そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「ほー、このご時世に【ロキ・ファミリア】が遠征ねェ……厄介だな」
こっそり深夜に地上へ出て【ソーマ・ファミリア】で【ステイタス】の更新というか【ランクアップ】してきた帰り道、酒場で
ここで問題になるのが深層の洗礼を潜り抜け38階層に向かおうとする者に立ち塞がる37階層最後の試練、『
アタシは【ランクアップ】を果たしたが、それはつまり上位の【
その
大規模遠征なら進みは遅いので、先回りする事は難しくない。その一方でウダイオスが空気を読んで遠征組の到達前に出現してくれるかと言われれば、んなわけあるかいとツッコミを入れられるか、そこまで面倒見きれまへんとすげなく扱われて終わるかのどっちかだろう。
『王座の間』で焼き肉やったら匂いに誘われて出てきたりしねーかな。骨だからなー。フライパンとお玉で死者の目覚めした方が見込みあるか?
最悪なのは戦闘中または戦闘終了後の始末中にかち合うケース。黒剣の存在は原作時間軸まで秘匿しておきたい。
ん? リヴィラの街から情報漏れてウダイオスからって推測されてそうだけど、そう考えればアタシが供給元だって話と合わせて詐称バレ自体はもう
つーかアタシ以外に
初対面だったLv.1当時の件は覚えてるか微妙だけど、数少ない上級冒険者入りした
キャラ的にライラと被ってるから偽装結婚の候補からは外れてると信じたいが、リヴィラの街から広まった噂話から話題性や戦闘力を考慮して目を付ける可能性はなきしもあらずなわけで……【アストレア・ファミリア】が動いてるのってまさかライラが嫉妬して扇動してねぇよな? 割とあいつら悪ノリするし。まぁいいや。
とりあえずアタシの面が割れてる場合はLv.2が深層ソロとかいう状況なわけで、未申告なりレアスキルなり他の要因なりでチート認定待ったなしなんだわ。後処理がひたすら面倒な事になる。これにはスティンガーもぷんすこ。
仮に変声器や全身鎧で偽装しても、それはそれで情報のない不審人物が深層にいて階層主を討伐してるのは異常事態で普通に怪しすぎて問い詰めるに決まってるわな……待てよ。いっそ警戒させておくのもありか? わざわざ討伐隊を組む余裕はないと思うし、警戒を促しておけば下層深層まで冒険者が来なくなって快適になるかもしれん。
うーん、
そんな事を考えながら【ランクアップ】後のズレを修正したり【ゴブニュ・ファミリア】に強化種のドロップアイテムを卸したり、隠密全開で『
まっすぐ『王座の間』に向かうもウダイオスは発見できず。そのまま38階層に進んでもみたが、阻止しようとウダイオスが出現する事はなかった。
「なので有言実行、焼き肉を開始する!」
『まじっすか』
「当然。本気と書いてマジ、英語で言ってもマジだ」
『お、おぅ……よくわからないっすけど、とにかくすごいっす?』
このためだけに作ったバーベキューコンロを取り出し火を入れ、このためだけに買った肉や野菜を投入して焼く。香ばしい匂いが当たりに漂い、呆れ気味にツッコミや文句を言っていたエイジャも食事の態勢に入る。
『
「水分が抜けて糖分が凝縮されるからな。ドライフルーツと原理は一緒だ」
『ほへー。前にもらった干し
アタシもエイジャも体格の都合で少食なんだが、その意味じゃ完全に用意した食べ物が多すぎたよね。やる前から知ってた事ではあるんだが。モンスターが外から入って来る事もなけりゃ、上って来たりもしねぇし。
しかもエイジャはひたすら果物やカボチャのような甘味ばかりを狙ってがっついている。一応リクエストに応える形で皿に取り分けているが、湯気が立ってても平然と食っていた。どうやら猫舌ってわけでもないらしい
「つーか、肉食わねェの?」
『食べないっす。僕は甘いものでお腹いっぱいになる幸せを感じたいんっす』
「さよけ」
偏食に関しては野生のモンスターも変わらないと思うのでスルーしていい気もするが、リリや後輩『
とりあえず、結論から言うとウダイオスが誘われて生まれてくる事はなかった。
『……(ぷるぷる)』
「あー、エイジャ、通訳」
『オナカ、スイター。ゴハン、ホシイ。だそうっす』
「おう、そうかそうか。正直用意しすぎてもったいない精神が唸り声をあげてたんだ。助けると思って食ってくれ」
『……(ぷるぷる、うにょーん)』
「……エイジャ、通訳」
『モウチョットー。届かなくて困ってるっぽいっす』
「うん、熱々の鉄板だからな? 上に乗ったら焼けて死ぬぞ? 皿に取り分けてないアタシが悪いよな、そうだよな。多少の熱さなら平気か? あ、そう」
『途中から理解し始めたっす!?』
はい、ウーズです。別名スライム。この世界じゃなかったら最弱をゴブリンと争うモンスターの代表格であり、テイムした後は最強への道を突き進みがちな成り上がりモンスターの筆頭でもある。だいたいドラクエのせい。
しかしながら、この世界では深層から出現し始める事からわかる通り強敵……うん、強敵である。
粘液としか形容できない体は、想像に違わず毒や酸で構成されている。そのため、普通に斬ったり叩いたりした場合は飛び散る返り血ならぬ返り粘液を浴びる危険性があるし、武器もダメにされてしまう。
風来人並に近接戦闘が主体になる冒険者達にとって、武器の劣化がワンセットになるウーズの存在は割と致命的な要素だ。深層から帰るにも武器が使えないと簡単には行かなくなるし。だからサポーターや
魔法や魔石を使って燃やしたり凍らせたりすれば安全に倒せて魔石も回収できるが、回数制限のある方法で倒すよりは逃げたり
魔石が丸見えなので、実は投石なんかでも一発なんよね。深層まで来るのは通常最低でも第二級冒険者なわけだし。なお
『……(みょいんみょいん)』
『オイシー、だそうっす。体の動きは言及ないから多分喜びの舞っす』
「そうか。まだたくさんあるけど急がなくてもいいからな」
『……(ぷるぷる)』
で、このウーズなんだが、他のウーズに追われながら
白状すると、普通にノロノロと集団で遅いに、じゃなく襲いに来たようにしか見えず、先頭のこいつが『
が、後ろの集団から粘液をぶっかけられてたので怪訝に思ってる内に、先頭のこいつがこっちに向かってアピールするかのように体を器用に変形させていたので、これは普通のウーズじゃないな、と。
そのタイミングで
そうして展開された魔力壁の前に追跡者達はあまりにも無力で、哀れそのまま魔石ごと圧し潰されてしまいましたとさ。離れた地点から見てた感想としては、遺跡にありがちな大玉転がしの罠に潰されたみたいだったな。
このとき魔力壁の悪意センサー的なもんにも引っ掛からなかったし、ようやくアタシも先頭のウーズは『
『……(のびー、ぐでー)』
『オナカ、イッパイーだそうっす』
「お粗末様。とりあえず一緒に来るか?」
『……(ぷるぷる)』
「オーケー、ちょっとした手品で場所を移動するから、抵抗せずに受け入れてくれよ」
「……(ぷるぷる)」
いやまぁ基本的には犬猫みたいな挙動してるから何となく察せなくもないんだ。齟齬を起こす可能性が高いからエイジャを挟むとしても。
つーかエイジャは何か
いや待て、流動性のある粘液ボディで操縦するタイプの外装……ありだな! ところでリビングアーマー的なモンスターっていたっけか?
それこそスパルトイはいるんだから、他にも
そんな事を考えてる内にウダイオスが出てたらしいんだけど、考え事に夢中で流れ作業のごとく自然と爆殺してたらしい。なんか、色々とゴメンな。
あとエイジャは黒剣の確保とウーズの護衛ありがとう。そしてウーズは覚悟させといて倉庫収納してなかったわ、すまんやで。
脚注を解禁すると全文に脚注付けるネタに走りたくなる病を発症しそうなので我慢していましたが、今回ばかりは絶対に通じないだろうなって身内ネタだったので補足入れときました。そんな物を使うなって話ですが。