そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「はい、じゃあこれより戦闘訓練を始めまーす。訓練の最中は心を鬼にして厳しくいくのでそのつもりで。下手に手心を加えたせいで愛しいリリが実践でミスって怪我したり死んじまったりしたらアタシは全身の穴という穴から血を噴き出して死にます」
「死んじゃうんですか!?」
「いいかリリ。アタシは割と簡単に、そして――だからこそ頻繁に……死ぬ」
「そ、そんな……」
「だがさっき言った酷い死に方をするのは、アタシが全力を尽くせなかったせいでそうなっちまったときだ。戦闘と怪我は切り離すのが難しいから、適切に戦ってても怪我はする。その上で勝てなかったときは……実力不足だったって事だ。見極めって意味でもな」
「……はい」
作業場に戻ってきたらリリには動きやすい服装――芋ジャーに着替えてもらって、その内に念入りなトラップを仕掛けておいた。提案時点で邪神が止めようとしたくらいだし、また来ないとも限らんからな。二人の時間を邪魔などさせるものか。それでも侵入されるかも知れないんで、残念ながら今回エイジャとラピスは倉庫内にお留守番だ。
ついでだし秘晶を改造した
てなわけで邪魔が入ると想定するなら時間は一層貴重、早速訓練開始である。まずは心構えから。今回の目的は対人だからな。心優しいリリが躊躇って反撃される事態が起きないよう徹底せんと。
「まずは現状を確認しねーとだな。とりあえず思いつく全部を使ってかかって来るんだ」
「え、でも、そんな事……」
「アタシはこれでも上級冒険者だ。今のリリの攻撃じゃ、でけェ怪我はしねェさ」
「うぅ、わ、わかりました。それでは、いきます!」
すぅ、と息を吸い込み真剣な表情を作ると、リリはこちらに向かって――
「お姉ちゃんなんて大っ嫌いです!」
まさかの暴言である。いや、聞き間違いじゃないか? そうに違いない。もう一度リリの鈴の音も裸足で逃げ出す美しくも愛らしい声を脳内リピートして確かめようじゃないか……ダメみたいですね。よし、死のう。
「die……key……lie……」
――し、死んでるっす!?
――殺したぜ。あと2匹だ(震え声)
――え、僕らもっすか
「お、お姉ちゃーん!?」
こうしてアタシは今世で何度目かの臨死を体験し、三途のなのかアケローンなのかその他なのかは不明などっかの川岸で待ち構えている堕天使というか駄天使っぽいのの顔面に拳を叩き込むのであった。その後ひどい目に遭うのも恒例だったが。
「いやー死んだ死んだ」
――おかネキっす
――再起動だと!? 有り得るのか……? こんな眷族が……
臨死体験から戻って来たが、大体五分程度が経過していたらしい。
「あー、なんだ。アタシは無事だし、最初言ったみてーに割とよくある事だから、な?」
目の前には、小さな体を震わせながら俯いている最愛の妹。滴がポトポト落ちて地面を濡らしているが、罪悪感がヤバい。意識外の一撃とは言っても初手即死で戦闘終了とか、これじゃ練習にならないじゃんね。
「……ごめんなさい」
「謝るなって。見知った相手とはいえしっかり見極めて弱点を突く最高の一撃だった。上級冒険者相手に間違いなく
――誇ってくれ。それが手向けだ
――ネキが意識ないとどうにもならないの改善点っすね
――りょ。近い内にどうにかするわ
いやまぁ普通に暴力で来ると思ってたのよ。だから常識に囚われてたアタシの落ち度で、可能性を見逃して事前準備してなかった以上は戦う前から負けてたに等しい。記憶リセットして繰り返したら百回が百回とも負ける自信がある。
なんて事を言ったところで、リリとしては心にもない……
とはいえ、今は戦闘訓練。今のリリが考えてる事は甘えでもあり、教え導く側としては矯正しなければならない部分。このままだと心を鬼にしてとは一体なんだったのかって話ですし?
「リリ、最初に言ったがアタシは心を鬼にして厳しくいく。だから今、めそめそして前を向けないリリの事を叱らなきゃいけないんだ。わかるか?」
「……(こくり)」
馴れ合いと仲良しは別物だからなー。まぁ年齢的にも環境的にもこっちはこっちで甘やかしたくて仕方ないし、向こうは向こうで甘えたいけど我慢しなきゃって葛藤があって、ねぇ。
本当ならまだ遊んでばっかりのわがまま三昧で良くて、親に叱られながら少しずつ成長していく時期なんだよ。物心ついた頃から両親いなくて、姉と主神――『
アタシが【ランクアップ】した辺りから金銭面は余裕が出て来ていよいよ平穏が見えて来てダンジョン潜る頻度も落とせるかもって辺りになって誘拐事件……おのれ
「よし、じゃあ罰としてもう一度。今度は槍を使って挑んでくるんだ。さっきみたいな方法も込みでいい」
「……はい!」
叱ってる事にならないって? 知らんな。
さて、今度は今度でわざと受けるぞ。Lv.5の頑丈さアピールで今のリリが殴るんなら安心して全力でいいって覚えてもらわな。
「行きます!」
「おー、来い」
「てやぁぁぁ!」
うん、Lv.1の動きだ。でもって素直。愚直のが適切か。寸止めされても話が長引くからちゃんと直前まで迎え撃つ動きで……はい、ここ。
「……っ!?」
「ご覧の通り。今のリリが全力で来ても傷らしい傷はつかねェのよ。だから遠慮なく来ていいし、遠慮してると思ったら指導入れてくからな」
単純なLv.の差もそうだし、装備の質もそう。
リリの武器……普段は
おかげでぐにゃぐにゃ変形しまくるし、再生だってモリモリしまくる。メンテ要らずの鍛冶師泣かせな武器だ。ラピスの一部が混じったせいかどっかの使徒やクリオネ風シーマを模したり芸も細かい。
ついでに核とするべくヴィーヴルの涙を組み込んだら、武器形態じゃなく装飾品状態が基本形になった。そして武器形態への変化がヴィーヴルから宝石を外す扱いになるらしく、使用者の
でもってこれな、ブリューナクくん自体が生きている武器だから
「さて、今のリリの実力はわかった。これを参考にして今後のカリキュラム組むな」
「えっと、はい」
「今日は誘うときに言ったみたいに座学と呼吸法だ。まずは呼吸法なんだが――」
以下略。座学と言いつつ途中で姿勢とかの矯正も入ったけど、概ね目標達成。自主練はメカーバンクルが監視してくれるので無理はさせずに済むだろう。もちろん、ないとは思うがサボりも許さない……はずだ。
で、アタシの日常に月二のお守りと面会ついでの戦闘訓練が追加されてむにゃむにゃしてたら、なんか
その関係でアホ強い二人組がオラリオ入りしてるらしい。なんでも【暴喰】と【静寂】って呼ばれてた、ゼウスとヘラの眷族なんだと。
黒竜討伐に向かった連中の見送りみたいなのは親父にせがんで連れてってもらったが、さすがに面識のない大多数からピンポイントにそいつらの顔や名前を覚えてるってことはなかったわ。敗北後のアレコレに至っては全く情報持ってないから誰それが生きてたとかも全くわからん。
しかしこの二人、嘘か真かLv.7だという。しかも前衛と後衛。現在のオラリオで最も強い個なわけだ。理性的なら模擬戦で【
まぁ、Lv.3の小人族なんて視界に映らない小物扱いだろうし、ドンパチ始まったら騒ぎに乗じて出撃前の挨拶みたいなお題目でリリに会いに行って、そのまま倉庫に保護してダンジョンに隠れるのが楽かね。それこそ上層浅部の
「お前があの
「とある教会の土地を買い取った持ち主らしいな? 少し話を聞かせてもらおう」
だからって、なんでそっちから来ちゃうかなぁ!? ダブルで! 別々の用件引っ提げて!!