そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
六日目。いよいよ抗争も大詰め。リヴェリアがフィンに情報を伝えてるとしたら、ダンジョンの偵察して黒モンスの情報が確定してるだろうし、それに合わせた総攻撃を予測するだろう。いわゆる決戦だな。
裏を返せば、モンスターが18階層に到達すると思われる明日に向けた最終調整が両陣営で行われる可能性は非常に高い。つまりは嵐の前の静けさって感じの一日になると思われ。
でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。
「そんなわけでこちらが昨日一日で増築した
「『ほへー』」
――大きすぎる……修正が必要だ……
いやー頑張った。将来的な事を考えたら、地上に作業場とか物置とかになるような建物増築してここと繋げる可能性高いからな。ほら、あのカマボコ型っていうかの奥行きがある感じの。それを踏まえてそれなりの広さを確保した。もちろん高さもそこそこに。室内の戦闘を想定した訓練もできるように仕切りも用意してある。ついでに地面も土がむき出しになってる部分と、金属を敷いてる部分を用意してある。もしかしたら畑やるかもしれんしな。もやしとかホワイトアスパラとか。直射日光なくてもLEDでいけるっしょ。蜃気楼とか五つの星の方じゃねぇぞ。
「これで【
「おぉー」
とりあえず倉庫から標的になる案山子を取り出して、土のままになってる地面に突き刺して設置しておく。畑感が増したな!
『じゃあ今日の特訓はネキが参加っすか?』
「そうなるな。ただ、明日が決戦っぽいんだよなァ。オッサンと姉御を回収するとして、その後に使う素体を作らなきゃねぇ……気がする」
「気がする……勘ですか?」
「デメリットありだから試せなくて詳細が不明な魔法だからなァ。準備だけはしておいた方がいいって話さ」
いやホント。ぶっつけ本番だから何がどう必要かとか全くわからん。因果魔法とか言ってるから使った時点で因果に干渉してるはずで、転生の権利にはタイミングも含まれるとは思うんだが……時間制限がないとも限らんからな。予め肉体を用意してないと最悪付近の人間とか
「なるほど。ではお姉ちゃんは途中で抜ける感じでしょうか」
「まーそうなる。ついでに言えば、このゴタゴタに紛れて一旦オラリオを離れるって手もあるンだよ」
「……この訓練塲を作ったばかりなのにですか?」
――まるでファルスだ
あぁ、リリが微妙に呆れた視線を!? こ、これはいかん、いかんぞ。オッサンと姉御をベルに会わせて、そのまま暮らしてもらって、原作開始時にベルと一緒にオラリオ入りしてもらう
「まァ、そうだな。選択肢の一つだよ。オッサンと姉御が無事に転生できたとして、そのまま『
「ダンジョンのモンスターを相手にするなら『
「正解。その点、オラリオの外なら『
『倉庫で訓練するんじゃ駄目なんすか?』
おおっと、リリが納得しそうなところでエイジャから鋭い指摘が。だがその答えは用意してある。
「あぁ、倉庫は積極的に利用してもらうと思う。転生用の仮の肉体は子供サイズにする予定だし」
『ほへー』
「そうなんですか?」
「そうなのよ。人体なんて作った経験ほとんどねェし、色々と調整できる部分が多いからな。たくさん試作する必要があるかもしれんし、後は……単純に資材との兼ね合いだな」
『世知辛いっす』
「やかましい」
人体は
ついでに言えばそこに魂ぶっこんだところでちゃんと生命活動を始めて人間になるのかって話もあるが。そこは今回の魔法で判明するんでねーかな。要は賭けだ。ひどい話だって自覚はあるから失敗したときは存分に恨んだり罵ったりしてほしい。
しかしなんだ、ボロ出しそうな気配するし、プレゼン面倒になったんで全力で誤魔化す方向へ転換しよう。
「よし、とりあえず訓練始めるか。まずは軽く準備体操して基本のジョギングから。ダンジョン内は基本的に歩くが、目的地が深くなるにつれ浅い層を駆け抜けるんで体力は大事だ。基本アビリティの項目にない事から察せると思うが、体力――スタミナは個人の資質で、鍛えるには地道な努力が必要だ。まァ頻繁にダンジョン潜って戦闘する冒険者は自然と肉体が鍛えられていくがな。終わりのタイミングはこっちから出すからゴールの見えない血を吐きながら続ける悲しいマラソンを是非楽しんでくれ」
『え、もっかい言ってほしいっす』
「要は走り続けれるやつが生き残れるって話だ。コースは外周――壁に沿う形だな。ほれ走れー」
『横暴っす!?』
――この荒れ具合……同業者か?
このあと滅茶苦茶マラソンした。
「いやー、いい汗かいたな」
『し、死ぬっす……死んでしまうっす……』
「体力は……はぁ、はぁ、Lv.とッ、無関係、はぁっ、なのでは……?」
――ここまでか、無念だ。後は頼む……
アタシ以外は見事に死屍累々といった有り様。まぁポーションで水分補給もさせたとはいえ約5時間ぶっ続けで走らせたかんね。歩いてもハーフマラソンを余裕でゴールできる時間。走ってるならフルマラソンだって完走狙える。つーか『
アタシが何故平気かって? 週5ペースで8時間耐久
小さい体って容量自体は小さいけど、燃費はそう悪くないというか、小さな子供の疲れとは無縁に思える馬鹿げた体力そのままって感じだかんね。一応、筋肉痛はあるから筋肉への負担は生じてるんだけど、【ステイタス】による力や耐久の補正があるから乳酸の蓄積とか分解がどうなってるかはようわからん。とりあえずポーション使えば疲労も回復できるから、眠気来るまでは動き続けられるってのは実証済だ。
……なんて余裕ぶってはいるが、汗だくには代わりないんよね。
しかし広く知られている耐異常なんかは免疫系を直に強化してるのか、別枠で肩代わりしてるのか。後者でバリアーみたいな効果なら出番を奪われて素の免疫力が衰えた状態になってる可能性もあって、何かの拍子に『
「年季の違いってやつだァな。そのままだと風邪引くから汗流すぞーみんなでお風呂だ」
「はぁい」
『僕は動けないっす』
――手こずっているようだな、手を貸そう
『検索:ラピスにマラソンさせる意味、っす』
「そんなものはない」
『ないんすか……』
「筋肉ないですもんね」
――遅かったじゃないか……
「あ、溶けた」
「らちが明かねぇからまとめて運ぶぞ」
ぐでーっと脱力したラピスをエイジャに被せた上で抱き上げ、うつ伏せになっているリリを仰向けにしてからお腹の上にエイジャを乗せ、リリをお姫様抱っこ。それぞれのタイミングで当事者が愛らしい悲鳴を挙げるも、力尽きて抵抗らしい抵抗はできずにされるがまま。汗だくの状態で接近どころか密着する不快感や気恥ずかしさは多少なりともあるが、好意を向ける相手なら嬉しさのが勝つ。エイジャの体温調節は多分に漏れず呼気と肉球らしいので毛並みはサラサラ。それを人間の汗で濡らすのは申しわけなく思うが、まぁ体力のない無力な自分を呪ってもらおう。
つーか今更だが、タイミングを考えればやり過ぎた気がしなくもない。明日の決戦は筋肉痛で動けないので不参加ですって間抜け過ぎん? いやまぁ戦闘で傷を負った状態に比べれば微々たるものではあるから、動くのに支障はないって言えるんだが。
そんな後悔が浮かんできたものの、次回に活かせはするが現状の解決には繋がらない。なので深く考えないまま訓練場に併設したお風呂へ向かうのでありました、と。
オラリオ脱出の件はうやむやだったし、飯食いながら相談するか。
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