そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
つーか、アレだな。黒いワイヴァーンで思い出したけどこの展開知ってるわ。アイズ・ヴァレンシュタインの【ランクアップ】に繋がる偉業で、
てーことはさっきのタナトスか。喋り始めた
さておき、アタシにとって重要なのは、アイズの
そういや今の内に無理して59階層の見学に行くべきかね? ギルドが持ってる情報――ゼウスとヘラの眷族が上げた報告じゃ氷の世界だったのに、原作時間軸だと蒸し暑い密林みたいな事になってたんだよな。事件後は原因が取り除かれて元の姿を取り戻してる可能性もあるが……まぁ別に無理する必要もねぇか。
なんて事を考えながら見物してたが、今のアイズはボロボロだった。そんな動けない小娘に向けて、最期の一撃をくれてやるべく火球を放とうと翼竜が口内に炎を溜めてたら……出入口の一つを塞いでた瓦礫が吹き飛ばされた。
――乱入してくるとはとんでもない奴だ
「んっふ」
ラピスはちょっと黙ってようか。ちょっと声漏れたやん。幸い向こうには聞こえてないっぽいけど。
予期せぬ闖入者に慌てたのか、もう十分だと思ったのかは不明だが、とりあえず本日一番に大きい火球が放たれる。広間に出てきた人物――リヴェリアが声を張り、それに従いアイズも叫ぶ。ほぼ同時に着弾。まぁ、無事だったんだが。
そっからはお手本のような逆転劇が繰り広げられて、ダンジョンの放った神殺しの刺客――物語的にはアイズの標的である隻眼の黒竜を超縮小したような存在となる漆黒の翼竜は打ち倒されたわけだ。
――これ、見る意味あったんすか?
――まァ、一応な。神がダンジョンでやらかした貴重な機会だし、ワイヴァーンが生き残った場合はこっちで片してドロップアイテムもらおうと思ってた。
――なるほどー。でもそうならなかったっすね
――話が……違うっすよ……
――僕の言葉遣いが真似られたっす!?
念話で駄弁りながら、美しい親子愛が紡がれるのを眺めていたんだが……ちょっと気なったので二人の元へ歩み寄る。
座り込み抱き合うエルフ王族の血を継ぐ母と、精霊の血を引く子。そんな二人を包む優しい
「ッ!?」
「なっ……!?」
「
ぶっちゃけ瀕死に近いんだよアイズ。別に魔法使ったら精霊の血が活性化して全回復するとか便利仕様じゃねーんだからまずは傷を癒せよ。回復魔法持ってんだろ我が名はアールヴしろや。これだから奉仕される側の頭が抜けてねぇ王女様は。
なんか頭から液体をドバドバぶっかけられて混乱の極みに陥ってるアイズたん萌え~! とか幻聴が聞こえたけどきっと気のせい。同(じ平たい)族やからなって笑顔で親指立てる幻覚というか被害妄想までしちまったわ。
しかしロキで思ったんだが、なんでアタシは
提供者のアタシも狙われるって? さっきの理由そのまま使ってから卑猥は一切ない、仮にそのように見えるのであればそれはその者の頭がピンク色なので恥じるべきって真顔でカウンター決めて全員【
「貴様、何者だ?」
「感謝より先にそれか。お高ェな、尊い血を引くお方はよ」
泣き続けてろくな反応ができないアイズを強く抱き締めながら、杖を拾ってこちらに突き付けるリヴェリア。まぁこんな至近距離まで気配を察知できないでいたんだから警戒するのはわかるんだが。つーか第一級冒険者のプライド大丈夫かね?
「まァ、いいか。【ソーマ・ファミリア】だ。後はテメーで調べろ」
「ソーマ……」
しゃがみこんで、というか膝立ちになってアイズを抱き締めてるから目線が合ってて微妙に気まずい。相手から物理的に見下されるのに慣れすぎてんなー。まぁ恐らく一生ついて回る現象だし、しゃーないか。
「その
そう、何を隠そうアイズの使ってた武器って
原作知ってるから稼げる相手って意味じゃ大正解なのはわかってるけど、同じくらい武器を大事にしないやつなんだよなぁ。未来のゴブニュ乙。後でさりげなく伝えておこう。その意味じゃリヴェリアにも伝えておいた方がいいんだろうか。無理だな、原作だと
そのリヴェリアは、こちらの所属を告げたら何やら考え始めてる。さすがに視線も武器もこちらから外してはないが。
まぁアタシとしては用件は済んだから……さすがに
「とりまケアは済んだし、もう後遺症の心配はねェだろ。好き勝手イチャついてろ」
「……待て!」
「アタシはエルフでも【ロキ・ファミリア】でもねェぞ。命令じゃなくてお願いしろや子供の教育に悪ぃ」
「ごふぅ!?」
「リヴェリア!?」
なんでか呼び止められたけどまぁ止まる必要はないわな。まさか知らん内にギルドのブラックリストに載せられたか? とりあえず足手まといを抱えてる今なら逃げ切れる。てなわけでさらばだー。
……こういうとき徒歩で去って行くと格好いいけど、向こうが走って追って来たら走って逃げる羽目になるんだよな。単純に背後から投石や魔法が飛んでこないかヒヤヒヤするし。
あと待つ側も視界から消えるまで長いからもどかしいっていうか。映像なら途中で切れるからいいけど、リアルだとそこはかとなく残念というか間抜けな行動なんだよなぁ。
「あの……」
だから走って来て服の裾を掴むんじゃないアイズ・ヴァレンシュタイン推定年齢8歳職業メイビー
まぁ単純にリリの性格が我慢強く利他的――要は自己犠牲精神が豊富って周囲にとって都合の
「何の用だ?」
「強くなるには、どうしたらいい?」
あぁ、うん。さすがは本家だ。実に頭アイズ。アタシの心に宿るミアさんの
「ふんっ!」
「!?」
脳天に拳骨。Lv.1相手なので手加減はしているが、相当に痛かっただろう。リヴェリアも殺気とかは出してないからノータッチを貫く模様。
「初対面かつ年上相手なら敬語を使え、敬語を。アタシが勝手にやった事だから回復への礼はいらねェがよォ」
なお
「けい……ご?」
「マジかこいつ」
初めて聞く単語とばかりに首を傾げるアイズ。思わず視線を向ければ、実にばつの悪そうな表情を浮かべそっと眼を逸らすリヴェリア。お前ホントそういうとこだぞ。
つーかフィンとガレスも同罪か。当然ロキもだわな……あれはあれで子供にはのびのび過ごして欲しそうだから見逃すのは仕方ない部分あるっちゃあるか? 年齢ン億歳だし人間自体が生意気で可愛い子供にすぎねぇし、本来は悪神だから清濁併せ呑めちまうし。その上で狡く賢いのがロキって神だ……後先考えない発言で吊るされる間抜けでもあるが。
こう考えるとゼウスとヘラの追放に、オラリオに留めておいたら街が戦火に包まれる危険性があるからって保護的な意味も少しはあったんじゃなかろうか。多分そこまで考えてないと思うけど。
「その、すまない」
「はァ……いや、ろくな教育もしねーで敬語がデフォなうちの妹ができすぎなンだ。本来
「私、子供じゃない!」
申し訳なさそうに謝る以上、リヴェリアには思うところもあるらしい。マナー厳しいはずだもんな。頭を下げられない王族あるあるもまぁ分からなくはないし。冒険者止めろって言いたくはなるが。
一方のアイズはこの始末。頬を膨らますな可愛いかよ。でも顔は土や灰で汚れてるのそのままだから、ハンカチと水を取り出して軽く濡らしたハンカチで吹いてやる。
頬に溜めた空気が抜けてアホな悲鳴が聞こえるが止めてなるものか。見るがいいリヴェリアよ、これが年長者の持つべき保護者力だ。アタシの場合は姉力なんで