そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
世の中には親の心子知らずだとかって言葉があるが、赤の他人ならもっと知るわけないよなー、なんて。正義の味方になるって宣言を聞いて安心したじいさん並にこの場でポックリ逝きかねねー表情だと焦ったが、まぁそんな心配は必要なさそうだった。むしろ
「喜べ。お前があの忌まわしき竜を討つと吠えるのならば……俺たちが鍛えてやろう」
うーん、ありがたくはある。あるんだが……実力が離れすぎてるのはさっきの一幕で確定だからなぁ。どこまで糧にできるのやら。とりま手加減されんと死ねるが。
「私にそのつもりはない……そんな事よりも教会について聞かせてもらおう」
姐御はツンデレツン増しデレ抜きか。しかし教会となれば
「わかる範囲なら答えるが、何を話せばいいンだ?」
「あの教会……正確にはその周りからだが、小癪な罠だらけだったのは貴様のせいか?」
「おう。ギルドに紹介されて内覧に向かったら
「そうか……あのふざけた罠の数々は貴様が……ッ!」
「不法侵入して文句垂れるのは幾らなんでもダセェぞ先輩。仮に大切な場所なら万一に備えて他派閥に根回しして土地を確保してもらうくらいはしとかねーと。それこそ馬鹿素直な神に契約持ちかけてたンなら転生した後でも待ってるかもしンねーのに」
負けるつもりがなかったにしても保険をかけねーのは慢心なんだわ。あるいは不退転の決意の表れで、だからこそ抱き続けた未練のおかげで今まで生き延び舞い戻ってこれたのかもしんねぇが。
「……ならばあの内装もか?」
「修繕したな。あいにくとアタシが知ってるのは廃墟に近ェボロボロの状態だ。元の姿と違うとか言われても困る……つーか、結局不法侵入してきたのかよ。張り直す手間が……」
てっきり認めた時点でまた魔法が飛んでくると思ったんだが、堪えたご様子。
内装はまぁ工芸を乗せて教会の荘厳さと神聖さ、そして威圧感を重視したものになっております。侵入者に対する最後の、そしてささやかな抵抗だ。悪意に反応して女神像が変形して襲いかかってくる
「そうか……いや、内装は一応だが感謝しておこう」
おや、デレた。施設そのものに何か思い入れがあるタイプか?
「その証として貴様の鍛練を少しばかり手伝ってやる」
あかん(あかん)。死んでしまう。アタシが。身代わり系や復活系の
つーか魔法なんて【
アタシのは攻撃じゃなく道具の出し入れだからなぁ。倉庫の中身を射出するやつはできるって判明してるが、あくまで物理攻撃だし。魔法や
「ちなみに場所はどこを考えてるンだ?」
「「ダンジョン」」
「……まァ、妥当か。地上だとすぐバレるし……バレるよな? さすがにそこまで耄碌してねェよなオラリオ?」
以前の作業部屋全滅事件に対してもギルドからは原因究明に努めるって発表の後は音沙汰ねぇままだからな。もちろん各派閥も捜査しきれなかっただろうし、続く揺れがないから打ち切ってるはずだ。あれ、今回も
「作戦の本格的な開始まで後五日……三日で仕上げるぞ」
「いやいやいや、何もかも間に合わねェだろ三日って」
「間に合わない事などない。間に合わせるのだからな」
「アッ、ハイ」
最愛の妹、愛しい愛しいリリへ。お姉ちゃんは今回こそ死ぬかもしれません。オラリオの冒険者じゃメカーバンクルを瞬殺できんから、ちゃんと耐えてる間に人質にされてたって説明するんやで。
で、移動のお時間。ダンジョンはあえての12階層に出てから15階層に進んで、やって来ましたみんな大好き
実力を測る意味でアタシに任されたんだが、ダマ鞭でサクッと。どうやら鞭を使うやつは古強者二名にとっても珍しいものだったらしく、感心したような一言を漏らしていた。どこか懐かしそうなのは、アタシの知らない物語ってやつなんだろう。鞭使いがいたんなら、そいつがどんな風に負けたかだけ聞いておきたいところではある。失敗に学べってこった。
「さて、さすがに中層の浅い部分では大した測定もできんかったな。よってここからは俺が相手になろう。言うまでもないが全力で来い……でなければ、喰らうのみ」
オッサン――【暴喰】のザルドが戦闘態勢に入る。それだけで空気は張り詰め、あるいは物理的な圧すら放つ。Lv.7でこれってマ?
ダマ鞭は掴まれて引きちぎられる未来が見えるので、手早く形状変化で棒……槍に。
ザルドは驚いたというか虚を突かれた表情を浮かべるも、すぐさま獰猛な笑顔に変わる。戦闘狂の気があるんかね。殺戮というよりは腕試しの意味が強そうだが。いや、それはアタシの楽観か。
とりあえず知恵も含めた全力を出し尽くしても届かない相手なので、最初から
突き出した態勢から形状変化させて握り手を中心に肘の側、そして外方向に刃を形成させながら肘を曲げる事で首を狙うも、軽く上半身を反らしながら今度は
すれ違う最中に首の後ろ側にチリチリとした感触を覚え、腕を折りたたんだ勢いを殺さず体を前に倒してそのまま転がり込む。
「ほぅ」
その場で切り返そうとしていたら頭があったであろう場所を抜けていく蹴りが、目まぐるしく移り変わっていく視界の片隅に映った。直後、蹴りの風圧で体が押される。とんでもパワーやめろ。いやまぁ
「面白い
「通じねェなら手品でしかねーがな!」
「違いない」
さて、わかっちゃいたが攻撃が通じないな。単純な【ステイタス】の差が大きいのは確かだけど、受け流しを見るに技量も高い。
基本的に力任せが多いモンスター相手じゃ身につけるのが難しいはずなんだが……ウダイオス部屋でスパルトイ道場でもしたんだろうか。それ以前に他派閥とドンパチしてたから自然と技や駆け引きが身についてったのかね。派閥内でも模擬戦に熱が入りすぎたとかはありそうだしな。
でもそれらの全てが黒竜相手じゃ裏目に出た可能性もあるか。ダンジョンのモンスター相手に通じた駆け引きは黒竜の予想を超える老獪さにより向こう側からの罠と化し、技もまた規格外の身体能力の前では何の意味もなさず……みたいな。
まぁなんでそんな黒竜だけ特別なのかは全くわからんが。読み間違いだったか解釈間違いだったかの産物だろ
つーかあれか、アリア補食疑惑。それだけでも黒竜のリソース爆上がりしてる可能性は高いわな。しかもダンジョン地下深くにいるらしい穢れた精霊みてぇにアリアも黒竜乗っ取りを試したけどリソース足りなくて食い尽くすどころか食いついてぶら下がるのがやっとな感じで、しかもその試みから【
でねーと地上のモンスターよろしく繁殖してもしなくても魔力の供給先が無くて先細りする一方だしな。どうするよ決戦に挑んだら骨と皮だけのハリボテ黒竜出てきたら。ぽっと出のラスボスが現れるフラグだわな。対策が無駄になるから困る。まぁ地脈から吸い上げるとかしてそうだけど。
まぁ、そんな話はさておいて、今はザルドをぶん殴る方法だな。どーしたもんかね。