そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
思わず漏れた本音という名の失言により、ついに振り下ろされた拳骨。脳天を撃ち抜かれたアタシだが、何とか致命傷で済んだ。
しかし自分から
さっき自分で普通に
明日ギルドに【ランクアップ】報告とLv.3までの冒険記録提出してくるけどさー。普通に考えたらわざと申告してないってなるよな。主神の引きこもり具合とアタシの年齢でギリギリ見逃して待ってくれてる感じだよな。担当のお姉さんに差し入れするか。
でも明日報告してもLv.2から3までは二年四ヶ月でかなり早いんだよなー。最初のゴライアスソロからは一年半たってて、アタシ自身が打ち上げ花火になる事だとかやらかしたのから見ても何カ月か経ってるんだもんなぁ……途中一年くらい闇堕ちしてた間の時系列が曖昧だから正しいかわからんが。つーか怒涛の毎日過ぎるな振り返ると。最初の時点で年齢詐称だとかしてるし記録とも合ってねぇっていう。
でも多分だけど、あの人って
つーか邪神の勧誘してきたタイミングも【アストレア・ファミリア】の
「それで?」
「あン?」
「あんたの作った酒とやらを出しなよ。持ってきてないのかい?」
「味見してもらう用だから量はねーぞ?」
「構いやしないよ……どれどれ」
映画とかで見て格好良く見えたから製作したスキットル――だだしガラス製――をポーチから取り出して、ミアさんに渡す。ちなみに中身はブランデーになるんかね、区分的には。ウィスキーと悩んだが、穀物より果実のが手に入るんよねダンジョン。漫画で読んだふんわり知識からでも再現してくれるとかスキル様々ですわ。
個人的にはチタン製が一番クールだとは思ったんだが、まぁ、中身の色を見せる意味で透明なガラスを選びました。巧みの技をご堪能下さい……手渡したら即開けて飲んだわ。あの、見た目……。
――なにも変わらねぇのかよ……結局
――げ、元気出すっすよー
仲間からの熱い同意と応援に目頭が熱くなる。自棄気味に煽った
「限界も見極めず酒を一気飲みするんじゃないよ!」
「アバーッ!!」
一気飲みへの注意と共に放たれた二度目の拳骨! ネズミは二度噛めばライオンをも倒すと言うが、ならばライオンが二度ネズミを踏めばどうなるか……最早その答えは言葉にするまでもないだろう。アタシは死んだ。練度が足りなかったのだ。
いやまぁ生きてるが。Lv.3相手に手加減したと思われる拳骨だったのでLv.5の皮膚や骨にはそこまで――いやめっちゃ痛いわ。ゴライアス相手に遊んで花火になったときくらい痛ぇの。こう、芯から響いてるというか。
で、拳骨を振り下ろした当人はスキットルの中身をイッキしてくれてるんだが。ハーフドワーフなんだっけ? 限界にはまだまだ余裕があるか。
「しかしこいつは効くね! 香りもいい。気に入ったよ」
「そ゛い゛つ゛ァ゛良゛がった」
「ただ、どうしても相手は選ぶね。ドワーフなら大喜びだろうけど、さて……」
「あー、安定供給できるのは週に樽二つだぞ」
「増やしな」
「……それで増やせるならそいつは職人じゃなく詐欺師か魔法使いだよ」
取引には前向きになってくれたらしいので、先に数を宣言しておく。アタシとしてはあくまで縁を結べればいいんだし、負担にならない程度には制限を設けとかないとな。定期的な出現ルートなんぞ作ったら襲撃される未来しかないから、納入も代行させる予定だし。
実際には
ところで良質街娘(笑)が聞いてたら嘘発見器に引っかかったりするんだろうか。別にできないとは言ってないからセーフかな。
「それもそうか。惜しいねぇ」
「まァ、元より漬けたり割ったり用に作ったからな。味見もなしにイッキされるとは思わなかったわ」
「ハハハ、蓋を開けた瞬間の香りだけでわかったからね! 毒だってそれこそ並大抵のじゃ効きやしないさ」
「左様で」
「しかし漬けたり割ったり、か。確かにそれなら樽二つでも足りるかもね」
「贅沢言わせてもらえるンなら、飲み比べとかには出して欲しくねーな。年単位で寝かせて仕上がる品物を使って遊ばれるのは癪だ。あぁ、それはそれとして罰ゲーム用のひたすらキツいだけの酒もあるぞ」
「安心しな。簡単に潰れられたらこっちだっておまんまの食い上げだからね。頼まれたって出してやるもんかい」
そうして価格や搬入について打ち合せをして、次の週から樽二つ納品する事になった……雰囲気的に一樽は女将自ら消費しそうな気もするな。カクテルとか漬け込みの研究もし始めるんだろうし。
ちなみに、他の酒に関しても試供品の提出を求められたんだが、こういうのって営業する側からこんなんありますけどって話を持っていくもんじゃなかろうか。お店から相談されて開発に繋がる場合もあるか。
その代わりと言えばいいのか、今回のお代は
まぁ帰り道にガッツリ
で、次の日。口約束だけで契約書の類を交わしてなかったなーと思いながらも気持ちを切り替えてギルド本部へ。冒険記録を添えて【ランクアップ】の報告をしたところ、軽く目を通した受付のお姉さんが頭を抱えていた。相変わらずのソロ、相変わらずの
とりあえず心配事として、ギルドのランクが上がるのか聞いてみた。上司の判断によるものの、恐らくは上がるとのこと。やはり第二級冒険者の価値は高いらしい。
現状、ダンジョン内での稼ぎはほとんどがリヴィラの街と【ゴブニュ・ファミリア】に流れてるからなぁ。しかもそこから【ソーマ・ファミリア】に回ってるのはアタシとリリ二人分のノルマだけ。おかげでアタシの懐は相当に潤っちゃいるがな。【
派閥に対してもアタシが原因で等級が上がって税金も上がれば、その分ノルマも上がるわけで。しゃーねーから私財を投げ出して一年くらいは通常と変わらない税金を納めるように調整すればいいか。
現状でも商会からの分け前で貯蓄される一方のはずなんだが、ソーマのテンション次第なところあるしな。いっそ実験の失敗を少なくする事で浪費も減るよう、アタシも神酒の領域に手を出したって事にしてさりげなくヒントを与えていくべきか?