そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「アタシじゃなけりゃぶん殴られてもおかしくねェ無礼で不躾で侮辱的な行為だァな。学ぶ事をしなかったせいで同じ人間に排斥され殺されンのがお望みかァ?」
「……(ふるふる)」
アタシの問いかけに、アイズは首を横に振る。うーん、素直。どうしてこんなになるまで放置したのかと言いたくはあるが、ちょうど自覚した
つーか、基本的に【ロキ・ファミリア】の主神と幹部三人だけで面倒見てたんだろうしな。放任主義な主神と、多忙かつ野望に腐心する団長。世間知らず継続中の副団長に、面倒見はいいが他の団員との折衝も担ってそうで手が足りなさそうな
まぁ実際、原作の門番みたいなアホは今でもいるだろうから混ぜるな危険ってのはある。性格がマトモでも思想や実力差から心が折れる危険性もあるしな。
まぁ、アタシの知ったこっちゃないが。このまま殺戮人形やってた方が神秘性は高くて
「なら、余計に学ぶこった。今後は他人の観察も追加だな。ついでに……あー、後ろの保護者、ちょっと」
「なんだ?」
「(こいつって孤児か?)」
「(……そうだ。既に両親を失っている)」
「(そうか、助かる)」
リヴェリアを手招きして、そそくさ離れて小声でプチ会議。やっべ改めて近くで見るとめっちゃ美人。しかもなんかすげーいい香りするんだけど。アタシなんて神酒フレーバーの残り香なのに。ハイエルフパワーすげぇな? あるのか知らんけど。
あと仲間外れにされたアイズが頬を膨らせてるが、その、失礼な物言いなのは百も承知で言うが、アイズにしては感情表現豊かすぎないか?
「それで、だ。尊敬する人や嫌われたくない人がいるなら常にそいつを意識しろ。テメー自身の気持ちを蔑ろにしろとは言わねェがな。そンでそいつを悲しませるな。そいつから失望されるな。優しい人ならテメーが笑顔を忘れちまってるだけで悲しむだろうし、立派な人なら周囲を大事にできないでいるテメーにがっかりするだろうさ」
「……お父さん……お母さん……」
リリに嫌われたら死ねるし、嫌われたらと考えても死にそうになる。程度はどうあれ人間なら割かし持ってそうな感情だと思う。想像力は強みであると同時に弱みでもあるわけだな。だがその弱みを利用して強くなれるのも人間だっていう。なお現状リリはアタシに対して無条件で全肯定気味っていう。チキンレースなんぞとてもじゃないが怖くてできんが。
ところでアイズが呟いたら返事するみたいに風がふわっと流れたんだが、魔法発動してるわけじゃねぇよな。偶然か? 精霊の血になんか繋がりっていうか魂の一部が残ってたりしないよな? どこぞの汎用人型決戦兵器的なサムシングじゃないよな? スマホゲーのイベントで『
「まー、教えなくても理解してるとは思うが、今のアタシが言ったのは精神的な強さが多めだ。物理的な強さなら結局は同格以上とひたすら戦い続けるのが早ェ」
「あ、うん。そっちは得意」
「アッ、ハイ」
「アイズ……」
モンスターぶっ殺に関係ある話題になった途端に輝く笑顔……と言いたいがほぼ無表情。これは
「しかし……まァ、いいか」
「?」
「今のテメーには、今のままテメーが強くなるのには邪魔になる考えだ。だからあえて言わねェでおいてやる」
「むぅ……また子供扱い」
「されたくねェならたくさん学ンで、考えるこった」
馬鹿のまま悩んでモンスターを前に刃を鈍らせたら最悪死ぬからな。そうなったら多分だけどバッドエンドかビターエンドのフラグが立つんだわ。
ベルの一途系スキルはきっかけを得たヒロインそれぞれのルートが生えてくると思うが……上昇思考に繋がるには明確な強い敵に狙われる弱いヒロインか、追いつきたいと思わせる強い冒険者か。次々新しい敵に狙われて敵の戦闘力もインフレしていくなんてのは考えにくいから、そうなると強い冒険者ヒロインが継続性あるよなぁ。候補はアイズ以外だとリュー・リオンか。
「参考までに聞かせて欲しいのだが、どんな事を言うつもりだったのだ?」
「あー、一般的な冒険者にも猛毒だぞ?」
「構わない。もし知らぬまま相対しては、それこそ軽挙に走ってしまうやも知れんからな」
言いながら、そっとアイズの耳を塞ぐリヴェリア。大丈夫? いざ聞いたらショック受けて押さえる手の力緩めてアイズに聞かせちゃったりしない? セクハラで訴えられたくねぇから代わるのは勘弁だが。つーか裾を掴んだまんまなのをどうにかしろ。
「まー、単純な話だがよ。体以外は人間と変わらねェ、話の通じるモンスターいたらどうするよ?」
「――それ、は……」
「深く潜って行くにつれて産まれてくるモンスターの能力だって高くなる。知能に振ったやつがいねェとは限らンだろうよ。そうでなくとも……天界で神が何してるか知ってるか?」
「……死した者の、魂を……ッ!?」
「気になるよなァ、知っちまったら。天界の神が死後の進路としてモンスターに転生させないなンて証明できるか? そうでなくともダンジョン内で死ンだら魂は天に昇れるのか? ダンジョンに囚われたりしねェか? 死体を食われた拍子に魂までモンスターに宿ったりは? うちの主神は趣味神だから知らンとよ」
ウラノスの神威でモンスターを地下に封じるとか、ダンジョン内で神威感知してキレ散らかす現象からすると割と不自然よな。何らかの方法で意思疎通ができて、契約を取り付けてると見る方が自然なんだわ。神話的に考えたらウラノスの配偶者なり親なりがダンジョンの正体やってますって感じか? よくよく考えたら親と妻が同一存在じゃねぇか。しかもガイアって
なんてのはさておき。理性的なようで感情的な女を感じさせるリヴェリアの反応を確認しておくか。
「まァ、問題なのはもしもを恐れる段階じゃなくなったとき――要は実物に遭遇して、しかも緊張しながらも友好的であろうと話しかけてきたら、握手を求めて手を伸ばして来たら、どーするかって話なんだわ」
「……無理だ。人間とモンスターの間にある溝は余りにも深い。個人でならまだ不可能とは言わないが、それでも私は【ロキ・ファミリア】の副団長だ。家族を殺された者を考えれば……その手を取ってやる事はできない」
ですよねー。でもそれ
しかもそんな楽な方向に逃げといて強いモンスター倒しました偉業です【ランクアップ】しましたーってのはちょっとなー。ただの蛮族じゃん。そんな中身が伴ってねーやつは単純な力で負けただけで折れるなまくらでしかねーし黒竜相手には使えねーから……気兼ねなく踏み台に使えるし、いっか。
「ならよ、一体のモンスターが多数のモンスターに襲われてて、お願いしますって助けてを求めて来たらどうするよ?」
「~ッ! お前は、何故そのような……」
すっかり青ざめたリヴェリアの、化け物を見るような眼。ゾクゾクしちゃいますわー!
――めっちゃいい笑顔してるっす。ヘルなシングにいても違和感ないっす
――これは……匹敵するか……
――冷静なツッコミありがとうございます! 忘れろ!
おっふ。若干愉悦が入ったせいで表情が崩れたか。いかんいかん。でもごめん、にやけちゃう。
「さて、な。もしかしたら冒険者やってた両親を他ならぬ
「そう、か」
「知らなきゃ良かっただろ? もしかしたら……なんて考えずに、モンスターはみんな敵だって殺し回れた方が楽だよなァ」
まぁアタシだって前世の記憶がなけりゃ想像できなかったと思う。この世界の千年以上積み重ねてきた常識だもんなぁ。要は前世でいう喋る動物なわけだし……いやめっちゃ想像してるわ。しかも喋らないしこっちを簡単に殺せる猛獣飼育して展示したりもしてるわ。どうなってんだ人間マジクレイジー。
なまじ絶滅寸前まで追い込まれてないからかもしれんな。恐竜時代からホモサピエンスが社会作ってたらオラリオみてーになったんかね。いや、肉だな。肉にならんモンスターが悪い。食欲を満たせない殺すしかない適性存在とか原始時代じゃ価値が低すぎる。
でも人間の歴史的に魔石食おうとしたり粉にして薬になるか試した奴とかいるよな絶対。つーか生きたまま魔石を体内に突っ込んで怪人になったやつ絶対いただろ。伝わってねぇのは箝口令や焚書みたいな文明破壊の成果だろうか。もしくは穢れた精霊による魔石の極彩色化が必須とかあるんかね?
これで一応リヴェリアにきっかけは与えたが、もう一押し何か必要だろうか。さて。