そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
教会に帰ったらリリが姉御に指導されてた。なんでさ。
話を聞けば何という事もなく、リリが日課になってたらしい槍の鍛練をしていたら姉御が起きて来て、暇潰しに仮想敵を買って出たらしい。目の良さと思考及び体の柔軟性が飛び抜けている、とは姉御の談。アタシにゃもったいないくらいに自慢の妹です。
ちな、オッサンはまだ寝てるらしい。インナーに練り込んでるリユース対応型ユニコーンの角粉末は多少なりとも効果を発揮してるんだろうか。あるいは薬用酒の効果か? いやまぁ生薬ごときっちゃ失礼かもだけど、実際それで治ったら世話ねぇわな。でも全く効果がないってわけでもない気もする。この場合、ベヒーモスの猛毒にやられてる事で耐異常がお仕事できずに他の毒まで効果を発揮してるのか、猛毒そのものによって他の毒は邪魔されて実質無効化されてるかで分かれるんだよな。
なんかオッサンってグルメ細胞みてぇなスキルあるらしいし。薬膳とかを深層素材で用意したらマシになったりするだろうか。なられたらオラリオが勝てなくなるかもしれんが。まぁまず深層素材なんぞ手元にほとんどないんで試せない。
オッサンの年齢でLv.7は割と妥当というか順調に冒険を重ねた感はあるんだよな。それでもベテランの知識と経験は今のオラリオに欠けてる要素の一つだし、現在のオラリオトップ層と引き換えでも惜しくないと思ってる自分がいるんだよなぁ。小粒を数揃えても環境効果や範囲攻撃で一掃されたら意味ないし。アタシは【
原作時間軸まで考えるとオッサンがジイサンに片足突っ込んで衰えてそうな気もするから戦力としては微妙か? Lv.9以下が一蹴されて終わったんならLv.7のままじゃ辛いだろうし。
しかし食事バフは無視できん可能性があるよなー。モンスターと特に相性いいとか言ってたけど、食材単独しかも生じゃなく組み合わせで試すべきだと思うんよ。強化種の肉なら多少魔力残ってるだろうし調理に耐えるんじゃなかろうか。
でも
返り血といい、謎が多いよなぁ。【
おかげで【
その後は昼飯作って、起きて来たオッサンに
天気は雨なんで外出する事もなく、
次の日。朝食と後片付けを済ませると、アタシは外出した。
最強二人は指示待ちらしいんで基本的には今日も待機。こっそり要塞化してあるこの教会にいても届く合図ってなんだろう。全開にした神威とかか? 勢い余って『
空を見上げれば、雨は上がったが、どんよりとした曇り空。前世の国語だったか現代文だったか、作中の天気描写は登場人物の心理状態なんだよな。小説が原作なこの世界なら、あるいは適用されるんだろうか。実際オラリオの現状には即していると言えるしな。
しかしその場合は群像劇だとしても章のスポットライト当たってる主人公がいるわけで……果たして誰のお気持ちなのか。少なくともアタシじゃねぇのは確かだな。リリがいるだけで無限にハッピーだし。
豊穣の女主人の面々は初日――例の一斉送還が会った日に避難民を連れて
店員たちは戦力扱いされて護衛やらされたり、各地に炊き出しして回ったりで動けなさそうだよなぁ。代わりに店舗の無事でも確認するべきか。食材の持ち出しもか? ミアさんなら昨日の内に持ち出してるかね。つーか仮に残ってたとして、それを持ち出した場合でも中央に運ぶのは危険なんだってば。よし、パスで。
そうなると後は【ゴブニュ・ファミリア】か? バベルに【ヘファイストス・ファミリア】の
北北西にある【ゴブニュ・ファミリア】の本拠は、なんというか、鉄火場というか修羅場というか。単純に武器が潰れまくって足りないから全力で増産してるんだそうな。そんでもって主神のゴブニュは単独で外出中らしい。いやいや止めろよ、せめて護衛をつけろよ。
と、いうわけで捜索と護衛を頼まれたんで捜したんだが……現在地は西区画。Lv.6の聴力を活かして明らかに目立つ――耳だけど――鎚の音を頼りにうっすらかかる
そんなところに降って来た人物……そりゃ警戒されるわな。思い切り武器向けられたわ……猫娘からは。男は悲鳴上げて尻もちついてそのまま座り込んでた。多分だが腰抜かしてるな。で、二人ともよく見れば男子女子のがしっくり来る顔つきをしてた。
「護衛は連れずに出かけたって話だったが……案の定しっかり襲われてンじゃねェか」
「お前か」
「お前かじゃねェのよ。この二人がいなかったら
「だが、二人は来た」
「結果論やめーや」
この
「二人もご苦労だったな。護衛はこいつが引き継ぐ。二人は一旦ロキのところに戻るといい……いい冒険だったぞ」
「……はい! アキ、行こう」
「う、うん……それでは失礼します、神ゴブニュ」
ロキでアキってことは、こいつらアナキティとラウルか。この時点だと初々しさが残ってて熟年夫婦感はないな。
しかしこの少年が成長すると派閥の金を横領して娼館に行くのか……やべーな、自然とゴミを見るような目になっちまう。別に娼館はいいんだ。自己評価低いなりに勇気を出した結果なら【
「ンで、ゴブニュ様はここで……橋の修理してたのか」
「あぁ、ここだけは遺さねばならん」
「英雄橋だったか。観光なンざする余裕はなかったから初めて意識して観たが……こいつはフィアナ騎士団の?」
「そうだ。かつてダンジョンが大穴と呼ばれていた頃、ここに続く道を確保した小人族の英雄よ」
「……立派な馬だな?」
「……精霊だったからな。普通の馬よりは高い能力を持っていただろうさ」
フォッフォッフォッ。こやつ一丁前に照れておるわい。頑固一徹な職人系ジジイの照れ様からしか取れない栄養素がある……需要? 知らんな。だが個人的には知ってる相手をからかえるだけでめっちゃ楽しい。
しかし上位精霊って神の認識的には我が子扱いなのか、自分の分身なのかがようわからんな。どっちでもあるとか? とりあえず思い付いたから今度【ゴブニュ・ファミリア】宛に鮭を差し入れてみるか。
「修理にはまだかかンだろ? 護衛は請け負ったから安心して作業してくれていいぞ」
「そうか。助かる」
「いーのいーの。お代として鍛冶神の技術を盗ませてもらうンだからな」
「ふん。観察に夢中で警戒を怠ってくれるなよ?」
「あい、あい」
可能性は限りなく低いが、気配を薄くしたりステルス機能を持った襲撃者が来たらアタシ一人じゃ見逃しかねない。なので温度とか電磁波とか魔力とかの感知ができる
結論を述べれば、ゴブニュが修理を終えるまでに何度か
そしてそのまま昼過ぎには見事に橋――主に英雄たちの像を復元させたゴブニュを本拠に五体満足で送り届ける事に成功。任務完了だ。
鍛冶場は鍛冶場で目標のペースで数をキッチリ揃えつつも交替して作業を止めていない。こう、暑苦しいが映画のワンシーンを見ているような感動がそこにはあった。思わずこっちも格好つけてゴブニュの捜索に対する報酬は抗争に勝利する事とか言ってその場を後にしちまったくらいに。
ちゃうねん、向こう側が完全にこっ恥ずかしい空気蔓延してたからこっちも空気を読んで合わせただけなんよ。決して前世で考えていたシチュエーションに合致したからでは……なんて言い訳は記憶の流れ込んでる