真・恋姫†無双~転生記~   作:ふかやん

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 どうも。時間が取れたので続けて投稿してみました!


 今回もオリジナル武将を登場させたので後書きで簡単な紹介をお送りします!


贈与と強襲騒動、そして…。

「と言う訳で…私達にも武器を作ってくださーい!」

 

 

「……うーむ、これはどうした物かな」

 

 

 賊の討伐から数日が経ち、これからの事を考えながら長沙の人々の為に鍛冶を行っていた壮也だったが…唐突に自分の鍛冶場に姿を現した、黄色みがかった白色の髪をボブカットに切り揃え、左サイドだけ巻き髪と赤いリボンで飾った髪型をしている、緋色の瞳を持つ活発そうな雰囲気を感じさせる少女の開口一番、元気一杯と言う感じの宣言に思わず面食らっていた。

 

 

 やがて、もう一人来ていたと思われる飾り気のない黒い長髪を真っ直ぐに下ろし、藍色の瞳を持つ意志の強さを感じさせる整った顔立ちの少女が溜息をつきながら声をかけて来た。

 

 

「はあ…千束、名乗りを上げないで一方的に要求しても受け入れられる訳ないでしょう?見てください、徐寧殿の姿を。動揺して固まってしまっているではないですか」

 

 

「あれ?そう?ごめんねー!いきなりこんな事言われて困っちゃったでしょ?」

 

 

「ははは…元気一杯なのはいい事だと俺は思うがな。知っての通り、俺は徐寧、字を芳明と言う。そちらは…恐らくだが雪蓮や蓮華の下で経験を積んでいる将軍見習い、という所だろうか?」

 

 

 宗也がそう問いかけると、黄色みがかった白髪の少女が胸を張りながら得意げに名乗り始めた。

 

 

「その通り―!私は陳武、字は子烈って言うんだ!今は雪蓮様の下で将軍見習いをしてるの!こっちは相棒の董襲!」

 

 

 白髪の少女…陳武が名乗りを上げ、もう一人の黒髪の少女を紹介すると、彼女もまた拱手をしながら名乗りを上げた。

 

 

「董襲、字を元代と申します…その、いきなり押しかけてしまって申し訳ありません」

 

 

「いや、構わないさ。それにしても…天衣無縫と言う言葉がよく似合う気がするな、陳武殿は」

 

 

「えっ、本当!?菖蒲―!私何か褒められた―!」

 

 

「落ち着いてください千束…今回来た目的を忘れてませんか?」

 

 

「あっ、そうだった!」

 

 

 何とも賑やかな感じで会話に花を咲かせる少女達を微笑ましく見ながらも、壮也は孫呉の若き将星の登場に内心心躍っていた…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 陳武、字を子烈。揚州廬江郡松滋県の人。三国志演義においては黄色い顔に赤い瞳を持つと言う容貌怪異な風貌をしていたと記されており、正史三国志などにおいては孫堅が討ち死にし、袁術の下で閉塞していた頃の孫策の下に自ら赴きその家臣になったとされている。

 

 

 勇猛果敢な将軍であったとされ、孫策が劉勲と言う人物を打ち破った際に投降者を選抜して軍団を組織し、彼に指揮させる事になったがその軍団は精鋭ぞろいで負け知らずだったと言う。

 

 

 また思いやりがあり、人に対する気前も良かったため、同郷の者や遠方からの避難民が多く身を寄せ、孫策の跡を継いだ孫権からも格別の寵愛を受けていた。

 

 

 やがて合肥の戦いにも従軍し奮戦するも、武運拙く戦死。孫権は彼の死を深く悲しみ葬儀にも直接参加したほどだった。因みに彼の息子である陳脩や庶子である陳表もまた孫呉に尽くし、それぞれに名を遺した人物となった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 董襲、字を元代。揚州会稽郡余姚県の人。身の丈八尺で、並外れた武力の持ち主だったとされ、孫策が会稽を訪れた際に謁見したが、孫策は彼の立派さ、そして優秀さを見抜いて取り立てた。

 

 

 やがて孫策が不運にも命を落とし、孫権が後継者となったのだがまだ年若い彼が後継となった事に母親の呉夫人が不安に思い、張昭と彼を呼び寄せ後事を相談した際、董襲は『江東の地勢は固く、孫策様が民衆に恩義を施していたので、孫権様はそれを受け継ぎ、張昭殿が万事を統率し、我らはその牙や爪となって働きます。地の利も人の和も我らにあるのです、心配することなどありません」と堂々と述べた事で、呉夫人は安堵したと言う。

 

 

 また孫呉にとっての宿敵である黄祖との戦いにおいて、董襲は鎧を二枚重ねた上で淩統と共に特攻。この活躍によって黄祖を打ち破る事に成功した孫権は『董襲がいたからこそ、私は黄祖に勝つことが出来た!』と大いに讃えた。

 

 

 しかしそんな董襲にも最後の時が来た。曹操が濡須を攻めたとき、孫権に従い水軍の指揮を執っていたが、暴風のために船が転覆しそうになった。部下達が脱出を勧めたが、董襲は将軍としての職責を強調して拒否し、撤退する者を斬ると厳命したが、結局船が転覆したため溺死してしまったのである。

 

 

 孫権は同じ頃に命を落とした陳武と共に彼の死を惜しみ、亡骸を丁重に葬り遺族にも手厚い援助をしたと言う。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「それで、ここに来たのは武具の事についてか?」

 

 

 壮也がそう切り出すと、二人は大きく頷き、持ってきた武具を差し出した。

 

 

「これは…三節棍と、鴛鴦鉞か。中々に扱いの難しい得物を使いこなしているんだな?」

 

 

 壮也が感心するのも無理はない。陳武が差し出したのは鴛鴦鉞と言う2本の月牙と呼ばれる三日月状の刃を交差させた形状をしており、中心に布を巻いて握り手としている武具である。

 

 

 拳に道具をはめて破壊力を高めようと言う拳法の発達とともに編み出された武具であり、伝承では八卦掌の達人として名高い清代の拳法家、董海川が発明し、愛用したとされている。

 

 

 これに対し董襲が差し出したのは三節棍…言うなれば3本の棒を紐や鎖、金属の環などで一直線になるように連結した武器であり、複数の関節部分を持ち、振り回して敵を攻撃する、多節棍と呼ばれる武器の一種。

 

 

 当然扱いが難しい武具の一種であり、それを得物にしているという事は彼女達の力量がそれだけ優れているという事の証左である。

 

 

「だが…かなり損傷しているみたいだな。よほど激しい戦いだったと見える」

 

 

 しかし二人が差し出した武具は、陳武が差し出した鴛鴦鉞の方は片方がものの見事に真っ二つに割れた姿となり、董襲が差し出した三節棍の方は棒の一つを連結する鎖が壊れた事で破壊されているなど、いずれも今後武具としては使用できないほどの損傷を負っており、彼女達が相当な戦いを潜り抜けて来た事が、壮也には容易に感じ取れた。

 

 

「いや―…まあ確かに。あの戦いで私達、雪蓮様の方に加わって山塞攻めに加わってたしね」

 

 

「ええ。その時に私も足を負傷して身動きが取れなくなり…雪蓮様らに助けてもらわねば危うい所でしたから」

 

 

「そうだったか…っ!ひょっとして、あの戦いの後に俺が本陣ですれ違ったのは、君達二人だったのか」

 

 

 数日前の記憶を思い返した壮也は気づかなかった事を知って頭を下げたが、陳武の方がからからと笑いながら手を振った。

 

 

「気にしない気にしない!こうして生きてるんだからめっけ物だって!それよりさ…私達の武具って直せる?これ私達が初陣を飾った時から愛用してるんだよねー」

 

 

「出来うる事なら修理を要請したいのですが…やはり無理でしょうか?」

 

 

「そうだな…これを直す事は正直言って難しいだろう。だが、これらの武具を基礎にして新しく作り直す事は可能だ。それで構わないだろうか?」

 

 

 壮也がそう提案すると、陳武は喜色満面と言う感じで喜びを露にした。

 

 

「っ!それでいいに決まってるじゃない!やったね菖蒲!」

 

 

「…ええ、本当に。貴方には心からの感謝を徐寧殿。その証として、私達二人の真名を預けます。私は菖蒲(あやめ)と申します」

 

 

「私は千束(ちさと)!貴方が作ってくれた武具、一生大切にするからね!」

 

 

 …その後、壮也は彼女達から預かった武器を基礎として新たに打ち直し、陳武には金と赤で彩られた月牙を重ね合わせ、持ち手を漆黒の布で巻き付けて握りやすくした『日月昂璃(にちげつこうり)』を。

 

 

 そして董襲には黒と赤で彩られた三本の棒を鎖で連結し、両端の棒の先端部分に槌矛を彷彿とさせる頭部を取り付けてある『轟尖雹(ごうせんひょう)』を贈呈する事になる。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 それから数日が経った頃、壮也の下を訪れる二人組があった。先の戦いの後に会話を交わした、凌霄と白鶴である。

 

 

「二人がここに来るという事は…雪蓮や椿達から話を聞いて、と言った所かな?」

 

 

「ありゃ、図星だったみたいだね白鶴?」

 

 

「こちらから申し出る前に看破されるとは…ですが、既に椿や蒼蓮達が訪れているのですから見抜かれるのも致し方ない事でしょうね…」

 

 

 自分達の目的を言う前に言い当てられ、呆気にとられたと言う感じで顔を顰めた二人を見て、壮也も苦笑しながら宥めた。

 

 

「ああ済まない、気を悪くしたなら謝罪するよ。それで、二人も武具を作ってほしいから来たんだろうけど、詳しく聞かせてもらえるか?」

 

 

 壮也がそう問いかけると二人は頷き、まず壮也が用意した椅子に座っていた白鶴の方が自分の脚を壮也に見せつける様に伸ばしてきた。

 

 

 これに壮也が首を傾げるも、彼女が履いている靴を見て納得した。その靴は金属を使って作られており、足の甲の部分に沿う様にして刃が取り付けられた形状となっていたのである。

 

 

「これは珍しいな…刃を取り付けた甲懸とは。特注の武具だったのか?」

 

 

「ええ。父・全柔が私を孫呉に出仕させる事になった際に私に授けてくださったもので…亡き母が愛用したものだそうです」

 

 

「成程…呂岱、君の得物は?」

 

 

「私はこれだよ!」

 

 

 壮也の問いかけに呂岱が、背中に背負っている得物…戟を取り出した。しかしその戟は普通の物と違い、斬撃にも対応したような片方の刃が斧の様な形状をした物だった。

 

 

「ふむ…断戟と言う戟の一種か。長く愛用してきたみたいだな、よく手入れもされている」

 

 

「まあね!私が孫呉で出仕する時に、父さんが使ってたものを譲り受けてからずっと使ってきた物なんだ。…けど流石に所々傷んで来てるみたいでさ。そんな時に椿達が壮也に武具を作ってもらったんだって聞いてたから、私たちもってことで来たんだよ」

 

 

「成程な…分かった。二人の武具、俺が全力を以て生まれ変わらせるとしよう。これから先、将軍として成長するであろう二人が、その命を預けるに足る武具としてな」

 

 

 壮也の返答に、二人が喜びを露にしたのは言うまでもない…。その後全琮に対しては赤い房飾りが取り付けられ、足の甲の部分をなぞる様に刃が新たに取り付けられた甲懸『戦沓倭姫(せんとうやまとひめ)』を。

 

 

 呂岱に対しては赤い柄と房飾り、見事な文様が刻み込まれた斧頭が取り付けられた形状の断戟『白虎顎(びゃっこがく)』を献上する事となる。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 それから数日経った頃、鍛冶場に隣接して建てられた家屋の中で、壮也はこれからの事を考えていた。

 

 

「(俺が炎蓮殿の窮地を救い、その歓待として孫呉に招かれてから随分と日数が経ったものだ。ここでの日々もとても過ごしやすかったが…そろそろ旅立つ時かもしれない。これ以上いれば間違いなく張譲が放った追手の魔手が伸びてきかねないし、炎蓮殿や雪蓮、蓮華を始めとした人々を巻き込む訳には…?)」

 

 

 だが、壮也はふと自分に向けられる視線に気づいた。ただ、同時に壮也はこの視線の主が張譲の放った追手…即ち胡車児の手の者ではないという事も感じ取っていた。

 

 

 そもそも殺気が駄々洩れなのだ。寧ろこちらの気を引こうと言う感じで放たれており、壮也は幾分か警戒を和らげながら、得物である鋼鎌武断を手に家屋を出た。

 

 

 そうして長沙の町外れにある林の中に、壮也は足を運んでいた。時刻は夜、林の中は静寂に包まれてはいたが、月明かりが煌々と照らしていた事から視界が悪いという事は無かった。

 

 

「さて…俺に何か用か?危害を加えようとするにしては、殺気が駄々洩れに過ぎているが…姿を見せてもらいたいものだな?」

 

 

 得物を構え、周囲に警戒しながら壮也は声を出すが…周囲からは時々吹く夜風に木々が揺れ、葉音が立つだけで返答は一切なかった。

 

 

 だが、やがて猛然と風切り音を響き渡らせながら、木々を切り倒してくる『何か』が壮也めがけて飛んできた…!しかし壮也は慌てる事も騒ぐ事もせず、手にしている鋼鎌武断を思いっきり地面に突き立てた直後、甲高い音が響き渡っていた。

 

 

 そうして壮也が握りしめている鋼鎌武断の方を見ると、柄の部分にぶつかって地面に落ちたと思われる武具が目に留まった。

 

 

「っ!十字戟か…!?」

 

 

 壮也が目を見張ったのも無理はなかった。『十字戟』、それは柄の両端に真逆になる様に斬撃の為の刃と月牙を取り付けてあるものを、柄の中心でもう一組、十字を描くように取り付けた特殊な武具の一種である。

 

 

 その特徴としては取り外して両手で持って攻撃を行えたり、十字に組み合わせた状態であれば投擲する事も可能と言う多彩な攻撃方法を持つ事であるが当然扱いも難しく、黒兎が得物としている断月刃と同様に使い手を選ぶ武具なのだ。

 

 

 壮也がその得物に視線を向けながらも周囲を警戒していると、林の中から声が響き渡った。

 

 

「おいおいマジかよ…(あたし)の十字戟を、得物を突き立てるだけで受け止めて防ぐとか冗談だろ?」

 

 

 そうして姿を現したのは、雪蓮と同じくらいの長身に金髪をホーステールに下ろし、碧色の瞳を持つ豊満なスタイルが目を引く女性だった。だが、その雰囲気は面倒毎に巻き込まれたくないと言うやる気のなさが前面に出ているようだった。

 

 

「…先ほどの殺気は、君が放ったものか?」

 

 

「あっ?違えよ。雛菊の奴がお前に一方的に敵意向けてて、無理やり付き合えって言われたんだよ。…たく、本当ならこの後紫陽花とイチャイチャを愉しもうって思ってたのによぉ…けど、気が変わった」

 

 

「ふむ…気が変わったという事は、このまま戦いたいと?」

 

 

 壮也が油断なく得物を構えつつ、地面に落ちた十字戟を彼女に投げ返しながら問いかけると、少女は不敵な笑み…否、好戦的な笑みを浮かべながら十字戟を掴み取り、身構えながら答えた。

 

 

「まあな。アンタにとっちゃ災難かもしれねえが、楽しくなってきちまったんだよ。ちょっと付き合ってもらうぜ…紫陽花!!」

 

 

 そうしてその女性が誰かの名前を呼んだ直後、別方向の林の中から飛び出してきたのは…鎖で繋がれていると思われる碇だった。

 

 

「っ!ふんっ!!」

 

 

 だが宗也はこの攻撃にも即座に対応し、手にしている鋼鎌武断でその碇を弾き飛ばす。やがて林から飛び出してきたのは、十字戟を使いこなしている女性よりも遥かに小柄な体格をし、黒髪で三つ編みを結ったぼさぼさの髪型に、猫背気味である赤紫色の瞳を持つ少女だった。

 

 

 宗也にとって目を引くのは、彼女が頭に被っている兜だ。その兜は色鮮やかな鳥の羽を使って飾り立てられており、一度戦場に立てばそれだけで衆目を集めること請け合いだったのだ。それだけではなく、彼女が手にしているのはその小柄な体からは想像もつかない、穂先が碇となっており、鎖で連結している事から振り回す事も可能な『碇槍』と呼ばれる武具だったのである。

 

 

「…驚いたっスよ。隼さんと私の連携を、初見で対応できるなんて大した物っス。雪蓮様が一目置くのも納得っスね」

 

 

「だろ?正直雛菊の奴に無理やり連れてこられた時は面倒臭くて仕方なかったけど、蓋を開けて見りゃあ想像以上に楽しめそうだ!」

 

 

 そう言いながら隼と呼ばれた女性は十字戟を構え、紫陽花と呼ばれた少女は弾かれた碇の穂先を連結して槍の形状にすると身構える。どうやら互いに戦いを愉しもうとする性根なのか、不敵な笑みを浮かべているようだった。

 

 

「…ははは、これは言葉で止まるような感じではないか。いいだろう、そちらが満足するまで…付き合うとしよう!」

 

 

 それを見て壮也も苦笑いを浮かべると、鋼鎌武断を構えて迎え撃つ態勢を取った…!

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 そして戦いが始まった一方で、さらに別方向の林から姿を隠しつつ、戦いを覗き見ている少女らがいた。一人は真紅の長髪を靡かせ、若草色の瞳を持つ眼鏡をかけた少女で、腰に二振りの双剣を携えている。

 

 

 もう一人は銀の短髪に橙色の瞳を持つ、演劇で男役をやったとしても遜色のない顔立ちの少女なのだが…その瞳は今、目の前で十字戟を振るいながら時として投擲を仕掛けている女性と、小柄な体でありながら縦横無尽と言う言葉が似合うほどに動き回り、身の丈よりも大きな碇槍を振るう少女による二人懸かりの連携攻撃を、大地に根を張っているかのように重厚に大戦斧を構え、これを捌き続けている壮也に向けられていた。

 

 

「ぐぬぬ…二人懸かりならさしもの彼も苦戦すると思ってたのに、よもや互角以上に亘り合っているなんて!これは私達も加勢するしかないな!(あざみ)、私達も…」

 

 

 そう言って背中に背負っている、細身の刀身であるが刀身が長く作られている『迅雷剣』を抜き払おうとしたのだが…当の本人はと言うと、そのまま踵を返して立ち去ろうとしていたのである。それを見た銀髪の少女が慌てて呼び止めた。

 

 

「ちょ、ちょっとちょっと!?どうして帰ろうとしているんだい!?」

 

 

「…私達にしか頼めない火急の案件だとか何とか言って連れてこられたかと思ったら、炎蓮様の命の恩人であり、雪蓮様や蓮華様が信を置いている徐寧殿を闇討ちするのを手伝えなんて、呆れて物も言えないんだけど?そこのところどうなのかしら雛菊(ひなぎく)?」

 

 

 そう言いながら赤髪の少女が睨みつけると、銀髪の少女は気圧されながらも押し留めようとしたのだが…。

 

 

「うぐっ!?だ、だからと言ってあっさり帰ろうとしなくても…『第一、今回の計画の発端だって貴方が熱を上げている椿が彼に一目置いている事に対する嫉妬でしょ?』むむっ!?」

 

 

 …赤髪の少女の容赦ない指摘にたちどころに言葉を失ってしまった。

 

 

「図星、って訳ね。はい論破。それじゃ私は宿舎に戻るか、ら…」

 

 

 そう言ってそのまま振り返ろうとした赤髪の少女だったが…振り返ったまま固まってしまった。

 

 

「………薊?ど、どうしたんだいそんな石像の様に固まっ……ってぇ…」

 

 

 その姿に雛菊と呼ばれた少女が様子を確かめようとして…これまた固まってしまった。なぜならば…。

 

 

「はーい二人とも♪こんな月の綺麗な夜遅くに、一体何してるのかしら~♪」

 

 

その視線の先に自分達将軍見習いがゆくゆくは臣従する事となる炎蓮…孫堅の娘達の片割れである、孫策伯符こと雪蓮が、朗らかに笑みを浮かべながら(ただしその額に青筋を立て、眼は笑っていない)、立っていたのである…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ー…ぎゃあああっ!??

 

 

「むっ…?悲鳴?今目の前にいる二人以外に誰かいたのか…」

 

 

 唐突に響き渡った悲鳴を宗也が聞き取った直後、同じくその悲鳴を聞き取ったと思われる眼前の二人組の少女らは、そのまま得物を下ろし始めた。

 

 

「やれやれ、雛菊の奴が〆られたってとこか。それじゃあ、ここらで終わらせといた方がいいかもしれねえな。なあ紫陽花?」

 

 

「了解っス。…徐寧さん、この度はご迷惑をおかけして申し訳ないっス」

 

 

「いや、別に構わないさ。こんな事になりはしたけど、いい鍛錬になったと思うからな。もう知ってると思うが…姓は徐、名は寧、字は芳明だ。恐らく雪蓮や蓮華の下で働いている将軍見習いだと思うんだが、そちらの名前も聞かせてくれると嬉しいんだが?」

 

 

 宗也が問いかけると、目の前にいる二人もそれぞれに拱手をしながら名乗りを上げた。

 

 

「私は宋謙(そうけん)ってんだ、あんたの見立て通り孫呉の将軍見習いってとこさ。今は雪蓮の姐さんの下で働いてるぜ?」

 

 

「同じく、雪蓮様の麾下で将軍見習いとして働いてる賀斉(がせい)、字は公苗(こうびょう)って言うっス。以後宜しくお願いするっス」

 

 

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 宋謙。三国志において孫呉に仕えた将軍の一人である。勇猛果敢な武将であったらしく、三国志演義においては呂布以外で方天画戟を使いこなしたとされている。

 

 

 三国志演義においては合肥の戦いで主君である孫権に迫った楽進を迎え撃とうとするも、続いてきた李典に射殺されて命を落としたとされているのだが、正史三国志においては孫策が劉繇の配下だった頃の太史慈と一騎討ちを行った際、孫策につき従っていた13人の騎兵の一人として、韓当や黄蓋と共にその名を記されている。

 

 

 また夷陵の戦いにも参戦し、陸遜の指示の下で朱然や潘璋、徐盛と言った同輩と共に劉備軍を迎え撃ったとされるなど、正史と演義において立場が異なっている人物と言える。

 

 

 それだけでなく、宋謙に関する部分は上記の部分のみで、黄蓋ら武官として功績を挙げた者たちが載る「呉書」第十にも立伝されていない。他の人物の伝に付伝されたり、裴松之の注釈にも詳細が記述されていないため、字や生没年、官位などが不明である。

 

 

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 賀斉、字を公苗。三国志において孫呉に仕え、主に孫呉に敵対した異民族である山越に対して武勲を挙げた人物である。

 

 

 三国志演義には登場しない一方、正史三国志においては呂岱と同様に各地の反乱鎮圧や山越の討伐、そして魏との戦いにおいても大いに名を遺した。

 

 

 非常に派手好きであったとされており、自身のみならず自らが率いる軍団に対しても、常に上質で豪華な武具を着飾って戦に赴いたと言われており、目に見るだけで彼の軍と分かるほどであったと言う。

 

 

 また洞口の戦いと言う戦においても賀斉は率いる軍勢に対して装備などを精巧で上等な物を揃え、蒙衝や戦艦の類いは遠くから見ると、あたかも山のようであったといわれており、曹休軍はその威容を見ただけで軍を帰したという。

 

 

 また賀斉が山越討伐を行っていた時、叛徒たちの中に禁の術(ものの力の発動を封じる呪術)をよくする者がおり、官軍の方は戦いを交えようとするたびに、呪術の力で刀剣を抜くことができず、弓矢を放ってもみなこちらのほうに戻ってくるため、戦いはいつも不利であった。

 

 

 賀斉はこれを見て「金属でも刃のあるものは封じられ、虫でも毒のあるものは封じられても、刃のないものや毒を持たぬ虫は封じることができないとできぬに違いない」と考えると五千人の精鋭を突撃隊として組織し、彼らに固い棍棒を持たせて突撃した結果、散々に打ち破って見せたと『抱朴子』と言う書物に記録が残っている。

 

 

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 二人の名乗りを聞いた壮也は、孫呉に若き将星が集っている事に内心感心しきっていた。炎蓮を初め、祭や粋怜、真耶や千冬と言った面々に鍛えられた彼女達がいれば、孫呉はきっと天下に名だたる国になるだろうと…。そう思っていると、林の中から誰かが歩いてきた。

 

 

 壮也は用心して身構えはしたが、姿を現したのが雪蓮であったのを見て安堵の表情を浮かべ…同時に彼女が肩に担いでいるものを見て思わず目を見張った。と言うのも、雪蓮が肩に担いでいたのは銀の短髪をした少女だったのだが、縄で雁字搦めに縛られた上に、その頭にこれでもかと言うぐらいの拳骨を落とされたのか大きなたんこぶが出来ていたからだ。

 

 

 そしてその後から、真紅の長髪に眼鏡をかけた少女が戦々恐々という感じでついてきているのも見えたのである…。

 

 

「壮也大丈夫?!…って、貴方がそう簡単にやられる訳ないわよね。それよりも…(はやぶさ)紫陽花(あじさい)。あんた達も雛菊に無理やり付き合わされたって所かしら?」

 

 

 雪蓮が壮也の身を案じて声をかけた後に、彼の前に立つ二人組の少女にも問いを投げると、この声を聴いた銀髪の少女がまるで捨てられそうになっている子犬のような眼をしながら二人に視線を向けたのだが…。

 

 

「仰る通りだぜ雪蓮の姐さん!雛菊の奴に無理やり付き合えって言われてよぉ?まあ、思わず楽しくなって熱中したのは否定しねえけど…なあ紫陽花?」

 

 

「そうっスね、そこは自分達に全面的に非があると思ってるっス。弁明する気はない事をご報告するっスよ」

 

 

 …あっさりと二人は銀髪の少女を切り捨てていた。それを見た銀髪の少女は顔面蒼白になって俯いてしまう事になった…。

 

 

「反省の色あり…って所ね。それじゃあ雛菊、アンタ覚悟は出来てんでしょうね?」

 

 

「ひ、ひいい…!?い、命ばかりはご勘弁をおおお!?」

 

 

「はい聞く耳持たずって奴よ?それじゃ行くわよー」

 

 

 銀髪の少女が必死になって命乞いを始めるも構わず、雪蓮がどこかに連れて行こうとした為、流石に可哀そうになった壮也が呼び止めた。

 

 

「まあ待ってくれ雪蓮。正直言って俺は彼女に恨まれる様な事をした覚えはないんだ、出来れば彼女の口から事情を聞かせてもらえないか?もし俺に非があるのなら、それを謝罪したいと思っているしさ」

 

 

「壮也、貴方って人は…少しだけだからね?」

 

 

 壮也の言い分を聞いた雪蓮は、彼の懐の深さに半ば感心、半ば呆れと言った感じで溜息をつくと彼女を地面に下したのである。

 

 

 

「感謝するよ雪蓮。さて…貴公の名前を聞かせてくれるか?」

 

 

 壮也が縛られた状態で地面に転がされた彼女と目線を合わせる様に屈んで名を聞こうとしたのだが…銀髪の少女は何故か敵意を込めた目でこちらを睨みつける始末だった。

 

 

「ぐむむ…!?まさか恋敵に救いの手を伸ばされるなんて何という屈辱!?この留賛(りゅうさん)正明、敵に情けを掛けられたいとは思わないぞぉ!?」

 

 

「あんた、この状況でまだ強がれるなんて…そこだけは感心するわ本当。…朱桓(しゅかん)、字は休穆(きゅうぼく)よ。謝罪で済む問題じゃないでしょうけど、改めてお詫びさせて」

 

 

「っ!(留賛と…朱桓か!孫呉には若き将星が集っているとは思っていたが、ここまで揃っているとは驚きだな)」

 

 

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 留賛、字を正明。三国志において孫呉に仕えた将軍の一人である。前述の賀斉や呂岱らと同じく三国志演義ではなく正史三国志において大いに名を遺した武将と言える。

 

 

 彼を語る上で一番に挙げられるのは、次の逸話である。

 

 

ーそれは留賛が郡の役人を務めていた時の事である。当時は黄巾の乱が勃発して世が乱れていた頃であり、そんな中で留賛は黄巾賊の首領の一人である呉桓を討ち取って見せた。

 

 

 だが戦いの中で足を負傷して不自由になってしまったのだが、激しい気性の持ち主であった彼は家族の反対を押し切って足の筋を切ることを決め、激痛の余り気絶をしてしまうものの、その間に家族が足を引き伸ばしたため、傷が癒えた後には、びっこは引いても歩けるようになったのである。

 

 

 また戦場において留賛は敵と戦う時、髪を振り乱して大きな叫び声を上げ、側に仕える者達と大声で歌を歌ってから戦い、必ず勝利したという記録が残っている。

 

 

 後年、もはや立つ事も出来ない死病に侵されながらも最期まで戦場に立ち続け、そうして壮烈な最期を遂げる事になった留賛。その死後、彼は陶弘景と言う後世の人物が著した『真霊位業図』において道教の神として列される事になった。

 

 

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 朱桓、字を休穆。三国志において孫呉に仕えた将軍の一人であり、孫呉において仕えた臣下の中でも名門として知られた『呉の四姓』の一つである朱家の出身でもある。

 

 

 その性格は過ちを認めず、人の下につくことを嫌う偏狭な所があった一方で配下に対しては優しく接し、恩賞が足りないときは自身の財産を分与するなど、部下想いの人物であったという。また、血縁の者達を厚く援助した。

 

 

 伝承において朱桓には一万人の私兵がいたが、記憶力に強く、彼らと彼らの家族の顔と名前を覚えており、彼が亡くなった時に配下の兵士の多くが嘆き悲しんだと言われている。

 

 

 戦場においても活躍を成した良将であり、三国志演義において夷陵の戦いの後に曹丕が攻め寄せた時には空城の計で曹仁軍をおびき寄せ、諸葛虔、王双を破ってみせ、石亭の戦いにおいては全琮と共に陸遜軍の都督となり、曹休軍に大勝して張普を討ち取ってみせた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「うーむ…正直に言うと、俺は留賛殿、貴公にそこまで恨まれる様な事をした覚えがないんだが…良ければ事情を話してくれないか?」

 

 

 壮也が指で頬を掻きながら困ったように問いかけると、留賛は悔しそうに顔を歪め、橙の瞳から涙を流しながら叫んだ。

 

 

「そんなの決まってるじゃないか!椿の心を奪った憎い相手だからだぁ!!」

 

 

「椿の、心…?」

 

 

 留賛の魂の叫び…とも言うべき咆哮を聞いてもなお、壮也には身に覚えがなかった。寧ろ益々訳が分からないと言う感じで首を傾げ、恐らく『?』のマークが頭上に現れているかもしれないだろう…壮也は内心そう思っていた。

 

 

 そこに留賛の隣にいた朱桓が拱手をしながら頭を下げ、事情を話し始めた。

 

 

「すいません、そこの馬鹿が面倒をかけて…留賛の奴、いわゆる女性を口説くのが好きな女たらしって奴で、これまで結構浮名を流してたんです。そんな時に千冬さんの教導で将軍見習いが一堂に会した時に椿…淩統をみて一目惚れしてから椿一筋でいたんですけど、その椿が宗也殿に心を許しているのを聞いて、嫉妬に駆られて今回の事を…ってのがこの事態の動機なんです」

 

 

「な、成程…そう言う事だったのか」

 

 

 朱桓が話してくれた背景を聞いて、壮也は苦笑いをしながら納得した。恋は盲目…とはよく言った物、内心でそう思いながら壮也は彼女に声をかけた。

 

 

「留賛殿、俺は別に椿の事を奪った積りはないさ。肩を並べる仲間…と言う感じで接してきたつもりだしな。それに俺には大切な人がいるんだ、彼女を…愛紗を裏切るつもりは毛頭ない。それだけは分かってくれ…と言っても、納得できないかもしれないけど」

 

 

 壮也がそう語りかけた途端、留賛は驚愕したと言う感じに目を見開いていたが…やがてばね仕掛けの様に立ち上がったかと思うと、縄を力づくで引きちぎって見せた!

 

 

「………こ、これで私が認めたと、思うなよおぉぉぉ!!」

 

 

 そしてそんな捨て台詞を遺しながら、猛然と走り去っていったのである…。

 

 

「行ってしまったか…分かってくれれば嬉しいんだけどな」

 

 

「壮也、貴方って本当に懐が深いと言うか何というか…改めてごめんなさいね。雛菊って女たらしな所を除けば勇猛果敢で、母様も目をかけてる一人なのよ。近いうちに謝罪に行かせるつもりだから心配しないで」

 

 

「ああ、分かったよ。それより…そこにいる皆の武具も年季が入っているように見えるな。良ければ新しい武具に作り直してもいいが、どうだ?」

 

 

 壮也がその場にいた将軍見習いである朱桓、宋謙、賀斉らに提案すると…三人は目を輝かせて問い詰めた。

 

 

「ま、マジか!つーか私と紫陽花って、アンタに斬りかかった相手なんだけど!?」

 

 

「悪意があって斬り懸かったのでないのなら、別に構わないさ。それに得物という物は、自分の命を預ける半身にも等しい存在だ。それが戦いの中で壊れたとあっては、武人としては死んでも死にきれないだろう?」

 

 

「願ってもない事っスよ!お礼の言葉も出ないくらいっス!!」

 

 

「私の武具まで作ってくれるなんて、本当に貴方には感謝しかないわ…。せめてもの返礼ではないけれど、私の真名は薊って言うの。どうか貴方に受け取ってほしいけど、いいかしら?」

 

 

「おっ!薊が名乗ったんなら私らも名乗らねえとな!私は隼ってんだ、宜しくな!」

 

 

「私は紫陽花って言うっス。徐寧殿、貴公の善意ありがたく受け取るっス!」

 

 

 三人がそれぞれに真名を名乗ると、壮也もまた拱手をしながら名乗りを上げた。

 

 

「俺の真名は壮也だ。三人…いや、留賛殿の分も含めて四人分の武具を作ってみせるよ。それで頼みたいんだが、留賛殿の使っている武具の事も聞かせてくれると嬉しいんだが、いいか雪蓮?」

 

 

「…はあー、貴方って本当に器が大きいったらないんだから。いいわ、喜んで協力するわよ」

 

 

 …かくして、宗也の身に降りかかった思わぬ出来事は幕を下ろしたのであった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 その後雪蓮から留賛の使っている武具の事を聞いた壮也は、鍛冶場に籠って武具の製作を始め、数日経った頃に朱桓達が、壮也に会うのを嫌がる留賛を引きずりながら連れてきた際に、制作した武具を贈与する事になる。

 

 

 まず朱桓に贈与したのは、茜色の鳥が翼を広げた様な形状の鍔をし、鍔の中央に青い宝珠を埋め込んだ双剣『閃飛燕(せんひえん)』。

 

 

 次に宋謙に贈与したのは斬撃に適した刃を取り付け、二つの月牙がその両方に取り付けてある形状にし、赤と黒に彩られた柄と言う外見をした十字戟『飛旋連戟(ひせんれんげき)』。

 

 

 賀斉に贈与したのは、鉤が四つある形状の碇の穂先を取り付けた碇槍『長槍黒狼(ちょうそうこくろう)』。

 

 

 そして留賛に贈与したのは、金色の翼を広げている鵬を彷彿とさせる鍔が印象的な迅雷剣『翼翔煌剣』であった。

 

 

 ちなみに留賛は、初めこそ壮也の下を訪れるのがよほど嫌だったのか、鍛冶場でも恨めしそうに彼を見ていたのだが、彼が自分の武具までも作ってくれた事にはさすがに驚いており、暫く眺めていたが…。

 

 

「…その。正直に言わせて貰うが、私は今もお前の事が好きにはなれない。だが…恩を受けてそれに報いないような恩知らずではないと思っている。……雛菊(ひなぎく)だ。こ、これで貸し借りなしだからなぁ!?」

 

 

 そんな言葉を残しながら鍛冶場を猛然と飛び出していった…ただ、壮也は気づいていた。彼女の顔に喜色めいたものが浮かんでいた事に。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 そしてそれから数日が立ち、壮也は炎蓮の下を訪れていた。その日はちょうど炎蓮と宿将の四人、そして文官筆頭として孫呉の内政面における重鎮である張昭が一堂に会しており、机に地図を広げながら今後どの様に動くかを議論しているようだった…。

 

 

「よう壮也、今日は何の用だ?悪いが今は取り込み中でな、ちょっと待っててくれると助かるんだが…」

 

 

 だが、机の上に広がっている地図を凝視していた炎蓮がそう言いながら顔を上げて壮也の方を見たのだが…彼の瞳に、強い決意が宿っているのを見て取った彼女は、いつになく真剣な表情をして問いただした。

 

 

「……何時になく覚悟を決めた目をしてるじゃねえか。そうか…行くのか?」

 

 

 炎蓮の問いかけに、壮也もまた拱手をし、深くお辞儀をしてから宣言した。

 

 

「はい。長らく炎蓮殿、そして孫呉の人々と過ごしてきました。ここでの日々は俺にとっても掛け替えのない、素晴らしい日々だったと思っています。ですが、故あって…ここを発とうと思っています」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 その頃、荊州長沙から遠く華北に位置する距鹿の地に於いて…。

 

 

「地和姉さん、準備は整ったって」

 

 

「そっか…ありがとう人和。いよいよね…」

 

 

「ちぃちゃん、本当にやるんだね…?」

 

 

「うん…洛陽に行ってた人が処断された以上、手を拱いていたら後手に回っちゃうから」

 

 

 そう言って陣幕の中で集まっている三人の少女達。その内の水色の髪の少女が桃色の髪の少女に語り掛ける。

 

 

「…そうだね。壮也さん、心配してるだろうね」

 

 

「そうね…けど、私達が動けば朝廷の奴らも指名手配犯に関わってる暇はなくなるもん!…何時か再会した時に、謝ろう!天和姉さん、人和!」

 

 

「うん!」

 

 

「地和姉さん…そうですね!」

 

 

 三人の少女達による固い決意と共に、大乱の狼煙が上がろうとしていた…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 孫呉の人々との別れを経て再び旅立つことになった壮也。一方壮也を求めて旅を続ける愛紗は、ある武人の窮地に見える事になったのだが…続きは次回の講釈で。




オリジナル武将


『陳武・子烈』(容姿、性格は『リコリス・リコイル』に登場する『錦木千束』を参考にしてみました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの少女。活発で自由奔放、明るい性格の持ち主であり周囲を巻き込んで楽しくするような魅力を持つ。


 その一方で戦場では、母譲りの勇猛さを持つ雪蓮に付き従って武勲を挙げて見せる実力を持つ。武器は『鴛鴦鉞』(三国無双7でDLCとして登場した武器)


 三国志演義において顔は黄色、目は赤で容貌怪異だったという記述があり、孫策が江東進出をしたころに仕官し活躍した。


 正史三国志においては孫策が劉勲を破った時、降伏した彼の将兵を選抜して軍団を組織し、陳武に指揮させたところその軍団は精鋭揃いで負け知らずだったという。


 ただし後世において『三国志』呉伝においてそこまでの記述が書かれてはおらず、どちらかと言うと彼の息子や庶子の方が書かれている事が多い。


『董襲・元代』(容姿、性格は『リコリス・リコイル』の『井ノ上たきな』を参考にしました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの少女。陳武とコンビを組んで戦う事が多い。


 真面目な振る舞いのなかに、強く鋭い上昇志向を秘め、炎蓮や宿将である祭や粋怜と言った面々に追いつこうと突き進んでいこうとする不器用さと熱さを持ち合わせている。武器は『三節棍』(三国無双7において淩統が使用した武器)


 三国志においては孫策が会稽間で攻め寄せた際に仕官したとされ、彼が若くして命を落とし、孫権が後を継いで不安に思った呉夫人に相談された際、万一の心配もないと大言壮語したとされる。


 また黄祖との戦いの際には、矢が雨のように降り注ぐ状況で決死隊を率いて奮戦、勝利の一翼を担って見せた。


『宋謙』(容姿、性格は『インフィニット・ストラトス』に登場する『ダリル・ケイシーことレイン・ミューゼルを参考にしました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの少女。元は呉群出身の武芸者であり、地元で敵なしだったのだが、その噂を聞きつけて訪れた雪蓮との戦いに敗北。彼女の強さに感銘を受けて孫呉の軍に一兵卒として参入。


 そこでも腕っぷしの強さを示した事で炎蓮の目に留まり将軍見習いとなった。同時期に加入していた賀斉とは恋人同士であり、戦場でもコンビを組んでいる。普段は面倒臭がりな所があるものの、決める所はきっちりと決めて見せる。


 武器は『十字戟』(三国無双7 猛将伝に登場した『呂怜騎』が使用する、柄の両端に刃のついた長柄双刀を十字に組み合わせたもの)


 正史三国志と三国志演義で生涯や最後が異なっている武将であり、三国志演義では合肥の戦いにおいて孫権を護ろうとした際に楽進に射殺されたのに対し、正史三国志では夷陵の戦いにも参戦した事になっている。


『賀斉・公苗』(容姿・性格は『インフィニット・ストラトス』に登場する『フォルテ・サファイア』を参考にしました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの少女。上記にもある様に宋謙とコンビを組んで戦う事が多い。武器は『碇槍』(BASARAの『長曾我部元親』が使用している、穂先が碇の形をした長槍)


 黒兎と同じくらいに小柄であるものの、戦場では色鮮やかに染められた鳥の羽で飾り付けた兜を被り、縦横無尽と言えるほどに動き回って戦って見せる荒武者。だが平素の時はマイペースで宋謙と過ごす事が多い。


 三国志演義には登場しない一方、正史三国志において異民族討伐や反乱鎮圧などで功を成した人物。また自身を含め配下の将兵の装備などを上質で豪華な武具を着飾って戦に赴いたと言われており、目に見るだけで彼の軍と分かるほどであったと言う。


『留賛・正明』(容姿、性格は『インフィニット・ストラトス アーキタイプブレイカー』に登場する『ロランツィーネ・ローランディフィルネィ』を参考にしました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの少女。女性を口説く事が好きな女誑しな一面を持ち、特に今は椿にご執心。武器は『迅雷剣』(無双7において司馬師が使用していた、細身の刀身を持つ長剣)


 戦場に立つようになったのも『活躍をすれば女性を口説きやすくなる』と言う単純明快なもの。ただしそれを除けば勇猛果敢な一面を見せる。また恩義を重んじる人物でもあり、椿が心を許している宗也に敵意を燃やしつつも、自分にも武具を作ってくれた事に感謝して真名を預けた。


 三国志演義には登場しないが、正史三国志において活躍が記述されている武将。戦場で負傷した際、家族の反対を押し切って足の筋を切る事で復帰して見せたと言う逸話を持つ。


『朱桓・休穆』(容姿、性格は『インフィニット・ストラトス アーキタイプブレイカー』に登場する『ベルベット・ベル』を参考にしました!)


 雪蓮の下に配置された将軍見習いの一人で、江東における名家の一つ『朱家』出身の少女。


 孤高かつ冷酷無比と言う性格をしているが、どちらかと言うと他の将軍見習いの少女達の暴走に手を焼く苦労人な一面を見せる事も…。武器は双剣(三国無双4において陸遜が使用していたもの)


 過ちを認めず、人の下につくことを嫌う性格であったが、配下に対しては優しく接し、恩賞が足りないときは自身の財産を分与するなど、部下想いの人物であったという。


 また飛頭蛮と呼ばれる怪異の伝承にも登場している。


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