そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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53.失敗しました。眼晶下さい。

「通信用の魔道具(マジックアイテム)か……」

「信用も信頼もねェからまだ早ェって考えは分かるがよ、お仲間っぽいのは保護した方がいいんだろ? だがアタシは単独の冒険者に過ぎねェのよ。長々と連れて歩くだけでも相当なリスクだし匿う場所なンぞねェぞ。それとも見つけたら見逃すだけでいいのか?」

「そこを突かれると弱いな。しかし見たところ君も魔道具作製者(アイテムメイカー)なのだろう? 自作を試みるいい機会だと思うのだが」

 

眼晶(オクルス)の提供は……無理そうですねクォレハ。作製能力もアタシの見極めに含まれる系?

復帰したフェルズから自己紹介してもらった際に噂の『ギルドの幽霊』かってカマかけして、ついでに雇い主(ウラノス)の見当をつけて、闇派閥側って(こっちの)身の上を説明してからスパイの売り込みしたのがまずかったかなぁ。順番がなー。魔道具(アクセサリー)渡すの後回しにして、短期間で上級冒険者入りした新気鋭で『異端児(ゼノス)』の味方ってだけの立場だったら支援としてアイテムもらえた可能性あったんじゃなかろうか。まぁ後の祭りだが。

一応、スパイ契約は持ち帰りで前向きに検討って事になったし、顔合わせが済んだ時点で最低限の目標は達成できちゃいるんだ。最低評価でしかないが。

前向きに検討って聞くと普通なら後で今回はご縁がなかったとお祈りメールされる流れだが、この先いつ現れるか不明な『異端児(ゼノス)』に味方できる相手を切り捨てられるかって話よな。でもギルドの持ってる情報だとアタシまだLv.2のままなんだよな。大した影響力ないから切り捨てるのにためらいなさそう。馬鹿正直に報告して【ソーマ・ファミリア】のランク上げて税金高くする意味がねぇからしゃーない。

 

「ふぅン? まぁ、それならそれで仕方ねェな。リド、野生のお仲間を見つけたら20階層(ここ)に連れて来る感じでいいか? 掃除のついでに魔石食わせときゃ自給自足できる強さになるだろうし」

『いいのか? けど、下層や深層で見付けちまったら……』

「そいつの気性とサイズ次第だが、輸送だけなら手間はかかンねェのよ……コイツみてェに」

「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

あくまでも『異端児(リドとレイ)』へ公開する体で【異界倉庫(切り札)】を見せる。両手を前に差し出しながら小声で詠唱すれば、取り出されたエイジャが腕の中に落ちてくるので受け止めて抱き留める。柔らかふわふわもふもふボディに一片の陰りなし。日々のケアが、科学が勝利した瞬間である。ほっほっほ、余は満足じゃ。

で、それを見たフェルズが今日一番の驚愕を見せた。

 

「い、今のは!? 何が、いや、どうやった!?」

「テンションたっけェなオイ」

『まーた悪い癖が出たよ』

『仕方ない事かモしれませン。私モ新しい歌ヲ前ニしたら……』

『あー、そう言われたらオレっちも人間の作った珍しい道具とか見たら気になるけどなー』

 

800年生きてこれって、やっぱりポンコツなのではなかろうか。逆に800年生きたからこれの可能性もあるか。精神は人間のままだろうから耐久限界を迎えててもおかしくないんだよなぁ。でも不老不死になった原因が不変とか再生とかの効果なら壊れたくても壊れなくなったとかありそう。だからって別に対応を変え(優しくす)る理由にはならんけど。

それに比べてリドとレイの落ち着き具合よ。つーかみんな魔道具(マジックアイテム)だと思ってる? やっぱ歴史のどこかで開発されてたんだろうか、アイテムボックスとかマジックバッグとかそんな感じの。そういやマジックといえばテープならあったな。登録商標じゃない場合は面ファスナーってやつ。わかるか? わかるな? 支払いは任せろーバリバリができるんだよ! オラリオでは!! どうでもいいわ。使ってたら神がめっちゃ馬鹿にして来そうだなーとは思うけど。

 

「それこそ自分で考えてくれや大先輩。自分で試みるいい機会なんだろ?」

「ぐぬぬ」

 

実際に精神力(マインド)消費して炎だ氷だ雷だって現象を起こす魔法なんてもんがあるなら、転送の類もそこそこいけると思うんよ。そもそも天界の神は普通に瞬間移動するって話だし。

まぁそれは『神の力(アルカナム)』由来だろうから再現は難しいとして、魔道具(マジックアイテム)で考えればルーラやバシルーラみたいな超高速移動は行けそうな気もする。追突事故が多発するから無理かね。

いずれにしろ足りないのは理論、その前段階の発想やそれを生み出す知識か。要は教育が大事って結論だな。神は教えちゃくれないが。全知零能だもんなー情報を持ってたとしても誰かに教えるのは能力の方だからしゃーない。零能と無能の違いに思いを馳せる今日この頃。コンプラ問題?

ヘカテーとか地上にいねぇのかな。ギリシャ系列ならいそうにも思えるが、冥界関係の神だとすれば真面目に仕事してる可能性も高いか。漆黒兜(ハデス・ヘッド)でお馴染みハデスの妻がデメテルの団長やってる世界だけどな。でも同郷とはいえ他所の派閥(ヘルメス)の眷族が作った魔道具(アイテム)に名前使うなんて文字通りに神をも恐れぬ所業なわけで、アスフィの生存がそのまま天界で働いてる可能性の補強になるんじゃねーかな。やっぱ真面目だわ。一応、冥界に魂を運ぶ役(ヘルメス)だから許されてる可能性は残されてるか? どうでもいいや。

団長と言えばヘカテー関連にはガランティスとかいう強そうな名前した、ヘラクレスの母の侍女やってた経歴を持つ、イタチ系侍女もいるな。実装されるなら獣人なんかね。オッタルみたいに獣化スキル持ってそう。もしくはイザナミだ。

 

「まーリド達に護身用の魔道具(アイテム)は配ったしアタシは狩りに行くわ。後は勝手にしてくれ」

 

未だに惰眠を貪ってるようにしか見えないエイジャをリュックに詰めて、その場を去る準備は完了だ。

 

『おう! サンキューな。』

『ご武運ヲ』

「ま、待て! せめてヒントを……何をする、リド!? HA☆NA☆SE!!」

 

この骨はもうダメだ。ウラノスから恩赦の確約取ったら関係を断とう。いやまぁどう足掻いたって『異端児(ゼノス)』関連で接する事になるけどさ。今から未来がしんどい。自分そっくりな人形兵(ゴーレム)作って常に『異端児(ゼノス)』の中に紛れ込ませて、機械的な応答させてれば誤魔化せねーかな。さすがに無理か。

 

『んじゃーなネキっち! 今度はダンジョンのウマイもん用意しておくからな!』

「あー、それならアレだ。リド達の生え変わる鱗とか羽根とか、加工できそうなもんで余るのがあったらそいつくれ」

『ん? そんなんでいいのか?』

「強化種のドロップアイテム相当だからな。それこそわざわざ魔石食わせてから落ちるのを祈って狩るのは地味に面倒なンだわ」

『へぇ、わかった。みんなにも伝えて協力してもらうわ』

 

うひょーい市場に流せば十万百万単位のヴァリスが動く品々をもらえるとか素敵やん? 強化種自体が言ってみれば全身異常発達したようなもんだし『異端児(ゼノス)』古参ともなれば全身ドロップアイテムの可能性なんよ。まぁ錯乱してたフェルズに見られる事なく渡した魔道具(アクセサリー)はそれぞれ一個でも軽く億単位が動くんだが。

なんせカーバンクルの秘晶を核にした装飾品である。素材だけで億動くよね。しかも小さいのも破片じゃなく凝縮した一個ままだからな。ちな、単純な装飾品として見た場合で最低数億だぞ。そこに魔力壁も張れますとかなったら大国の国宝に指定されるわそんなん。深夜テンションに任せて作っちまった王冠なんて無駄に23個も使ってるからかなり深い階層のジャガーノート相手でも耐えれる気がするわ。でも誰が被るんだこんなもん。ナックルガードにしてピンポイントバリアパンチさせればいいのか? とりま『異端児(ゼノス)』は人知れず地上の大国に引けを取らない資産持ち集団になったぞ。だからどうしたって話だが。

 

「強化種を作り出してから狩る……? 思い付いても実行はしないぞ普通」

「あいにくと普通じゃねーのよ。一年ちょっとで【ランクアップ】する程度には色々と乗り越えてっし、そっから一年ちょっと同じようなトラブルに遭い続けてるしな」

「なん……だと……」

 

フェルズが若干あたおか見る系の視線を向けてくるんだが、骨を折ってもよろしくて?

まぁ我慢してチラッと【ランクアップ】間近ですよって匂わせておいたけどな。向こうからすれば二年半少し前、前回とほぼ同じ早さでの第二級冒険者(Lv.3)入り目前って解釈してくれるだろう。けど現実は第一級冒険者(もっとひどい)っていうね。これが愉悦か。

 

「そンじゃなー。他の連中によろしくー。神ウラノスにもよろー」

 

こうしてアタシは自由の身となった。つまり魔道具(マジックアイテム)のために潰れた予定……数が減ったカーバンクルの秘晶集めに向かう事ができるのである。たまにはその先の空飛ぶ化石も探して見るのもいいかもしれんね。何はともあれ、だ。

 

「エイジャー起きれー」

『すやすや。あいにーどもあぱぅわー。むにゃむにゃ』

 

下手に冒険者が近くいるタイミングで目を覚まして騒がれないよう、今の内に起こしておかねーとな。というわけでリュックを前側に背負い直し、リュックに手を突っ込んで額から伸びた角――秘晶をカリカリ爪で軽く引っ掻く。字面的にも音的にエロいよな秘晶。秘とか言っといて常に露出してる部位だけど。植物だっていずれ実になり種になる花をモロ出しだからヨシ! 何の話だっけ。

 

『んぉう!? ふふ、んふふふ、ちょ、やめ、止めるっす!』

「おはよう淑女(レディ)。涎は拭いておいたから安心してリュックから顔を出してもいいぞ」

『うえぇ、よだ……りょ、了解っす。え~と、ここは……ダンジョン(地元)っすね。しかも実家の近くっす!』

 

しっかり意識は覚醒したようだ。涎云々は時候の挨拶なので事実と異なってもいい。古事記にも書いてある。

 

「おう、今日こそ雄のカーバンクルを見つけて捕獲して調教(テイム)してやるからな」

『えぇ~、諦めた方がいいっすよ~。ネキには僕がいるじゃないですか』

「だからこそ、だろ。お前の番探しでもあるンだからな」

『ぼ、僕的にはまだ早いって言うか~』

 

その後も無駄話をしながら26階層の食料庫(パントリー)をはしごして魔石やドロップアイテムを集めまくった。カーバンクルの雄? アタシのログには何もないな。

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