この理不尽な世界に一筋の光を   作:ウサウサギ

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まず、謝罪の方から。


更新まで長らく間が空いて、本当に、申し訳ありませんでしたッ!!
活動報告に書いておけば良かったと今でも猛省しております。ただ、もう終わったことなので、今更書くのもどうかと思い、こちらに記載させていただきます。

実のところ、私は大学受験を控えており、それがようやく一段落したので、今日こうして更新することができました。

これからまだ忙しい日々が続くので、すぐに投稿することはできないと思います。ですが、それでも努力を怠ることはありません。今後も、文章力向上、そして更新速度を出来るだけ上げていきます!

また、感想の方に2月3日と書いていましたが、申し訳ありません。書き上げることができませんでした。ブランクなどもあり、また一度自分の書いた二次創作の内容を再確認した後に書いていたので、投稿が遅れてしまいました。本当に、申し訳のしようもございません。


こんな私の二次創作ですが、それでも最後まで付き合ってやんよ! という方は、どうか今後共、この二次創作をよろしくお願いいたします!

それでは、前置きが長くなりましたが、本編の方をどうぞ!


第十四話 優しさの形

『みーつけた』

 

 ビクッ、と体が否応なく反応する。それは暗い地下で反響した声に驚いたための反応だ。

 

 反応したのは少女だった。まだ幼い、6歳ばかりの少女。ボロボロの布をその身にまとい、左腕には鎖が絡みついている。鎖の先には重そうな少女の顔くらいはあるケースが二つ付属している。歩くだけでも辛いだろう。少女とて、何度歩みを止めようとしたかは分からない。しかし、ある場所から「逃げる」、という行為が彼女を奮い立たせた。追手も流石に、ここまでは来ないだろう。少なくとも、あともう少しは。そんな子どもの浅知恵を嘲笑うかのように、鬼の声。

 

 後方から聞こえるそれに、少女はどう対応するか頭を回転させる。距離はかなり近い。少なくとも、今から持てる力の全てを振り絞ったとしても、この重い荷物有りでは逃げ切れないだろう。ならば、せめて相手を確認する方が良いのか……。

 

『あぁ、大丈夫。俺は君の敵じゃない。むしろ味方だ。君は俺の娘のようなものだ。父親が娘を助けるのに、理由なんて必要かい? 少なくとも俺は、必要ないと断言するよ』

 

 そこでようやく、少女は気がついた。優しい声音。でも、ほんの少しだけ本人の性格が出ているような粗い声。それを聴くとどうしてか、心が温かくなる。彼女は自然と振り向いていた。頭ですぐに理解したのだ。今の人物は、敵じゃないと。

 

『つーかまえた』

 

『あっ……』

 

 小さく声がもれた。感じるのは、温かさ。振り返った瞬間に、抱擁を受けたのだ。その人の顔は……よく見えない。ただ、その声から何故か懐かしさを感じる。

 

 懐かしさと温かさの間に挟まれて、少女は緊張の糸が途切れ意識を失った。

 

 

 これはまだ、彼女が幼い時の夢。そして今いる世界から、遠い未来のお話だ。

 

 

 歯車は着々と動き出している。ほら、今もみんな頑張り、今回の事件を解決しようと躍起になっている。

 

 ある者はもうひとりの未来からきた者を捕縛して戻ってきた。その際、捕縛された人物の姉から多大な説教をもらっていたようだが……。

 

 そしてようやく回復したのか、晴れて紫天に集いし三人が揃う。

 

 ヴォルケンリッターの首尾は上々だ。対U-D用のプログラムも、ほとんど完全に機能している。

 

 聖王と覇王と黒の三人は緊急会議を開いていた。議題はもちろん、健一についてだ。

 

 

 各々が着々と準備を進めるうちに、また相手の準備も整っていく。

 

 『終わりの世界(ヴァルハラ)』に残った少年少女は回復し、今まさにその空間を抜け出そうとしている。

 

 傍観に徹する者は、ただそれを黙って見ているだけだ。同時に、相手の世界の位置を割り出そうと企んでもいる。

 

 そしてたった一度だけ襲来した異分子は……最後の布石を打ち終えて、立ち上がる。

 

 

 こうしてようやく、物語は動き始める。

 運命の歯車、――――THE GEARS OF DESTINY――――

 

 英傑は揃う。時は満ちた。今こそ、人類史に名を残す決戦の幕開けだ。

 

 孤独を救え。相手の理解に至るのだ。さすれば必ず、道は開かれる。

 

 同時に、許容しろ。大切に想うほど、遠ざけてしまう者のことを。悲しい未来と思っても、それは一時だけのことだ。

 

 神の力の担い手は、決して選択を誤らない。失われた神の瞳は、そこに未来すらも映し出す。彼らは決して、本質は変わらない。だからこそもどかしく、一筋縄では通らない。

 

 選択するのは他人の幸福。代償は自らの今という時間だ。

 

 そして忘れるなかれ。最高神の存在を。今世界には、三人の最高神が混在している。主軸は一人。本質の異なるは二人。本質の同じは二人。誰もが決して相容れず、しかしその目的を悪と、一体誰が裁決することができようか。

 

 誰もが自らの大切な者のために、今まさに奮闘する。

 今宵は第二日、ジークフリート。

 王子はただ、大切な者のために行動を示すのだ。

 

 

 ◆

 

 

「……行こう。ケジメをつけに」

 

「はい」

 

 その世界から、二人の反応が消える。ようやく行ったか、と思うと同時に、これから自分はどうするべきか、と考える。

 

「……やることは、変わらぬか」

 

 しかし、答えは変わらない。その一人もまたその世界から反応が消える。

 

 隠れ家には、誰ひとりとして残ることはなかったのだった。

 

 

 ◆

 

 

「……とんだ爺さんが居たもんだ。まさか、予測されているとは思わなかった」

 

「ふん、貴様のことなど、一から十までお見通しだ」

 

「あぁ、そうかよ……」

 

 うんざりだ、といった風に健一はその言葉を吐き捨てる。一方、ガルシアは相変わらずの好好爺(こうこうや)といった様子をみせる。

 

「……ユーリ、俺はケジメをつけてくる。お前は自分のケジメをつけてこい。同じ場所で戦ったら、お互いに被害が出るから、共闘はなしだ」

 

「わかりました。そうしましょう」

 

 ギャラリーは三人以外にも居る。オリヴィエ、ヴィヴィオ、クラウス、アインハルト、エレミア、夜桜、アミティエとその妹のキリエ、シグナム、ザフィーラ、ヴィータ、シャマル、力のマテリアルのレヴィと、理のマテリアルのシュテル、そしてその統括者であるマテリアルのディアーチェだ。

 

「場所を変えるぞ。……退いてはくれないんだな?」

 

「馬鹿なことを。制御の効かなくなった餓鬼を導くのは、年長の役目でもある」

 

「――――ついてこい」

 

 ポツポツと、その場から人が減っていく。健一、ガルシア、オリヴィエ、クラウス、エレミアが、その場から居なくなる。夜桜は彼らについていかなかったが、それは事前に打ち合わせていたことでもある。

 

 

 

「初めから、そうだった。俺は独りだ」

 

 先導しながら、健一が言葉を吐き出す。その言葉は鉛のように重たく、本人の辛さがにじみ出ているものだった。

 

「いつも病院暮らしで、友達も出来ず、両親も他界していて、残されたのは遺産だけ」

 

 それを静かに、四人は聞く。ここで口を挟もうとは、誰も思わなかった。

 

「代わり映えのない日々。灰色の世界。ルーチンの俺がいつも動くだけで、生きている心地なんて欠片ほどもしなかった」

 

「……」

 

 オリヴィエが拳を強く握る。しかし、健一がそれに気づくことはない。

 

「あの世界に、希望なんてものは存在しない。あるのは、ただ変わることのない、理不尽な世界だけだった」

 

 何故なら、彼は今、自分の過去の苦しみに打ちひしがれていたのだから。

 

「だけど、俺をそんな世界から、連れ出してくれた人がいた。その人は気さくで、義理堅くて、優しくて、暖かくて……灰色の世界に、丁寧に色を塗ってくれた」

 

 ――――だけど、と健一の言葉は続く。

 

「そんな優しい人が、死んだ。それも、死んだとわかったのは、後になってからだった。一粒の宝石を拾って、真実を知りたいと願って初めて、気がついた。剣悟さんが、死んだって。それも、殺されたんだ。あんなにも優しい人が、ある戦争(ゲーム)に巻き込まれて」

 

 健一から、魔力が立ち上る。それも、彼の姿を霞ませるほど、濃い魔力。

 

「それだけじゃない。色を塗られた俺には、病院仲間が出来た。優しいお兄さんと、お姉さんだった。――――だけど、その人たちもまた、後になって殺されたことに、気がついた。原因は、剣悟さんと同じだった」

 

 青色の魔力が、紺色に、そして気味の悪い黒に変色していく。

 

「そして復讐を誓った。アイツ等を絶対に許さない。だけど……運が悪いのか、俺はその戦場で勝ち残った、究極の相手と対峙することになった。その時にはもう、復讐の炎は小さくなっていた。だって、その戦争は誰も悪くなかった。強いて言えば、世界が悪かった。噛み合わなかったんだ」

 

 しかし、その黒は一変して、穏やかな白に変化する。

 

「今回も同じだ。俺もあの子も、理解者はお互いしかいなかった。人は決して、独りでは生きられない。どんな強者であっても、孤独には耐えられない」

 

「……」

 

 クラウスはただ黙して聞いている。その顔は、どこか納得しているような表情だったことに、健一は気がつかない。

 

「失うのが怖い。俺はもう、大切にしたものを、決して失いたくない。だから俺は、失ってしまいそうなほど曖昧なものを、決して大切にはしない」

 

 エレミアとガルシアの表情が僅かに歪む。しかし、それにすらも、健一は気づくことができない。

 

「同様に、俺はそんな思いを他人に味あわせたいとは思わない。お前たちは少なからず、俺を『友』としては認識してくれているだろう? もし、そうでなかったとしても、結果は変わらない。これ以上親交を深めることに、意味がないからだ。その理由は簡単。六年後、俺は九割以上の確率で殺される」

 

 今度は、ガルシア以外の三人が息を飲んだ。健一が嘘をついている様子はない。そしてこの世界で異質な存在である健一を殺す存在。未来への恐怖が、三人を硬直させる。

 

「なるほど……つまりその『究極の相手』とやらに、追われているのか……もしくは、取引したな?」

 

 一方、ガルシアは至って冷静に、むしろそんなことは予想の範囲内と言わんばかりに、健一に問い詰める。その答えがあまりに的確で、健一は初めて振り向いて、苦笑を漏らす。

 

「正解。……お前たちは、越えられるか? 究極の壁を。『永遠』、『空間』、『概念』、『力』のすべてを備えた、最高神(オーディン)を」

 

「……実物を見なければ、なんとも言えぬ」

 

「無理だよ。世界一つ、銀河一つを消滅させる攻撃を直撃させたとしても、ヤツは何事もなかったかのように復活する。それだけじゃない。その攻撃を当てることすら、ほぼ不可能なんだ。光速にすら対応する反射神経に、どんな攻撃をも防ぐだけの能力、そして世界一つを容易く滅ぼすその攻撃力。俺たちが勝てる道理は、どこにもありはしない」

 

「ならば、この儂が、そのすべてを打ち砕いてみせる。戻ってこい。今の彼女には、お主が必要なのだ」

 

「それは心配ない。どうせ、もうひとりの俺が何とかするよ。……それに、打ち砕くなんてことは不可能だ。ガルシア、概念魔術においての『永遠』とは、完全な不老不死を意味するんだ。傷つけても瞬時に完治し、その存在を消滅させてさえも、何事もなかったかのように蘇る。何度やっても、殺すことはできない。そんな事態に対峙した俺が、一体どんな気持ちだったか、お前たちにはわかるか?」

 

 圧倒的力の差……いや、能力の差によって与えられる絶望。まるで出口のない迷路に放り込まれたそれは、健一の心に深く刻まれている。

 

「お前たちを、アイツと対峙させるわけにはいかない。特にオリヴィエ、お前は絶対に、相対してはいけない」

 

「……どうして?」

 

「確実に、殺されるからだ」

 

 オリヴィエからの短い問いに、即答する健一の声は震えていた。

 

「お前は、ヤツがその儀式に必要だと思っているモノを持っている。完全な死者蘇生を実現するための『究極魔法』……そのための、『召喚せし者(マホウツカイ)』としての魔力を、お前は持っているんだ。俺がお前から、『欠損』の概念を断ち切ったばっかりに、な」

 

「ですが、それによって私は――――」

 

「だからッ!」

 

 今まで大人びていた健一が、子供のように声を荒らげて、地団駄を踏み、そして振り返った。そのあまりに予想外な行動に、オリヴィエの言葉は遮られ、また意表を突かれて言葉を失う。

 

「惨劇を繰り返さないためにも、今ここで、その連鎖を断ち切るんだッ!」

 

 ――――『魔術兵装(ゲート・オープン)』――――

 

 

 七色の小型魔導砲『グリモワール』、『疾風迅雷(タービュランス)』セット、『スコール&ハティ』、『スウァフルラーメ』、『ギャラルホルン』……。

 

 そして、常時展開されている『失われた神眼(オーディンのまなこ)』。六種類の『戦略破壊魔術兵器(マホウ)』が展開される光景は、どこか圧倒されるものがある。

 

「そのために……みんなの、俺に関する記憶すべてを、今ここで、消し去るッ!」

 

 ――――『疾風迅雷(タービュランス)』――――

 

 

 その言霊はまるで慟哭のようだった。寂しさに耐え切れず、泣いてしまう子どものような、親が居ないために不安で堪らない子どものように。

 

「ケンイチさん……」

 

 言葉と表情が、まったく一致していなかった。彼は自分の周囲の者すべてを遠ざける旨を言葉に含ませながらも、泣き出しそうな表情をしていた。きっと彼は、今の環境を居心地良く思っており、また失いたくないのだろう。しかし、そうしなければその環境の全てが、六年後に蹂躙され、消滅する。

 

 ――――守るために、周囲を無にする覚悟とは、一体どれほど強いものなのだろうか。

 

 それは少なくとも、健一以外には分からない。知る由もない。

 しかし、だからといって……それを放っておこうというほど、四人は彼に対して無関心になることは出来なかった。

 

「自分一人だけ格好をつけて……ちょっと張り切りすぎじゃないかな?」

 

「必死なんだッ! 災いは必ず、俺に向けて降りかかる。それは周囲すべてを無にするほどの大災害だ! だからこそ、その災害に巻き込まないためにも、もう二度と失わないためにも、こうするしかないんだッ!」

 

「でも、その選択だとこちらは、君を失うことになる。失う悲しみから逃げて、それを肩代わりさせようとか、都合のいいことを考えているのかな?」

 

「だからこそ、俺はお前たちの記憶そのものから、神崎健一という人物を消すんだ! そんな悲しみを背負うことはないッ!」

 

「わかっているんだろう? それは根本的な解決にはならないって」

 

 その通りだ。クラウスの言うとおり、それは根本的な解決には、決してなりはしない。それはハッピーエンドではなく、バッドエンドだ。しかし、その根本的な解決方法というのが、健一にとっては夢物語だ。

 

「偉そうに、簡単そうに、言って……

 ――――俺が、俺がどれだけ模索したと思っているんだ!? 未来すらも予知する眼でさえ、不可能って出たんだよッ!」

 

「しかし、それは本当に、あなた自身が考えた結果なのですか?」

 

「考えたさッ! あのとき、ヤツと対峙した時からッ! 今の今までずっとッ! お前たちに会う前から、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、考え続けたッ! どうやれば勝てるか、どうすれば生き残れるか、どうやれば逃げられるか、どうすれば封印出来るか、どうやれば願いを叶えられるかッ!!」

 

 彼の地団駄が地面を砕く。今まで貯めてきていた不安が、隠れていたものが、全て吐き出される。

 

「でも、一人には限界があります。なら、みんなで力を合わせることができれば……」

 

「足でまといなんだよッ! お前ら全員、失わないために、俺が守れとでもいうのか!? 一人で勝てない相手に対して、今度はお荷物抱えて対峙しろとでも言うのか!? エレミア、お前の武術なんて、所詮あいつの足元にも及ばないんだよッ! クラウス、お前の打撃力なんて、所詮アイツの攻撃力の前には無に等しいんだよッ! オリヴィエ、お前の持っている防壁なんて、アイツの防壁と比べて脆すぎるッ! そしてお前たち全員、一度でも、世界一つを滅ぼす攻撃に耐えうることが出来るのか!? 不可能だろうがッ!」

 

 絶対の強者同士の対決故の苦悩が、そこにはある。エレミアの提案は不可能なことだ。何故なら、そもそも強さの次元が、世界を隔てて違うのだから。

 

「ですが、私はもう、そのマホウツカイとほとんど同じはずです。私とケンイチさんの二人が、そして他にも仲間を増やせば、可能性は見えるはずです」

 

「あぁ、確かにオリヴィエ、お前の能力と俺の能力を合わせれば、一万回に一回は、オーディンを倒せるかもしれない。だが、そんな低い確率に縋り付いて、全員を危険に晒せっていうのか!?」

 

「六年もあれば、有効な手段が複数、あるいはもっとたくさん、浮かび上がるはずです! 何も今から、私たちと離れる必要はありません! 最後まで、ギリギリまで、みんなで考えれば、一人で考えるより生存の確率は上がるはずです!」

 

「だが、オーディンに嗅ぎつけられたらそれで終わりだッ! 一刻も早く、俺は足跡を消さなきゃいけないんだ! そうでなければ、今度はオリヴィエ、お前の命をアイツは刈り取りにくる! 俺がいたらダメなんだよ……この世界はッ!!」

 

 決意は固い。オリヴィエのもっともな提案にさえ、健一は首を縦に振らない。

 

「……なるほど。ケンイチよ、貴様、U-Dを囮にしたな?」

 

「…………結果的に言えばそうだけど、どうせお前、対抗策は提案したんだろう? なら、もうそっちはハッピーエンド確定だよ」

 

「その読みも、大概だと思うのだが……まぁ、よい。

 ――――ならばケンイチよ、ここで一つ、勝負をしようではないか」

 

「……どうせ、勝てば俺の自由。負ければ一緒に居ろ、とかでしょ? 勝負でもなんでもない。そんなの、今の状況そのものだよ」

 

「聡い……いや、それだけ本気、というわけか」

 

 はぁ、とガルシアは溜息を吐いた。とても長い嘆息。それは一分と続き……そして次の瞬間、空気が異常な変質をみせる。

 

「ならば、儂も本気を出す。道を誤った小僧を指導するのは、老骨の務め。やろうぞ、ケンイチ。最初で最後の――――」

 

 ――――譲れないものを賭けた、本気の戦いを――――

 

 ガルシアの手にある戦斧が宙を薙ぎ、地面に柄をついたあと、ゆったりと構えを取る。同時に、その気配が爆発した。いつもの様な好々爺は、もうどこにも居ない。そこにいるのは、戦神の二つ名を持った武人ガルシアその人だ。

 

 まるで空気が液状化するような錯覚を覚える。思わず息を飲んでしまうほど、空気が重たい。今まで見てきたガルシアは、どれも本気ではなかったことを思い知らされる。同時に、こんな化物がこの世界に存在することに、健一は戦慄を覚える。

 

「…………」

 

 しかし、冷静に考えてみれば、それも前に対峙した『究極の相手』には届かない。自覚した健一は、その空気を振りほどき、自らも『スウァフルラーメ』を構える。

 

「言っておくけど……もう、手段は選ばないよ」

 

「儂も、手段を選ぶほどお人好しではない。

 ――――三人とも、まずは傍観しておれ」

 

 ガルシアは戦場からオリヴィエ、クラウス、エレミアの三人に距離を取らせる。有無を言わせぬその圧力に、三人は無意識のうちに動く。

 

 

 ――――これにて、戦場の準備は完了する――――

 

 

 健一の白銀の魔力が大気を揺らす。ガルシアの黄金色の魔力が大地を砕く。二人から魔力の柱が立ち上り、そして近づいていく。お互いが歩き出した。一撃必倒をお互いが狙い、初撃こそが命と言わんばかりに、ただならぬ緊張感が走る。黒い鞘が外れ、真の姿が現れる。戦斧を短く持ち替える。七色の小型魔導砲が動きをみせる。お互いの距離が残り5メートルを切る――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『未だ果てず重なる七色の誓約(オーバーロード・テュルヴィング)』――――ッ!!」

 

「――――百式『神雷』――――ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 七色の斬撃と、黄金色の刃が激突し、世界に黄金色と七色の柱がそびえ立ち、対立する。お互いが唸りを上げてぶつかり合い、これでもかと更に叫び散らし、咆哮する。

 

 やがて、二つの柱はお互いの出力に耐えかねて、遂には二つの柱は混じり合い――――周りを巻き込んで、暴発する。それはまるで、一本の世界樹がそびえ立つかのような光景だった。

 

 

 

 この光景は、後に『ユグドラシルの奇跡』と呼ばれることになることを、まだ誰も知らない。これを見た不特定多数の人物と、あるひとりの人物が書き記した手記が、それをそう呼ばせるようになる。

 

 

 ――――七色の柱と黄金の柱は混じり合い、その地に破滅をもたらした――――

 

 ――――しかし、その地は破滅したにも関わらず、緑豊かな土地と化す――――

 

 ――――これはある二人の武人が生み出した、奇跡の具現――――

 

 ――――まるで世界樹が根を張りそびえ立ち、その土地を豊かにしたように――――

 

 ――――破滅の後には、尋常ならぬ繁栄が、待っていたのだった――――

 

 

『エレミアの手記』、第三十五頁、題名「優しさの代償」~抜粋

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

今回は少し、というかものすごく長くなるので、3パートに小分けしていこうと思います。ちなみに、まだ2パート目を書き上げていませんorz

尚、この後書きの最後に、主人公、神崎健一の現在のステータスを、fortissimoに則って公開しようと思いますので、見たくない方は、次に大きい空白があったとき、すぐにブラウザバックをよろしくお願いいたします。

それでは、本編の方ですが……文章的問題として、ブランクもあり、また色々な影響から、地の文がだいぶ削れてきました。その分スマートになったと言えるのか、それとも描写不足なのか……もしよろしければ、ご指摘をお願いいたします。

後書きを長々と書くより、はやく本編の方をお届けしたいので、あとがきはここまでといたします。最後まで、そしてまた読んでくださり、本当にありがとうございます! また次の話か、感想欄にてお会いしましょう!
























         ―――― 神崎 健一 ――――

戦略破壊魔術兵器(マホウ)
 ――『失われた神眼(オーディンのまなこ)』(左目)

能力
 ――解析、模倣、強化、未来予知、演算……etc.
 『望むもの(オースキ)』
 『姿を変えるもの(スヴィパル)』

キャラステータス

破壊力:F
スピード:F
射程距離:S(半無限)
持続力:S(半無限)
精密動作性:S
魔力総量:E(辛うじて『召喚せし者(マホウツカイ)』のレベル)
成長性:S





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