そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
よくよく考えたら特訓言うても普通の武器使ってドンパチとか本領とは言えねぇ戦闘スタイルを鍛えてもあんま意味ねぇのよな。
かといって
「ぐえっ」
「すまんな、隙だらけだったから思わず足が出た」
考え事してたら蹴りが入った。
アタシ自身もあばらの骨折程度で済んだしな。肝心の体はダンジョンの壁までまっすぐゴールをキメたが。結構深くまで埋まったけど、こういうとき生まれてくる前のモンスターとこんにちはしたりってないんかね?
「追撃されねぇだけ訓練でホント良かったと思うわ……」
壁の中から姿を現しつつ、武器の形状変化は元の鞭に。なんか
「ふむ、相当に加減はしたが動けるか。先の動きといい、既に
バレるの早いなー。わかりやすく補正するスキルはねぇし半端な基本アビリティで駆け足してきたから低く見積もられると思ったんだが。
その辺はやっぱ年季の分だけ経験が積み重なってんだろな。でもこれで手加減の
「その若さでその研鑽は驚愕に値するが……だからといって同格以上が相手では体格の差が響いてくるぞ」
「まァ、まともな戦い方はしねェで勝ってきた部分はあるさァな。こっから先はそっちでいくから評価頼むわ」
「いいだろう。お前が編み出した格上殺しの真髄を見せてみろ」
「おー、遠慮なく派手にいくから、なっ!」
お言葉に甘えてスリンガーからみんな大好き
「これは……ちっ! 催涙ガスか……」
おそらくオッサンが武器を振るえば煙は晴れるし、流されてきた刺激的な煙で自爆めいた事になる。が、ここで
着地と同時に這うような格好でオッサンの横へ回り込み、スリンガーには閃光弾をセットしておく。後は煙に紛れて突っ込んでくる可能性を考慮して、地面に粘着罠と電流罠を設置。
電流罠はクリスタルマンティスのドロップアイテムを使った単純な圧電効果によるもの。魔力の影響か、普通のそこらに生えてる水晶や石英よりも生み出す電力が大きいんよね。いやまぁ
「……?」
来ねぇな? なんて首を傾げていると、離れた位置から姐御が長剣を振るって煙を吹き飛ばす。その動きは流麗だった……いや、後衛じゃなかったんかい。単純な
そして煙の晴れた爆心地はと言うと……なんという事でしょう。そこには回復体位に近い格好で横たわったまま動かない【
「……回復してやれ」
「うっす」
姐御に促されるままオッサン回復に移る。周辺の酸素濃度が不明なため、念のためダマ鞭で引き寄せてからエリクサーを振りかける。
とはいえ、元から毒に侵食された肉体は回復できる部分が少ない。ゲーム的に言えばHPの最大値が減っている状態なんだろう。
その上で毒による
改めて視認した現状から【
とりあえず傷は……傷口? 見えてる部分丸ごと消毒してからユニコーンの角を削った粉振りかけて保護用のジェル塗りたくっとこう。ついで栄養剤の注射して、鎧の修復もするか。
「……なんだ? それは」
「ちょっとした裏技」
姐御も流石に鎧が修復されていく様子には面食らったらしく、訝しげに問いかけてきた。
鎧の材料に
つーかベヒって最終的に人間の食料になるとかなのに猛毒なのかって思ったけど、一神教信者のための肉なら異教徒には猛毒にもなるかって自己解決したわ。そもそもモンスターの肉全般がとかは言ってはならない。マンモス肉を食ったアタシに効くからな。
「……まさか負けるとはな」
「人体の限界だからな。アタシとしちゃオラリオに現存してねェLv.7だろうがちゃんと人間してンのがわかって良かったわ」
治療と修復を終えて小休憩を挟んだところで、オッサンが意識を取り戻した。状況を把握してから大笑いを始めたんで壊れたかと一瞬心配したが、姐御の執り成しによってアタシが用意していた
「あの
「違いない」
また知らん名が出てきたが、ゼウスとヘラって派閥を超えた仲良しだったんだろうか。アタシが前世の記憶を思い出してすぐに黒竜に挑んで流れるように追放されたから情報が入ってこなかったのよな。
しかし実力測定の名目で初手を譲られたり反撃も緩めって条件が重なったからってほぼ勝っちまったのはまずかったかもしれん。なんか過去を懐かしんで思い出話してると引退したみてぇじゃん。託し終えた感あるから戻ってこいって話なんだわ。
「まァ、今回のは無酸素状態で活動できねェっつー人間にゃ克服が難しい点を攻めた結果だ。黒竜相手じゃ通じねぇから反則だわな」
「だが、剣や魔法と違って対面していても脅威を感じなかったのは大きい。誰にでも――敵と認識されない者ですら隙を突いて致命の一撃を与えられる
「私達の思う英雄とは少々違う姿だが、少数に負担を強いる事なく分かち合うのもまた人の在り方としてはありだろう」
「ふむ……?」
とりあえずアタシのやり方は合格っちゃ合格のようだ。雰囲気的には金賞受賞だとかじゃなく予定にない賞を即席で用意した感じだが。
けど、それってつまりアタシの強みは真っ当な冒険者には指導できない部分って話なんだが……二人ともどこかバツの悪そうな顔してるし。
「アタシが
「
「正確には、冒険者でないからだろう。
「……なるほど、それはアタシにゃ理解の及ばねェ範囲だし、命の一つ二つ預けるのにも納得いく理由だ」
微妙に食い違ったな。しかしそうか、タンク役は人格者が多いか。ダンジョンでサポーターの次くらいに見捨てられる率が高い役だもんなぁ。
そんな立派な志を持ってる冒険者が今のオラリオに何人いるかって問題はあるが。壁役やってるのは
「しかし、そうなるとみすみす死なせるのは惜しいなァ。ま、こういうの用意してあるンだが……【吐け】」
倉庫から複数の
「今のは……マジか」
「なんとも、規格外なやつもいたものだ」