そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

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56.契約を試しました。記憶喪失になる薬下さい。

いっけなーい遅刻遅刻。アタシ、ラジルカ・アーデ。私立と見せかけて市立なオラリオ小学校に通う11歳。あるときちょっとした事件に巻き込まれちゃって、その中で出会ったカーバンクルのエイジャに頼まれてダンジョンで暴れるモンスター達をやっつけるため魔法少女になったんだけど、モンスターが暴れる時間には朝も夜もないからもー大変。おかげで今朝は目覚まし時計が鳴ったのを無意識にぶっ壊して二度寝キメちゃった☆」

『ネキが壊れたっす!?』

「ハッ!? あ、アタシは今何を!?」

『あ、戻った』

「大丈夫だ……アタシは正気に戻った!」

『すげー不安しかないっす……』

 

いやぁ、失敗失敗。主従契約は無事成功した。というか余りにも何事もなかったので気が抜けたんだわ。

でもそれはアタシだけの話で、エイジャの側はそうではなかった。

魂が繋がる影響でアタシの記憶や感情がエイジャに流れ込んだみてーで、それに混乱しつつも興奮したエイジャがな、その、前世の黒歴史(恥ずかしい記憶)を列挙しつつ思い切り褒め称えてくれやがりまして。

いや剣と魔法の世界(こっちの価値観)なら当たり前な挙動ではあるんだけどさ。平成令和の日本人的には俗に言う思春期の病(中二病)なわけで。

つまりはめっちゃ恥ずかしかった。現実逃避する程度には。

ちなみに逆方向の影響はほんの少ししかなかった……そのほんの少しがアタシへの好意と感謝で埋め尽くされてて嬉し恥ずかしなわけだが。この辺りは水が低い方に流れるというか海に繋がる川というか、そんな感じだと予想できる。

 

「まァ、今のところはデカい問題とも言えねェ影響しか確認できてねェから様子見だな。何か気づいたら教えてくれ」

『了解っす!』

 

主従契約と現実逃避でそれなりに時間は潰れただろう。エイジャを定位置(リュック)に戻して、周囲を警戒しながら上り階段を目指した。

 

――しかし便利っすね、念話(これ)

「声出てンぞ未熟者」

『おぉう、無意識だったっす』

 

帰り道、主従契約の特典である念話を試してみたのだが、声に出さない会話というのは中々に厄介だった。

というのも、魂の繋がりを利用してるせいで念話中は考えている内容がそのまま独り言を呟いてる感じになる。アタシの場合は思考の並列化をしているので背景の音がめっちゃうるさい電話みたいになってるらしい。会話にはなっているのでカクテルパーティ効果か何かでメインの言葉を拾えてはいるのだろうが、背景の方で褒美に甘味を与えるか考えてたりするとそっちに反応する。

口には出さないけど言語化している部分が聞き取れる声として伝わる形式なので、直感や閃きのような飛躍(ワープ)にも似た思考の過程は30倍速とかで圧縮された雑音じみてるんだそうな。アタシにとって現状唯一のサンプルとなるエイジャの思考は単純な一本道なので確認はできてないが。

 

――それで、さっきの子とも契約するんすか?

――そりゃーな、それが本命だ

――なるほどー(でも一番は僕っすもんねー! ふんふーん♪)

 

こんな感じに本人(?)は声に出してるつもりのない部分も聞こえるんよね。大抵はしまいこんでるつもりの本音だったりするから調整がガバガバで感情がダイレクトに反映された小声だったりクソデカ声だったりする。

つい反応しそうになるが、見て見ぬ振り……聞こえないふりか? ここはそっとしておく優しさが汎用性高いか。そんな感じ。

 

 

で、新しい『異端児(ゼノス)』の確認と保護の報告をするべく、すっかり馴染みになった20階層の食料庫(パントリー)に立ち寄った。今日も今日とてモンスター達の侵入者(おきゃくさま)に対する襲撃(おもてなし)には余念がない。まぁさすがにLv.5ともなれば【経験値(サービス)】には期待ができないが。

 

――こねェな

――留守っすかね?

――どーだろなァ。アタシらとは別口でお仲間を見つけたのかもしンねーし

 

待てども待てども便りはなし。いやまぁ前触れもなく直に来るんだが。

暇だからエイジャをリュックから放流して、アタシはアタシで食料庫(パントリー)特産の謎蜜を採取しておく。人間にとっては毒なのだが、野生のモンスターをおびき寄せる罠とかに使えるし。あとは、まぁ、人体実験用?

 

なんだかんだ目的地までの道中では、未だに怪物進呈(パスパレード)を仕掛けてくる冒険者が後を絶たない。そいつらの中で特に気に入らないと思った連中を標的に食わせて生き地獄を見せたいのだ。心理的にもすげーダメージ高そうだしモンスターの餌食わされるって。

単独(ソロ)小人族(パルゥム)が馬鹿にされるのはわかるんだが、常識から外れたスタイルでも生存可能な時点でやべーやつだって予想はできないんだろうか。仮にも中層に進出してくる冒険者が。

つーかアタシ上級冒険者になったんだけど知名度なかったりするん? リヴィラの街だと完全に会話のできる歩く爆弾みたいな扱いなんだけどなぁ。

街の雰囲気に合わせてるだけで内心じゃ見下してる感じだろうか。テメーら街で見た面だってわかってんだぞこっちは。酒場で奢りにしてやった恩も忘れたか畜生共が。そうか今度からあいつらは除くって店主に伝えればいいのか。

こっちが格上になったので現行犯をデコイにする必要もなくなったのも悪いのかね。普通に助けてるだけだし。礼なり謝罪なりの言葉一つもない時点で敵認定だが。

それ以前にまず追い込まれるなよって話なんだよ。何年上級冒険者やってて敗走してんだ連中。いやまぁアタシだって今でもちょくちょく敗走するんだが。ホラ、生理現象とかさ。タイミングってあるやん?

モンスター相手に羞恥心とか馬鹿じゃねーのとか、モンスターの返り血なんて汚物の極みを浴びてんのに自分の排泄物くらい気にするなよとかって意見はごもっともすぎるんだが、後始末を考えるとどうしてもね。アタシがソロやってる理由の一つでもあるからなー。根は深いぞ。

親父からそれ系の失敗はあるものとして認識しとけって教わったけど、それでも本人は撥水性の高いマントとか返り血の対策してたし。アタシの場合は【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】で分解できるけど、精神力(マインド)との兼ね合いで撥水加工した衣類は使ってる。

ちなみに調合と神秘全開にしたら植物由来の吸水ポリマーを作れたので、そのまま紙オムツを作れる。携帯用トイレも作れる。

 

――なら、今の内にさっきの子の名前だけでも決めておいたらどうっすか?

――残念ながらアタシにネーミングセンスを期待すンのは無駄だ

――ちなみに、候補を挙げるとしたら?

――うーむ、そうだな……げろしゃぶ、とかは『ありえないっす!?』ですよねー。

 

そんな会話を続けながら、時折やって来るモンスターを始末していのたが、ただ駄弁るだけというのも刺激が足りず、さりとてダンジョン内ではまったり過ごす事も叶わず。

次第に飽きてきた……というかやってみたい事について話し合っていたら待機状態に対する不満が出て来たので気分転換の必要が出て来たので、ウーズを取り出して稼いだ魔石を食わせる。

移動速度からするに、このウーズは生まれたてなのだろう。でなかったら周辺をさまようモンスターに殺されていたはずだし。

そう考えると、主従契約による情報の流出は劇薬になりかねない。理解できる知能や受け止める容量があるかも不明だし。いや、逆に考えてみるのはどうだろう。覚えておられない内に済ませておいた方が? でもパンクして魔石割れるとか起きそうで怖いからやっぱりためらうわ。

 

「よし、日を改めるか」

『了解っす。帰りに雲菓子(ハニクラ)採ってって欲しいっす』

「あいよー。それじゃ二人とも送るぞー【呑め】」

 

さて、それじゃリクエストを叶えるために18階層へ――

 

――ネキー! 何か知らない場所に飛ばされたっすー!?

 

……なんて?

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