そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱) 作:夜月工房
「まァ、最悪はこの二人を預かってもらうだけでもいいンだがな」
「ふむ……何を考えておる?」
「特に何も……なンて信じられるもンでもねェわな。単純に今はまだオラリオ荒れてっから様子見してーのよ」
「ほう。つまり何か。オラリオが落ち着いたら戻ると」
本人の希望とか相性次第で肉体に魂が定着しない可能性とかを踏まえて本人をそのまま若くした姿だからなー。オラリオだと普通に勘繰られるし、神に嘘は通じないしで、窮屈な思いをさせる事になっちまう。
いやまぁ本人たちが強く望むなら当初の予定通りすぐに連れてってもいいんどがな。実の子設定で親を奪った黒竜も希望を見せた神も黒竜に負けた連中よりも更に弱い冒険者もみんな嫌いってトゲトゲさせればいいし。実の子部分は多少意識ズラす必要あるけど、他は本心だから嘘センサーすり抜けるんだよなぁ。
ただ現実問題として【暴喰】と【静寂】はオラリオにケンカ売った巨悪って評価になっちまってる以上、記憶が新鮮な内に連れて行くと親の代わりになぶり殺されろって復讐に来る可能性も高い。冒険者とか上澄みでさえ毛の生えてすらいない
つーか仮にも神の認める偉業を達成してるんだから、それに恥じないよう上級冒険者様は礼節の一つも身に付けろって話よな。偉業と蛮行が
「喉元さえ過ぎちまえば頭冒険な連中なンざどうにでもなるからなァ。見た目から素性に辿り着ける連中も減るし。神連中は無視安定だが、積極的にボコってもいい」
「えぇ……ドン引きだわ。あー、儂が言うのもなんだが、神は老獪だぞ?」
「いやいや、地上に降りてくるような連中ほど分かりやすく誘導しやすい道化でいてくれるのはいねェだろ。遠巻きに表面しか見てねぇやつらだし。例えば、そうさな、堕ちた英雄の子が親の悪名を消し飛ばすほどの偉業を成し遂げる姿……見てみたくねェか?」
「めっちゃ見たい」
「だろ? まー試練とか嘯いて無理難題けしかけて来るクソ迷惑なのも中にはいるだろうし、多少の理不尽をねじ伏せる強さ自体は必要だがな。近い内に黒竜討伐してダンジョンの最深部にお邪魔しなきゃないわけだし」
転生が成功するかは未知数だったからしっかり死ぬ前提でぶつかった最強二人は、自らを打ち倒した相手に託した分だけ失望はマシになってる。それでも自分への失望を燃料に燃え上がってはいるんで、下手をすればオラリオにとんぼ返りしてダンジョンに突撃しかねないが。
つーかこの二人を実の子設定で見せればオッタルもリヴェリアも停滞せずに奮起する可能性もあるんだよな。代わりに【アストレア・ファミリア】辺りは面倒見るとか言い出して逆に停滞しかねないんだが。まぁそうでなくても民衆相手に停滞するだろうし、ダンジョン行くだけマシになるか? 善人ってーかお人好しが正義を名乗るから絶妙に面倒くせぇんだよな連中。
つーかさ、正義って別に正をつける意味なくね? 義の時点で正しい概念のはずだろ。世界各国の思想における義で正しくないとされるものなんてあったか? なんかこう、馬鹿にも直感的に分かるように~とか一文字一音は美しくないから~とか下らねぇ理由で正を足した感があって嫌なんだよ。無駄にコスト増やして喜びやがってどこのどいつだ。犯人とっくに死んでるだろうけど。順当に考えれば
そんなわけで
とりま、
そういやベルって冒険者周りの知識はどんくらいあんだろ。雑談の中で確認しつつ知識ねじこんどくか。粒揃いの同年代(?)と切磋琢磨すれば……いや待て。ベルって『
「ふーむ。まぁ畑仕事とかを手伝って貰えるなら徐々に受け入れてもらえるとは思うがの」
「確かに態度で示すのが無難か……クソ田舎で思い出したけど、他種族への偏見とかあるか? 具体的には
「ははは、若い連中は存在すら知らんと思うから正直ビミョー」
「マジか」
そういやベルもパルゥム何それチョコアイスとか言ってたわ。いやこれ原作じゃねぇな。アイスクリーム存在してねぇだろ多分。でも、そうか、食いたくなったら【
なんなら氷の精霊とかいねぇかな。セルシウスとかフリージオとか……そうだ、精霊だよ。
「あー、話は変わるンだが上位――」
「ただいまー!」
「――ここまで、か」
「まぁ焦らんでも時間はある。お前さんとてオラリオで一暴れして疲れておろうよ。しばらくは休め」
「あい、あい。しゃーねェな、今はお使い帰りを出迎えに行ってやっか」
時計を見たら割と時間経ってたわ。でも逆に遊ばないで水汲んできただけっぽいな。いかん、これはいかんぞ。子供はもっと自由で勝手気ままに遊び呆けるくらいでちょうどいい。
七歳だとまだ小学二年生か三年生やぞ。アタシなんて……親父に合わせてダンジョン通って、お袋の家事や内職を手伝って、親父と二人きりになるとギャン泣きしてこっちに駆け寄って抱き着いてくるリリをあやしたりしてたわ。前世だと……学校ないとほぼ毎日田畑の作業手伝わされてたな。夏休みは山から集めてきた笹の葉っぱを束ねたりもしてた。あるぇー?
まぁいいや。今は肉体的にも精神的にも慣れないお姉ちゃんモードになってたであろうリリを労ってやらねば。
「おぉ、おかえりベル!」
「うん、ただいまお祖父ちゃん!」
「帰ったか」
「桶を貸せ、台所に持って行くのはやっておく」
「え、あ、うん。ありがとう」
ベル、まさかの二刀流だった。性的な意味じゃねぇぞ? 桶を片手で左右両方に持って帰って来たんよ。年の割に筋力も体力もあるみたいなんで、ちょっとびっくり。
その桶はオッサンと姉御がそれぞれの手から奪い取って運んで行った。自称妹に力仕事を任せてるけどいいのか男の子。祖父の教え的な意味で。つーかそもそも他人に慣れてない感じだな。よもや村八分か?
まぁ、その辺は暮らす内に嫌でも知るだろうしな。今はリリを労うのだ。
「お帰り、愛しいリリ。どうだった?」
「ただいまです、お姉ちゃん。モンスターどころか獣の襲撃もなく平和な散歩でした」
「そっか。ありがとうな」
「いえ、リリはお姉ちゃんのお役に立てましたか?」
「ばっちり。頑張ってくれたからご褒美あげねーとな。何か希望あるか?」
「はい! 今日も一緒のお布団で寝たいです!」
「お安いご用だ。むしろこっちから頼みたいくらいだわ。それ一つじゃ足りないからもう一つ願いを言うがいい~」
「え? えーっと、エイジャちゃんとラピスちゃんと遊びたいです」
「あいよー。時間使っておくから好きなタイミングで声をかけてくれ。そしてアタシの分まで存分に遊び倒してきな」
リリが良い子すぎて辛い。軽く話してるけど大樽背負ってるからな。『
つーかゼウスに『
『――と、いうわけで僕はネキと一蓮托生の仲なんす!』
「イイハナシダナー」
「なぁ、これ前に話してたやつだよな?」
「あァ。知り合って受け入れられたとしても早々死に別れる可能性あったから黙ってたがな」
「お、おぅ。それもそうか」
はい、エイジャのトークスキルもあってゼウス陥落です。早えーよ。
オッサンと姉御は前にちらっと話題振ったから驚きは少なかった模様。
ベルは無知からそういうのもあるんだーくらいの軽い感じだった。軽く原作崩壊したけどへーきへーき。なんなら初手ヘスティアに紹介するし。隠し事できないタイプに漏らすのは拡散の危険性があるけど、仮にバレて糾弾されたらじゃあお前ら悪人かどうか判別できてんのって返すだけだし。最初から同族意識とかいう謎フィルターで警戒心カットされずに疑えるだけ『
まぁ、そんな感じに説明が済んだので、村での生活が始まったのである。きっとこれからそれなりに苦労して絆を深めながらオラリオに向かい、そこからベルの快進撃をサポートする日々が始まるに違いない。だが、あえて言おう。
アタシたちの戦いはこれからだ!