※大事な前提
この作品は
と男トレーナーの視点でアオハル杯の三年間を描く予定です。
アタマを空っぽで書きたいので育成期間中
ウマ娘は100%担当トレーナーに惚れるとします。
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第一話:*^▽^*【無限スポーン・パンティー】*^▽^*
それは何時だったか。ウマ娘が春風の突風に煽られて、スカートがめくれちゃう! なんて言葉が遠くの方から聞こえた。
周囲を見回した時に、そのウマ娘は俺がいる事に気付くと、逃げるようにして俺から遠ざかっていった。
その時、俺はなんて思ったんだろうか。
思い出せなかった。
U 01
突然だが、とんでもなく焦っている。
俺の名前は―――そんな事はどうでもよくて、トレセン学園に所属しているただの1トレーナーだとだけ覚えておいてくれれば良い。
成績は本当に中堅どころだ。 重賞のカップは二つだけ、中山記念とCBC賞だ。このトロフィーは大事に棚に飾って掃除もしてある、思い出深い物だ。
昨年の年度代表などを決定する催しの際で、最終的なチーム成績40位という微妙なポジションで俺のチームはフィニッシュした。
重賞には中々手が届かないが、愛バの殆どはオープンクラスと条件クラス、未勝利で引退させたウマ娘は今までに受け持った担当で3人だけ。通算で担当したウマ娘の数が52人。それがこのトレセン学園という場所でどれほどの実力なのかは……なかなか自分では判断が難しいが。
トレーナーとしてみればウマ娘から見ても、さほど魅力的には映らないだろうが、そこそこ長く続けてきて故障バを出していない実績は評価されているだろう。
ウマ娘の健康管理に関しては自信はある方だ。
総合的に見て、恐らく中堅くらいに位置するトレーナーが俺だと自負している。
その俺が、どうしてこんなにも焦っているかと言うと。
実に言いにくいのだが。
ウマ娘の物と推測される、パンティーがトレーナールームの俺のデスクの上に 『デデンッ』 っと置いてあるのだ。
発見したソレが女性の下着であること。
そこに尻尾穴があることを認識した瞬間、俺はとりあえず机の上に堂々と置いてあるパンツを手に取って自分のポケットの中に突っ込んだ。
これからトレーニング開始の時間が迫ってるのだ。誰かに見つかったらウチの担当バたちはギャアギャアと騒ぎ出して練習どころでは無くなるだろう。
しかし、どうする。
ウマ娘のパンティーを持ち歩く、などと言ったシチュエーションなどまるで考えた事も無かったぞ。
普通に考えればこれはウチの担当バの誰かの忘れ物だろう。なんか最初に触ってポケットに突っ込んだ時に、ほのかな温かみが残っていた気がしないでもないが、ほぼ間違いなくそれは俺の勘違いだ。
俺がこの部屋に入った時には鍵が掛かっていたし、誰かが出入りした痕跡はまるで無い。
まさかわざわざ、俺のトレーナー室に年頃のウマ娘が侵入してパンティーを脱ぎ、デスクに置いた訳ではあるまい……いや、俺の担当バが脱いだ可能性はあるけど。
むしろ普通に考えたら自分の担当バの誰かがパンティーを脱いだとしか考えられない。だが、トレーナー室の鍵は俺が管理しているから、彼女たちが勝手に出入りすることは不可能だから、オカシイと言えばおかしい。
いやまて、落ち着いて考えてみればやむを得ない事情があった可能性はある。
例えば何らかの生理現象によって早急にパンツを変える必要に迫られ、この部屋の鍵を開ける権限のある人に頼んだとかはどうだろう?
それで俺のトレーナールームに入り込んで……パンツを脱ぐ必要なくない?そんな手間をかける奴いるか?
くそっ、分からない。
しかし、担当バの子達には確認しておくべきか。
余計な騒ぎに発展されても困る代物だ。
であれば話は簡単。君たちの中でパンティーを脱ぎ捨てた物はいるか? もし居るならトレーナー室で脱ぐのは辞めなさい。そう忠告すれば良いだけだ。
そうして10分ほど、じっくりと悩んでいたトレーナーの元に、ウマ娘のきゃいきゃいとした声が近づいてきた。
廊下で笑い合っている騒がしさ。何時も通りの日常の一コマ。現在、俺が担当しているウマ娘は5人居るが、全員が揃っているようで丁度良いと言えた。
「トレーナーさん、おはよー!」
「こんにちは~」
「ああ、おはよう、こんにちは」
ドアが開かれて何時もの見慣れた面子が揃っている。5人とも相変わらず仲が良い。耳はぴょいと動いて、尻尾も機嫌よく振られていた。
挨拶もそこそこに、皆がウマ娘の為に用意されているロッカーと机、そして椅子におのおのが自由に座り、トレーニング開始の為の準備をしながら日常会話に華を咲かしている。
よし、この辺か。
会話に割り込むタイミングを計って、良い感じの全員の会話が切れたところで、パンティーの話をしようとした瞬間に、ふっと想いが過る。
(あれ……待てよ。 もし彼女たちのパンティーじゃなかったら、この状況はまずいんじゃないか?)
一瞬の躊躇い。
一般的に考えてウマ娘用のパンティーを持ち歩くトレーナーは居ない。もしかしたら居るのかもしれないが、特別な理由が無い限り男性トレーナーはそんな危険な行動はしないだろう。
彼女たちのパンティーならばトレーナー室にある事は問題ないが、もし違ったら、俺はあらぬ疑いを愛バ達に持たれるのではないだろうか。
それで喧嘩が起こったり、メンタルに大きな問題を抱えてトゥインクルシリーズに悪影響が……結果、レースに集中できずに惨敗……
それが切っ掛けで不和が生まれ、チームが解散なんてことが?
ありえるな。
最悪を想定するとまずい気がする。急ぐ話でもなし、ここは『見』に徹した方が良いか
ポケットの中でパンティーを握り潰す。首を振って口を引っ込めると、一人の担当バがこちらをじっと見つめている事に気付いた。
「なんだ?」
「トレーナー、あのさ。 もしかして誰か来てた?」
「? いや、特に心当たりはないぞ。 俺が最初に入室したし、鍵も俺が管理しているからな」
「ふぅん……そう? おかしいなぁ……」
「ああ」
スンっと鼻を鳴らして不思議そうに首を傾げる俺の愛バ。
まさかこの子がパンティーを……いや、違うだろう。真面目な良い子であることは担当している俺が一番よく知っている。
パンティーを置いてトレーナーを困らせるようなイタズラをする子じゃない、疑うこと自体がナンセンスだ。
……しかし、そういえばウマ娘は人よりも匂いに敏感だったな。俺がトレーナー室に来る前にパンティーを置いた誰かが居る事は間違いが無いのだ。
嗅ぎなれない匂いに気付いて疑問を持ったのかも知れない。
俺は腕時計を見て、少し早いが今日のトレーニングの予定を早める事にした。あまり愛バに疑いを持たれたくはないからな……
「さて、今日はプールを予約してある。 まぁ、脚に負担をかけない心肺機能を鍛えるトレーニングだな。 一般的にはスタミナの増強にもなる」
「知ってまーす」
「誰にも聞かれてないのに、いきなり説明を始めてどうしたの、トレーナーさん」
「喧しい。 んで、これがプール更衣室の鍵だ。 番号は104番から順番に5人分を預けて置く。 俺は所用を終えてからそっちに向かうからな。 トレーナールームの鍵は出る時に閉めて、プールに着いたら俺に返してくれ」
「はーい」
「分かりました~」
「頼むぞ!」
愛バたちの歯切れの良い返事を聞いてから頷いて、俺はトレーナールームを出た。
パンティーの事は気になるが、それにかまけてトレーニングを疎かにすることは出来ない。
春のG1レースが盛り上がりつつあるトゥインクルシリーズだが、俺達にとっても大事な条件戦とオープン戦が鼻先に控えている。
フィジカル面、精神面での調整という意味でも今は気が抜けない時期だ。
気がそぞろでは、彼女たちにも申し訳ないしな。
よし、今はパンティーの謎は置いて集中しよう。
「ねぇ、トレーナー何か隠してたよね?」
「やっぱり~? 私もそう思ったわ~」
「ていうか臭いでバレるって」
「トレーナーが香水つけない派だからね。 でも私トレーナーの体臭は嫌いじゃないけど」
「誰も聞いてませ~ん……」
「でも、だからこそハッキリするよね。 ボクたち以外のウマ娘の匂い……面白くないよね」
「まぁまぁ、トレーナールームに私たち以外のウマ娘が来てたのは間違いない」
「うん、でも、トレーナーは隠してたけど……あまり詮索しない方が良いんじゃない?」
「えー! 気になるよー!」
「調べてみる~?」
「調べちゃおうか?」
「やっちゃいますか」
「よーし! トレーナーの謎を追え! トレーニングが終わったら、誰か気を引いておいて!」
「私はこの部屋、先に戻って調べますね」
「じゃあボクがトレーナーを引き留めておくよ」
「い、良いのかなぁ~……」
数時間後。
プールトレーニングを終えた直後に、トレーナーが担当バ以外の……『ウマ娘用のパンティー』を持ち歩いていたことが明るみに出た。
で、一体どうしてパンティーなんて持ち歩いていたんですか?
って言われても俺が聞きたい。駿川たづな秘書にそう尋ねられて、俺は心の底から理不尽を呪った。
少なくとも、思い出すのも馬鹿らしい上に気分を害す、あの忌まわしい昨日のパンティー騒ぎによって、担当バのパンティーでは無い事は判明した。
そこから導き出される予測は、俺がトレーナー室に入る前に、どこかのウマ娘が侵入してパンティーを脱ぎ、そこに置いた……という意味の分からない物が浮かび上がってくる。
曲りなりにも俺はチームを持っている中堅トレーナー。
10年以上もトレーナー業を続けているベテランと言っても良い男だ。そしてトレセン学園から正式にチームルームの管理を任されている立場でもある。
そもそもチームの愛バでもない他所の誰かが勝手に出入りをした、という問題の方が重大だ。
扉などが壊されたり、部屋が荒らされた形跡もないので緊急だったという線は薄いし、そもそもウマ娘が侵入者とは限らない。
トレーナー、学園管理側の人間のどれかっていう事もあるだろう。
いや、最悪なのは本当に無関係の侵入者の場合だ。つまり、トレセン学園と関わりのない、変態などの線もある。これも可能性だけで言ってしまえば在り得ることだ。
その場合、俺の管理能力も疑われるし学園のセキュリティもそう。
パンティーの問題は些細なことで、何者かに侵入された事の方がよっぽど重大事件なのだ。
「たづなさん……」
「はい?」
俺はたづなさんをじっと見つめ、彼女は不思議そうに首を傾げて俺を見返した。
そっと視線を下げて、俺はたづなさんの腰から下あたりに合わせる。
万が一だが、もしかしたら秘書のたづなさんがパンティーを置いた、なんてこともあるかもしれん。
チームを持っているトレーナールームに堂々と入れる人間は限られているし……最初にパンティーに触れた時、確かに温かみがあった。
勘違いかもと思ったが、あれは人肌の温かみだ。きっと脱ぎたてのパンティーだと思う。
つまり、考察すると……だ。
たづなさんは人間だが、ウマ娘用のパンティーを履かないとは限らない訳で?下世話な話、ウマ娘用のパンティーを人であるたづなさんが趣味で履いているかもしれない。
そもそもウマ娘用のパンティーは俺も購入したことがある。勿論これはトレーナーとして必要にかられパンティーを買っただけだ。
勝負服を着させてあげたかったが、あの子はG1レースには届かなかったな……いや、感慨に耽っている場合ではない。
とにかくウマ娘用のパンティーは基本的に丈夫に作られてる。その頑丈さに一定の評価をしていて気に入って履いている人間が居る……いや、普通にこれ可能性あるな。
しかし、たづなさんは今、ウマ娘用のパンティーを履いてますか?などとは訊けない。
流石にデリカシーが無い。遠回しに何とか聞いてみるしか無いだろう。
「あ、あのー……トレーナーさん? じろじろと見られてしまうと、流石に少し気恥ずかしいのですけど……」
「す、すみません。 少し考えに耽ってしまって……あの、ちなみにですが最近、たづなさんはこっちの棟のトレーナールームに近づいた事はありますか?」
「え? いいえ、最後に来たのは2週間前に備品の確認で訪れたくらいですけど……あれ? もしかして私、トレーナーさんに疑われてます?」
「あ、いや、そういう訳では。 しかし、謎を突き止めたい気持ちはあります」
「まぁ確かに。 結構な勢いで噂が広がってしまってますからねー……」
まぁ、流石に無いか。
たづなさんに心の中で謝ってから、同意する。
そうなのだ。トレセン学園内のウマ娘たちに、パンティーを持ち歩くトレーナーが居ると凄い勢いで噂が広まっている空気が蔓延しているのだ。
俺の名前こそ上がっていないが、噂の根元となった俺の担当バ達を辿れば、自ずと誰が持ち歩いていたかなど判明してしまうだろう。
正直、パンティー発見時はかなりドン引きされてしまっている。私たちのパンティーならあげるからっ、それは捨ててっ! なんて言う在り得ない怒られ方を愛バにされて、俺もかなり犯人に対して頭に来た。
愛バにはとりあえずパフェでご機嫌を取っておいたが……
とにかく、あのパンティーという布切れ一枚で、トレーナーとしての俺の立場は害されたと言って良い。
もしも犯人を見つけたら、俺は理性を保つ自信がはない。
現場であるトレーナールームへと向かう足が、自然と早まっていく。気付けば、たづなさんを少しばかり置いてしまっていた。
「あ、すみません、気が急いてしまって」
「あ、いえいえ、私も少し考え事をしていて立ち止まってしまって申し訳ありません」
「はは、ありがとうございます」
笑顔でフォローしてくれる彼女に、俺は少しだけ心が落ち着いた。
昨日パンティーを見つけてからの展開は、少なからず俺の精神を削っていたのだろう。
忌避するわけでもなく、噂に踊らされるわけでもなく、俺の言い分をしっかりと聞いてくれて、俺の立場に寄り添ってくれた秋川理事長とたづな秘書には感謝している。
事件の現場となった俺のトレーナールームに一緒に向かっているのも、真相を暴く為に協力してくれているからだ。
そうしてトレーナールームに辿り着くと、懐から鍵を取り出しキーを回す。
『しっかりと鍵の締まっていた扉』の開錠音を響かせ、俺とたづなさんはトレーナールームの中に入った。
そして、俺のデスクの上に。
2枚。
ウマ娘用と思われるパンティーが 置かれて いた。
「な、なにぃぃぃ! な、なんでまた、パンティーが増えているんだ!」
「こ、これは……っ」
完全に動揺してしまった俺はデスクの上のパンティーを二枚、両手で掴んで叫んでしまった。
掌にじんわり、仄かに暖かみ感。
若干、身を引いたように顔を引く突かせ、たづなさんが恐る恐る、と言った形で俺の傍まで近づくと、俺が手に持ったパンティーをじっと見つめ、何かに気付いたのか。
ポロっと口から言葉が漏れていた。
「これは……においが…」
「匂い?」
「あ、いえ。 そうじゃなくて、えっとですね。 このパンティーですが、恐らく所持者は別々の方だと思います」
「あの、たづなさん。 どうして俺から少しずつ離れていくんですか?」
「あはは、いえ、その、別にトレーナーさんを疑ってる訳では無いのですが、やっぱりその、何と言うか……形相が、はい、怖いです」
くっ、確かに。
大の大人が中高生のウマ娘用のパンティーを両手に持って力いっぱい握りしめている姿は、流石にライン越えと言っても良い状況だろう。
普通の人間なら叫んで変態のレッテルを貼られても可笑しくない。
俺は握りしめてしまったパンティーをデスクの上に戻し、荒い息を吐き出しながらハンカチを取り出して、ぶわっと額に吹き出た脂汗を丁寧に拭った。
くそ、G1に手が届いていないとはいえ、重賞すら勝ったことがある俺のトレーナーとしての経歴や立場が、パンティーごときで汚されるなんて。
いや、落ち着け……ここで取り乱してパンティーを振り回せば、それこそ犯人の思うつぼって奴だ。冷静になれ……たづなさんがちょっと離れているが、今の俺には近づきがたいのだろう……このまま行くしかない
「……たづなさん、その距離で良いので話を聞いてください」
「はぁ」
「別々の所持者、ということは複数犯であると思います」
「そうですね、パンティーという実物がこの場所に存在していますし、柄や模様、素材の好みなどを考えると、その二枚のパンティーはかなり違いが見て取れるので、別々のウマ娘たちが履いていた物なのは間違いないでしょうね……匂いも違ったし……」
「ええ、まぁ、それは分かりませんが……これで三枚目ですよ。 他の場所や別のトレーナーから同様の事件の報告は無いんですか?」
「今のところ、パンティーに関して報告があったのはトレーナーさんだけですね」
俺だけか……それはつまり……同業者でありライバル関係でも、同じトレセン学園内のトレーナーの嫌がらせもあるか。
人を疑うことになるので余り考えたくなかったが、流石に2日も続けば嫌疑もかけたくなるものだ。
ウマ娘の子たちが率先してパンティーを脱ぎ捨てて俺のようなトレーナーに嫌がらせする、というビジョンが俺の中でイメージが伴わない事もあるが……
「でも、トレーナーさん。 部屋の鍵は締まっていましたよね?」
「! そうだ、たづなさん! 俺は確かに、自分の持っているトレーナールームの鍵で今、この場所に入って来ました!」
「つまりトレーナーさんがやっぱり、一番疑われてしまう立場になってしまうんですけど……」
違うのだ!
女性のたづなさんからの視点だけで言えば、仕方ないことかもしれない。
連日ウマ娘用のパンティーが密室状態の中で見つかるなど、普段から使っているトレーナーの俺が隠し持っていただけの変態だと、一番最初に疑われるのは自然だ。
俺は男で、ウマ娘もたづなさんも異性だし、異性の布切れ一枚で興奮する人種も確かに世の中には多いみたいだが、それは違うのだ。
俺はたづなさんへと抗弁した。それは自然と白熱し、熱弁へと変化していった。
自分がトレーナーとして10年以上、真摯にウマ娘に向き合ってきた事。 学園で預かっている大事なウマ娘と安易にうまぴょい(隠語)関係にならぬように注意を払ってきた事。ウマ娘用のパンティーについて、ウマ娘のスペシャリストであるトレーナー業を営む関係上、調査したことはあれど特別な感情を抱いていない事。とにかく思いついたまま、たづなさんの肩を掴んで力説した。
「たづなさん、俺に時間をください! 必ずパンティーの事は解明して見せます!」
「わ、分かりました! 分かりましたから落ち着いてくださいトレーナーさん! 近いですよぅ!」
「あっ、失礼……コホン、とにかく…………俺を陥れようとしているのか、それとも違う理由かは分かりませんが、実際に被害を受けてます。 このまま捨ておくことは出来ません」
「ええ、まぁその。 確かに困りますね。 この件は理事長代理の方からも問題視されそうですし……」
口元に手を当て、困ったような顔でたづなさんに言われて、ハッと思い出す。
そうか。
そうだったのかもしれない。
そういえば理事長がアメリカに出張する際に代理人が派遣されるという話を聞いていた。その際、代理の方の方針は管理体制の強化に重点を置くと、それだけは先んじて通達が来ている。
具体的な話は特にまだされていないので、代理が来てから明かされる事になるのだろうが……連日ウマ娘のパンティーが見つかるトレーナーが居たら即刻やり玉に挙げられて俺のトレーナー業は終わりを告げる事になるだろう。
犯人は俺に害意を持って、パンティーを俺のトレーナールームに置いているのは、それが目的か。
身に覚えは全く無いが、俺はどうやら、知らず誰かの恨みを買っていたのだろう。
面識のない理事長代理が、この謎のパンティー事件に理解を示してくれるとは考え難い。
名前は……樫本さん? 覚えている限りでは、確か女性だったはずだ。
もし樫本さんが、俺のトレーナールームにたまたま用事が出来て、パンティーを俺が握っている姿を見かけたら?
まぁ、終わりだと思う。
くそ、と悪態をつきたくなるのを何とか留める。
許せないのは、俺自身だけじゃない。
皆が辛い想いをしてしまい兼ねないから、俺はこのパンティーを置き逃げする嫌がらせしてくる犯人が許せない。
一つ例を挙げるなら、俺の可愛い担当バ達のことだ。俺がトレーナー業をパンティーが原因で続行出来なくなれば、俺の愛バのトゥインクルシリーズに多大な影響を及ぼしてしまう。
途中で、急な不祥事でトレーナーが変更もできなかったり、トレーナーが見つからなかったら、それは、子供たちの夢を奪うに等しい、という事実があるのだ。
更に言うなら今、この瞬間にも秘書のたづなさんや理事長にも迷惑が掛かっている。
つまり、犯人は学園の業務も妨害しているんだ。
「あの、トレーナーさん。 凄い顔をしてますが」
「すみません、たづなさん。 ちょっと、怒りが突き上げてきてしまって……」
「えっと、トレーナーさん。 大丈夫です、私はトレーナーさんがそういう趣味の方とは思っていませんから」
続けて、俺を安心させるように、たづなさんは学園側の方でも真実を調べるようにセキュリティの強化をしてくれると約束してくれた。
いくつか確認と、これからの対策を話し合って、たづなさんは退室した。
電気もつけず、暗いままのトレーナールームで、俺は怒りが冷めやらないままだった。
視線を落とせば、パンティーが二枚ある。
デスクの上にある、パンティーを手に取った。
こんなにくだらない事で人を苦しめる奴は、必ず探し出して引きずりださなければならない。
トレーナー業を始めてから、初めてかも知れない。こんなに心の底からの、俺が何かを決意をするのは。
職を失う可能性が身に降りかかったのだから、その位は当然か、と自重する様に笑って―――俺はパンティーを力いっぱいに握りしめた。
どこの誰かは知らないが……
「俺は負けねぇ。 必ず熨斗つけて犯人にパンティー全てを叩き返してやる……っ!」
握りしめたパンティーは、冷え切っていた。
◎ベテラントレーナーは
10代~20代、もしくは30代~40代、または50代以上。
日本人あるいは外国人の、普通の体型の男性。しかし必ずしもそうとは言えない。
身長は140cm~180cm。だたし、180cm以上の可能性もある。
◎今日はパンツの日(8月2日)らしいです。
吟味(意味深)して書き貯めるつもりだったんですが
パンツの日なんて知ったら今日投稿するしか無いと思った