そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「つーわけなのよ」
「なるほどのぅ……」
アタシが訪ねてきた経緯を聞いて、目の前の老人……
「恩恵が消えた時にはついに逝ったかと、そりゃあもうしみじみとした気持ちになったもんよ。秘蔵の酒まで開けてな、月夜に献杯したわ……それが」
一旦言葉を切った老神は、ニヤリと表情を歪めて、アタシの背後に視線を向ける。
「まさかこんなチビっこくなって帰って来るとはなーー! プークスクス!」
「うるせぇクソジジイ! 好きで小さくなったと思ってんのか!?」
本邦初公開。これが現在肉体年齢約七歳の元オッサン、現ザルドくんの姿だ!
顔の傷痕はないし、全体的に細っこくてチマい。元よりオッサンの髪の毛から遺伝情報をごにょごにょしてデザインされた素体なんでほぼ本体と言って問題なく、これがあれになるのかと思うと人体の神秘を感じずにはいられない。まぁ人間そんなもんだ。声も見た目相応に高くて、叫ばれると耳がキンキンするから要教育だな。
総合するとクソ生意気そうな子供であり、現にガキ大将系のクソガキムーブをキメまくっている。この辺はどうにも精神年齢が設定された肉体年齢に若干引きずられているらしい。貴重なデータなんで忘れないようにしたい。
「おぉ?、 なんじゃやるか? 恩恵もなく、そんな矮躯で、老いたりと言えどもこの筋骨隆々な儂に勝てるとでも?」
「上等だクソジジ「黙れ」グエッ!?」
「ブゲッ!?」
椅子を倒しながら立ち上がり身を乗り出したザルドを、そして迎え撃とうと立ち上がり構えた老神を、革製の鞭が打ちすえる。
「全く……
「……ウッス」
「痛たた……お主は変わらんのぅ」
「ふん……」
こちらは元姉御の現アルフィアちゃん。こっちはザルドよりも更に若い約五歳ボディで、精神年齢も引っ張られているはずなのに、何故か性格は大して変わらない。静寂を好み喧騒を厭うクールビューティ暴君のままだ。
こっちは遺伝子使えんなーと思ったんで【
ちなみに鞭は村に来るまでの道中で襲ってきた暴れ牛の革から作った。あっさり使いこなす辺りやっぱり天才っているんだなーと思わせてくれる。鞭の先端が音速超えするのは『
「まァ、話を戻すとこの村でしばらく暮らしたいんだが、ここって排他的?」
「まークソ田舎じゃからの。そういう部分があるのは否定できん」
「あンたの知り合いってのを加味してもか?」
「儂、お前さんとは初対面なんじゃが」
ここまで来ればお分かりいただけるだろうが、回収したオッサンと姉御に【
あの抗争は明らかにメインストーリーっぽい流れではあったんだが、
まぁ言ってしまえばお膳立てされなきゃろくに【
つーかエレボスは別に神話で特別有名な邪悪をなした逸話とか残ってねぇし、暗黒――暗闇は確かに恐怖や死の象徴だっただろうが同時に休息や安らぎの要素も感じていたはずで。それに古代ギリシャの死生観からすると魂が無事に冥界に旅立ち受け入れられるのは弔いが成功した証ですらあるんじゃなかったか。この辺は割と日本と近いよな。現世にいて悪霊やって迷惑かけとらんでさっさと死後の世界まで裁判受けに行けって感じ。日本の場合はそこで幽霊でもいいからってファイト一発して子供残したりする変態っぷり見せるが。
そもそも原初の幽冥とか言われても「あらお洒落」「なんかよくわかんないけどかっこいい」「中二乙」くらいしか感想出て来ねぇだろ。日本語で言ってって返されるぞ最悪。まぁね、ミリしらで考えたら幽→幽霊→悪霊→悪。冥→冥界→地獄→悪人→悪。つまりめっちゃ悪い系って意味なんだなとか解釈できるかもしんねぇが……うーむ。まぁ配置に関してはメガテンとかで慣れてはいるんだけどさ。
それにこの世界だと死んだら魂が天界に行くし、神も天界にいるんだよな。地下世界とかどこにあるんだ。浮島の地下って感じか? なんだよその引きこもり御用達な環境。自力にしろ案内があるにしろそこまで魂を移動するコストが無駄……ってそこは天界だから『
配偶神のニュクスが単独で生んだ神々は負の面を司る者も多いが、エレボスとの間に生まれた神は天と昼と渡し守やぞ。そんな前世知識持ってたら絶対悪(笑)って思うやん?
要は今回の件、神としての賢さだけを頼りにして、焦りから今までやった事ない分野に手を出した可能性が高い。そら大ゴケするだろ。オラリオ勝って終わったけど満足して逝けたんだろうか。一応【アストレア・ファミリア】と【
もっとも、ダンまち世界は神々の関係性が違うし権能も違う部分はありそうなんで、たらればに過ぎないんだが。
いやね、個人的にはボス戦的な山場があるかなーとか思ったりしてたんよ。それこそ転生なんて神の領分に踏み入る魔法だし、使うと『
実はちょうど魔法を使ったタイミングで派手に揺れたからワンチャンあるかなって思ったりもしたんだが、それはどうやら二つ上の階層でのボス戦が終わった事を意味していたらしい。全部済ませた帰り道ではまだまだ破壊跡が生々しかったが、誰もいなくなってたし。
少し前後するけど姉御回収してブルードラゴンの『
そんなわけで割とすんなり魔法は行使され、つつがなく効果を発揮した。【ステイタス】の低下というデメリットを踏まえて使用不可になりかねない倉庫から出てもらった上で護衛を頼んでいた面々からは幻想的な光景だったと感想をもらったけど、アタシ自身は半分
で、割と重要な【ステイタス】の低下なんだが、都合二人分の転生を執り行った事で下がった数値は合計で5。ただし項目は
でもLv.7に到達した実力者二人にやり直しの機会を与える奇跡の代償がLv.6がLv.1に戻るだけってのは割と破格だと思うんよ。所詮『
手探りでも一度到達できたなら、道を覚えて再走すれば早く辿り着けるのが道理だしな。多少の運は絡むかもしれんが。限界突破は強いて言うなら理論上辿り着けるが寿命の都合で辿り着けない境地ってのはあるか。それも主従契約と【
ちなみに、最初は忘れない内に転生用の素体を更に若返らせておこうと思って姉御を転生させたんだが、その段階ではLv.5に下がるだけだった。『
しかしおそらくは下界初の現象であろうレベルダウン、あれは虚脱感がヤバかった。【
恩恵を剥奪されるときもあんな感じなんだろうか。それはそれで得難い経験を積んだ事になって、再度恩恵刻んだらちょっと強くてニューゲームで始められそうな気もする。扱い的には
でもそんなレベルダウンを経験したおかげでダンジョンの帰り道は割と怖かったんだよな。エイジャとラピスを表に出すわけにもいかんし、
まぁ魔法やスキルは据え置きだったんで使用不能になってなかった【
そして地上に出て教会で一息吐き、抗争はオラリオが勝ったが
二人の記憶を便りに山を越え、森を抜け、山を越え、やっぱり山を越えを繰り返して辿り着いた村が現在地。そして今は大神ゼウスと御対面ってわけだ。
なお、ベルを見た瞬間にガチの瞬間移動かと見間違える速さで姉御が抱き着いて押し倒してた。混乱するベルにアタシがした説明は……生き別れの妹。祖父がいるといっても家族の愛を求めていたベルにとっては正しく福音に等しく、すっかり信じてしまったベルの期待を裏切る事ができなかった姉御はその設定を受け入れた。アタシはしばかれた。
そんなベルは現在ゼウスに言いつけられて川へ水汲みに行っている。そこに念のためリリに護衛と時間稼ぎの任務を与えて同行してもらっている形だ。いやまぁリリから申し出てきたんだけどな。リリisマジ女神。リリを崇めよ。