AR.D.1922年、アムステック連邦共和国
人口1億8000万人、都市には人が溢れ、首都は眠らない街である。国民はあるはずのない永遠なる繁栄を謳歌していた。
たとえ少し郊外の町でもすぐに都市にアクセスできる環境もあった。例え7歳の子供でも。
この世界は魔法の使える人間が多い。だがアムステック連邦共和国の構成員たちのほぼ100%は魔法が使えない。バルアニア民族である。
彼らは科学力をもってして発展してきたのだ。
しかし繁栄の時には終わりがある。
AR.D.1922年10月29日、経済の中心であった合衆国及び連合王国の金融街に衝撃が走った。世界的な大手銀行の破産だった。
投資家たちはできることは行った。しかし政府は自然に回復すると信じて疑わず対処せず、政治家たちがその危険性に気づいたときにはもう手遅れであった。
『できることはやった。我々には無理だ』
大企業の社長たちが口をそろえてこう言った。
無論、この経済的な恐慌はアムステックにも波及した。1922年から1923年の一年間で1000万人もの失業者を出したが政府は何ら有効な政策を提示できなかった。
アムステックの国民は嘆いた。
「神は我々を見捨てたのか」と
その恐慌の中であまり影響を受けない者達がいた。魔法族である。彼らは国を脱したり、魔法族間のコミュニティで助け合い、かろうじて被害が少なかった。
「なぜ、魔法族は恐慌の影響を受けない」
「我々から搾取しているはずだ」
「彼らは富を独占しているに違いない…」
アムステックのバルアニア民族はそんな流言飛語を飛び交わした。
しかし人々は武器を持つことはなかった。彼らはあまりに長すぎる平和の中で戦い方を忘れていたのである。
そんな中、海の向かいの大陸で暴力による革命が起きた。後に帝国革命と呼ばれるそれは民衆の間に武器を持って戦う戦い方を思い出させるターニングポイントとなった。
「我々も武器をもって立ち上がろう…」
「無能な役人どもを薙ぎ払えれば」
「魔法族はこの国には要らない…」
民衆は武器を持ち行進する。もちろん、どの国にも常備軍はあったが軍内部で離反が多発。挙句の果てには大将クラスまでもが離反し、反政府的な思想を持つ民衆の数は膨大なまでに膨らみ、民衆は暴力の振るい方思い出し他国へ侵攻する国が連鎖的に広がった。
しかし、その憎悪は長くは続けられなかった。国家の統制を軍隊は崩壊する。碌な補給も受けられず、戦死者よりも餓死者が多い戦場もあった。
どの国も士気は無いに等しかった。故に戦争は一過性のもので終わった。
しかし代償はあった。特に侵攻を始めた国には賠償が課せられ、戦後も苦しみ、そして恨みを募らせることになる。
AR.D.2010年9月18日
もう限界だった。敗戦国であるアムステック連邦共和国は既に死に体を晒していた。
だが、民衆は一人の英雄にすべてを託した。
AR.D.2018年混乱の再来
「我々は数千年にわたるこの呪縛を打ち倒し必ず栄光を手に入れる
──差別を受け残虐な扱いを受けてきた我々は今それを終わらせる力を手に入れたのだ
──今こそ我らの手による制裁を!!バルアニア民族に栄光あれ!!」
(フリードリヒ-フォン-エミスのネイス党大会での国民に向けた演説)