幸い…と言っていいのかは分からないのですが、苦しむ事も無く、眠るように息を引き取ったそうです…。
暗い話を長々と書いて申し訳ありません…最新幕、どうかご覧ください。
関羽や曹操と言った英雄達が凌ぎを削った三国時代から遡り、春秋・戦国時代の中国に一人の兵法家がいた。その名は、
戦国七雄の一つに数えられた斉の生まれであり、後に呉に渡った彼は復讐者として名を残す
これを経て将軍になった彼は伍子胥と共に当時大国であった楚をあわや滅亡させる寸前まで追い詰めてみせ、孫武の名は中原に轟き、将軍としても大いに名を残した。
また軍略と政略を説いた兵家の一人であり、彼が著した書物『孫子』は後世の武将などは必ずと言っていいほど熟読するほどであり、日本の戦国武将の一人で甲斐信濃に割拠した『武田信玄』などは自身の軍旗に孫子の一節である『風林火山』を取り入れ、さらに時代が下り遠くヨーロッパはドイツにおいて、第一次世界大戦で敗北し帝位を追われたヴィルヘルム2世はこの孫子を読んだ際『あと20年早くこれを読んでいれば…』と後悔するほどだった。
この孫武の子孫で代表的なのは、戦国時代に斉の国で活躍した孫臏が有名であるが…時代が下った後漢時代、一人の武将が現れる。彼は自らを『孫子の末裔』であると自称するが、その目覚ましい活躍をした事からやがて誰もがそれを信じる様になる。それこそが孫策・孫権の父である孫堅・文台その人である。
海賊退治等で名を馳せた人物であり、三国志演義では暴れている海賊の船に堂々と乗り込むとその頭を一刀のもとに切り殺し、他の海賊達も蹴散らして船を乗っ取ったという話もある。
また正史三国志でも海賊が略奪を行なっている状況に遭遇した彼は、見晴らしの良い位置に立ち、あたかも大軍を指揮して、海賊を包囲殲滅するかのような身振りをし、それを見た海賊たちは大軍が攻めてくるものと勘違いし、我先にと逃げ出してしまったと伝えられている。
そして、この世界における孫堅もまた大いに武を以て名を馳せる女傑であった…。
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「おらてめえら、気合を入れて相手を殺せ!!オレ達の故郷で好き勝手する奴らなんざ、一人たりとて生かして帰すんじゃねえぞ!!」
そう言いながら手にしている自身の得物であり、孫呉に代々伝わる名剣たる『南海覇王』で敵を切り伏せる褐色の肌に薄紫色の髪を靡かせ、真紅の装束を纏った女性…彼女こそ江東の地に割拠する孫家の長であり、人々からは『江東の虎』と称される女傑・孫堅文台である。
彼女の荒々しい、猛虎を髣髴とさせる戦いぶりに感化されたのか他の兵士達も競う様に敵軍に襲い掛かって行く。それを見た彼女も負けじと前に出る為足を運ぼうとして、後ろから来た二人の女性ー金の光沢を放つ長弓を背負い、薄紫色のポニーテールをした褐色の肌を持つ女性と、刃が波打っている穂先をした矛を手にした水色のロングヘアーをした、白い肌を持つ女性ーに呼び止められた。
「大殿、出過ぎですよ!戦いの趨勢は私達に向いているとはいえ、何が起こるか分からないんですからね!」
「粋怜の言う通りですぞ堅殿!無理もほどほどに為されよ!」
そう止められた彼女はたちどころに不機嫌そうに顔をしかめ、舌打ちをしながら振り返り、自身の青い瞳で呼びとめた二人を睨み付けた。。
「たくっ!いい所で水を差しやがって…俺が大将なんだから、俺が前に出ねえでどうするってんだ!?」
「それはそうですけど…
粋怜がそう言うと、途端に孫堅は心底嫌そうに顔をゆがめたのである。どうやらよほどこの真耶と言う相手が苦手らしいのか、深く溜息を一つつくと踵を返した。
「…はあー、分かった分かった!下がればいいんだろう下がれば!?ったく、お前らずるい手に出やがったな?祭、粋怜!」
「それがいいですぞ堅殿、あ奴の小言はこの大陸でも並ぶ者がいないですからな」
「仕方ないでしょう大殿!?大殿を止めるなんて事、彼女ぐらいしか出来ないんですから!」
そう言い合いながら三人は彼女達が陣取っている野営地へと戻って行った…。
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「大殿ぉ!!また一人で突出してたんですかぁ!!?」
本陣に戻った孫堅だが、そんな彼女にいの一番に駆け寄ってきたのは緑色のボブカットをし碧色の瞳をした、眼鏡をかけている女性だった。その身を真紅の、胸元に『韓』と言う文字が刻まれている甲冑を纏っているが、それでも目を引くほどの身体を持っている…。
「ったくうるせえなぁ?戦はオレ達が勝ってたんだ、命の心配なんぞ起こるかよ?第一武門の家柄である孫家の長であるオレが後ろで縮こまっているようじゃ、誰が付いて来るってんだよ!」
そう言って孫堅は不機嫌そうに文句を垂れるのだが…それを吹き飛ばすかのように彼女は捲し立てた。
「な、何言ってるんですかぁ!!前から言っていますけどねぇ!?大殿の身は大殿一人の物じゃないんですよ!?大殿の身に何かあれば、この孫家と言う軍はバラバラになり兼ねないんです!!幾ら武門の長だからと言って、端武者の様に突き進むなんて事はもう自重してくださいよ!!もし…もし大殿の身にもしもの事があったら、私は…私はぁ…」
そう言おうとした女性の瞳からは大粒の涙がボロボロと溢れ始めるのだが…当の孫堅はと言うと。
「分かった分かった、次からは気を付けるって。んじゃあな」
「って大殿ぉ――――!?」
そう言って話を打ち切ると本陣の陣幕へと入って行ってしまったのである…。それを見た女性は膝から崩れ落ちて頭を垂れ、俯いてしまった。
「やれやれ…お主の諫言も右から左へ筒抜けみたいじゃのぉ?」
「ええ、そうね…。大丈夫
それを見て孫堅と共に戻って来た二人が俯いた女性に声をかけると、女性は涙を拭いながら立ち上がった。
「だ、大丈夫じゃないですよぉ…!どうして大殿は聞き入れてくれないんですか!?家臣として炎蓮様の身を案じているだけなのにぃ…」
「まあ仕方あるまい?あれでも前までは、諌められようと構わず前へ前へと向かおうとしておったからのぉ?それを思えば近頃の堅殿は大人しくなった方じゃぞ?」
「そうねぇ…?これも真耶がこれでもかって位に大殿を諌め続けたおかげ、って奴かしら?雷火様にも引けを取らない諫言だったものねぇ」
「…っ、褒められても嬉しくないですよ
「…ま、まあ気を病むでない!!後で一杯飲もうぞ!?なっ、なっ!!」
「そ、そうよ真耶!嫌な事も飲んじゃえば忘れられるわよ!」
落胆して憂鬱そうに顔を陰らせる真耶に祭と粋怜は慌てて元気づけようとするのだった…。
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さて話は変わるが、この三人こそ後に三国志が一角である孫呉の宿老として語られる武将達である。
まず薄紫色のポニーテールをしている、『祭』と呼ばれた女性。彼女は姓を黄、名を蓋、字を公覆…この名前を聞くと、三国志の小説や漫画を読んだ事のある読者方は覚えがあるのではないだろうか?
そう、三国志で有名な戦いの一つである『赤壁の戦い』、その戦いに於いて『苦肉の策』を以て曹操軍を欺き、勝利の立役者となった武将である。正史三国志においても孫呉三代に亘って仕え、法令に厳格な処罰を行ないつつも、強きを抑えて弱きを助ける統治を行い、さらに孫呉と長らく敵対していた異民族である『山越』までもが信服したと伝わっている人物としても知られている。また三国志演義では『鉄鞭』を愛用していた事でも有名である。
次に水色のロングヘアーをした『粋怜』と呼ばれた女性。彼女の姓は程、名は普、字は徳謀。黄蓋と同じく孫呉三代に亘って仕えた武将であり、三国志演義では『鉄脊蛇矛』という矛を愛用していたとされ、正史三国志においては気前がよく他人に施しをよくし、士人とも親しく交わった程普を、孫呉の武将達は『程公』と呼んで尊敬したとされる。また若くして台頭した周瑜とは折り合いが悪かったが、後に彼の人柄と能力を認め尊重するようになったと史書には記されている。
そして最後の緑のボブカットをした、『真耶』と呼ばれた女性。彼女の姓は韓、名は当、字は義公。前述にある黄蓋、程普と共に孫呉三代に仕えた武将である。
この武将は孫堅らと違い、程普と共に中国は北方…幽州出身の武将だった。三国志演義では大刀を奮う勇敢な武人として描かれ、正史三国志においても弓馬の道に優れた武将として描かれた。そして前述の2名と共に孫堅、孫策、そして孫権の孫呉3代に仕えた宿将として名を馳せた。また三国志演義において、夷陵の戦いが起こった際に自分よりも若い武将であった陸遜の下で戦う事に不平不満を漏らすも、それを陸遜に咎められた事でも有名である。
だが正史において孫呉と幾度も無く干戈を交えた異民族である『山越』がその武威を恐れて従順になったとされるだけでなく、地方で軍の指揮を執る時は、将兵を励まし一致団結して守りを固め、また中央からの目付の意見にはよく従い、法令を遵守したので、孫権に信頼されもした武将でもあった。
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「ったく…真耶の奴はうるさいったらありゃしねえ。雷火の奴も大概だが、あいつはそれ以上だな…」
一方本陣の陣幕に入った孫堅はそう愚痴をこぼしながら、愛剣である『南海覇王』を陣幕にいた白い肌をし黒いロングヘアーをしている、鋭い目つきをした女性に預けて中にある椅子に腰かけた。
「大殿、また真耶のお小言を受けましたかな?」
「当たり前だろ?はあ…江東の虎って呼ばれていながら情けねえこった。臣下のお小言を聞きたくなくて本陣に戻ったなんて噂になりでもしたら恥ずかしくて町も歩けねえよ…」
そう答えながら大杯を呷る孫堅だったが…やがて剣を持っているその女性は真摯な表情で彼女に意見した。
「恐れながら大殿、どうか真耶の事を邪険になされぬよう。あいつもまた大殿に仕える臣下の一人として、何よりも孫呉と言うこの国を護りたいという一心があるからこそ、大殿の身を案じてあの様に諫言をなさるのですから」
「…んな事は分かってるさ。お前も余計な事を言うよな、
孫堅がやれやれといった感じで答えると、千冬と呼ばれた女性は微笑みながら頷きつつ答えた。
「臣下として為さねばならぬ事を為したまでの事」
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彼女もまた孫堅に仕える宿将の一人で、姓は祖、名は茂。字は大栄と言う。他の三名と違ってあまり活躍を為した武将ではないが、反董卓連合において窮地に立たされた主君・孫堅を救う為に彼が被っていた頭巾をかぶって身代わりとなった逸話を持つ。また三国志演義では二刀流の使い手であるという設定が盛り込まれている。
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その後しばらく談笑していた二人であったが、やがて真顔になった千冬は徐に問いかけた。
「しかし大殿、此度我らの土地に攻め寄せた者ども…やはり黄祖の手の者ですか?」
その問い掛けに対し、孫堅もまた真顔になって頷いた。
「ああ、間違いねえ。原因は十中八九、蓮華の奴が説得して従える事になった思春…甘寧目当てだろうな。…あの女は前々から甘寧を自分の物にしたがっていた、それを横取りされて根に持った…ってとこだろう」
「でしょうな…恐らく次も仕掛けて来るでしょう。如何するおつもりで?」
そう千冬が問いかけると、孫堅は獣を思わせる寧猛さを宿した笑みを浮かべながら答えた。
「…はっ、決まってんだろうが。娘の家臣になったと言っても、甘寧もまたオレの物になったんだ。そのオレの物を奪おうってんなら…その喉元を食い千切ってやるまでだ」
「でしょうな、それでこそ我らが大殿です。江夏郡の太守如き、我らの勇を以て叩き潰すとしましょうぞ」
「ああ、お前に言われるまでもねえさ。…ただ一つ問題があるとすりゃ、あいつは形式上は荊州牧を務める劉表の配下だって事だ。奴を討つとなれば劉表が黙っているとは思えねえが…『その心配は杞憂だと思いますがな』おう、
孫堅が言葉を挟んできた薄い水色のウェーブの入ったロングヘアーに茜色の瞳を持つ、幼女とも取れるほど小柄な体格をした少女に言葉を投げかけると、雷火と呼ばれた少女は鼻を鳴らしてこれに応えた。
「案ずるには及びませぬぞ大殿、冥琳や穏らに任せてきましたからな。それはそうと劉表の事でございますが、あれは和を重んじる惰弱な所がある小娘ですからな。どうにも黄祖を持て余しておるとか…なれば黄祖に何があったとしても兵を挙げる可能性は低いかと」
雷火と呼ばれた女性がそう進言すると、千冬は大きく頷きながら孫堅に提言した。
「成程…となれば兵を何時でも動かせるように備えておくべきかと思います。雪蓮様らにもそう伝えてきます」
そう言い切り、千冬は陣幕を後にした。後に残った孫堅は一息つくと一言ずつ確かめる様に言い放った。
「雷火。あと1,2回で奴との、黄祖との戦いにけりをつける。これ以上あいつにかかずらっている暇なんて、こっちには微塵も無いんだからな」
「御意」
これに雷火も拱手をしながら深々と頭を下げた…。
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一方、江夏軍が陣取っている陣地。その大将と言える黄祖の陣幕では……。
「……蒯良よ、その策であれば奴を仕留める事は可能なのか?」
緋色の瞳をし右目が隠れる様にして伸びている、先端部分が赤みがかっている水色のショートヘアーをし、黒い鳥の羽をあしらった髪飾りをつけた、耳には碇を思わせる装飾のイヤリングをつけている女性が初老の文官の装束を纏った男性に問いかけていた。
「…確証は持てませぬが、十中八九この方策であれば。孫堅と言う女傑は例えて言うなれば獣なのです。迂闊な誘いや罠を仕掛けても野生の感、と言うべき物を以て看過してしまいますが…一度獲物を前にしたのであれば、その得物を仕留める事に全神経を集中させまする。となれば…」
「私を釣り餌にして孫堅を誘き出し、逃げ場のない谷に誘い込み、落石を以て逃げ場をふさいだ後に呂公らに矢の雨を降らせる…仕掛け自体は単純であるが、これ以上に効果的な策も無いな」
「黄祖殿を危険にさらす事は重々承知の上にございます。なれどあの猛虎と言える孫堅を討ち取るには…」
蒯良と呼ばれた男性が顔をゆがめ、言葉を濁しているのを黄祖は手で制していた。
「いや、奴を仕留めるには上々と言える策を用意してくれただけでも僥倖と言う物だ。さて…呂公!」
黄祖が声高に呼びかけると、それに応えるかのように陣幕の布を挙げながら一人の武将が入ってくる。そしてその武将は黄祖の前まで来ると片膝をついて拱手をした。
「お呼びで」
「この策の成否はお前の活躍に掛かっている……無論奴を、孫堅を相手にする事になる。私が死ぬ可能性も高い…それでも、私に命を預けてくれるな?」
「…我が命、黄祖様の御為に」
そう言いながら深々と頭を下げる呂公に黄祖は満足そうに頷くと、蒯良と共に下がらせる。ただ一人残った黄祖は闘志を…否、執念を宿した言葉を漏らしていた。
「…今に見ているがいい孫堅。私の甘寧を奪った代償、生半可な物ではないと思うがいい」
そう言葉を零す黄祖の瞳にもまた、執念めいた焔が燃え滾っていた…。
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さて、孫堅と黄祖との戦いが始まろうとしている荊州の地。そこを揚州へ向かいながらも船酔いに苦しんでいたが、孫堅が黄祖と戦っているという情報を聞き、彼女に会う為に途中下船する事で何とか船酔い回復した壮也が訪れていた。
「……戦いが始まる前の空気って奴だな、一戦起こるって事か。戦うのは…孫堅と劉表配下の大将、黄祖と言った所か」
黒風に跨りながら壮也は、戦前の空気を肌で感じ取っておりこれから起ころうとしている大戦を一目見ようと黒風を走らせ、戦場を一望できる丘まで来た。
そうして眼下に広がっている光景を見ていると、『黄』の旗が掲げられている簡素な砦に攻め寄せようとしている『孫』の旗が掲げられている軍勢に『蔡』と『文』の旗を掲げている軍勢がぶつかったのだが、少しの間小競り合いをしていたかと思うと尻尾を巻いて逃げ散る姿が見えたのである。
「『蔡』と『文』の旗って事は…荊州の劉表に仕えている武将、蔡瑁と文聘の事だろうな。さすがの2将も江東の虎と称される孫堅相手は荷が重かったみたいだな……さて、ここからどうなるのか」
そう思い再び孫堅の方に視線を向ける壮也であったが…ふと何か『嫌な予感』と呼べる物を感じ取り、黒風に跨ると急いでその予感のする方角へ走らせた。
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その頃、壮也が目をやった退却している軍はと言うと…。
「だあぁー!!もう無理、マジ無理!幾ら何でももう限界よ!?何よあの化けもん!?あんなのが大将をやってる軍の後背を突いて黄祖を救援せよなんて無茶ぶりにも程があるわよぉ!?」
敗残の軍勢を率い、戦闘で馬に乗っている紫色のショートヘアーに水色の頭巾をかぶり、魚麟の軽鎧を纏っている、腰に交差させる様に二丁の短刀を差した女性が、鬱憤をぶつける様に叫ぶのを見た兵士達が一斉に萎縮してしまう。だが、それを見て隣にいた蒼のボブカットに紺色の瞳をした、射手を思わせる甲冑を纏い背中に大弓を背負った中性的な美青年が馬を寄せて来た。
「花音、取り乱しちゃだめだよ?兵士たちも動揺しているんだからさ」
「そうだけどさぁ…啓、貴方も見たでしょう!?貴方が放った矢を首を動かして躱しただけじゃなくて、あたしの連撃も力ずくで吹っ飛ばしたのよ!?幾ら何でもあんな化け物あたし達で倒せるわけないじゃない!?第一黄祖の奴って梓様も持て余している人じゃない!命令されたから助けに来たけどさぁ…」
「けど、だからこそ劉表様…梓様は助けたいんだろうね。あの人は優しい人だから…とりあえず命は果たした、あとは黄祖殿の運を信じるしかないよ」
「そうね…黄祖、あんたうまく生き延びなさいよね?いやな性格だったけど、とりあえず同輩なんだからさ」
そう言いながら今回黄祖の救援に赴くように命令されるも、孫堅に返り討ちに遭い撤退する事になった『蔡瑁』と『文聘』であった…。
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そして孫呉の陣営では、救援に赴いた蔡瑁と文聘を撃退した孫堅が諸将を集めて号令をしていた。
「いいかお前ら!軟弱娘の劉表がよこした援軍は討ち払った!あとは砦に籠っている黄祖をぶっ潰せばこの戦いはオレ達の勝ちだ!!気合入れろよお前ら!!」
その号令に将兵は一斉に声を上げ、得物を高々と上げてこれに応えた。それを見た孫堅は大きく頷くと、隣に立っている自分と同じく薄紫色の髪をし、蒼い瞳を持つ、真紅の装束を纏った女性に呼び掛けた。
「
「何よ母様?」
「この戦いで黄祖との決着をつけるんで、オレが前線に出る。本陣とか軍は任せるぞ」
孫堅がそう断言すると、孫堅を母と呼んだ雪蓮と言う名の女性は頭に手を当てながら溜息を一つついた…。
「はあ…また母様の独断で決めちゃって。見てよ母様、真耶の奴がまた諌めようと体を震わせてるわよ?」
「異論は受け付けねえ、もう決めた事だからな。それじゃあ…」
そう言って孫堅が出陣を宣言しようとした時である。急に突風が吹いたかと思うと……。
ーべきっ!
そう、鈍い音が響いた直後、彼女たちの目の前に『孫』の字が描かれた真紅の軍旗が落ちてきたのである…。それを見た将兵らは一斉に顔を青ざめた。古くから戦場において戦いが始まる前に旗が折れて地に落ちる…それはどうしようもないほどに不吉の前兆であると信じられていたからだ。
「…っ!大殿『異論は聞かねえって言っただろうが』で、ですが!!」
それを見た真耶は孫堅に物申そうとするも、孫堅は聞く耳持たずとばかりに馬に跨り陣を出ようとした。
「オレは戦場で生きる事に幸せを感じているんだ!死ぬのなら戦場で果てる道を選ぶ!不吉だからと言って旗が折れたぐらいで戦いをするのを止める位なら…オレは自害する方を選ぶぞ!」
「お、大殿…『真耶、お前は本陣で雪蓮や雷火と一緒にいろ。いいな?』……承りました」
孫堅の言葉に不承不承と言う感じで拱手をした真耶を見て、少しは満足したのか鼻を鳴らした孫堅は軍勢に号令をした。
「祭、粋怜、千冬!お前らはオレについて来い!黄祖との戦、ここで終わらせるぞ!!」
「はっ!」「承知しました!」「お任せを」
孫堅の指示に祭、粋怜。そして千冬の3名は一斉に拱手をして答えるとすぐさま騎乗して陣を飛び出し、それに続くように兵士達も陣を出ていく。それを真耶は気が気でないと言う感じで見送っていたが、やがて同じように本陣に残った雪蓮と雷火が元気づけるように声をかけた。
「真耶、心配はいらないわよ。母様も引き際位は心得ているんだし、祭や粋怜、千冬だっているんだから」
「うむ、雪蓮様の言う通りぞ真耶。昨日の戦いで黄祖側はかなりの被害を蒙っておる、よほどの事が無い限り大殿が不覚を取る事はないと思うが…」
だが、そう言う雪蓮と雷火を尻目に真耶は孫堅が向かっていった戦場の方にじっと視線を向けたままであり、やがて一言ポツリとつぶやいていた…。
「……何事も、無ければいいんですが」
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黄祖との戦いに終止符を打つため戦場に向かった孫堅。だがその戦場には、孫堅を亡き者にせんが為黄祖が罠を張り巡らせていた。窮地に立たされる孫堅だったが……続きは次回の講釈で。
身内に不幸はありましたが…決して途中で打ち切りをするという事はありません。最後まで書き抜こうと思っているので、どうか首を長くしてお待ちいただければと思います。
では…!
オリジナル武将
『韓当義公』(容姿・性格はインフィニット・ストラトスの『山田真耶』を参考にしました!)
祭こと黄蓋と粋怜こと程普と共に炎蓮こと孫堅に仕える宿老の一人。忠義の心が厚いのは確かなのだが、主君の身を案じるあまり戦闘狂な所のある炎蓮を諫める事が度々ある。
その一方で戦闘力については祭や粋怜にも引けを取らない程で、得物である短戟(三國無双7で初登場した韓当の専用武器)の扱いに長け、また騎射の技にも長けている。
正史・演義において登場する孫呉に仕えた宿老。演義において夷陵の戦いの際には若輩である陸遜の指揮下に従う事に不満を示すものの、陸遜の計を知ると感服。以後は指揮に従った。
正史においても弓馬の技に優れ、将兵の心を良く掴んだとされているが、その息子である韓綜と言う人物は父の死後魏に降ってしまい、諸葛恪に討たれたと記されている。