そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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54.発見しました。大目に見て下さい。

「ほー、このご時世に【ロキ・ファミリア】が遠征ねェ……厄介だな」

 

こっそり深夜に地上へ出て【ソーマ・ファミリア】で【ステイタス】の更新というか【ランクアップ】してきた帰り道、酒場で闇派閥(イヴィルス)の酔っぱらい共から軽く情報収集したら出てきた話題がそれだった。

 

ここで問題になるのが深層の洗礼を潜り抜け38階層に向かおうとする者に立ち塞がる37階層最後の試練、『迷宮の孤王(モンスターレックス)』ウダイオスwithスパルトイなのは確定的に明らか。

アタシは【ランクアップ】を果たしたが、それはつまり上位の【経験値(エクセリア)】を稼げそうな相手が一層貴重になったとも言える。

その貴重な相手(ウダイオス)次産間隔(インターバル)的にそろそろ湧くので狩りに行く予定だったんだが、時期的に遠征中の【ロキ・ファミリア】とかち合う可能性が出てきたわけだ。

大規模遠征なら進みは遅いので、先回りする事は難しくない。その一方でウダイオスが空気を読んで遠征組の到達前に出現してくれるかと言われれば、んなわけあるかいとツッコミを入れられるか、そこまで面倒見きれまへんとすげなく扱われて終わるかのどっちかだろう。

『王座の間』で焼き肉やったら匂いに誘われて出てきたりしねーかな。骨だからなー。フライパンとお玉で死者の目覚めした方が見込みあるか?

 

最悪なのは戦闘中または戦闘終了後の始末中にかち合うケース。黒剣の存在は原作時間軸まで秘匿しておきたい。

ん? リヴィラの街から情報漏れてウダイオスからって推測されてそうだけど、そう考えればアタシが供給元だって話と合わせて詐称バレ自体はもう手遅れ(してる)か?

つーかアタシ以外に単独(ソロ)小人族(パルゥム)なんてハンデ塗れな行動をやれるヤツはいねぇよ。この世界ひろしと言えどもな……そもそもフィンには顔を知られてる可能性が高いし。

初対面だったLv.1当時の件は覚えてるか微妙だけど、数少ない上級冒険者入りした同胞(パルゥム)だから一人の冒険者として注目している可能性は低くない。

キャラ的にライラと被ってるから偽装結婚の候補からは外れてると信じたいが、リヴィラの街から広まった噂話から話題性や戦闘力を考慮して目を付ける可能性はなきしもあらずなわけで……【アストレア・ファミリア】が動いてるのってまさかライラが嫉妬して扇動してねぇよな? 割とあいつら悪ノリするし。まぁいいや。

とりあえずアタシの面が割れてる場合はLv.2が深層ソロとかいう状況なわけで、未申告なりレアスキルなり他の要因なりでチート認定待ったなしなんだわ。後処理がひたすら面倒な事になる。これにはスティンガーもぷんすこ。

仮に変声器や全身鎧で偽装しても、それはそれで情報のない不審人物が深層にいて階層主を討伐してるのは異常事態で普通に怪しすぎて問い詰めるに決まってるわな……待てよ。いっそ警戒させておくのもありか? わざわざ討伐隊を組む余裕はないと思うし、警戒を促しておけば下層深層まで冒険者が来なくなって快適になるかもしれん。

うーん、どっかの猪(オッタル)強制任務(ミッション)がてら腕試しに来そうで怖い。いやまぁLv.差が一つならそこそこ食い下がれそうな気もするが。でも獣化スキルとかいうので差は広がるっぽいからなぁ。もしそうなったら体格差を活かして狭い位置やモンスターの合間を縫って逃げるのが吉か。

 

 

 

そんな事を考えながら【ランクアップ】後のズレを修正したり【ゴブニュ・ファミリア】に強化種のドロップアイテムを卸したり、隠密全開で『星屑の庭(アストレア)』にポーション一式と無事を知らせつつヒントのヒントを書いたメモを置いてきたりで日々を過ごし、次産間隔(インターバル)より少し早めに37階層へ到着したよ、っと。直前だと一般モンスターの次産間隔(インターバル)に影響が出て遠征組の進行速度上がっちゃうかもしれんからね。

まっすぐ『王座の間』に向かうもウダイオスは発見できず。そのまま38階層に進んでもみたが、阻止しようとウダイオスが出現する事はなかった。

 

「なので有言実行、焼き肉を開始する!」

『まじっすか』

「当然。本気と書いてマジ、英語で言ってもマジだ」

『お、おぅ……よくわからないっすけど、とにかくすごいっす?』

 

このためだけに作ったバーベキューコンロを取り出し火を入れ、このためだけに買った肉や野菜を投入して焼く。香ばしい匂いが当たりに漂い、呆れ気味にツッコミや文句を言っていたエイジャも食事の態勢に入る。

 

雲菓子(ハニークラウド)って焼くともっと甘くなるんすね』

「水分が抜けて糖分が凝縮されるからな。ドライフルーツと原理は一緒だ」

『ほへー。前にもらった干し雲菓子(ハニクラ)ってやつっすよね。納得っす』

 

アタシもエイジャも体格の都合で少食なんだが、その意味じゃ完全に用意した食べ物が多すぎたよね。やる前から知ってた事ではあるんだが。モンスターが外から入って来る事もなけりゃ、上って来たりもしねぇし。

しかもエイジャはひたすら果物やカボチャのような甘味ばかりを狙ってがっついている。一応リクエストに応える形で皿に取り分けているが、湯気が立ってても平然と食っていた。どうやら猫舌ってわけでもないらしい

 

「つーか、肉食わねェの?」

『食べないっす。僕は甘いものでお腹いっぱいになる幸せを感じたいんっす』

「さよけ」

 

偏食に関しては野生のモンスターも変わらないと思うのでスルーしていい気もするが、リリや後輩『異端児(ゼノス)』が真似して栄養の偏りから体調をくずしたり病気になられても困るんだよな。いつか修正した方がいいんだろうか。

 

とりあえず、結論から言うとウダイオスが誘われて生まれてくる事はなかった。

 

 

『……(ぷるぷる)』

「あー、エイジャ、通訳」

『オナカ、スイター。ゴハン、ホシイ。だそうっす』

「おう、そうかそうか。正直用意しすぎてもったいない精神が唸り声をあげてたんだ。助けると思って食ってくれ」

『……(ぷるぷる、うにょーん)』

「……エイジャ、通訳」

『モウチョットー。届かなくて困ってるっぽいっす』

「うん、熱々の鉄板だからな? 上に乗ったら焼けて死ぬぞ? 皿に取り分けてないアタシが悪いよな、そうだよな。多少の熱さなら平気か? あ、そう」

『途中から理解し始めたっす!?』

 

はい、ウーズです。別名スライム。この世界じゃなかったら最弱をゴブリンと争うモンスターの代表格であり、テイムした後は最強への道を突き進みがちな成り上がりモンスターの筆頭でもある。だいたいドラクエのせい。

しかしながら、この世界では深層から出現し始める事からわかる通り強敵……うん、強敵である。

粘液としか形容できない体は、想像に違わず毒や酸で構成されている。そのため、普通に斬ったり叩いたりした場合は飛び散る返り血ならぬ返り粘液を浴びる危険性があるし、武器もダメにされてしまう。

風来人並に近接戦闘が主体になる冒険者達にとって、武器の劣化がワンセットになるウーズの存在は割と致命的な要素だ。深層から帰るにも武器が使えないと簡単には行かなくなるし。だからサポーターや鍛冶師(スミス)の協力を仰ぎ、不壊属性(デュランダル)や予備の武器を用意する必要があるんですね。

魔法や魔石を使って燃やしたり凍らせたりすれば安全に倒せて魔石も回収できるが、回数制限のある方法で倒すよりは逃げたり通り抜け(スルーし)たりが賢いやり方かと思われる。

魔石が丸見えなので、実は投石なんかでも一発なんよね。深層まで来るのは通常最低でも第二級冒険者なわけだし。なお闇派閥(イヴィルス)の火炎石集め。まぁ、そもそも石ころが他ならぬウーズに掃除されてるわけだが。

 

『……(みょいんみょいん)』

『オイシー、だそうっす。体の動きは言及ないから多分喜びの舞っす』

「そうか。まだたくさんあるけど急がなくてもいいからな」

『……(ぷるぷる)』

 

で、このウーズなんだが、他のウーズに追われながら王座の間(ここ)へやって来た。

白状すると、普通にノロノロと集団で遅いに、じゃなく襲いに来たようにしか見えず、先頭のこいつが『異端児(ゼノス)』だとは思わなかった。

が、後ろの集団から粘液をぶっかけられてたので怪訝に思ってる内に、先頭のこいつがこっちに向かってアピールするかのように体を器用に変形させていたので、これは普通のウーズじゃないな、と。

そのタイミングで甘い物(デザート)は別腹だとか抜かして焼いてない果実に夢中だったエイジャが声を受信したらしく、助けるっすと叫びながら即座にダッシュ。そしてくるくる前回りしながらジャンプ。

そうして展開された魔力壁の前に追跡者達はあまりにも無力で、哀れそのまま魔石ごと圧し潰されてしまいましたとさ。離れた地点から見てた感想としては、遺跡にありがちな大玉転がしの罠に潰されたみたいだったな。

このとき魔力壁の悪意センサー的なもんにも引っ掛からなかったし、ようやくアタシも先頭のウーズは『異端児(ゼノス)』だと確信したわけだ。地味にエイジャがいなかったら後続と一緒にまとめて焼いてた可能性が高いから、エイジャはお手柄である。

 

『……(のびー、ぐでー)』

『オナカ、イッパイーだそうっす』

「お粗末様。とりあえず一緒に来るか?」

『……(ぷるぷる)』

「オーケー、ちょっとした手品で場所を移動するから、抵抗せずに受け入れてくれよ」

「……(ぷるぷる)」

 

肯定時は体を震わす。ちぃ、覚えた。*1*2

いやまぁ基本的には犬猫みたいな挙動してるから何となく察せなくもないんだ。齟齬を起こす可能性が高いからエイジャを挟むとしても。

つーかエイジャは何か念話(テレパシー)的なもんで通じ合ってるんだろうか。アタシには聞こえてない。バウだのニャウだののリンガルみたいな翻訳機の魔道具を作るべきか? 名前はスラリ……そのままだとまずいな、戦車になる。

いや待て、流動性のある粘液ボディで操縦するタイプの外装……ありだな! ところでリビングアーマー的なモンスターっていたっけか?

それこそスパルトイはいるんだから、他にも冒涜された死者(アンデッドタイプ)というか実際にはそれを模した(っぽい)モンスターの存在は許容範囲よな。

人形兵(ゴーレム)も似たようなもんだし……っていうか人形兵(ゴーレム)を量産、普及させて紛れ込ませてもいいのか。

 

 

そんな事を考えてる内にウダイオスが出てたらしいんだけど、考え事に夢中で流れ作業のごとく自然と爆殺してたらしい。なんか、色々とゴメンな。

あとエイジャは黒剣の確保とウーズの護衛ありがとう。そしてウーズは覚悟させといて倉庫収納してなかったわ、すまんやで。

*1
ここでのちぃ、は舌打ち。ガンダム乗ってる天パ達を参照

*2
覚えた。は第三部のアヌビス神




脚注を解禁すると全文に脚注付けるネタに走りたくなる病を発症しそうなので我慢していましたが、今回ばかりは絶対に通じないだろうなって身内ネタだったので補足入れときました。そんな物を使うなって話ですが。
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