そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「生き延びた【
――学習能力がないんでしょうか?
――多分味方を巻き込むから爆弾は使えないと思ってるっすよ
――つまりブーストを使ったジャンプは厳禁ということ
「誰がすンだよブーストジャンプ。いや、弱爆弾はブーストの一種か? まァ、それはおいといて、知らねェってのは本当に厄介だよなァ?」
Lv.6の視力は
だから少しばかり手を出す事にする。アタシの所属はオラリオとは言いにくいし、
オラリオ所属かはさておき、今の自認としてはオッサンと姉御――殉じる者の後援だ。だからその二人の邪魔をするってんなら、それを更に邪魔してやる必要があるわけ。とことんアタシの参戦理由を作ってくれる【
「護衛
何だかんだで決着したら即回収するために中央寄りで待機してた事もあり、直ぐに手の届く距離。とりあえず結界に攻撃してるやつらは地上産の雑魚で、削るスピードは遅いし反動でその内に力尽きるだろうから、ここは後続を優先して断つ事にする。ダンジョンの深層産も混じってるなら【
久々のダマ鞭が唸るぞー。どこぞのスーパーな宝貝みたく半径数kmとまではいかねぇが500Mまでなら届くから中央に繋がるメインストリート二箇所なら封殺できる。爆弾も合わせれば三箇所まで受け持てる計算だ。残り五箇所? 知るか。面倒見切れんわ。余裕が出たら向かっちゃる。
「歯ごたえねェなー飽きてきた」
――早いっす
――お姉ちゃん……
――所詮は遺物か
いやだってさ、ダンジョンから連れてきたって言っても
屋根に上って指示を出している
南東に構えるアタシの手が回らない場所は、死兵になったロートル組というかベテラン勢が命を賭して進行を食い止めていた。中には
結界の護衛がある意味で時間との勝負だからコスパ無視した心中も最適に近い解の一つではあるんだが、ただでさえ脳筋と感覚派で占められている冒険者の中にいる貴重な後進育成できるであろう連中が続々と失われてったのは非常に痛い。
後は
半ば自傷に近い被害を受けてボロボロになっていくのを厭わない姿は見る者を奮い立たせたが、痛々しさに顔を歪ませる者も少なくない。下手すると
なもんで通りすぎるルートにタイミングを合わせてハイポーションを振り撒いておいた。エリクサーやモドキは緊急時に備えておきたいから節約中。めっちゃ舌打ちが聞こえたが今は見逃してやろう。そして後々シル経由でマタタビ製品を送り腰砕けにしてやる。
勝手に担当した区画はモンスターの掃討がほぼ終わったんで、姿隠しを起動して中央の一騎討ちを見物していた。屋根上にいると
いやね、なんつーか、
そんで観戦してた【
直前の、正に必殺と呼べる一撃のぶつかり合いはすさまじかった。地面は大きく揺れ、衝突の余波で結界も氷も吹き飛んだ。そこに集っていたモンスターや、それを蹴散らしていた冒険者たちも。
アタシは事前に――咄嗟の行動だったが――地面を踏み抜いて開けた穴に潜ったんで被害は軽微。Lv.6にもなると全力の踏み抜き一つで個人用の塹壕が秒で掘れる……種族やLv.を揃えて他の冒険者たちにもやらせたらトリビアになるんじゃなかろうか。いやはや今ほど
一撃で音は止んだので穴から顔を出して周囲を伺うも、土煙が上がって視界は閉ざされている。アタシはこれ幸いと現場へ急行した。
「派手にやられたなァ?」
「……お前か。見ての、通りだ……」
「向こうと会話は?」
「不要だ。語るべき、事は……剣で」
「……絶対ェ肝心な部分しか通じてねェぞあの猪武者」
「フッ、それでいい……」
「そォかい。なら前に決めた通りだ、抵抗せんで受け入れてくれよ? 【呑め】……【吐け】」
はい、瀕死のオッサン回収完了。後は事前に作っておいたズタボロになったオッサン風の肉人形を取り出して放置。さすがにベヒ毒に冒された肉体はそのまま再現できんかったが、見た目を似せるくらいはできてる。あとは騙されてくれる事を祈ろう。会話イベント? スキップに決まってんだろ急いでんだよこっちは。
――うわぁ、生きてるのが不思議なくらいっすね
――あまり無理をされては困ります
――
リリの言葉通り。時流が調整されてようと停止ではない以上は間に合わなくなる前に安全地帯を目指さないとない。てぇわけで、いざ、ダンジョン。グッバイ! アディオス! アラハウスマッラドゥック!
バベルに向かう途中でフレイヤとすれ違ったけど、肉体は一般人なはずなのに土煙の中でこっちは姿隠し使ってんのに目が合ったのにはちょいビビった。幸い、魅了をかけられた感じはなかったし、止められもしなかったが。勘が働いたのかね? 移動の余波で吹き飛ばさないよう遠回りはしたが、数秒の違いなんで今なお粘っていると信じてる姉御には許してもらいたい。
一応擁護すれば、オッサンとオッタルの勝負はそのまま士気にも直結して抗争の行く末を決める大一番ではあるんで注目せざるを得ないのは確かだ。その時点で情けないとかはこの際だし言わんでおいてやろう。
それにバベルは結界と氷に囲まれてるから下手な拠点よりも安全かもしれんし、配置できる人員は精々がLv.3までだろう。対するこっちはLv.6な上に隠形の効果もあるんで、見逃しても仕方ない。ないんだが……余所見してる間にバベル爆破されたらどうすんだよ、一番気を抜けないタイミングだろうに。指揮官不足というか、ここで抗争を勝ち抜いてもオラリオの未来は暗いなぁ。むしろよく今までダンジョンで生き延びてこられたな。
まぁ、楽ができる分には文句を言わない。監視の目をすり抜けてバベル駆け込んだら、そのまま大広間から螺旋階段を無視して
背後から雄叫びが聞こえてきたんで、オッタルの勝利が確認されたのだろう。後は士気の差でこのまま押しきるんだろうな。一抜けした
なお、同じタイミングで
そこから先は当初の予定通りに爆弾で床をぶち抜き落ちていく。途中からダンジョンが気を利かせたのか、いくつかの階層は侵入地点に縦穴が開いてたので利用させてもらう……挟まれて壁の中はごめんなので爆弾を投下してからだったが、ダンジョンが慟哭する事はなかったのでヨシ!
17階層と18階層の間は他よりも分厚いイメージがあるんで、17階層はそのまま駆け抜ける。ゴライアスは休暇中の模様。原作のジャガーノート案件を考えれば、黒いモンスター発生時も
トンネルを抜ければ……じゃないが、階段を下りたらそこは地獄だった。なんかめっちゃ燃え盛ってるし、普段の様子とは似ても似つかない。外伝の遠征で59階層に足を踏み入れた【ロキ・ファミリア】に元ゼウスとか元ヘラがいたらこんな気持ちを抱くんだろうか、なんて。
まず目についたのは、でっかい黒い竜。その周囲を小さな影が、これまた黒い何かを纏いながら飛び回っている。アイズのスキルを乗せた魔法か、あれ。Lv.3の身でLv.6相当を相手に食らいつくって偉業すぎん? アレン以上に自損事故起こしてそうな気もするが。
とはいえ、今は姉御である。階層を見回すと……いた。
「【ルミノス・ウィンド】!!」
「【
あかん(あかん)。どう見ても決着の一撃……二撃が通った瞬間じゃん。
少し高い丘にいるエレボスと、何故かその隣にいるアストレアも気にはなったが、優先順位を間違うわけにもいかんし無視だ、無視。
だって姉御ってば明らかにやべー温度してそうな赤熱する縦穴に向かってるんだもん。あれどう贔屓目に見ても貴様らには殺されてやらんムーブだろ。身投げだろ。ふざけんなや!
「あンのアホォォォォ!」
そら叫ぶわ。隠形も吹き飛ぶわ。こんなんやらかされたら。
神の、ほぼ一般人――なお遊牧民――並の視力でも観戦できる距離しかないとはいえ、走って間に合うもんでもない。もう縦穴の中で回収するルートやんこれ。最後の最後でしっかり目が合って微笑したし。恨むぞ姉御。
弱爆弾をばら撒いて急加速しながら秘晶を加工した
展開した魔力壁が悲鳴を上げるが、多重起動したおかげで保ってる。姉御の体は普通に燃えてたから、残った最後のエリクサーぶっかけて即倉庫送りだこんなアホは!
性格的に説教も意味ないだろうし、嫌がらせに姉御の転生用
ま、まぁ普段から目を閉じてるしへーきへーき。仕返しも怖いけど向こうは『
なんて事を考えていたが、縦穴を抜けた先は
つーか、なんか目の前にブルードラゴンが数体いるんだけど。何なら前後左右囲まれてるし、一体は足元で首を踏み砕かれている。こいつらって普段はもっと高い空中を漂ってるんじゃなかったっけ?
そんでもって軒並みこっち見て固まってるんで、とりあえず中指立てた。通じたのかは不明だが、吠えながら
と思ったら何故か一体だけ地面に伏せて丸まりながら震えてるんだが。さてはこいつもしかしなくても『
この綺麗にイベント終わらせてくれない感じ、ダンジョンってはマジでダンジョン。