そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

9 / 202
9.無理しました。エリクサー下さい。

変な想像を即座に打ち払い、改めて様子を伺う。強化種のコミカルな動きはそのまま見ていたくもあるが、まぁ、こっちも命懸けだ。隙を晒しているのなら突かない理由がないのでスリンガーにとっておきの一品をセットしてゲーミングウォーシャドウへ撃ち込んだ。

ゲーミングウォーシャドウは大袈裟な仕草(ジェスチャー)を止めずにいたので、スリンガーから放たれたそれに反応できないままさっくり突き刺さる。途端、ビクリと大きく体を震わせたかと思えば、そのまま倒れて動かなくなった。正確に言えば、ピクピクと細かく痙攣してはいた。

 

撃ち込んだのは、パープル・モスの毒成分を凝縮したものとブルー・パピリオの翅、そして適当な薬草や毒草をスキルで混ぜ混ぜして作った衰弱&麻痺を与える毒ダートだ。

これはある日たまたまパープル・モスの毒を受けて退却中の冒険者がいたので解毒ポーションで回復する代わりに傷口付近の血液を譲って貰い、何故かパーティーメンバーから追加の対価にブルー・パピリオの翅まで譲って貰えたというイベントの報酬から作った一品である。レアモンスターのドロップアイテムなんて高級品が唐突に入手できて、しばらくの間は揺り戻しを警戒して震えたもんだ。

で、ブルー・パピリオの翅は原作でデュアル・ポーションの原料に使われていたアイテムでもある。アタシの常識じゃ薬とは、早い話が人体にとって有益な化合物の総称であり、あるいは人体に有害な物に対する毒だ。つまりブルー・パピリオの翅は、人間の敵であるモンスターには毒となるのだ。なった。

 

こうなるとピクピクゲーミング略してピクミンなウォーシャドウは殺されるのを待つだけの憐れな獲物に過ぎない……と思いたいが、モンスターの免疫事情など知らんので効果がある内にきっちり殺しておく。魔石は欲しいので頭を鞭で叩き割って……はい、終了。手元に届いた感触が斬るよりは断つだったので、まともに戦ってたら殺されてたと思う。というか多分当てれないし当てても表面削る感じだった。呆気ない結末なため、上位の経験値(エクセリア)はさほど得られなかったんだろうな。明らかな格上相手ではあったが、苦戦が足りない。これじゃ『神の恩恵(ファルナ)』も肩透かしを食らった気分だろうさ。

痙攣すら止まり、完全に動かなくなったピクミンウォーシャドウの背中を切り開いて魔石を回収する。こう考えると解体用ナイフの頑丈さヤバない? この辺まで共通するなら素材の剥ぎ取りも実現してくれればいいのに……おっとステイ、ステイだぞ【異界信仰(ヴェルト・グラオブ)】。正直、非っっっ常に魅力的で後ろ髪引かれる思いだが、それをするのは……そう、まだ早い。【ランクアップ】した辺りに状況を確認がてら改めて考えよう。

魔石のサイズは通常種よりやや大きめ。ありがたいことに、ドロップアイテムとして爪……指……というか腕? も残していった。サイズは強化種仕様で大きいが、残念ながら(ありがたい事に)色は元の黒一色だ。おかげでそのままでもシルエットクイズみたいで、トライデントとか答えそう。

 

「……っ、うぅ……」

 

と、ここで放置されていた冒険者がうめき声。どうやらそろそろ意識を取り戻すようだ。アタシは応急手当てにポーションを飲み干すと、念のため再び壁を傷付けに向かった。ダンジョンがキレない事を祈りつつ。

 

 

 

「……ここは?」

「ダンジョンの6階層だよ。アンタらはウォーシャドウの群れに囲まれて倒れてた」

「ウォーシャドウ……そうだ! 二人は!?」

 

倒れていた冒険者達はアマゾネス一人とヒューマン二人の組み合わせだった。その内のアマゾネスが意識を取り戻したのだが、こちらは腹部の出血がヤバかった方だ。

 

「一人は手遅れだった。もう一人は両腕がイってたがそれくらいだな」

「そう……アンタは?」

「見ての通りだよ」

「あ゛ぁ!? ふざけんじゃ……」

「そんだけ! 叫べるなら大丈夫そうだな。アタシは新米殺しへ挑みに来た新人だよ」

 

 アタシの言葉よりも先に、横へ並べられていた一人と一体の状況から把握したらしい。瞠目して冥福でも祈ったのか、しばし黙ってから会話を再開して問い掛けてくる。コイツ聞いてばっかだな。それに雰囲気が、こう、うまく言葉にできないがコイツとは合わない感じ。嫌な予感がすっから早めに切り上げるか。

 

「へぇ、その割にアタイらが無事ってことは……強いんだ?」

「いんや、苦戦してたら別の通りかかったパーティーが一蹴してくれた」

「あら、なーんだ。それなら気を遣う必要もないわね。損した気分だわ」

 

パルゥム一人じゃ確認したくなるのは分かるが、最初に強さを確認するのはアマゾネスの性なんだろうか。舌なめずりすんなキモい。言っとくがアタシはリリ一筋だぞ。

あるいは護衛でも頼みたいんだろうか。もしくはいざというときの囮に使うため同行させるとか、パーティーメンバーの欠けで損がでかいからこっちを身包み剥ぐつもりとか。第一印象が悪いせいかどうにも悪く考えちまうな。離れんべ。

 

「まぁ、残念だったな。アタシはまだちゃんと挑戦してないから先に進む。使ったポーション代は無料にしてやるから生きてる方を連れて帰るこった」

「え、ちょっと、待ちなよ!」

「待たねーバイバイ。こっちは損した気分どころかポーションと見守ってた無駄な時間で損してるんだわ。じゃーな」

 

呼び止めるアマゾネスに別れを告げて、アタシは先に進む事にした。強化種との戦いで骨がやられてるので帰りたい心境ではあったが、性格的に合わないのと一緒に帰るのはゴメンだ。別々に帰ろうとしても後をつけてきそうだし、ならモンスターの側に突っ込んで振り切ってしまおうと。この手に限る。

 

で、一通り狩りをしてみたが、他のモンスター含めてそこそこやれる。とはいえウォーシャドウの速さは正直キツい。ウォーシャドウ複数だけで来るのも当然キツいが、複数種類が混合して来るとリーチや位置、タイミングがバラバラで頭が余計に疲れる。

その分だけ経験値(エクセリア)は期待できそうな気配はあるが、武器頼りなので判定が厳しくなってたりしねぇかと思わなくもない。まぁ、今はパターンを覚えつつ速度差に慣れる段階と割りきって、後日また改めて数打ち品で挑みに来よう。しばらくは貯金に精を出して【ステイタス】の更新をするつもりはねぇし。

にしても、骨折中なのに受けと避けをメインとか考えてみたらマゾいな。これは『神の恩恵(ファルナ)』にもウケがイイのでは……受けだけに。あっ、ヤバい受け損なっ……ぐぉぉモロに入った。あばらが、肋骨が、内臓に刺さってないの奇跡なんだぞちくしょう。

 

6階層は広さや迷路の複雑さがあるので狩り場が重なる場合はそう多くないが、狩り場にしている冒険者の数もそれなりに多い。そのほとんどがパーティーを組んでいるので、必然的にソロでパルゥムなアタシは目立つ。武器も腰の鞭と左腕のスリンガーと異色だし。

声を掛けられる事は無かったが、ピンチでもないのに怪物進呈(パス・パレード)して来る連中はいたのでスリンガーで足を撃ち抜きたい衝動を抑えるのに苦労した。遠距離武器持ってるのを見ててこれだから恐れ入る。進呈されたモンスターは責任を持って進呈者から離れたのを確認してから魔石に変えてやったが。

5層以降の出現率の違いは、それこそMMORPGを思い出させる湧きを見せた。部屋で延々狩り続けられる。体力がもたないので適宜戦いながら壁を傷付ける必要があったけど、この鞭は手首を少し動かして攻撃ついでに巻き込めば良いだけなのでその辺は楽をさせてもらった感。

 

帰り道に、骨折の影響か熱っぽくなって気だるさを覚え始めた。階段を上り終える度に倦怠感は増していき、頭や足運びもフラフラと。地上に出て汚れを落とし、何とか本拠に辿り着く頃には傍目にも分かる重病人具合で、リリとソーマには心配させてしまった。反省。こんなことならあのアマゾネスともう一人が起きるのを待って同行して帰ってた方がマシだったかしらん。

 

 

 

後日バッタリ遭遇した例のアマゾネスは、元の生き延びた一人に加えて新たに二人の男を引き連れていた。なんでも、イシュタルんところの戦闘娼婦なんだとか。新米殺し相手に全滅してる以上はLV1揃いなんだろうけど、妙に偉そうだったのは何だったんだろうな。ていうか関わりたくねーから来んなって話なんだが。

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