真・恋姫†無双~転生記~   作:ふかやん

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どうも、お待たせしました…最新幕投稿です。


主従誕生

 臥牛山にある、人目に付かない様に作られた野営地。そこが汝南郡を中心に名前を轟かせている『韋駄天・周倉』が頭を務めている山賊達のねぐらなのだが、今その野営地に関羽は招かれていた。

 

 

 粗末な床几に座らされ顔をしかめている関羽の前には、恐らく山野で仕留めたと思われる猪を捌いて作った骨付き肉を初めとした料理が並べられ、その料理の向こう側では頭目である周倉と、副首領を務めている斐元紹。そして彼女達に従っている山賊達が平伏していたのである…。

 

 

「え、えっと…遠慮しないで食べてください!長旅で疲れているでしょうし、なんなら今夜はここに一泊してくださっても結構です!」

 

 

「いや、そう言われても困るのだがな…。確か…周倉、だったか?」

 

 

「は、はい関羽様!何か質問でしょうか!?」

 

 

 周倉がそう溌剌とした声で答えたので、愛紗はため息を一つ付きながら切り出した。

 

 

「…何故そなたらは山賊だというのに私をこうまで歓待するのだ?そもそも私は襲われそうになっていたのだが…」

 

 

 愛紗がそう問いかけると、周倉は驚いたように目をぱちくりさせた後天を仰ぎながら頭に手を当てた。

 

 

「あちゃー…そうだったんですか?えっと、ご気分を害しちゃったのならお詫びします。私達一応義賊として活動しているんですけど…やっぱり仲間が集まれば当然食べ物とかも必要になっちゃうし、かといって名目上は義賊として動いている以上奪った金品を丸ごと自分達の物にってのは出来ないんで…それで旅の武芸者とかに狙いを定めて通行料とかとったりして過ごしているんです」

 

 

「旅の武芸者を、か…」

 

 

「はい…旅の武芸者って諸国を巡りながら用心棒とかして路銀を稼いでいるでしょ?中には結構貯め込んでいるがめつい奴とかもいるし、強盗まがいな事をしてる奴らとかもいるんで…」

 

 

「…成程な。ふむ、襲われた理由は分かった。だがもう一つの質問には答えて貰っていないぞ。何故そなたらは私をこうまで歓待する?」

 

 

 愛紗が鋭く切り込む様に質問を投げかけると、その覇気に気圧されながらも周倉は勇気を出して声を発した。

 

 

「わ、私…ずっと関羽様の様な英雄に仕えたいと思っていたからです!」

 

 

「………何?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 思わぬ答えに愛紗が呆気にとられる中、周倉は今までの事情を包み隠さず話し始めた。

 

 

……周倉が生まれたのは関西地方、すなわち中華における西方、涼州であった。土地柄も貧しい上に匈奴や鮮卑と言った五胡の跳梁が著しい土地で育ってきた彼女はいつも夢見ていた。

 

 

―いつか、この麻の如く乱れた日々を終わらせて、人々が穏やかに、安らかに暮らせる日々を齎してくれる英雄に仕えてみたい。

 

 

 それが周倉が長らく切望してきた願いだった。物心ついた頃には両親が無くなり天涯孤独となっていた彼女は、幸いにして武勇の才を持っていた事から武人として身を立てる事は出来たのだが、兵法などを駆使する事はからっきしであった為、自身の夢である『英雄』にはなれないとも痛感してもいたのだ。

 

 

 その為一時期は当時涼州で勢力を持っていた『韓遂』に仕官してみたのだが…涼州の覇権争いを続けつつ、中央への反乱を繰り返す事しかせず、涼州の民を安んじる気配を見せない韓遂に心服できず、彼の元を去る事になった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「…韓遂様も何とかしようとはしてたんでしょうけど、私には馴染めなかったんです。それで私はあの人の元を離れた後、故郷を後にしました。私達の故郷を救える様な、英雄を探す為に」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 そうして諸国を巡る流浪の武芸者になった周倉であったが…諸国を巡る様になって分かってきたのは、中原の地が自分の故郷である涼州以上に人々が苦しい暮らしをしていたという事だ。飢饉や天災によって作物が取れないにも拘らず税を納める様に民を虐げ、一方で民百姓らが苦しんでいるというのに贅沢に溺れる役人達。そしてその役人達に媚び諂い賄賂を献上して私腹を肥やそうとする悪徳商人…。

 

 

 そんな連中を見ている内に、彼女はある決心をする。

 

 

ー自分がしようとしている事は一時しのぎにすらならないかもしれない。それでも、強欲な者達から財貨を奪い苦しんでいる人々に分け与えよう…!

 

 

 …決意をした彼女の行動は早かった。最初はたった一人で悪徳商人が貯め込んだ財貨を賄賂として運ぼうとする一団を襲撃して財貨を強奪し、追撃をされた時は武芸以外で自慢できる脚力で逃げ切り、そして別の土地に逃げた後に奪った財貨を貧しい人々に分け与え、自分は流れの武芸者などに勝負を挑んで路銀を巻き上げたりしながら日々を過ごしている内に同じ様に役人達によって苦しめられてきた事に不満を募らせていた斐元紹達と出会い、盗賊団として行動する様になっていた。

 

 

 そんなある時、周倉は他の悪徳商人や悪徳役人らの情報を探ろうと、素性を隠して町に向かったのだが…そこで一人の占い師に会う。その人物こそ、近頃噂に名高い管輅その人だった。周倉は占いにはあまり興味が無く彼女の前を素通りしようとしたのだが、その彼女に対し管輅は制止するように呼びかけた。

 

 

「お待ちなさい、そこの御仁」

 

 

「えっ、何か用…?」

 

 

「貴方…名のある英雄に仕えたいと思っておいでですね?」

 

 

「っ!?そ、そうだけど…何でわかったの!?」

 

 

 周倉は驚きを隠しえない感じで動揺していると、管輅は微笑みながらこれに応えた。

 

 

「だてに占い師を務めてはいませんから…。さて、それについてですが…貴方の願いは必ず叶います。いずれ貴方は世に知られる、義を重んじる英傑の臣下となる事でしょう」

 

 

「そ、それっていつになるの!?どんな人!?」

 

 

 彼女は目を輝かせながら、食い入るように彼女に詰め寄るが管輅は掌を前に出しながら落ち着く様に声をかける。

 

 

「落ち着いてください。…いつになるか、は分かりません。ですが…黒髪をし、『関』と言う姓をお持ちの御仁を待ちなさい。彼女は今流浪の武芸者ですが、相応に名を馳せています。私から言える事はこれで全てです」

 

 

 そう言うと管輅はそのままふらりと立ち去って行くとそのまま人混みに紛れたかと思った直後、姿を消したのである…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 そうして義賊として行動しながら過ごしていた周倉は、やがて一人の武芸者の噂を聞く様になる。

 

 

ー弱きを助け、強きを挫く。黒髪を靡かせ青龍偃月刀を縦横無尽に振るうその武勇により河東の地には一人の賊も近寄る事が無くなった。同じく河東の地で勇名をとどろかせ、愛する人を護る為に十常侍の頭目・張譲の親族を殺めて故郷を出奔した『大斧の勇士・徐芳明』とは双璧とまで称される『黒髪の女傑・関雲長』…!

 

 

 その名を聞いた時、周倉は内心小躍りする程嬉しかった。あの時管輅が教えてくれた占いが、正しかったのだと改めて認識したからだ。関と言う姓もそうだし、何より弱きを助け強きを挫くという、言葉にするのは容易いがそれを実践することほど難しいと言える事を率先して行うとなれば、もはや疑いようもない。この人になら、自分の持てる力の全てを捧げても惜しくない…!そう思いながら彼女に会える日を楽しみにしていたのである。

 

 

「そ、そして今!こうして関羽様に会う事が出来たんです!!ま、まあその…出会いは最悪だったかなーって思ってます、けど…(*'-'*)エヘヘ」

 

 

「…成程、お前の事情は聞かせてもらった。それで、私に仕えたいというのか?」

 

 

「は、はい!私、ずっと関羽様の様な英雄に仕えたいと思っていたんです!どうかお許し願えませんか!?」

 

 

 周倉はそう言いながら平身低頭、頭を地面に擦りつけて懇願し始めたのだが…愛紗の方は心中穏やかではなかった。

 

 

「…周倉。私はな、昔両親を賊の襲撃によって失った」

 

 

「え…」

 

 

「生まれ故郷を護る為に戦って…そして二人は死んだ。もちろん原因は当時私の故郷の県令を務めていた張朔と言う男が、兄である張譲に賄賂を贈らなかった事で賊を差し向けられた事にあるが…直接的には、私の両親は賊によって奪われたのだ」

 

 

「………」

 

 

 訥々と語る愛紗に、周倉は一切言葉を挟む事無く聞き続けた。

 

 

「無論、お前達がそうした者達とは違うというのは分かっている。だが、賊を生業としてきた者に仕えさせてほしいと言われても、容易に信じる事は出来ない。それは分かっているだろう?」

 

 

 愛紗の突きつけるような言葉に、周倉は黙り込んでいたが…やがて明るくしながらも意を決したかのように答えた。

 

 

「……あ、あはは。確かに返す言葉もありません…関羽様の言うように、私は賊として生きてきました。義賊なんて名乗っていても、誤魔化し様もありませんし。け、けど…それでも正道に立ち戻って、世の為人の為に尽くしたいって思う気持ちは、嘘偽りもありません!」

 

 

 そう言って周倉は平伏して関羽に請うた。

 

 

「お願いします…!どうか、私を関羽様のお供として付き添わせてください!虫のいい願いだとは分かっていますが、それでもお天道様の下に大手を振って歩けるような人間になりたいんです…!」

 

 

「………『わ、私からも…お願いします』っ!?」

 

 

「す、鈴蘭ちゃん!?皆も…!」

 

 

 周倉の懇願に愛紗が黙していると、唐突に第三者の声が響く。それに愛紗が驚き視線を声の方の向くと、周倉と共に賊をしていた斐元紹が頭を擦り付けながら平伏しており、それは子分たちも同様だった。それを見て周倉も驚いていた。

 

 

「も、紅葉は…周倉はずっと人々の為に戦いたいって言って義賊をしてきたんです。私達も元々は、その日を過ごすにも事欠く様な貧しい暮らしをしてきて、紅葉が皆の為に戦おうって呼びかけに応えて私達も加わったんです。それでいつも、関羽様の様な人々の為に戦う英雄の力になりたいっていつも聞かされて…どうか、紅葉のお願いを叶えて貰えませんか!?お願いします…!」

 

 

「あっしらからもお頼みします。どうかお頭を家来として迎えて下せえ!」

 

 

「皆…」

 

 

 それぞれが自分に味方する様にして擁護してくれる仲間達を見て周倉は涙ぐんでおり、愛紗もそれを目にした後しばらく瞑目して考え込んでいたが…やがて溜息を一つつくと切り出した。

 

 

「……はあ、分かった分かった!ここで断ったら地の果てまでも付いて来そうだからな…いいだろう」

 

 

「ほ、本当ですか…!?」

 

 

「ただし、分かっているかもしれんが私は未だ浪々の身だ。連れて行けるのはお前だけだ周倉」

 

 

「えっ…?皆は、連れて行けないんですか…」

 

 

 愛紗の指摘に周倉は落胆を隠しえないという感じでいたが、愛紗はそれに心を揺らされる事無く続ける。

 

 

「当然だろう。それが絶対条件だ」

 

 

「………『紅葉』鈴蘭ちゃん?」

 

 

 頭を垂れて残念に思っている周倉…その肩を斐元紹が叩いていた。

 

 

「行っておいでよ紅葉。私は…ううん、私達は喜んで紅葉を見送るよ」

 

 

 そう言うと子分たちもそれぞれに声を上げて応えた。

 

 

「そうですぜお頭!お頭がいなくなったとしても、俺達はお頭が掲げてきた義賊の旗を穢す事はしませんぜ!」

 

 

「どうかご武運をお頭!韋駄天周倉の名、天下に轟かせて下せえ!」

 

 

「み、みんなぁ…」

 

 

 その応援に周倉はぽろぽろと涙を流しながら嬉しそうにしていたが、それに愛紗が溜息をつきながら訂正をした。

 

 

「待て待て…今生の別れと言う訳ではないぞ?いつになるかは分からないが、いつかは私も誰かを主として仕える日が来るだろう。そうなったらお前達も私の元に来い、そうすればお前達を召し抱えてやる。だから安心しろ…!」

 

 

 その言葉を聞いて一番喜んだのは、周倉だった。

 

 

「ほ、本当ですか!?皆喜んで!関羽様は私達を家来としてくれるって!」

 

 

 その言葉に、臥牛山は歓喜の渦に包まれたのは言うまでもない…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 翌日、愛紗と周倉は臥牛山に残る事になった鈴蘭と子分たちの見送りを受けながら山を発った。

 

 

「全く…まさかああも熱烈な見送りを受ける事になるとは思わなかったな」

 

 

「あはは、皆も根はいい人達ばかりですから。…それじゃあ、これから宜しくお願いします関羽様!関羽様の行くところ、この周倉どこまでもお供しますんで!」

 

 

 周倉が胸を叩きながらいかにも自信満々、と言う感じで宣言するのを見て、愛紗は微笑みを浮かべながらこれに応えた。

 

 

「ああ、期待しているぞ。…そうだ、忘れていた事がある」

 

 

「え…?な、何ですか急に?」

 

 

 愛紗の言葉に、先ほどとは打って変わって不安そうにしている周倉に苦笑しながら、愛紗は彼女に語りかけた。

 

 

「愛紗…それが私の真名だ」

 

 

「…………へっ?」

 

 

「何を呆けている?私達は主従になったのだろう?なら、互いの真名を預けない主従などいる筈がないだろう?…おかしいか?」

 

 

 その問い掛けに対しても、周倉は暫く返答も何もできずにいたが、やがて喜色満面と言う感じで顔を綻ばせると、そのまま畏まりながら名乗りを上げた。

 

 

「…いいえ、いいえいいえいいえ!!私を従者として、真名を預けてくれたのなら私もそれに応えてみせます!私は涼州は関西の生まれ。姓は周、名は倉!字はありませんが真名は紅葉です!この命尽きるその時まで、駆けて駆けて駆けまくって、愛紗様を支えてみせますよ!」

 

 

 その元気一杯と言う自己紹介と宣言に苦笑しながら、愛紗は新しい旅の共が出来た事に心の中に嬉しいと思っているのを感じ取っていた。

 

 

 ……後の世に『軍神』とも『義将』とも称される事になる関雲長と、その一の従者として名を残す事になる『韋駄天』こと周倉。こうして二人は主従として旅をすることと相成ったのである。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 さて、愛紗が紅葉と言う従者を得て旅を続けようとしていた頃、彼女が探し求めている相手である壮也はと言うと…。

 

 

「………うぷっ」

 

 

 船の縁から身を乗り出しながら気持ち悪そうにしていた。そんな壮也に船頭の男が心配そうに見ながら近づいてきた。

 

 

「おいおい大丈夫かいお前さん?」

 

 

「す、済まない…どうにもこの船の揺れは慣れそうにないんだ。船頭さん、暫く迷惑をかける…」

 

 

 そう気分を悪そうにしながら返答をした壮也に対し、船頭の男は苦笑しながら背中をさすってやった。

 

 

「成程…お前さん北から来た人間だな?確かに船に慣れねえってのも無理はねえか…暫く船底で横になってなよ」

 

 

「…感謝する」

 

 

 そう言って壮也は甲板から船底に向かって下りて行った…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 さて、壮也は今どこにいるのか?彼は今荊州から船を使って揚州に向かって旅をしていた。そして壮也は北から来た人間として『船酔い』と言う洗礼も受けていたのである。

 

 

 『南船北馬』と言う言葉がある様に河東郡と言う洛陽に程近い土地であっても華北に生まれた壮也にとって馬の扱いは慣れており、実際馬に乗って戦う事も得意ではあるが船に乗った事はこれまであまりなかった。正確に言えば渡し船の様な物には乗った事はあるのだが、中華における2大河川の一つである長江を渡る様な大船に乗ったのはこれが初めてだったのだ…。

 

 

 しかし船酔いに悩まされながらも、壮也は揚州に向かう事を心に決めていた。と言うのも、揚州には彼にとって会ってみたい人物がいたからである。

 

 

「…これしきの船酔いでへこたれてはいられない。何としても会ってみたいんだ、孫武の子孫を名乗る…江東の虎に。…うぷっ」

 

 

 しかしそう堅い決意を示しながらも、再び吐き気を覚えて甲板に出ていく壮也を、黒風は溜息をつきながら見送った…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 船酔いに悩まされながらも揚州に割拠する英雄である孫堅文台の元を訪れようとする壮也。一方孫呉では荊州に割拠する黄祖との戦いが繰り広げられており、江東の虎を亡き者にせんとする暗躍がはびこっていた…続きは次回の講釈で。




『南船北馬』

 《中国の南方は川や湖が多いので船を用い、北方には平原や山野が多いので馬に乗るというところから》絶えず旅していること。各地をせわしく旅すること。

 この語の具体的な出典,また一般的にいわれだした時期についても不明である。漢代の《淮南子(えなんじ)》に〈胡人は馬を便利とし,越人(今の浙江地方の人)は舟を便利とする〉とあるので,これが一つの出典といえるかも知れない。
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