職場のデスクの上にウマ娘用のパンティーが   作:ジャミゴンズ

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第十話:*^▽^* 【スペシャルパンティー】 *^▽^*

         第十話:*^▽^* 【スペシャルパンティー】 *^▽^*

 

 

 

 

 12月末に開催されるアオハル杯の対戦チームが正式に確定した事が知らされた。 俺のチーム《パンツァー》含めて4チーム出そろった。

その中でもチーム《キャロット》とはテイエムオペラオーから雑に因縁をつけられてしまったが。この覇王率いる《キャロット》が最も厳しいウマ娘が揃ってると言えるだろう。

面白いのがレース登録されている中距離のメンバー。 

各距離ごとに3人まで出走するウマ娘を申告制で登録できるルールなのだが、『キャロット』からはテイエムオペラオーの名前だけである。

 

これは、もうそう言う事なのだろう。

他のチームが3名出しだとしても、問題はない、と。 見ているのは、俺の《パンツァー》に参加したメイショウドトウ、ただ一人なのかもしれない。

 

「まったく、シニア期までに結果を出し続けたテイエムオペラオーだからこそ、出来る暴挙だな……」

 

 俺は苦笑した。 

 

俺は同じチームのメイショウドトウとトレーナーへと、電話をかけた。

 

「ということで、自ら不利になってくれたので、中距離はしっかり勝とうと思う。 もしかしたら君やメイショウドトウは正々堂々と戦いたいかもしれない、と思ってな。 意思確認の電話なんだ、これは」

「ああ、なるほど……先輩の仰ることは尤もだと思います。 まずはチームが勝利することが肝要ですから……」

「どうしてもタイマンでやりたいって言うなら止めはしないぞ。 ドトウがオペラオーに絶対勝てるって言うならな」

「……勝てますよ」

「ほう?」

「と、言い切りたいんですけど……流石に相手がオペラオーでは、難しいですね。 それはこの三年間でしっかり思い知らされましたから」

「そうか……なら、ドトウの意思を確認次第、決定するぞ」

「あ、なら今から聞いてみます」

「なに? まだ午前中……学業の時間帯だぞ? ドトウが居るのか?」

「溝に嵌ってしまい、ヘドロだらけになってしまって。 学園には私から連絡を入れています」

「そうか、大変だったな。 ドトウは無事なのか?」

「お気遣いいただきありがとうございます。 ドトウは何時もの事、というより何時もよりマシですから、ピンピンしてますよ」

「……そうか、パンティーが必要なら言ってくれ」

「大丈夫です。 ドトウの為に、予備のパンティーやブラジャーは俺も常に持ち歩いています」

「流石だ。 やはりお前、新人の中じゃ見込みがあるな」

 

 トレーナーたるもの、愛バの習性を観察して、前もって必要になりそうな物品は予備を含めて事前に持ち歩くというのは基本的な事だ。

実際に新人はその鉄則を忘れてしまいがちなのである。 担当バを持つと猶更、気合がから回ってしまい、基本的な理念が抜け落ちてしまいやすい。

 

当時の俺に聴かせてやりたい。

 

「あのぉ~……お電話変わりましたぁ~…」

「ドトウか。 話は聞いてたか?」

「はい……あの、私は構いません。 でも、私は私で、オペラオーさんとは戦いたいと思いますぅ……」

「そうか……分かった、お前の意思を尊重しよう……怪我は無かったか?」

「はいぃ、すみませぇぇん」

「そうか……」

 

 謝られても怪我してないか?の答えにはなっていないが、まぁ眼鏡が何とかするだろう。 電話を切って、俺は申請書を受付に投げつけると、購買部に寄っていく事にした。

なんでも、履いているパンティーが突然に紛失する。それが常態化したトレセン学園内で、パンティーの販売が始まったというからだ。

ここで気になるのは、パンティー因子が大量生産品の汎用パンティーに、どのように紐づくのか、ということ。 研究の為に、新品のパンティーを用意したかった。

 

「何故30枚もウマ娘用のパンティーを?」

「研究用だ」

 

 少しばかり不審に思われて擦ったもんだがあったが、そうとしか言いようが無いので分かってくれて良かった。

トレーナーバッチまで見せる事になるとは思わなかったが。

 

 帰りにせっかくだからと、食堂で早めの昼食を摂り、トレーナールームへ向かう道すがらグラウンドを覗き、三女神像の近くを通ると学園で授業中のはずのウマ娘が、ぼんやりと銅像を見上げていた。

おや、と思って俺は思わず足を止める。 もしかして、三女神像へと祈っているのだろうか? 噂の真偽を確認できるかもしれない。 

俺は少しばかり距離をとって、彼女を観察していたが別段祈りを捧げている訳ではなさそうだった。 

様子の変わらない少女に、俺の方が痺れを切らして話しかけてしまい、その顔を見て、お?と引っかかった。 彼女の顔は見たことがある。 

 

「スペシャルウィークだったか、まだ授業中じゃないのか?」

「えあっ! わわ、だ、誰ですか?」

「グラスワンダーのトレーナーだ。 ほら、バッチ」

「グラスちゃんのトレーナー……えっと……ダンスの授業中だったんですけど、私、考え事していてぼんやりしちゃって。 それで勘違いされて、先に戻されちゃったんで、反省中でした……」

「ほう、悩み事か。 聞いても大丈夫なものか?」

 

 俺の問いに、スペシャルウィークはしばし思案し、やがて首を上下に振って頷いた。

さて、グラスの学友となればグラスワンダーにも心労が掛かってしまうかもしれない。 基本的にウマ娘は感受性が強く、他バの感情に引っ張られる事が儘あるからだ。 

それがストレスや不調に繋がるケースも散見される。 最悪の場合は体調を崩す。 

なので俺は今後の予定をいったん白紙にし、スペシャルウィークの悩みにじっくりと付き合う事にした。

 

 刺激しないよう、言葉を選んで聞きだしたところ、彼女の悩みは私服だった。

どうもつい最近に、学友たちとお出かけをしたところ、北海道からトレセン学園の寮に来てからはトレーニングと学業についていくのに必死で、遊ぶことをまったくしていなかったらしい。 

そもそも、学園のあれこれにまったく慣れていない時期だったのに、チーム加入直後にデビューさせられて、気を配る余裕も無かったのだという。 

そんな彼女は突然と言っても良いほど外での遊びに誘われて、それは心の底から楽しんだらしいのだが。

 

「オシャレなんて分かんないんですよお。 多分、みんなは何気なくスぺちゃんダサいデース! センスを磨きなさいな! って言ってきたんだと思うんですけど、何だかやたらとそれが耳に残っちゃいまして。 都会の流行りなんて、知らないですし、かといって皆を見返そうにも、オシャレの分かる知り合いなんて他に居ないですし……」

「それでこんな所で悩んでいたのか。 シンプルに女学生らしい悩みで逆に安心した。 別に、お前がダサくないと思ってるなら良いんじゃないか?」

「そうかも知れませんけど、複雑なんです」

「……それで授業が身に入らないんじゃ、よっぽど悔しかったんだな」

「え?」

「そうじゃなきゃ、授業を放ってまでこんな所で時間を潰すような奴じゃないだろ、お前さん」

「……そう、ですね……私、オシャレしたい。 悔しくて皆を見返したい、って思ってるんだ……」

 

 確か、スペシャルウィークのトレーナーは、後輩の沖野だ。 手っ取り早く、奴にぶん投げようと電話をかけてみると、すぐに出たがゴールドシップと用事があって東京を離れているらしい。 スペシャルウィークの現状を話して、とりあえず俺が面倒を見ることにした。 感謝されたが、安心してくれ。 しこたま流行りの高い服でも買って、請求書を投げつけておくから。 グラスワンダーの友人を放っておけないしな。

 

「よし、スペシャルウィーク、許可は取れた。 俺についてこい」

「ええ? えっと、でもまだ授業……」

「沖野が電話で連絡するだろうし、大丈夫だろ。 今日はお前を目一杯にオシャレするぞ」

「い、良いのかなぁ……」

「良いんだよ。 友達を見返したいだろ?」

「……行きます」

 

 覚悟を決めた強い意志を乗せた目で、彼女は俺を見返してきた。

 

 任せな、スペシャルウィーク。

 

 俺はウマ娘用のパンティーについては、この学園の誰よりも詳しい自信があるぞ。

 

 

 

 スペシャルウィークの手を引いて歩くトレーナーのそんな後姿を、授業が終わって移動をしていたグラスワンダーが目撃していた。

 

 

 

 

 翌日。 身体の基礎作りを行うために、チームトレーニングとして《パンツァー》名義でジムを借りていた。

そこで地味で辛い、反復的な筋力トレーニングを中心にメニューを組んでいたのだが。 それ自体は普通のトレーニング内容だ。

どこのトレーナーも同じように、学園内の設備は利用している。 それは良いんだが。

 

 グラスワンダーの耳がずっと絞られっぱなしだった。

 

昨日まで全く兆候が無かったのに、随分とお冠である。何が在ったのだろうか。 

俺がグラスワンダーの怒りのサインを見逃していた可能性はあるか? 思い返してもまるで心当たりがない。 

 

もしあるとするなら……やはりパンティーか。 

 

夏のデビュー戦、それからアイビーSの直前まで、ずっとGストリングを履いていた。アイビーSでノーパンになったグラスワンダーだが、それから俺はグラスのパンティーを徹底的に管理していた。 

他の子たちよりも厳格に指定して履かせているし、ノーパンを指示することもある。

その理由は何より、俺がグラスワンダーというウマ娘の才能に魅了されたからとしか言いようが無い。

俺のチームで重賞を……いや、もっと。 そう、初めてのGⅠ制覇を、きっと見せてくれる。 そのくらい俺はグラスワンダーに入れ込んでしまって居るのを自覚している。

絶対に逃したくない。彼女の為にも、俺の為にも一緒にトゥインクルシリーズを走りたい。

だからこそ、俺はパンティーを管理している……その不満が噴出した、かもしれん。

 

「グラス」

「……はい?」

「グラス、聞いてほしいんだが」

「なんでしょうか?」

 

 俺の何度目かの問いかけに、体幹を鍛えるための装置から脚を下ろして、汗を拭きながらようやく聞いてくれる態勢を取ってくれた。

表情は笑っているが、耳がずーーーっと伏せられてるんだよなぁ……ウマ娘の機嫌が悪い時は、どれだけの人数、担当してきても怖い物は怖い。 

彼女たちの無自覚は恐ろしいものだ。 ウマ娘たちにとっては無意識に振り回す腕や脚は、俺達のような人間が直撃すれば、成人男性が金属バットを振り回して直撃する衝撃と等しいと言っても過言ではない。 

ウマ娘のパワーは本当に凄まじいのだ。

 

「やはり、ノーパンは不満か?」

 

 グラスワンダーは俺の尋ねには答えず、無視して足下に置かれたスポーツドリンクに手を伸ばして喉を潤わし始めた。

どうやら違ったようだ。 尻尾も丸まってる。 しかし、だとしたら俺には何が原因か分からない。 一体グラスワンダーはどうしてこんなに機嫌が悪くなってしまったんだ?

 

「トレーナーさん」

 

 気まずい空気の中で真剣に考え込んでいた俺に、今度はグラスワンダーの方から声を掛けてきた。

 

「ああ、なんだ」

「トレーナーさんの頭の中には、私たちのパンティーの事しか頭の中に無いんですか?」

 

 随分と刺々しい物言いである。 

違う……とは言い切れない。 

今、かなりウマ娘用のパンティーの研究に熱心であることは自覚しているからだ。

特にグラスワンダーのパンティーには熱が入っている。

 

そうだな、俺はウマ娘のパンティーのことしか考えていないかもしれない。

 

「デートは、楽しかったですか?」

 

 ガンッ! と凄まじい音がした。 驚いて俺が振り向くと、アイボリーシュシュとクラースナヤ、ジップライナーがダンベルを手から滑らせて落としたっぽい。 

40kgってお前。片手で持つ重量じゃない。床は破損していないだろうな。 

うちのチームは予算が大きく貰えてる訳じゃないから、修繕を要求されると学園と交渉することになる。出来るだけ丁寧に器材を扱ってほしい。 

俺はそんな金はないんだ。 ははっ、おっかねーなって感じだな。

ギィッ、ギィッっと軋むワイヤー音に首が向く。ケーブルモーションを思いっきり引っ張って異音を出しているのはストレートバレットだ。 

真面目にトレーニングを続けてるようだが、顔だけこっちに向いてる。 危ないから前を見てくれ。

 

それにしてもグラスワンダーが、何を言ってるのかマジで分からん。

 

「グラス、何を言ってる? 俺は誰ともデートになんか行ってない……ぞ……まさか……」

「胸の内に、心当たりは見つかった様ですね」

「スペシャルウィークの事か。 アレはデートじゃない。 服を買いに行っただけだ」

「トレーナーさんは、スぺちゃ……女の子と二人で服を買いに行くことは、デートじゃないという認識なんですか?」

「あー……まぁ、そういう風に見られてしまうか。 だが、それは勘違いだ。 事情もあったしな……とにかく、あれはデートとかそういうものじゃ無い」

 

 沖野と正式に話し合って、ウマ娘のメンタルケアを行っただけである。言わば仕事だ。 

スペシャルウィークの承諾も得ているし、そもそもグラスワンダーが怒るような事では無いだろう。

 

「スぺちゃんはデートみたい、って私に自慢するように言ってました」

 

 スペシャルウィーク! 違うよね? いや、女学生ならデートと受け取ってしまうかもしれんけど!

年齢的に異性と出かける経験が初めて、なんて奴も多いだろう。服は全部俺が選んでやったから。パンティーも差しウマに向いてそうな物を選んでみた。 

強いて俺がドキっとしたことは、スペシャルウィークが試着室でパンティーを脱いで更衣室の床に落ちたのを、カーテン越しに俺が目撃したことくらいだ。 

 

その時に俺は思ったんだ。 

 

ワープするパンティーには因子がつく。だが、最初から履いていたパンティーを、俺が直接入手したパンティーの場合どういう状態になるんだろうか、と。

ワープすることで因子はつくのか。それとも最初から因子はついているのか? 

特殊な……そう、スペシャルパンティーなのか? と。 

そう思ってからはスペシャルウィークの脱ぎ捨てたパンティーが気になってしょうがなかった。それは認めよう。 

だが、スペシャルウィークのパンティーに関しても学術的な見地―――すなわち、トレーナーとしてウマ娘の強化にどう役立つのか、という俺達トレーナーにとっての命題に直結しているため、甘い雰囲気の話でないことは確かだろう。

 

冷静に、普通に考えればただの脱ぎたてのパンティーに過ぎないんだしな。

 

「ああ、グラス。 それもスペシャルウィークの勘違いだ」

「本当に、スぺちゃんとデートして何にもなかったんですか? 私の時みたいに、変な事をしてたりして居ませんか?」

「していない、絶対にそんなことは」

 

 意思の強い眼で見つめられて、俺はしっかりと頷いた。 ウマ娘との関係しっかり築くのに必要なコツっていうのは、なるべく秘密を隠さないことだ。

不信感を取り除かなければ、しっかりとしたウマ娘との絆を結ぶことは難しい。

だから、俺は包み隠さずにグラスワンダーへと告げた。

 

「何もないさ。 スペシャルウィークとは、本当に何も無い。 ただの仕事だ。 強いて言うなら、スペシャルウィークのパンティーだけが気になったが……それはお前には関係が無いだろう?」

「っ……そうですね。 関係は、ないです」

 

 隠すようにグラスワンダーは顔を背けてしまった。どうにも納得がいっていないようで、耳は未だに絞られている。

困ったように俺は愛バたちに視線を向けた。 全員、耳が絞られている。 

 

おかしくないか、さっきまで君たちみんな、耳はピンピンしてて尻尾ふりふりもしてて、ご機嫌だったじゃないか。

  

「休憩時間は終わりました、トレーナーさん、トレーニングに戻ります」

 

 俺の身体を押しのけて、グラスワンダーは予定通りにトレーニングの続きに戻ってしまった。

アイボリーシュシュもクラースナヤも、ストレートバレット、ジップライナーも無言で耳を絞りながら、おのおののトレーニングの続きを黙々と行っていく。

 

空気が重かった。

 

これは俺のやらかしか。 くそ、一体どこで判断を間違えた。一度に4人も機嫌を損ねるとは。 

特にジップライナーはジャパンカップに出走予定で、勝負服の調整からトレーニングまでみっちり入ってる。 

シニア期。 最後のG1挑戦が控えている大事な時期である。 

 

 

結局、俺の愛バたちはトレーニングが終わっても、機嫌が直ることは無かった。

なんとかしなければ。

 

……

 

 

 その日の夜、沖野から電話が掛かってきた。

 

「あー、先輩……くっそ高い請求書が何枚も俺のとこに送られてきたんでスけど、何かの間違いですよね?」

「沖野、お前の担当バのスペシャルウィークの件で、俺のチームはバラバラだ。 どうしてくれるんだ」

「は? 何があったんすか?」

「スペシャルウィークが俺にパンティーを見せつけた事で、大変なことになっちまったんだよ……」

「…………? すんません、ちっと良く分からないっす」

「すまん、取り乱した。 沖野、請求書の半分を俺が払うって言ったら協力してくれるか?」

「え、マジすか! そりゃ助かります! って、何を協力するんですか?」

「そうだな、強行軍でメンタルケアってところか」

 

 

 その日、俺はチームメンバー全員と短期間で済むデートプランを、沖野と二人で練ることになった。 

 

 

 

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