そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「そンじゃ出かけっぞー」
――はいです!
――行くっす!
――マッハで蜂の巣にしてやんよ
抗争七日目。エレボスの計画では力と力、意地と意地のぶつかり合いになる最終決戦が行われるらしい。競技大会かな?
今日ばかりは遅刻厳禁という事で早めに準備を済ませ、外へ出る。昨日は素体作りで徹夜したし、リリたちは
ちな、隠密行動を心がけるのと行き当たりばったりになる可能性の高さから、リリたちには倉庫に行ってもらってる。つまりその気になればオッサンと姉御を回収したら無許可で出奔も可能ってわけだ。でも仮にやったら信頼関係にひび入って死ぞ。
「何あれ……でっか」
――すごく……大きいです……
――あれがかまくらってやつっすか?
――レイヴン、助けてくれ! 化け物だ!
「氷の壁……視界を遮るためなンだろうが、内側にどンだけ詰めてンのかさっぱりだわ。寒くねェのかな」
夜明け前に教会を出て、屋根に飛び乗り周囲を見回したら、
まぁすぐ近くにバベルとかいうアホ高い塔があるんだが。とはいえバベルは日常風景だから新鮮さで氷に目がいくけどな。
しかし氷がどんだけ厚くても爆弾持ってる勢力の前じゃハリボテに過ぎないだろうから、目的は目隠しなんだろうな。気温低いと分子の運動も大人しいから内側からのにおいも封じられるか。さてはて、何を隠しているのやら。
あとリリは後でちょっと話し合おうか。偶然ならいいんだが、狙ってわざとなら……いやまぁほぼアタシの責任ではあるんだが、契約を望んだり台詞を流用したりはリリの意思だしな。
まだ性教育は早いと思ってたが、このまま腐海に呑まれても困るんでちゃんとしねぇとだよなぁ。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……目標(意味深)をセンター(意味深)に入れて(意味深)スイッチ(意味深)。名言を汚すな定期。
――情報が不足していますね
――あ、あァ、そォだな。とりあえず……教会周りの迎撃装置を復帰しておくか
――ワナ……か
――情報集めないっすか?
――今この時間帯に動いてっと、それだけで目立つからなァ
――やりすぎる……隙だらけだ
――それは教会の周りでも一緒なのでは……
――っす
――はっはっは
もしかしたらしばらく帰らない可能性もあるし、だからこそしっかり保守しておく必要がある。内部は
仮にも一時期は
とかなんとか言って罠の設置してる間に夜が明けて開戦してたわ。なんか閧の声上げてるし。
「張り切ってるねェ」
――お姉ちゃんは加勢しないのですか?
――基本的にギルドとズブズブな有力【ファミリア】たちへの試練だからなァ。しかも上澄み連中は因縁まみれだ。下手に介入するとお互いの作戦が崩れて読めなくなるし、恨みを買う羽目にもなるンよ
――ほへー
――まァ、力貸すとしたらオラリオ側なのは決まってるがな
――当然の結果だな
さて、教会の屋根から見るに、
さては【
うーむ、しかしこうなると土地の防衛を理由に参戦するのは難しいな。歩き回るのは得策じゃねぇし……バベルの壁にでも張りついて俯瞰してみるか? 市壁の上で十分だな。
「つーわけだ。情報よこせ」
「は? え……」
屋根伝いに最寄りの市壁の上に到着。近くにギルド本部あるのに何でか内側より外側を警戒してたから簡単に近づけたよね。姿隠しと
明け方なんで気温は低く、先日同様に靄もかかってる。睡眠ガス入りの煙玉……というより発煙筒に近いタイプをばらまいても、周囲からは局地的に視界が悪いなー程度にしか思われないだろうから実に好都合。
「安心しろ、寝てるだけだ……お前以外は。少なくとも今はまだ、なァ?」
「ひ、ひぃ……ッ!」
寝落ちした中から一人適当に選んで叩き起こしたら、偶然にもLv.2の現場指揮官やってる上位兵だった。とりあえず尋問を……なんて思ってたら、派手な爆発の音が響き渡る。
「あァ? あー、市壁崩して……モンスターで撹乱か。悪役ではあるけど素直すぎンだろ。氷のせいで目も鼻も通らねェから中央隠れたままじゃん。つーか空飛べるモンスターに爆弾持たせて爆撃の一つくらいすりゃ早ェのに。お行儀の良い指揮官様だよ全く……なァ?」
「は、え、その……」
「考えても見ろよ。わざわざ市壁潰したところで最初から誰が逃げれンだ? オラリオから逃げたところでダンジョンもなしに再起なンざできると思うか? あの
「そりゃ……確かに……でっ、でもよぉ」
「まァいいや、背後気にせず砦攻めしてる能天気共の尻蹴り上げとくのも仕事の内だ。じゃーな」
「は? あぁ、え……誰だったんだ?」
最後の呟きしっかり聞こえてるんだよなぁ。まぁ、ごもっともすぎて怒る気にならんが。
とりあえず注意はモンスターや自爆組が集めてくれてるし、アタシはアタシで動こう。
――ネキの知名度に全僕が泣いたっす
――目立った活躍はしてねェからな、アタシは。リヴィラの街も酒場も大して利用してねぇやつなら外見で判別は無理だろ
――未だに
――実際は侮ってくれる方が仕事をしやすいンだがな
――はぁ、誰もがお姉ちゃんくらい強かなら、今頃は違ったんでしょうねぇ
強かって意味じゃライラとかフィンとか現状でも多かれ少なかれ知力勝負してるところあるから強かではあるんだけどな
でもいつか引き金の軽い高威力な銃が普及したら報復し放題な世界が訪れて、いかに撃たせないかの勝負になるから体の大きさもあんまり関係がなくなるんだが。神を送還して『
まぁ大きいは強いってのも普遍的なんで、唯一人間にあるとすればって消去法的に挙げられる生存本能由来の根幹をなす価値観なら仕方ないんかね。だからって勝手に怖がって、頑張って殺しにかかって、成功したら利用価値を見出だして絶滅するまで狩る事を止められない。いやはや賢いんだが愚かなんだかわからんよな人間。
まぁ種を絶滅させても人間が問題なく生き残ってる以上は何で滅ぼしちゃ駄目なのかって首傾げるだろうけどさ。農耕民族に切り替えても始まりは野生の狩猟民族だから、別の獲物を探して命なり資産なりを奪えばいいって考えは抜けねぇんだわ。
つーかそれを自制できるやつばっかなら法律なんて
さて、これだけモンスターが好き勝手して混沌としてるなら堂々とギルド本部に救援の名目で向かうのもありか? フィンに捕まると面倒だしやっぱパスで。割と攻勢が緩いし、別区画に応援という名の見物に行くのが吉か。
モンスターの分布は東西南北……西だけ追加で南北に別れてんな。近いのは北か南西……【ロキ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】の
なんて考えてたら中央の氷が一部吹っ飛んで、すぐさま
「オッサンが閉じ込められた件」
――中にいるのは……【
――嘘乙って言いたくなるっす
――じょ、冗談じゃ……
「「「オオオオオオオオオオッッ!!」」」
――今度は何です!?
――多分隠れてた冒険者が挟み撃ちに出たっすね
――なるほど、噂通りか
「ふーむ……なンだ、出遅れた感パネェな?」
いやまぁ動いてたら移動中にあの多重結界張られて
「とりまオッサンの様子は見ておきてェな。簡単に決着がつくとは思わねェが」
――他の区画は大丈夫なんでしょうか
――ネキの良いとこ見てみたいっす!
――ひとつ、派手にやってやろうぜ
結局のところ、アタシは市壁から元の北西――正確には西北西に位置する教会の屋根に戻ってきた。襲撃が緩めで中央に向かう場合も障害が少ない利点がある。
まぁ、倉庫内からは人助けに動けとせっつかれてるが。
「……向こうもそろそろ始まってンのか?」
継続する――徐々に大きくなっている――地面の揺れは、モンスターが階層をぶち抜いてダンジョンを昇っている証明なのだろう。
しかし
「リクエストもされたし、どこ向かうか意見とりまーす希望どうぞー」
――どこでもいいです!
――どこでもいいっす!
――ただし列車護衛が最優先ということを忘れないように
「よーし、みんなまとめて後で説教だ」
君らさぁ……まぁどうせならモンスターの集ってる各方面の隙間に陣取って拠点の周りに狙撃……砲撃? していくか。死地を乗り越えて成長を促す目的からすれば真逆なんだが、まぁ他ならぬリリの頼みだ。多少派手にやるとしますか。