そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「そーいや二人に聞きてェんだがよ」
「どうした?」
「いやほれ、神って連中は本来なら天界にいて、地上で死んだやつの進路を決めたりしてるわけだろ? 少し気は早ェ上に不謹慎だが、希望が通るなら来世は何してェよ?」
「ふん、下らんな」
「……アルフィア、酒の席だ。少しは考えてやれ。俺は、そうだな。生まれて来る時代にもよるな。今のように憂える要素ばかりなら、また剣を取るだろうさ」
あの後、でき上がった料理をリリにも運ばせながら互いの簡単な紹介をした後で食事を済ませ、食休みを挟んでから風呂等も済ませたんでリリを寝かしつけてから晩酌タイム。酒も進んできたんで【
「そっか。いやな、地上に暇つぶしとか言って旅行に来る連中だし、場合によっちゃ地上から送還された縁のある神に当たる事だってあるかもしれねェだろ? 希望が通るかもしれんけどその場で考える時間があるとも限らねェし、日頃から考えてみるのもありじゃねーかって思ったのよ」
「ふっ、ならば私はその場で神を脅し、すぐに生まれ変わらせるさ。記憶はそのままに、今度は病を持たぬ身で……そしてあの子のためにも厄災を……」
「そういう事なら、確かにな。一からやり直しになるとしても、この手で仇を討ってやりたい気持ちはある」
ふむふむ、仮定の話とはいえ、さすがに湿度が高いというかずっしり重量感あるな。軽い気持ちで実験台にするのは気が咎めなくもない。つーか沈黙が、空気が重い。あと姉御、ベルにデレなかった?
「あー、悪ぃ、湿っぽくしちまったか?」
「いや、気にするな」
「所詮は仮定の話。今は現実を見据え、成すべき事を成す」
「……実はな、今日……実質もう昨日か。【ステイタス】の更新してきたら魔法が生えてきたんだよ。ついでに【ランクアップ】もしてきた」
「ほぅ……」
「それが先の質問と関係あると?」
「まァな……他言無用で頼むがよ、内容は『転生権の掌握』だ」
「なん……だと……」
「転生、権? 権利だけか?」
「そこがわからンのよ。デメリットに対象の因果に応じたとかいう曖昧な尺度で【ステイタス】の低下があるから迂闊に試せねェし……だから」
うわー、言い出すのにめっちゃ勇気が要るんですけどぉ!?
下手したら永久に転生できないとかだもん、割と怖いよな。命懸けっつーかチップに命乗せて賭けてる二人なら来世の平穏なんかどうでもいいから今生と地続きでやらせろって言ってくれそうな気配はあるけどさぁ。
「二人が敗北したときは実験に協力してくれ。なんなら勝ったときでも協力してくれ」
「容赦がないな……」
「構わんぞ」
「「えっ」」
姉御のあまりにも軽い返答に、耳を疑って聞き返したアタシは悪くないと主張したい。オッサンと声揃ったし同罪だ。裁くならオッサンを優先してくれ。
「正気か、アルフィア」
「考えても見ろ。ゼウスとヘラが送還して来た神の数……どれだけの恨みを買って来たと思っている。そいつの身勝手で変な転生先にされるくらいならば、いっそこいつの手で望み通りの健康な体に生まれ直す方がマシだろう」
「なるほどな……いいだろう。俺も協力してやる。もっとも、負けるつもりはないがな。このまま叩き潰した
言われてみれば割と切実な、しかも起こりそうな可能性だった。それでも、安全なんて保障されてない実験に巻き込むんだから、こちらとしても感謝の念は尽きない。
「あァ、ありがとな。そうと決まれば今回の計画教えてくれよ。下手に動いて邪魔するのもアレだしな」
「いいだろう。とはいっても私達は最低でも丸一日は回復に専念する予定だ」
「了解。なら留守番頼むわ。暇潰しは本棚に入ってる本とか、そこの蓄音機とか、適当に。腹が減ったらキッチンにある保冷庫に食い物入ってるから好きに摘まんでくれ。キッチンの奥から更に降りれば酒の貯蔵庫だ」
こんな感じで夜は更けていった。が、体力を消耗したのは間違いないって事でオッサンも姉御も寝室に向かったわ。結構な量を飲んだのにピンピンしてたな。『
でも急性アルコール中毒で死んだ冒険者なんてのは聞いた事ねぇよな? 強化自体はされてるけど底力的な感じで血中アルコール濃度が一定値を超えたら本気出すとかなんだろうか。まぁ別にわざわざ血管内にエタノールぶち込むダートとか作る気はねぇし、考えない方がいいか。
さて、朝である。アタシ自身は酒を飲まずにいたんでリリの眠るベッドへ潜り込んだわけだが、知らぬ間に抱き着かれ……捕獲されていた。これはリリの偉業では?
このままだと朝飯が作れないんだが、この柔らか温い幸福な感触を自分から手放せるかと聞かれれば難しいと答える他ない。
「むにゃ……お姉ちゃん?」
「ありゃ、起こしちまったか?」
「あ~やっぱりお姉ちゃんです。えへへ」
なにこの生物めがっさ可愛い。めがっさってなんだよ。多分めっちゃの仲間めっさにメガギガテラのメガを掛け合わせたんだろうな。つまり理論的にはめがっちゃもいける……急に宮城の方言っぽくなったっちゃ。美味しいですよねって意味かな? 一部津軽弁が混線したけど他の地方からすれば判別できんからへーきへーき。
「朝飯を作りに行こうと思ってたンだが、愛しいリリは何が食いたい?」
「ふみゅ、リリは……お姉ちゃんと、もう少し、だけ……」
「……そっか。じゃあもう少しだけこうしてような」
「はい……すぅ」
我らが姫君はまだ
「ふぁ、う。んにゅ……おはようございます、お姉ちゃん」
「おはよう、愛しいリリ」
リリの寝顔を眺め続けていたが、一時間もせずに覚醒した。惜しいような気持ちもあるが、規則正しい生活を送って健やかに育ってほしいんでコレデヨイ...。
着替えや洗顔を一緒にしたら、朝食の準備。リリには食器の用意を手伝ってもらい、それが終わったら簡単な計算ドリル。ふへへ、ついに植物繊維から紙を作っちまったぜ。鉛筆もだ。
やったことはダンジョンから伐採してきた木に【
はい、朝のメニューはパンと目玉焼きとハンバーグにサラダとコーンスープ。オッサンと姉御は起きてこない仮定だが、用意だけはしておいた。冷めても食えるし。
それじゃ、いただきます&ごちそうさまでした。リリには強制してないけど真似して普通に挨拶するんだよな。意味を教えたら感心してたから仏教は偉大。でもこれある意味じゃインド系の神に喧嘩売ってる事になるんだろうか。世界線違うからセーフだよね?
「さて、昨日も軽く説明した通り、外は
「リリは……お姉ちゃんとは離れたくありません。けれど、お姉ちゃんの負担にはなるのはもっと嫌です。だから、お留守番して良い子にしてますから、無事に帰って来て下さいね?」
んんん、この自己犠牲気味な健気さは原作からだと接種できない成分だわ。近いのはウィーネがいるけど、あいつには『
アタシにとっちゃリリで足りてるし、『
「もちろンだ、約束する。こう見えて今のアタシはオラリオで数少ないLv.6なンだ、よっぽどの事がなきゃ怪我しねェさ」
「はい、信じてます。いってらっしゃい」
「あァ、行って来る」
はー、このやり取りだけで昨日の地下水路を血の海に変えるだけの活力を得た気分だわ。でも外は地獄が広がってるだろうから、これくらいのテンションでないと闇堕ちしかねねぇしな。
で、一通りオラリオを走り回って様子を確認してみたが……まぁ前世も合わせてもトップクラスにひどいかな。そこら中に瓦礫と死体が転がってて、それを冒険者が撤去、回収してる。もしかしなくても夜通しで作業? こういうのあるから公的機関って大変よね。お疲れ様です。
爆弾で直に消し飛んだでもなけりゃ死体から疫病が発生、蔓延する可能性が高いな。虫とかで媒介するとあっという間だぞ。医療系派閥は衛生観念も多少持ってるから大丈夫だとは思うけど、逆に狙われる原因になりそう……いや、
ついでにそこら中で
なお、言うまでもなくアホみたいに目立つんで冒険者が駆けつけて来た。全力で逃げた。
とりあえずアレだな。治安悪いからリリの外出はしばらく禁止だわこれ。