現在、ハジメ、エース、大智は訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。
まずハジメの手には〝北大陸魔物大図鑑〟というなんの捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。
そしてエースはこの世界の神、エヒトに関する本。大智はこの世界の魔法についての
本を読んでいた。
「へ~。魔物の肉を食べると死ぬのか............
エースさんは何かわかりましたか?」
「そうだな............エヒトという神をあがめているのはこの国だけではなく
他の国々全部だそうだ。この宗教以外についての文献は少なくとも
この図書館にはなかった。なんかこの国、いやこの世界どこかしら歪だ」
「同感だね............。宗教っていうのは例え元が一緒でも
土地によっては別の解釈が生まれて宗教の形は多岐にわたる。
けどこの世界では住民全員が同じ神、同じ価値観、そして同じ教えを受けてる。
これは本来地球ではありえないことだ............実に興味深い............!」
大智はニヤニヤしながら眼鏡をくいっと上げる。
その笑顔は少しでけ醜くそれを見たハジメは苦笑いするしかなかった。
そしてハジメも発言する
「あとありましたね。神代魔法についての手がかり。これらはそれぞれ
世界のいたるところにある7つの大迷宮に隠されてるそうですね」
そういってハジメは図書館の机に一つの本を置く。
七大迷宮。この世界における有数の危険地帯をいう。
ハイリヒ王国の南西、グリューエン大砂漠の【グリューエン大火山】と砂漠の間の【オルクス大迷宮】と亜人族の中の獣人族が多く暮らしてる【ハルツェナ樹海】。
七大迷宮でありながらなぜ三つかというと、他は古い文献などからその存在は信じられているのだが詳しい場所が不明で未だ確認はされていないからだ。
他四つは隠されているが……だが二つの場所は目星が付けられていた。
それは、大陸を南北に分断する【ライセン大峡谷】や、南大陸の【シュネー雪原】の奥地にある【氷雪洞窟】がそうではないかと言われている。
「大迷宮か............まるでRPGゲームだな」
「そうですね。べたというかなんというか」
「そういえばツムリが言ってたけど............ジャマトは一体どこの魔物を食べて進化したんだろう?」
ジャマト。ハジメたちの世界で人類にとって脅威の存在となっていた植物型の怪人。
ナビゲーターのツムリによるとそのジャマトも生徒たちのようにこの世界に来てしまっていたらしい。
「ああ!確か言ってましたね。この世界にジャマトが来て色んな地域の魔物を捕食して
未知の進化を遂げてるって!」
「となると............大迷宮にジャマトがいる可能性が高い」
三人がこうやって情報共有進めているとハジメはが声を上げた。
「すいません。ちょっと早いですけどそろそろ訓練の時間なので俺行きます。
そういえば二人は訓練に来ないんですか?」
「いや俺はまだ調べたいことがあるからいい」
「僕も同じく。それに彼らと訓練したって強くなれるわけじゃないからね」
「そ、そうですか。まあいいや、じゃ俺はこれで」
「ああ。気をつけてな」
エースの言葉を背中にハジメは図書館を出て行った。
ハジメは少し駆け足で訓練所へと向かっていた。その道中彼は
面倒ごとに巻き込まれてしまう。そう檜山たち小悪党組に絡まれたのだ
「よぉ、南雲。なにしてんの? 最近訓練サボってたくせに
もしかして訓練参加するつもり?そんな奴迷惑だから来るんじゃねーよ」
「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」
「あんなかっこつけたこと言ってたくせに、俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」
「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」
一体なにがそんなに面白いのかニヤニヤ、ゲラゲラと笑う檜山達。
「あぁ? おいおい、信治、お前マジ優し過ぎじゃね? まぁ、俺も優しいし?
稽古つけてやってもいいけどさぁ~」
「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無能のために時間使ってやるとかさ~。南雲~感謝しろよ?」
ハジメはその言葉に怒りを感じていた。正直キレて怒鳴ってやりたかったが
その感情を押し殺し冷静に言葉を放つ。
「いや、別にいいよ。それより自分のことを心配したら?
いつか戦争に参加する気があるなら今のままじゃ駄目だよ」
ハジメのその言葉を聞いた4人は案の定キレる。
「はぁ? 俺らがわざわざ無能のお前を鍛えてやろうってのに何言ってんの? マジ有り得ないんだけど。お前はただ、ありがとうございますって言ってればいいんだよ!」
檜山はそう言いながらなんと魔法を使った。
「ここに風撃を望む――〝風球〟!」
「え!?あ、危な!!」
ハジメはその予想外の行動に驚きながらもなんとか
右に飛び檜山の風の球を避けた。
「何するんだよ!?」
「うるせえ!ダメって俺たちの稽古を受けやがれ!!」
そう言って後ろの3人も魔法を放つ体勢を整える。
ハジメも流石にこの状況に我慢できず迎撃しようと
拳を固め戦闘の体勢を取ろうとした。しかし
ハジメはあの時自分の言葉を思い出す。
『みんなは俺が守るよ。だから全員で生きて帰ろう!』
(駄目だ............正直納得がいかないけど............檜山君たちも
守る対象だ)
ハジメはため息を付きながら拳を降ろし............逃亡した。
「おい!逃げんなよ!!」
「マジか南雲逃げやがった。ギャハハハ」
「追え!魔法を当ててやるんだ!!」
ハジメは逃げるためにそこら中を駆け巡ったが檜山たちは
しつこく追跡しハジメに魔法を当てようと何発も火の球や風の球を放つ。
しかし走りながらの魔法なのでその大半は見当違いの場所へと飛ばされていた。
城の壁に当たったり、中庭の木に当たったりとひどいものであった。
(や、やばい!彼ら周りへのこと全然考えてない!
このまま逃げ続けたら............ん?)
ハジメがそんなことを走りながらそんなことを考えていると、
少し離れた所にとある人物がいることに気が付く。
「あ!南雲君だ。何してるの?」
ハジメの少し前の所に白崎香織がいたのだ。そして彼女に不幸が訪れる。
なんと四人組の誰かがが放った火の球が香織の所へと向かってしまったのだ。
「え............?」
「白崎さん危ない!!」
ハジメは猛ダッシュで香織の所に近づく。そして彼女への直撃を防ぐために
彼女の体に抱き着く。
「う!?」
そして火の玉はハジメの背中に直撃してしまった。
「ナ、南雲君!大丈夫!?」
香織はすぐさまハジメの背中を確認する。
ハジメの背中は火の玉によりひどい火傷を負っていた。
「ひ、ひどい............!なんで南雲君にそんなことをするの!?」
香織が涙を流しながら檜山たちに叫んだ。
「いや違う!これは事故で............」
「何やってるの!?」
その声に「やべっ」という顔をする檜山達。
雫、光輝、竜太郎が騒ぎを聞きつけて駆けつけたのだ。
「いや、誤解しないで欲しいんだけど、俺達、南雲の特訓に付き合ってただけで……」
「ふざけないで!!」
その時香織が叫ぶ!その声はあまりにも大きくハジメ以外のその場にいた
人達はビクッとなった。
「南雲君は私たちのために戦うっていてくれたんだよ!?なのに
こんなことをするなんて...........南雲君があんまりだよ」
香織がそういうが光輝が水を差す。
「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っていたりその辺をぶらぶら歩いているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。
南雲も、もう少し真面目になった方がいい。檜山達も、
南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」
「ちょっと光輝あなたなにを言って............」
雫もその発言に抗議しようと声を上げようとが…............。
「おい............!」
突然その場に怒り心頭な道長が現れた。
「誰だ!さっきから火の球やら風の球を色んな場所にぶつけやがった奴は!?」
「えっと............」
檜山たちは誤魔化そうと言葉を発しようとするが、その態度は逆に道長に
こいつらが犯人だという確信をあたえてしまった。道長は檜山の所に
近づき彼の胸倉を掴む。
「いいか!?例え石造りの建物でもなテメーらの火の魔法でも
十分火事の原因となる!ここに住んでるのはお前たちだけじゃねーんだよ!!
こっちの迷惑も考えやがれ!!」
「「「「ひ!?す、すいませんでした!!」」」
檜山たちは道長のガチギレに耐えられず情けない声を上げながら
頭を下げた。そして道長は火傷を負ったハジメの方に目をやる。
「ったくよ。力をもった途端暴れるなりなんなり............
テメーら相当なクズ野郎だな」
「ちょっと道長さん!なんでそんなひどいこと言うんですか!?」
光輝の言葉に道長も呆れた表情を見せる。
「は?ほざくじゃねーぞクソガキ。世界を守る力とやらを
誰かを傷つけるために使った奴らをかばおうってのかよ?」
「ひ、檜山たちは............」
「まあ俺はお前らが生きてさえいれば他は正直どうでもいい。
俺がゲームクリアするまで精々調子に乗らず邪魔しで生きてるんだな」
そう言って道長はその場を去っていった。
「ハジメ君。治療するからとりあえず城の中に入ろ。立てる?」
「う、うん............」
香織もハジメを連れて城へと入っていった。