一番星と『元極道の娘』   作:ヒリヒリ

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推しの子って二千何年の話かって描写とかあったっけ?

知らないことは想像でしか書けないので、ここ間違ってるよって所もあるかもしれません。


始まるライブ

「毎度どうもー」

 

そう言う運転手の声を背に、桐生達は関係者入口へと向かった。その格好から、どうしても周囲の目を引いてしまうが、それを気にしている暇は無い。

 

「あ、ちょっとお客さん!ダメですよこっちから入っちゃ」

 

辿り着いた関係者入口に手を伸ばした時、近くのスタッフがそう言ってきた。言われた通りに斉藤の名を出せば、そうでしたかとスタッフは快く扉を開けて中へと桐生達を招き入れる。

 

「名前は……斉藤(はじめ)さんと斉藤遥さんであってるかな?それにしても苺プロ、人手不足とは聞いてたけどまさかライブ当日に日雇い入れるなんてよっぽどなんだね。えっと、B小町の控室はっと」

 

「あ、きりゅ……じゃなかった一さん!遥!!」

 

「ちょうど良かった。アイさん、後はお任せできますか?」

 

恐らく偶然ではなく通りかかったアイが、スタッフのその言葉に頷き桐生たちの腕を引きドーム内を進む。しばらくすると、B小町様と書かれた紙の貼ってあるドアの前へと辿り着いた。

 

「ここが私たちの控室。あ、2人は光過敏症?でサングラスをしてるってことになってるから、外しちゃダメだよ。特に一さんは重度って事になってるから特にね」

 

「そうか」

 

「控室って私たち入って良いの?」

 

「さっきのスタッフの人も言ってたけど、うちの日雇いスタッフって扱いだから寧ろ入らないと不審がられるよ?」

 

「……アイ、少し連絡を取りたいんだが、人のいない場所はないのか?」

 

「人のいない場所?隣の部屋が今日は誰も使ってないらしいけど、開いてれば使えるかも?」

 

「そうか」

 

そう言って、桐生は瞬時に隣の部屋のドアが開くかどうか試した。

 

「開いたね」

 

遥の言った通り、鍵の閉め忘れか、それとも元々開いてるものなのかは分からないがとにかくドアは開いた。桐生はこれ幸いとスマホを通りだし隣室へと入っていく。電話の相手はもう決まっていた。

 

「アイ、遥、先に入っててくれ。俺も連絡が終わり次第そっちに行く」

 

「うん。待ってるねおじさん」

 

「早めにねー一さん」

 

そんな言葉を受けながら、桐生は電話を掛ける。相手はあの時遥の狙撃を阻止してくれた、元プロ野球選手でもある男、品田辰雄。

 

『あれ?桐生さん、久しぶりですね。どうしたんですか?」

 

「少しお前に聞きたいことがあってな。もしもの話だが、東京ドームでサイン盗をするなら何処から盗む?」

 

『はい?東京ドームでサイン盗って……そう言えば、街で今日は東京ドームでB小町?がライブするから、TVで良いから絶対見ろよって布教してる人がいたけど、もしかして……』

 

「ああ、ライブ前に襲われてな。複数犯だった場合、遥の時同様狙撃される可能性がある」

 

『なるほど、襲ってきた犯人はどんな奴だったんです?」

 

「恐らくストーカーだとは思うが、関係があるのか?」

 

「そりゃ関係者かそうでないかで狙撃できる場所も変わってきますからね。関係者じゃないなら、日本ドームの時と同じです』

 

電話越しで、品田が確信を持った様に言う。東京ドームと日本ドーム、違う場所に立つドームであるのに何故同じ場所からの狙撃になるのかと疑問を問えば、品田からは直様返答が返ってきた。

 

『細部に若干の違いこそあれ、ほぼ同じなんですよ、東京ドームと日本ドームの作りって。何故はわからないですけど、日本と東京どっちの名をつけるかで揉めて、結局どっちも作ったなんて噂はありますけどね。……関係者だったとしてもあそこが一番狙いやすい場所ですから、そこだと思います。流石に、プロのスナイパーなんかがいたならポイントはもっと増えると思いますけど』

 

「それはないだろう。理由が何にせよ、そんな奴を雇えるならわざわざ一般人を使って襲ってくる必要がない」

 

『ですよね。じゃあ、やっぱりあの場所で決まりです。覚えてますか?』

 

「バックスタンドの横だったな」

 

『そうです。まあ、桐生さんなら大丈夫だと思いますけど、気をつけてください』

 

「ああ」

 

やることは決まった。電話を切って、まずは斉藤にバックスタンドまで行ける道を聞こうと部屋から出た。

 

「あ」

 

開けたドアの先、そこにはアイが立っていた。遥はいなかったが、恐らく盗み聞きをしていたのだろう。

 

「聞いてたのか」

 

「あははー……狙撃されるかもしれないんだよね?私」

 

「ああ……ライブ、中止するか?」

 

「ううん、やるよ。だって、桐生さんたちが守ってくれるんでしょ?」

 

「乗りかかった船だからな。このライブ、必ず無事に成功させてやるよ」

 

「期待してるね。じゃあ、控室行こっか」

 

そう言う桐生に、アイは満足そうに頷きながら、桐生を伴って控室に入る。控室内にいるのは、遥と斉藤のみであった。

 

「桐生さん、最初に言っておくが、うちの事務所所属の人間には桐生さんと遥のことは話してある。まあ、うちは弱小だからそんなに人はいないけどな。ただ、アイに子供がいることは秘密なんだ。だから、アイをストーカーから守ったって事にしてるんでそこは気をつけてくれ。世間的にも、あの子達は俺の子って事になってるからな」

 

「そうか」

 

「ああ、連れてくるつもりのなかったアクアやルビーを連れてきた事や今日突然雇った日雇い、そしてアイから電話が来た時に俺がテンパってアイが襲われたと口に出しちまった事、その他にも理由はあるがともかく隠し切れる状況じゃなかったんでな。桐生さん達がアイを守ってくれる事も考えると、話しておいた方がいいと思ってな」

 

「その他のメンバーってのは……」

 

「今は各自緊張をほぐしてる。もう直ぐ戻ってくると思うが」

 

腕時計を見ながら、斉藤はそう返した。そんな斉藤に、意を決した様に遥が話しかける。

 

「斉藤さん。私、やっぱりここにいないほうがいいんじゃ……」

 

「……」

 

否定の肯定もせず、斉藤は顔を遥の方へと向けた。視界の端のアイは良く分かってなさそうな顔をしているが、斉藤は何故遥がそんな事を言ったのか予想がついていた。

 

「澤村さんは……居るみたいね」

 

しかし、斉藤が何かを言う前に控室のドアが開かれ、そんな言葉と共に遥と桐生にとっては見慣れない女性が入ってきた。

 

「あ、ニノ。緊張解しはもう良いの?」

 

「ええ。まあ、終わってなかったとしても『あの』澤村遥と話せるんだもの。無理矢理にでも終わらせて来るわ」

 

アイにニノと呼ばれた女性は、そう言って遥の前へと移動した。遥が椅子に座っているため、必然的に見下ろす様な形になりながら2人の視線が交差する。僅かに怯えた顔をした遥に、ニノと呼ばれた少女は気にした様子もなく話しかけた。

 

「はじめまして、澤村遥さん。あたしはB小町のメンバーの1人、ニノ。本名は……まあ今はいいでしょう。それより、ちゃんとあたしたちのライブ見ていきなさい。アイを守るために来たんでしょ?」

 

「う、うん」

 

歯切れ悪く返す遥に、ニノは少しばかり思考を巡らせた後、一度ため息の様に息を吐き再度話しかける。

 

「まあ、貴女の気持ちもわかるけどね。大方、あたし達が貴女の事よく思ってないとでも思ってるんじゃないの?」

 

「え、何で?」

 

「何でって……アイ、よく考えなさい?アンタですら下積み期間があったのに、澤村さんは1年も経たずにアイドルとしてメジャーデビューしたのよ?ドームの公演もね。いくらそういう企画の番組で勝ち抜いたと言えど、納得するわけないでしょ。てか、うちにもアンタと澤村さんの才能を目の当たりにしたせいで挫折して辞めた子いたじゃない」

 

「それはそうだけど、でもプリンセスリーグは遥が頑張って優勝したってだけでしょ?」

 

「みんながみんなアンタみたいに考えれる訳じゃないの。当時……と言ってもそんなに前じゃないけど、特に澤村さんが桐生一馬との関係性をバラした後のSNS見てないの?『東城会からの圧があった』とか『枕した』とか色々言われてたじゃない」

 

そのセリフに、ピクリと桐生が反応を示すが誰もそれに気付かずに話は続いていく。

 

「確かに、そんなのも見たかも」

 

「でしょ?今でも地下で燻ってるアイドルも含めて、下積みが長ければ長い程澤村遥という存在は受け入れ難いものよ。澤村さんがいかに過酷なレッスンをしていたとしても、1年未満のレッスン量なんてそんなに多くない、量より質なんて言葉もあるけど、それでも限度ってものがあるわ。ともなれば、そこにあるのは残酷なまでの才能の差。澤村さんを認めると言う事は、その差を認めることになる。で、それを認められないから嫉妬や憎悪を抱くわけ。一時期のあたし達みたいにね」

 

「一時期結構ギスギスしてたもんね。B小町も」

 

ニコニコ笑いながらそういうアイに、原因はアンタなんだけどとジト目を向けるニノ。そんな視線を受けながら、そう言えばとアイが口を開いた。

 

「なんで仲良くしてくれたの?私は、あのままどうしようもない溝ができると思ってたんだけど。遥が出てきた辺りからだっけ?話しかけてくれ始めたの。私が復帰してからとも言えるけど」

 

「さあね。各々考えはあるでしょうけど……あたしはただアンタに色々教わった方があたし自身のレベルアップに繋がると思っただけよ」

 

「そんなこと言って〜本当はよく聞いてる曲のお陰でしょ?遥が歌ってるやつ」

 

「……わかってるなら聞かないでくれない?まあ、自分自身すら信じられなくなっていた時期だったから、あの曲には実際結構救われたわ。あたしはこんなんじゃないって思えるだけで折れずに済んだんだから、我ながら単純だなとは思ったけどって話が脱線しちゃったじゃない」

 

一度咳払いを挟む、ニノは言葉を続ける。

 

「ともかく、澤村さん?少なくともあたしは貴女に負の感情を向ける事はないわ。むしろ、感謝してるくらい。他のメンバーもここまで来てるわけだし、才能の差問題は多分乗り越えてるでしょう。まあ諦めてる子もいるかもだけど、それはそれで澤村さんに突っかかる事はないでしょうし」

 

「まあ、もしギスギスしても社長が止めてくれるよ!」

 

「ここで俺に投げるのか!?」

 

突然のアイからのパスに動揺の声を上げる斉藤。連れてきた以上当然と言えば当然なのだが、出来れば問題が起きて欲しくないと言うのが彼の本心である。だが、もし何か起こるのであれば、稼ぎ頭のアイにだけは被害が行かない様にしないとならないとも考えていた。

 

「事情が事情だからしっかりは見れないかもしれないけど、私たちのライブ楽しんでね遥!桐生さんも!!」

 

「うん。あ、そう言えばおじさん、さっき誰に連絡してたの?」

 

「品田だ」

 

「品田さんって私が狙撃されそうな時に狙撃手を止めてくれた人だよね?やっぱり今回も狙撃される可能性が高いんだ」

 

「最悪はドームごと爆破だが、ストーカーがそこまで出来るとは考えにくいからな」

 

「遥は狙われたことがあるの?」

 

「ああ、あの日本ドームでのライブの時にな。今回とは違って、狙われる可能性があるじゃなく確実に狙われてる状況だった。俺と協力してくれた仲間のお陰で何も無かったが」

 

「あの刑事さんが言ってた経験済みってのは言うことだったのか。いやでも、ここは日本だぞ?襲ってきたやつといい、銃刀法はどうなってんだよ」

 

「一歩裏に入れば、手にするのはそう難しい事じゃないってことだ」

 

「マジかよ」

 

知りたくない現実を知って、斉藤は肩を落とした。それと同時に、今回は桐生と遥が護衛にいて良かったなとも思う。だが、今後の事も考えると今回だけと言うのは惜しく、なんとかして今後も桐生にアイを守っては貰えないだろうかと思考を巡らせる。

 

「あ、社長。そろそろ時間じゃない?」

 

アイにそう言われ、腕時計を見ればライブ開始まであと十分といった所。仕方なく今し方の考えを頭の隅に追いやり、桐生と遥に絶対にアイを守ってくれと伝え、未だ緊張ほぐしを行ってるであろう他メンバーを呼ぶために部屋を出る。

 

「じゃあ、私たちも行こうニノ!」

 

「ここで待ってればいいって引っ張らないで!」

 

ニノの腕を引き控室から出ていったアイを見送り、遥と桐生も動き出す。

 

「必ず阻止しようね、おじさん」

 

「ああ」

 

ライブが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




澤村遥

そう言う企画の番組だったとは言え、アイドル歴1年未満、下積みほぼ無しでメジャーデビュードーム公演とか言う伝説を打ちたて、他アイドルに希望を与えると同時に結構恨み辛みを向けられてるであろう子。実際の所、プリンセスリーグにやらせは無いが、桐生との関係暴露もあって世間はそうは思ってない。アイが一番星ならこっちは多分流れ星とかになる。

アイ

一番星。遥に関しては愛を教わることが第一だったため、特に負の感情はなく、よく考えれば凄いことしてるね!程度。後述の理由でニノとは割と仲が良く、他メンバーとも仲良くなれればなぁと思っている。

ニノ

性格はオリジナル。アイを除きB小町で一番出番がある子。心が折れかかっていた時期にKONNANじゃないっ!を聞いて持ち直した。それ以降は変な意地を張らずにアイに色々教わる事にした結果、割と仲良くなった。心を救ってもらったが、遥のファンではない。

B小町メンバー

アイとの人気や扱い、才能の差に折れたり、それをなんとか耐えてたら当然現れてスターダム駆け上がって消えた遥によって現実を見せつけられたりで、メンタルボロボロにして辞める子がいたりして、入れ替わりが激しかった。ただ、現状のメンバーはアイはともかくニノにも負けるのはどうかと言う考えのもと、やる気を再燃させたりしている。
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