回はたまたま一人だったけど普段はちゃんと先輩方いるし」
「そうですね。いくら若くても女性が一人は褒められたものではありません。最近は
「っす。じゃ、今日はもう上がりなんで。お先しますわ」
「はい。お疲れ様でした」
親切だぁねぇ。アドバイザーは頼んでないが担当ではあるので今後も何かと世話になるとは思うが、冒険者なんてのは命が軽い商売だ。擦れたり潰れたりしないで欲しいな。
意図せぬ出来事はあったが、早上がりは予定通り。帰る前に北西の冒険者向けな店と、南西の輸入品関係を扱う店を冷やかすとしますか。