職場のデスクの上にウマ娘用のパンティーが   作:ジャミゴンズ

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第五話:*^▽^* 【黒幕パンティー】 *^▽^*

         第五話:*^▽^* 【黒幕パンティー】 *^▽^*

 

 

 

 

 

 一段落ついて、椅子の背凭れに深く体重を預ける。

また今日も現れたデイリーパンティーを両手で広げ、天井に向けて伸ばして目を細める。

細かい模様と刺繡が施された、随分と大人っぽいデザインだ。子供が履くには色気づいたパンティーである。 

ウマ娘にしては珍しく、意匠に凝っている下着だし……まさかうまぴょい(隠語)用か? まさかな。

エアグルーヴあたり、履いてても可笑しくないな。 いや、失礼なことを考えているな、やめよう。

 

 

「まぁ、アオハル杯は良いとして、問題は……グラスのくれたコレだ……」

 

 

 グラスワンダーに声を掛けてくれた人の中でも、強い印象が残っているのは『おハナさん』と呼ばれていたという。

まさかという思いで俺はグラスワンダーに何度も確認したが、彼女は確かに彼女が熱心に勧誘してきたし、パンティーを失った時に俺の噂を教えてくれたのも彼女なのだと教えてくれた。

言うまでも無く、現トゥインクルシリーズ最強のチームと世間一般にも知れ渡ってる、超敏腕トレーナー東条ハナの事だ。 

有名人も有名人。テレビや雑誌で見かけない日が無いほど、俺とは天と地ほどトレーナーとして差があるのが、おハナさんという存在なのである。 

女性トレーナーとしても希望の星で、話題性カリスマ性ともにウマ娘を含めても彼女に匹敵できる存在は稀だろう。

 

 主役であるはずのウマ娘よりも、下手をすれば有名であるトレーナー。 そんなおハナさんはとんでもない人だと言える。

 

率いるチームは《リギル》 日本で一番、人気と実力を兼ね備えた強豪チームで、ウマ娘だけでなくトレーナーの殆どがおハナさんを相手にすると臆してしまう。

知らない人から見れば、鋭利な刃物を突きつけられているような鋭い視線を恐れてしまうのは、分かる話だ。

かく言う俺も、避けている事の方が多かった。トレーナーとしての実績が違い過ぎる、というのも気後れするが、性格的に容赦のない人なので機嫌を損ねていないか、ビクついてしまう事もある。

勿論、彼女は俺よりも年下で、トレーナーとして過ごした年月だけで言えば、俺は先輩だ。歓迎会の時に彼女から貰った電話番号は、データとして残っている。

 

そうなのだ、電話番号は分かっているのだ。

これで電話を掛ければ、おハナさんとの話し合いが始まる。

もしも、おハナさんが黒幕パンティーだとしたら……ダメだ、違う。ビビッてなんか居られない。

俺の愛バ達の為にも、落としどころをつけなければならない。

だが、疑問もある。重賞に殆ど手に届かない―――言うなれば接点のない俺みたいな木っ端な先輩トレーナーに対して、こんな陰湿なパンティーいじめをするだろうか。

 

女性だからウマ娘用のパンティーを手に入れることは容易だとしても、利点なくない? 俺って何かやらかしたっけ……全然心当たりがないぞ。 

沖野君とトラブったのは昔にちょっと噂を聞いたことはあるけど、その時も関わり無かったし。

 

「しっかしな……くそ、よりによっておハナさんだっていうのかよ……」

 

 とは言うものの、グラスワンダーの事を考えると手を拱いている訳にも行かない。

彼女の不安……パンティーを取り除かなければならない。トレセン学園のウマ娘たちが安心して過ごせるように、俺がウマ娘のパンティーを守護らねばならないんだ。

 

冷静になるとおかしくないか? 何で俺はこんな事を……いや、迷うな! 

これこそがパンティーで責める狙いなんだ! くだらないという思考そのものが既に罠。 

こんな図を描いて、完璧にパンティーだけで追い詰める事が出来るのは確かに、おハナさんくらいの大物しか居ないかもしれない。

いや、きっとそうだ……おハナさんが黒幕パンティー野郎だったんだ。 

 

衝撃の真実に驚き、スマホを持つ手が思わず震える。

後一度、タップすれば、俺はおハナさん改め黒幕パンティーへの宣戦を布告することになる。

 

ビビるな……覚悟を決めろよ。

俺の愛バを思い出すんだ。 バレット、リュス、ライナー、スクナ、シュシュ……グラス。 彼女たちのパンティーを俺は突きつけられた。

屈辱と言っても良い、愛バたちからパンティーを受け取る俺の惨めな姿が網膜の裏に鮮明に映った。

 

吐いてしまうほどの感情の渦が、俺の胸の中に確かに灯る。

 

 

負けられない。

 

ああ、負けられないぞ。

 

黒幕パンティーが誰であろうと愛バ達の為に、屈するわけにはいかない。

 

 

 俺はスマホの通話ボタンを、強めに押し込んだ。

 

 

「おハナさん……」

「もしもし? 先輩ですか? お久しぶりです。 どうしたんです? 電話なんて珍しいですね」

「その、なんだ。 久しぶりだな……ところで、黒幕パンティー……」

「は?」

「いや、おハナさん。 そう、グラスワンダーだ。 その、グラスワンダーとの事で聞きたい事がある」

「ああ、グラスワンダーですか! 彼女を逃してしまったのは痛かったです。 どうやって先輩は口説いたんですか? 私も結構、熱心に誘ってみたんですけど袖にされてしまいました。 っと、そうではなく、グラスワンダーの事ですね。 私の方でもデータは纏めてあります。 選抜レース前後の情報くらいしか手元にありませんが、良かったら差し上げますよ」

「マジか! ああ、それは助かるぜ。 色々とあって選抜レースは殆ど見れなかったんだ! 細かい部分でアイツ難しそうで……本格化した影響で脚の負担を溜め込みやすいのだけは分かったんだが―――って違うんだ、おハナさん。 違わないけどデータはくれ」

「ふふ、相変わらずで安心します。 噂を聞いて心配していたんですよ。 データ送りました、確認してください。 それで、用件はグラスワンダーの事だけですか?」

「ありがとう、助かる……で、もう一つだ。 その、おハナさんが今言った、噂だよ」

「確か、ウマ娘のパンティーを集めているとか。 あの根も葉もない噂が真実でない事は分かっていますが……あら、ノイズ?」

 

 根も葉もない噂 などと黒幕パンティーに言われれば、知らずスマホを握る手に力も入る。

 

「おハナさん。 あんたは凄い後輩だし、尊敬もしている。 だからお願いがある」

「えっと……先輩にそう改まられると、こちらも畏まってしまうのですが……」

「俺にパンティーを送りつけるのを直ちに止めてくれないか」

「…………………………すぐに最新の噂をこちらでも収集して調査してみます。 御忠告ありがとうございます、先輩。 貴方を陥れた犯人を全力で、私も追わせて頂きますね」

「いや、いいんだ。 もう俺にウマ娘用のパンティーを送り付けてるのが、おハナさんだって事は割れてるんだ。 グラスワンダーから聞いた」

「え、どうして……何故そんなことに……いえ、待ってください先輩。 何かおかしいです。 冷静になって考えましょう。 彼女がそんな事を言うとは思えませんし……」

「くっ……結局、どうあっても、しらばっくれる訳か。 だがな、俺だって愛バたちを守る為に、おハナさんからウマ娘用のパンティーを無限に送られても屈するわけにはいかないんだよ」

「ちょっと、待って待って待って、ごめんなさい、ちょっと本当に意味が分からないです。 先輩に私がウマ娘用のパンティーを送る訳ないじゃないですか! 先輩の愛バに何があったんです!?」

 

 余りに支離滅裂な会話に、おハナさんが立ち上がって大声を出してしまう。

近くに居た駿川たづなが、その異変に気付いてあらら?と首を傾げていた。

 

「愛バたちが俺に……自分の脱ぎたてのパンティーをプレゼントしてきたんだ……」

「??????? う、うまぴょい(隠語)ですか??????」

「違う。 純粋に、全員がオープンクラスに昇格したお祝いで、俺に自分の脱ぎたてのパンティーをプレゼントしてきた、という事だ」

「は、はぁ……え? あ、はい……」

「だから俺は、おハナさんから送られてくるウマ娘の脱ぎたてのパンティーに、もはや屈することは無い、ということだ。 でもそれじゃ、平行線だろう」

「くっ、言っている意味が本当に理解できない……こんなの人生で初めてだわ」

「俺だって人生で初めてだった……いや、もういい。 これじゃ時間の無駄さ、お互いに真実は話さないだろうからな。 で、だ。 俺はトレーナーで、おハナさんもトレーナーだ。 トレーナーらしく、アオハル杯で決着をつけようじゃないか」

「ああ、もう、先輩が何を言っても聞いてくれない事だけは分かりました。 それで、アオハル杯ですか……? ですが、リギルは出走予定など組んでいませんよ」

「なに!? そういえば……ドリームトロフィーリーグのルール……」

「ええ、まだ先輩がその辺はまともに機能してそうで安心しました。 私たちリギル所属のウマ娘は、ドリームトロフィーリーグを主戦場にしている子が多すぎるんです。 で、ちなみに聞きますが先輩、もしかしてグラスワンダーにもパンティー云々で何かあったんですか?」

「グラスワンダーのパンティーについてはお前に言う必要もないだろう」

「あ、はい」

「とにかく、アオハル杯にリギルも出て決着を付けたい」

「はぁ……先輩はときおり周囲を見失う事が欠点だと思います。 出ろと言われても出せません。 人数の規定が揃わないんですよ」

 

 話が平行線となって進まなくなった時、通話の裏で何かしらの会話のやり取りが聞き取れた。

ややあって、聞こえてきた声は東条ハナのものではなく、たづなさんだった。

 

「大丈夫です、問題ないですよ……あ、ありがとうございます。 トレーナーさん、駿川たづなです。 聞こえますか?」

「……たづなさん……」

「えーっと、恐らくトレーナーさんはすっごく勘違いしてると思いますけど、東条トレーナーが、ということ何ですよね?」

「勘違いじゃないですよ。 グラスワンダーに協力して貰って、裏も取れてるんです。 黒幕は、おハナさんだったんだよ。 どうやったのかは分かりませんが……」

 

 駿川たづなは困ったように苦笑した。

トレーナーの苦悩を傍で見て来たたづなは、苦しんだ中で見つけたトレーナーの出した答えが勘違いであることを知っている。 

 

「私、トレーナーさんが苦しんでいるのを見ていましたよ。 愛バの子達に、勘違いされて、ウマ娘用のパンティーをプレゼントされて……その頃に一度すれ違ったんですが、声を掛けても気付いてくれませんでした。 屋上に向かっていたので、私、本当にトレーナーさんが自殺してしまうんじゃないかと追いかけたんですよ?」

「えっと……たづなさんもおハナさんとグルなんですか」

「それは違いますけど……でも、ふふ、もうそれでも良いかも知れませんね」

「え……マジですか……」

 

 このたづなの声に慌てたのはおハナさんである。 アオハル杯でリギルは規定されたルールのせいで本当に動かすことが出来ない。

たづなはスマホの口元を抑えて、そっと慌てる東条トレーナーへと声をかけた。

 

「私が何とかしますから、この話、とりあえず付き合って貰えませんか、東条トレーナー」

「なっ……はぁっ、まったく。 貸しってことで良い? 言っておくけど、こんな勘違いされるのは私も不本意なのよ」

「ごめんなさい、埋め合わせは必ずしますから―――トレーナーさん?」

「話は終わったのか?」

「ええ、リギルもアオハル杯に登録します。 そこでぶつかって、勝者の言う事を必ず聞く。 それで良いですね?」

「問題ない……ああ、それでいい」

「分かりました。 東条トレーナーには私の方から伝えておきますね」

 

 電話はそこで途切れた。

額に手を当てて首を横に振る東条トレーナーが、たづなからスマホを受け取って、また大きなため息を吐きだした。

 

たづながトレーナーの申し出を受けたのは、彼が前を向いて意気を挙げた事に喜んだからだ。本当に死んでしまうのでは、と危惧するほど憔悴していたあの後姿を見ていたからである。 

勘違いとは言えやる気を取り戻し、トレーナーの意思が前を向いてくれたことが純粋に良い事だと思えた。

トレーナー契約をしたグラスワンダーという少女がきっかけになったのだろう。 

それに、本当の問題はまだ残っている。ウマ娘用のパンティーがトレーナーである彼の下へと送られ続ける問題は、東条トレーナー率いるチームリギルを、アオハル杯で打ち破った所で何一つ解決なんてしない。

 

だからこそ。

 

「なるほど、先輩に関する噂は本当だったんですね。 それで、私たちが裏で調べる、と。 その時間稼ぎも兼ねて、先輩の申し出を受けたってことでしょうか」

「遅かれ早かれ、トレーナーさんだって東条トレーナーが黒幕なんかではなかった、という勘違いには気付きますよ」

「ま、そうね……それにしたって、随分と積極的に関わるわね、今回は」

「樫本代理はなんだか、徹底主義らしくて放り出されてしまったんですよね。 それに……黒幕パンティーのお方。 その方には私も文句を言ってやりたいんですよね。 まぁ……本当にそんな存在が居ればですけど」

「貴女に一体なんの関係が……って、まさか」

「お察しの通り、ある日履いていたパンティーが消えてしまって、その日の業務は履かないままする事に。 休めなかったので大変でした。 気を抜くとお尻から出ちゃうし……しかもですね、翌日にトレーナーさんの手で直接、返されたんですよ。 私のパンティー……返して貰う直前まで、トレーナーさんってば、手でずっと私のパンティーをくにゃくにゃと弄んでて……受け取る時にとっても恥ずかしかったんですから!」

「うわ、それはキツ……イわね……」

「でしょう? でもトレーナーさんは悪くは無いです。 そこまで追い詰めたのは黒幕パンティーなんですから、ふふ……だから」

 

 たづなはうっそりと笑って、両手の平をパンっと合わせて言った。

 

「トレーナーさんの敵、黒幕パンティーはひとまず先に、私が追いかけて見つけてしまおうと思ったんですよ」

 

 

 駿川たづなに追いかけられて、捕まらなかった者が居ないのはトレセン学園では有名な話だ。

 

最早、黒幕パンティーに逃げ場は無いだろう。 存在すれば。

 

 

 

 

それはそれとして、東条トレーナーは楽しそうに笑っている彼女へ、釘だけは指しておくことにした。

 

「リギルを巻き込んだんだから、何とかしてもらうわよ」

「はい、頑張りますね。 留学生でトレセン学園に来てくれた子達に、出てもらえるように代理や皆に声を掛けてみます~」

 

 

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