では、どうぞ…Orz
中華は漢王朝・・・高祖・劉邦が打ち建てた前漢が王莽の新にとって代わられ、その新王朝も雲台二十八将と称される名将たちを率いた英雄『光武帝・劉秀』によって滅び、その光武帝が打ち建てた後漢が中華を治めておよそ100年以上の月日が流れた頃…。
時は西暦170年…元号では建寧と呼ばれ、後漢王朝は劉宏が十五代皇帝として統治していた。その中華は司隷河東郡陽県にある町の鍛冶屋で二人の男性が鍛冶作業に集中していた。黒の短髪に薄紅色の瞳、薄い顎鬚を生やしている壮年の男性は熱される事で真っ赤に焼けた鋼を金床に置き、手にした金鎚を振るって鍛え続けていた。鎚が振るわれる度に響く甲高い音は、まるで雅楽を思わせるほどに小気味いい。
そして黒の短髪に濃紫色の瞳をした7歳くらいの少年は、恐らく壮年の男性が作ったと思われる槍の穂先を砥石で研ぐ作業を行っていた。槍の穂先を砥石に当てて研ぐその姿は下手に声を掛けられぬほどに真剣そのものであり、その穂先もその真剣さに応えるかのように鋭さを増して行った。
やがて…壮年の男性が作業を終えて額から流れる汗を拭うと、同じ作業場で研磨の作業をしている青年に声をかけた。
「…そろそろ昼か。
「分かったよ、父上」
そう言うと少年…壮也は磨き上げた槍の穂先を同じく研磨した物が入っている箱に納めると、父上と言った壮年の男性と共に鍛冶場から離れた。
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その鍛冶場から少ししか離れていない場所にほどほどの大きさの家がある。そこでは濃紫色のロングヘアーに紫色の瞳をした妙齢の女性が食事支度を行っていた。そして家の中では4歳ぐらいだろうか?薄紫色のミドルヘアーに紫の瞳をした少女が箸などを用意している姿が見られた。
「母上…終わったよ?」
「ありがとう香風(シャンフー)、それじゃあお父さん達を呼んできてくれるかしら?」
「うん、分かった…!」
そう言って香風(シャンフー)と言う名の少女が扉の方に近づくが…その直後に扉が開いて先ほど鍛冶場で作業をしていた二人の男性が入ってきた。
「あら、お帰りなさい弧月(コゲツ)。作業は終わったの?」
「ああ、一区切りついたから昼にしようと思ったのだ。…今帰ったぞ麟華(リンカ)」
「…ええ、お帰りなさい。壮也もご苦労様」
「ただいま、母上。香風(シャンフー)も母上を手伝ってたのか?偉いぞ…!」
「…うん、頑張った///」
壮也が香風(シャンフー)の頭を撫でると、彼女は顔を赤らめながらも誇らしげに胸を張った。
「うふふ…それじゃあ食事にしましょうか?」
「ああ。壮也(ソウヤ) 、香風。早く座りなさい、食事が冷めてしまうぞ?」
「分かってるさ。行こう香風」
「うん…!」
そうして家族団欒の食事が始まったのである・・・。
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さて、お気づきかもしれないがこの壮也と呼ばれた青年こそ、太上老君から
父は姓は徐、名は岳、字は銀明、真名は弧月(こげつ)。生まれも育ちも河東郡で、その土地において鍛冶師をしながら生計を立てている。かなりの腕前を誇る鍛冶師であり都・洛陽にまでその名前は知れ渡っていた。
母は姓は朱、名は寧、字は良安、真名は麟華(りんか)。彼女は元は漢王朝に仕えている『朱儁』の妹に当たる人物であり、武芸に長けた人物として周囲に知られていた。だがある時自らの得物である槍を鍛えて貰おうと河東郡陽県に居を持つ腕のいい鍛冶師…即ち徐岳の噂を聞きつけて彼の元へ向かい、そこで当時ではありえないと言える『一目惚れ』をしてしまう。
彼女の事を知った朱儁は妹の幸せを祝福しようと思っていたが、彼女の両親は『鍛冶師などと言う下賤な男と付き合うのは罷りならん!!』と言う猛烈な反対を行う。すると彼女は『そうですか…ならばこれより親子の縁を切らせてもらいます!』と毅然と言い放ち、呆気にとられた両親と驚きを露わにした朱儁をしり目に遁走。そのまま河東郡陽県の徐岳の家に押しかけ女房と言う感じで居ついてしまった。
当然最初こそ弧月は『両親の言う事も最もだ、鍛冶師の自分と諫儀大夫の姪であるお前とでは釣り合いが取れない…なら他によい名家の御曹司と結ばれた方が両親も喜ぶし、お前自身の為にも良いのではないのか?』と説得するも『私は貴方の事を好きになったからここにいるんです。今更他の家柄だけの男と付き合う気にはなりません』と答えて取り合わず、後に徐岳の家に押しかけた彼女の両親の言葉も耳に貸さない始末。とうとう彼女の両親も根負けすると二人の結婚を認め朱儁が仲人になり、二人は夫婦となった。
そうして西暦163年…二人の間に生まれたのが姓は徐、名は来、字は芳明。真名は壮也…即ち転生した『柳瀬壮也』本人である。さすがの彼も再び生を受けた事には最初こそ心の中で驚いていたが、それも最初まで。再び手にした第二の人生を精一杯に生きようと決意し、両親の慈愛を受けながらすくすくと育った。この時壮也は両親から
そして壮也が3歳の頃、彼に妹が出来る。そして名付けられた名前には表向きは平然としていたが、内心驚きを隠せなかった。姓は徐、名は晃、字は公明、真名は香風(シャンフー)…それは『三国志』の小説やTVゲームなどをやった事のある壮也にとっては、非常に耳にした事のある名前だったからだ。
三国志の英雄の中でも飛び抜けた知名度を誇る大英雄『関羽・雲長』と同じ出生国の人物であると同時に卓越した戦上手として知られており、かの曹操をして『孫武や司馬穰苴にも勝る名将よ!!』と絶賛されたほどの人物である。そして同時に樊城の戦いにおいて関羽と対峙した際、劣勢から切り抜ける為徐晃に対して友好を持ちかける関羽に対し『貴公との友誼は私事、なれど主君からの命は公事なれば!!』と毅然とした態度でこれを拒絶した事もある大斧の扱いに長けた忠義の勇将…多少ゲームなどをやっていた事から私的な考えもあっただろうが、それが壮也が徐晃に対して思っている感想だった。
しかし、三国志の武将が女性として生を受けているのが『恋姫』の世界である事は知っていたが…よもや彼女も女性、そして自身の妹としてこうして会う事になろうとは。壮也は内心そう思っていたものの、彼は彼女の事を妹として可愛がった。そして香風もまた壮也の事を兄として慕う様になり、二人の両親や陽県に住む人々からも仲の良い兄妹として知られるようになった。
そうして兄妹仲良く過ごす一方で父である徐岳の仕事姿を見続け、5歳になった頃に父親に自分にも手伝わせてほしいと頼み込んだ。初めこそ弧月は息子である壮也が自分の仕事をやりたいと言って来た事に、自身の家業を継がせられる事への嬉しさを覚えたものの、時には人の命を奪う武具を作る事もある鍛冶師の仕事を継がせたくないと言う想いから渋っていたが、壮也自身の固い決意と妻である麟華の口添えもあり簡単な手伝いから始めるという条件で壮也にも鍛冶師の仕事を手伝わせ始めたのである。
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そしてそれから2年…壮也は父から鍛冶に必要な炭を買いに行ったり、道具の片づけと言った下仕事などを手伝う日々を過ごした末に、数日前から研ぎの仕事を手伝う事になったのである。
「しかし驚いたな…俺のやっている仕事を見続けていたのもあるのかもしれないが、まさかこの数日でここまで見事に研ぎ仕事をやってのけるとは…」
食後、そう切り出した父・弧月は鍛冶場から持ってきた二本の槍の穂先(一本は弧月自身が研いだもの、もう一本は壮也自身が研いだもの)を卓上に乗せる。よくよく見れば確かに壮也が研いだ槍の穂先は弧月が研いだものよりも遥かに鋭く磨かれており、これだけでも壮也の力量が高い事が窺えた。
「うわぁ…兄上、凄い」
「そうね。壮也、頑張ったわね…。弧月、うかうかしていると壮也に追い越されちゃうわよ?」
「はっはっは!そう簡単に追い越させはしないさ、それが親の務めだからな。だが壮也…お前に聞いておきたい事がある」
「父上、何だ…?」
「お前は……俺と同じ鍛冶師になりたいと言ったな?それはいい、だが…そうしてお前は武具を作ったとしよう、それでお前は一体何がしたい?何のために武具を作るのか、それを教えてくれ」
父・弧月の言葉に壮也は暫し黙っていたが、やがて自らの想いの内を言葉にした。
「俺は…俺の作った武具で大切な人を護りたい。父上や母上、妹の香風や村人の皆を……」
「…そうか。なら覚えておけ壮也、武器と言う物には善悪は存在しない。それを決めるのは…それを振るう人間にあるのだ。武具を手にした者がそれを己の我欲のままに、他者を傷つける事を斟酌せずに振るえばそれは悪となるだろう。だが…それを他者を、自身が大切にしたいと思う者を護る為に振るえばそれは善となる。しかし悪と言うのは己にとっての善を貫こうとするという側面も持つ。そして善と言うのは必ずしも正しい事とは限らない。何が正しく何が悪いのか…それを悩みつつも歩むのが人生と言う物。それを心に刻みつけておけ…」
「…ああ。分かったよ、父上」
「うむ…では明日からお前にも本格的な鍛冶師の修練をさせるとしよう。…それはそうと、そろそろ武芸の鍛錬の時間だろう?
「っ!そんな時間か…じゃあ行ってくる!行くぞ香風!」
「あっ、待って兄上…!」
壮也が壁に立てかけられた黒の木根を手に家から飛び出すと、妹の香風も同じく壁に立てかけられた白の木根を手にし、兄の後を追いかけて行った。その二人の姿を麟華は暫し見送っていたが、やがて弧月にこう語りかけていた。
「…弧月、まだあの子にその話をするのは早すぎるんじゃないかしら?」
「鍛冶師と言うのは時に血濡れた武具を作る必要のある生業だ。その道は平坦でない事を知っておいた方がいい。それに…近頃都でもきな臭い出来事が多くなっている」
「ええ…党錮の禁以来、宦官達が意のままに国を動かしているらしいし、野盗達も見られるようになったって聞いてるわ」
「…恐らく、漢王朝も終焉に近づきつつあると俺は思っている。『熟した果実は腐って落ちる』物、近づきつつあるのだろう。争乱の兆しが…」
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弧月と麟華が話し合っている頃…壮也と香風は陽県の町の外れにある邸宅に向かっていた。
「ねえ兄上…お姉ちゃん、もう来てるのかな?」
「だと思うな…あいつ、結構きっちりしてるからなぁ……」
そう呟きながらその邸宅…陽県の村長を務めるのと同時に武術の鍛錬を行う老師が子供達を相手に武術を教える邸につくと、その門前で
「っ!来たかー!香風、壮也ー!」
「悪い、待たせちゃったな
そう言って壮也は目の前に立つ黒髪を靡かせた少女…愛紗に謝っていた。
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転生を果たし、新たな生を歩む少年は一人の少女と武を磨き合う。近づきつつある争乱に備える為に…。続きは次回のお楽しみ。
とりあえず脳漿を絞り尽くした末に書いてみました…。正直、他の作者さんの作品を見た後でこれを見ると、他の作者さん達の力量の差を垣間見てしまった様な気になり、憂鬱になってしまいます…。
同じ恋姫の小説を書いている作者さんから見れば稚拙な作品かもしれませんが、感想やご指摘などを聞かせてくださると嬉しいです…。では…。