そっちがリリカルならこっちはラジカルだ!(錯乱)   作:夜月工房

99 / 202
99.下準備しました。更新してあげて下さい。

あの後は、まず最初にどうやら【ステイタス】の見せ合いと話し合いに参加したかったリリが自分だけスルーされたと機嫌を損ねてしまったんで、必死に宥めた。初手クライマックス。

それを終わらせると、次は魔法の試し撃ちしたい姉御に訓練場まで引きずられていき、最大出力の【サタナス・ヴェーリオン】をブッパされる。Lv.1の魔法ではLv.6に一矢報いるのは無理があったが、間違いなくLv.1が出してもいい威力でもなかった。レフィーヤが度々言及されてた理由が、その時はっきり理解できたね。まぁ他にも真っ向から格上狩りできちゃう【英雄願望(アルゴノゥト)】乗せた一撃とか原作にあるんだが。【英雄決心(アルセウス)】も格上狩りできちゃうんだろうなぁ。

んで、全周囲にしか撃てないっぽかったんで魔法の封印を命じられた姉御の抗議(チョップ)を無抵抗に受け入れつつ畑の――果実主体だから果樹園のがいいんだろうか、建物内なのに――様子を見て回った。

そうして一日の締めに【ヘスティア・ファミリア】の結成を記念しつつオラリオへようこそって事で歓迎会を開き、飲み食い語り演奏し、みたいな感じで良い感じの一日が終わった。

酒も解禁したが、羽目を外すような事がなかったのは肝臓がタフだったのか、不満やストレスの少ない本音で生きられる環境を作れたのか、後者ならいいなと思いつつ。

 

で、次の日に個々人のスキルに関する検証項目や推論を記載した課題を渡した。それを持って冒険者登録へ向かったベル一行withリリとは別れて、豊穣の女主人でバイト予定入れたり【ガネーシャ・ファミリア】と怪物祭(モンスターフィリア)の打合せしたり原作とのニアミスを視野に入れた予定を確定させていく。途中、バベルの上から視線を感じたので手鏡で日光を反射しておいた。凄いぜ強いぜ太陽光線。後で幹部勢に追われそうで怖いけど後悔はしていない。

ヘスティアには畑の世話はこっちで請け負うから知神友神に【ファミリア】の結成を報告して回るように助言しておいた。特にヘファイストスは世話を焼いてくれてたんだし真っ先に報告するように、こちらは厳命しておいた。相手が大規模な鍛冶系派閥なので、忙しいようなら手紙渡して出直すようにも。

デメテルは本拠を都市内に構えてるが、農場を都市外に持ってるんで割と留守にしがちだ。なもんで、手紙を預りアタシが渡しに行く。フリーパス万歳。まぁ普通に本拠いたけど。

 

「そういやデメテル様。これ、昨日ヘスティア様が収穫した赤漿果(ゴードベリー)

「あらあら、立派ねぇ。後でみんなにも味見してもらうわ」

雲菓子(ハニークラウド)は本家に比べて甘味が抑えめなんで要改良。一応これ試供品(サンプル)な。水晶飴(クリスタル・ドロップ)は難航。合う土の条件がわからンのよな。あるいはダンジョンの石英でも埋めて置けばいいのやら。背の低さからすると石英でカットされる光の波長も鍵なのか……」

「うーん、その辺りは力になれそうにないわ。ごめんなさいね」

「あァ、それは別にいいンだ。許可もぎ取るのを支援してくれただけでお釣りが来る」

「ふふ、今思い出しても信じられないもの。ダンジョンの植物を栽培するから魔石を持ち出させろだなんて」

 

報告とお裾分けを済ませ、雑談に入りそうだったので肩をすくめて会話を切り上げる。

見た感じは若奥様なんだが、割と世間話が好きなオカン的な性質も持ってるんよねデメテル。ハイソな都会からのどかな田舎の農家に嫁いできた感。でも不変だからハイソなまま。むしろママ。

帰り際、外の農場で取れた普通の野菜を大量にもらったのはさすがの【デメテル・ファミリア】である。まぁ融資の形で金は支払ってるんで実際はふるさと納税の返礼みたいなもんなんだが。

 

 

教会に戻って昼食を作り、夕飯の仕込みもしておく。途中でヘスティアが帰って来たので昼食を追加で――この際だしと思って想定される全員分を作り、案の定ベルたちも帰って来たので改めて昼食を摂りつつ報告会。

 

ヘスティアはヘファイストス以外にミアハとタケミカヅチに報告したらしい。うーむ見事な貧乏所帯のツートップ。だが顔がいいのであらぬ誤解を受けそうだ。まぁ正式な同盟は懐の寂しさから難しいが、声をかけてくれれば可能な限り力になるとの事。

ヘスティアからアタシに仕事を斡旋してもらえばと提案したら、タケミカヅチは眷族と相談してからと保留したが割と乗り気で、ミアハは眷族が一人なのを理由にして受け流したんだとか。

むしろポーションはうちをご贔屓にとか宣伝されたらしい。でもその眷族が借金を苦に詐欺働いてる可能性あるから友神ならポーション配布を止めさせろ。つーか本拠に縛りつけとけその顔だけはいい男神。依存させる布石ならともかくガチで良かれと思ってのバラ撒きだから手に負えんのよ。

ちなみに落ちぶれた事からわかるように、ナァーザは救えなかった。【ミアハ・ファミリア】との接点自体はあったけど、本人とも主神とも面識はなかったからね。そもそもこっちの実力が無かったり隠してたりな時期だったから鍛えられなかったし、何より事件のタイミングを知らんかった。

抗争後のゴタゴタ期間では優先順位にランクインすらしてなかったんで意識外。知らん内に事件が起きてて、ふと思い出した頃には既に派閥解体寸前だったよね。そこで顔出した際にナァーザからそれとなくではあるがミアハ狙いの女扱いされたんで助ける気が失せたっていう。店を利用してた当時に多少打ち解けてた眷族達は抗争で死んでたみたいだし。

せめて抗争寸前くらいに恩返し的な感じで新薬のレシピを売り渡すとかのテコ入れしてたから借金にも負けなかったかもしれんが、ディアンケヒトの性格上ミアハ派の資産を見抜いた上で義手の代金を吹っかけた気もする。

まぁ、原作知識で借金を理由に身も心も離れる程度の集団だったのが最初に支援を踏み留まらせた点なんだよな。なまじ顔も性格も(そして気前も)いい神なんだし、他の女性団員からも想いを寄せられていただろう事は推測できる。ナァーザの想いがいつからかは知らんが、女の闘いってやつはドロドロしてるんで、その辺があったら派閥内の空気もあんまり良くなかったんでねーかな。男性団員からすれば周りがみんなミアハ様ミアハ様って自分に出会いがなくて不満だったかもしれんし。

他にも道中で出会った男神や女神にも宣伝はしたらしいが、雇用主(アタシ)の名前が挙がったらとても優しく接してくれるようになったんだとか。なんでさ。

 

ベルたちは冒険者登録をして、担当(アドバイザー)は信頼と実績のエイナさん。本来なら申請書の閲覧と許可をもらうのに一日置くそうなんだが、すぐダンジョン潜るって伝えたら急ぎ処理を済ませてくれたらしい。そして講習を受ける事にはしたが最初にテストを受けてから必要に応じて講義って流れにしてもらったら、ベルとリリは一発合格。オッサンが二発。まさかの姉御が三度の挑戦で合格。

浅い階層の知識はやはり抜けがあるというか、気にも留めてない部分だったので引っかかったそうな。気持ちはわかるが。ウォーシャドウの特徴で体力や防御はゴブリン並って、その情報実際に6階層で戦うときに必要になるか? アタシなんて初遭遇が虹色に(ゲーミング)発光する強化種だったんだぞ、しかも旧ダマ鞭を弾くアホ強度の。全く役にも立たなかったわそんな油断に繋がる先入観になりそうな情報。現場を知らないというには酷な異常事態(イレギュラー)だとは思うがな。とりあえずそんな細かい問題を出すエイナさんマジ加虐趣味。

ぶっちゃけ同じ知識を教えるんなら義手とかになって第一線張れなくなったって引退した先輩冒険者を雇って引率させて、実地で学ぶ方がいいと思う。形式は冒険者依頼(クエスト)だけど負担はギルドがって感じで。まぁ、アタシ個人で勝手に元闇派閥(イヴィルス)雇ってダイダロス通りの孤児相手にやってる試みなんだが。

無事試験を突破してダンジョンに潜ってからは、その鬱憤を張らすように狩って狩って狩りまくったらしい。そして明らかにおかしいドロップ率だったそうな。様子見なのでポーチや鞄を持たなかったのが災いして、短い間ながらも何度かダンジョンと買い取りカウンターを行き来したとか。

そんな事をすれば目立つのも当然だし、若者がまとまってるのでカモにも見えるわけで。三回目のダンジョンで食い詰め者系のオッサン冒険者複数に絡まれたらしいが……まぁ、結果はお察しである。機嫌の悪さがマシになったとはいえ依然不機嫌な姉御だぞ?

一応、殺してないどころか五体満足で済ませてやったとは言っていたが……まぁ、仮に逆恨みで仲間集めて仕返しに来ても返り討ち安定なんだよなぁ。そこらのチンピラなんて浅く傷つけただけでその部位を奪ったのと変わらない効果あるからモンスターより与しやすいし。怪物進呈(パスパレード)の処理だって散々訓練して来たから心配は少ない。

強いて懸念材料を挙げるなら、Lv.3以上が出て来た場合か。最後の砦ブリューナクくんが控えてるんだよなぁ。武器のみ使用で長巻縛りとはいえ、二周目の全項目S999で【ランクアップ】重ねてきた潜在値(エクストラポイント)マシマシLv.4で完封負け、Lv.5で辛勝だぞ。精神干渉も弾くから、ありえないとは思うが【イケロス・ファミリア】辺りに襲われても切り抜けられるぞ。

 

 

昼食を終えると、ヘスティア側が【ステイタス】を更新するらしかったので、今度こそリリも最新の【ステイタス】を引っ提げて情報共有に参加するべく、一度更新のために二人で【ソーマ・ファミリア】の()()に向かう事にした。

 

アタシが商会の競争と発展に寄与した取引を経て、派閥の経営だけを見たら左団扇な我らが【ソーマ・ファミリア】は、元からある本拠とは別の拠点が建てられていたりする。場所は北西部、第七区画。早い話が教会の割と近く。

この辺り土地なんだが、ただでさえ廃墟が多かったのにあの抗争で襲撃地点になったもんだから、完全に瓦礫の山しかなくて住民もいないってんで復興計画からも外されて、要は地価が暴落してたんよね。立地的にも悪くないし金はすぐに用意できたし、瓦礫の撤去とかむしろ資財の回収にしかならないアタシとしちゃそりゃ買うよね。半分ノリだったから買った後で使い道に悩んだけど。

土地の購入しにギルド行ったときは指名手配されてないかだけ心配だったけど、行方不明者としてしか認識されてなかった。捕虜になった闇派閥(イヴィルス)構成員だっていただろうに誰も話題にしなかったか。

 

んで、別館な。そこには派閥の内で酒造りをしたいやつだとか、選択肢のなかった――親が【ソーマ・ファミリア】だったやつだとかがいる。酒造用の設備が新しくて種類も揃ってるんで、ぶっちゃけソーマ自身もこっちに逗留(?)してる。

新種の神酒(激ウマギャグ)が開発されて以降、眷族が呑まれて『酔う』事はかなり減った。振る舞われるのを新旧で選べるようになって、一度はみんな新作に飛びついちゃうかんね。そこで一旦正気に返る。まぁ新作は新作で正気を保てるからこそノルマ達成のご褒美だけじゃ物足りなくて、追加で飲むための金稼ぎに苦心してるのは変わらないんだが。それでもダンジョン内やパーティ内、換金所でのマナーはそれなりに改善した。

そんでまぁ話は変わるが、酔っぱらい集団である【ソーマ・ファミリア】は酔った勢いでやる事やる連中も中にはいるわけで、なまじ神酒が神酒であるが故に悪影響を受けずに育って産まれて来たりする。アルコールじゃなく概念系の状態異常っぽいんよな神酒の酔い。

そんでダイダロス通りに捨てられたり、そうでない場合は0歳児の時点で『神の恩恵(ファルナ)』も刻まれるし、早い内からサポーターをやらされる。要は育児放棄(ネグレクト)だったり虐待だったりに近い扱されてるキッズ割と多いねん。

だがここで新作で正気に返るやん? 割と地獄よね。まぁそんな感じでソーマに相談が上がって来たんで、面倒事だからって雑にアタシに投げられて、更正したい連中を引き受けて教育受けさせる孤児院と職業訓練校を悪魔合体させた施設として別館を建てたわけだ。

しかし更正希望の大人は【ソーマ・ファミリア】所属、つまり酒は大好きなやつが大半。じゃあ自分で作れと。そこから最新設備を整えて講師にソーマを招いたら、野郎そのまま居着きやがった。

元より運営は眼鏡(ザニス)が牛耳ってるし、『神の恩恵(ファルナ)』の更新が有料なのも変わってないから神酒目的の連中は更新しようとしない。つまりソーマの役割ってないんよね。ウラノス並に君臨すれど統治せずを貫いてるんじゃなかろうか。

まぁ、そんな都合の良すぎる自由な派閥は滅多にないんでアタシは居座ってるんだが。悪名とかを無視してヘスティア派に乗り換えた場合、経理とかの業務が全部こっち回ってくるの見えてるからな。なお【ヘスティア・ファミリア】から泣きつかれるか暴君の命令が飛んでくる可能性。

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