そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

85 / 202
85.事態が動きました。強い心下さい。

抗争四日目。ついにオッサンと姉御が動いた。

 

「出番か?」

「どうやら、そのようだ」

 

教会の隠し部屋で料理してたら掃除とかをしてる人形兵(ゴーレム)が一斉に警報(アラーム)を鳴らして、各々の前方にスクリーンを投影し始めた。何が起きてるかと言えば、単に教会の外というか近くで一定以上の速度を感知した場合、周囲に設置されてる動画撮影機(ビデオカメラ)の映像を流す様になってるだけっていうね。

それぞれ対応するシリアルナンバーがあるんで、個々の映像は違う。目立たない設置場所って都合で死角はどうしても潰せなかったが、下手に魚眼レンズとかで映しても像の判別が難しいってのはちょっとな。

 

「あー、輝夜とライラか。相手は知らんが二人相手にできンならLv.4……なんか動きが歪だな。面白スキル持った3の上位か? ところでこれって闇派閥(イヴィルス)の幹部?」

「確か顔無しとか呼ばれていたな。エレボス唯一の眷族だ」

 

鮮明な即時反映される(リアルタイムの)動画を映し出す技術に軽く引いてる最強二名を努めて見ない振りをしつつ、【アストレア・ファミリア】の二人とやり合う見知らぬ相手について話題を振る。

オッサンから返ってきた情報に、酔っ払いから聞いた印象の薄い男について思い出す。そういうスキルなのか、生来のものなのか。とりあえずやっぱ動きがぎこちないな? だからどうしたって話だけど。

 

「へェ……愛しいリリ、一応上級冒険者同士の戦いだからよく見ておきな」

「はい、お姉ちゃん」

 

とりあえず貴重な機会ではあるので見取り稽古を勧めておく。どちらもリリより格上だし、何より本気の戦いだ。輝夜もライラも殺しはしないだろうが殺意は乗ってる。

しかし輝夜はLv.3のままっぽいな。ライラもLv.2のまま。うーん、自分が遠くに来た気分だ。あいつらも闇派閥(イヴィルス)が落ち着いたら深層強化種狩りツアーに招待するべきだろうか……輝夜とライラが不自然に距離取ったけど、今攻め時だったのに何してんだ。だらしねぇな。

なんて事を思ってたら、こっちでは準備を終えた二人が出て行くところだった。

 

「ではな。場合によっては戻らん」

「りょーかい。それでも飯は用意しとくからな」

「アルフィア様……ザルド様……お気をつけて」

「ふっ、姉妹仲良くな」

「達者でな。まぁ例の件もある……存分に役立てろ」

 

二人の言葉にしっかりと頷いて、隠し部屋から出て行くまでしっかり見送る。姉御がデレたので今日はもう勝ちました。夕飯は豪勢にいこう。

その先は人形兵(ゴーレム)から流れてくる映像を鑑賞する。アタシとリリだけになったのでエイジャとラピスも解放して。

 

『お久しぶりっす!』

「エイジャちゃん!」

『……(ぷるぷる)』

「はい、ラピスちゃんもお久しぶりです」

――言葉は不要か

――微妙に通じてるっぽいっすよね

 

再会を喜ぶ様子を微笑ましく思いながらも、何故かラピスと通じ合っている疑惑が濃厚なリリに内心では首を傾げる。倉庫に入ればそのまま心通じ合う仲間的な? あるいは主従契約を通して繋がってるアタシの要素を理解してるとかだろうか。うん、わがんね。とりあえず再会を喜ぶのは後にしてちゃんと見てプリーズ。

 

「あれが連携なんですね」

「本来なら相方との実力差を考慮してぎこちなさが出るンだがな。それだけ性根に近しい部分があって、長く一緒にいたって証拠かね」

「なるほど……リリもお姉ちゃんと連携が取れるようになりたいです」

「そうだなー。アタシは基本的に爆弾使うから近接戦闘全般と相性がよくねェが……爆風を目眩ましに突撃を奇襲に変えたりはできるか?」

 

画面の向こうでは顔無しとかいう全体的に薄味というか無味乾燥な男に追い詰められた振りをして、輝夜が意識外の一撃を与える罠にかけてた。そしてそのまま追撃が入りそうなところに姉御が華麗にインターセプト。指で刀を摘まんで止めるとかオサレポイント爆稼ぎしてらっしゃるわ。勝ったなエイジャ愛で(モフっ)てくる。

 

『んほぉぉぉらめぇぇぇぇ』

「よいではないか、よいではないか」

『あ~そこめっちゃ気持ちいいっす。擦る押すよりも揉む感じで……それ゛ぇぇぇぇ』

「え、と。こう、ですか?」

「そうそう、上手だぞ愛しいリリ」

『リリちゃんまでテクニシャンンンン!』

――何コレ……ふざけてるの……

「ラピスもマッサージしてほしいのか。ほ~れプルプル~」

――やっぱりかああああ!

 

こうして二体の『異端児(ゼノス)』はあっさりと討ち取られるのであった。リリに関しては変則的な偉業扱いでもいいんじゃなかろうか。

つーか不定形のラピスはともかく、エイジャは筋肉が凝ってる感じあるからもうちょい揉みほぐしておこう。カーバンクルの経穴の位置なんてのはわからんし、血行の改善とかはじっくり優しく患部を温める系がいいんかね。お灸……作っておくか。大樹の迷宮を散策してそれっぽい草を採集せんと。よもぎでいいんだっけ? 香草というか雑草と書いてハーブと読む感じの草だからきっとあるな。そう考えたら酒に漬けてもいいのか。前世だと餅に混ぜるくらいしか使い道知らんかったけど。あれ、煎じて飲んでた……のはドクダミだったな確か。まぁ見つけてからだな。細かく刻んで冷凍されたのしか見た事ねぇのが難点か。あれ多分一度は茹でてるよな、灰汁抜きとかで。でもお灸に使う場合はやっぱり乾燥させるよな。うーむ、まぁ実物は一応においで判別できる……はず。

 

『ふみゅうぅぅぅ……』

「おー、エイジャちゃんが溶けてます」

「脱力すると自然とな。まァ、それでも一部はやっぱり凝ってるな」

『極楽っしゅ~』

 

こうして存分にモフり倒してたら、外の喧騒は聞こえなくなっていた。映像を投影してくれてた人形兵(ゴーレム)たちもどこか呆れた気配を出しているような、ないような……。

姉御たちが帰ってこないのは、もしかしたら教会に滞在してました的な発言しちゃったか? もしくはエレボスやその眷族による失言? その場合は……もぐか、ねじりきるか、引きちぎるか、はたまた……なんて事を考えてたら、爆発音。

 

「うぎゃぁぁぁぁ!?」

「わ、我が神ぃぃぃぃ!?」

 

どうやら教会の罠に引っかかった間抜けがいたらしい。というか今正に空高く打ち上げられて自由な風を全身で感じているであろうエレボスの姿が映し出されていた。ウケる。

 

「お客様らしいし、すまんなエイジャ、ラピス」

『おっけーっす。僕はネキとリリちゃんに構ってもらえて充電完了っす』

『……(ぷるぷる)』

――サンキューレイヴン、助かったわ

「二人とも、バイバイです」

「それじゃ倉庫は頼んだぞ……【呑め】」

 

二体を倉庫に収納……意識が保てるなら送り出すのが近いか? とりあえず隠し部屋から姿を消してから少し。再度エレボスの悲鳴が届いた直後に姉御が帰還した。

 

「お帰りなさいませ、アルフィア様」

「あぁ」

「お疲れ様。外で罠を楽しんでるやつはどうすンだ?」

「その件だが、罠を沈黙させる事は可能か? エレボスがこの教会を使用したいそうだ」

 

ほう、この教会を。姉御の思い出の場所って事を知ってるかどうかわからんが、他ならぬ姉御が見逃すんだし戦闘を起こす気はないって考えていいんだろうか。なら一時的に迎撃能力を失わせてもいいか。防御機能は残しておけばいいわけだし。

 

「可能ではあるな。隠し部屋は魔道具(マジックアイテム)で結界張るが」

「そうか、では頼む」

「あいよ。(チュドーン)「ぐわああああーーーーッ!!」「エ、エレボスダイーン!!」……よし、終わったぞ」

「無効化はそういう意味か……」

 

そう、迎撃装置を沈黙させる方法とは即ち一旦まとめて起動させる事である。漢解除って浪漫よね。なおテレポーター。

 

「まァ、死んだとしても眷族一人なんだし計画は進められンだろ。どうせギャグ補正で生き残るだろうし」

「確かに、在りし日の狒々爺――ザルドの主神は私の魔法を受けても平然としていたな」

「えぇ……」

「いいか愛しいリリ。神ってーのはそういうものなンだわ。零能が聞いて呆れるくらい生き汚い……普段はな」

「普段は、ですか?」

 

いやホント、人間なら吹き飛ばされて壁にぶつかっただけでも危ねぇのに壁をぶち破ったりしても普通にピクピク痙攣するくらいで済ますからな。虫かよ。

とはいえ、例外もいるにはいる。シリアス全開で子供の願い叶えて、追っ手に捕まり処刑される形で送還される話や、モンスターの攻撃から身を呈して守りついでに相討ちまで持っていくような話はそこそこ転がってる。

ぶっちゃけそこまですんなら自己犠牲系の神で連合組んで任意に『神の力(アルカナム)』使った改造人間を生み出して英雄の道を歩かせてろって言いたいんだがな。神に与えられた力を使いこなせるようになるって点じゃ『神の恩恵(ファルナ)』と変わらんやろ。

つーか自称邪神は世界に破壊と混沌をみたいな名目で闇派閥(イヴィルス)って連合組めるのに、善神区分の連中は子供たちの自主性を重んじますって実質放置ゲー楽しんでんのは何なんだ。その上で衝動的に一人のために一度きりの下界に滞在する権利を手放す事も辞さないとか意思がぶれぶれ過ぎて気持ちが悪い。

不変の存在である以上は感化されるってのもそういう気持ちが生まれるんじゃなく、磁場に曝し続けて磁石化させる的な感じに無機質的な理屈で内在する矛盾の中から要素が極化して表に出た形なんだろうが、それはそれで愛の勝利じゃねぇのかよ感動を返せって気持ちになるから救えないよね。感情なんぞ電気信号または神経伝達物質に対する反応に過ぎないが。要は操作できるはずのもので、振り回されるやつは未熟ってわけだ。それを羨ましいと思ってしまえるのが歳食った大人で、その意味じゃ神と同じ視点なんだよなぁ。つまりその点では人間も神に……閃いた!

まぁ、未熟である事を自覚した上で『それでも』ってのは割と好きなんだがね。それが人間。良い所探しは大事。

 

「あいつらが制限をかけてるのは言っちまえば『神の力(アルカナム)』だからな。全知は騙りでしかねェが頭脳を縛ってねェのも確か。でもって連中は推定ン億歳……人間じゃ計れねェ酸いも甘いも噛みしめてきたし、だからこそ青臭ェ若造にしか思わねェ人間の言動に脳を焼かれたりもすンのよ」

「えーと、つまり気紛れ……その場のノリで自己犠牲してみたりですか?」

「正解だ。人間自体が他に代わりは幾らでもいる数ある玩具の一つでしかねェだろうにな、連中の尺度で見ればすぐといってもいい時間で飽きるはずのそれに、夢中でいられる僅かな時間の最中だってのに、命っつーか残りの遊べる時間を差し出して満足しながら送還されるアホもいンだわ……世界の端から端まで探せば、あるいはな」

 

まぁ、遊びに来る不真面目軍団が動くだけの熱量がどれほどの物かは不明だが。相性を含めた個神差もあるだろうし。

なんて事を言い合ってたら姉御が出立するっぽい。用事は済んだもんな。

 

「さて、私はエレボスに付き合ってやらねばないのでな。協力感謝しよう」

「あーい。一応エリクサー、モドキで良かったら要るか?」

「もらっておこう……効能は?」

「傷は本家相当、体力は半分くらいだな」

「十分だ。ではな」

「いってらー」

「いってらっしゃいませ」

 

姉御が去ったんで、とりあえず豪勢な夕飯のために今から料理を作り溜めしておくか。リリにも手伝ってもらおう。邪神共の淑女教育に含まれてたらしくて包丁の扱いも手慣れたもんだし。

本当なら映像を眺めていたかったんだが、さっきの罠全部強制発動させた中にカメラの自爆も含まれてたからもう映らないんよね。だから人形兵(ゴーレム)たちも施設の保守って日常業務に戻ってもらってる。

 

上でのやり取りは恐らく叫んでると思われる声が小さく漏れ聞こえてくる程度なんで、むしろ気が散る感じだった。なもんで早めに入浴と済ませ寝室に控える。その内に外でドッタンバッタン大騒ぎが始まったっぽいんだが、家訓で入浴後の外出は原則禁止なんで見物はなしで。

代わりと言っちゃなんだが、シリアスな空気だけでも共有しておこうと思ったアタシはエイジャとラピスを倉庫から再度解放し、リリに隠して来た秘密――前世の記憶等を告白する事にした。なんで『異端児(ゼノス)』出すのかって? こいつらリリより先に前世の話知ったから謝罪しなきゃないかなって。あと動機が軽いのは恐怖や心配に対する備えなんで許してアモーレ。




UA30k突破してました。ありがとうございます。お気に入りも200目前ですし、評価も頂ける方からは高い数字を付けて頂きましてありがたい限りです。チラシの裏ですが今後ともお付き合い頂けるのであれば幸い。
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