後書きに今回登場したオリジナル武将の設定をお送りしようと思います。
黄巾大乱
気を失った少女を倒れる直前に抱き留めた愛紗は、紅葉に指示を飛ばした。
「紅葉!近くを見て来てくれ!恐らく近くに避難をしている村人がいるはずだ!」
「分かりました!」
紅葉は元気にそう答えると、猛然と駆け去っていった。愛紗はひとまず近くの木に気を失った少女を横たえると、周囲を警戒し始めるが…。
「も、もし…そこのお方!」
そう声を掛けられて振り向くと、年老いた老人の男性が恐る恐ると言う感じで立っていたのである。
「貴公は?」
「この村の村長でございます…!村の様子を確かめようと来たのですが、よもや賊共は貴方様が!?」
「いや、私が駆け付けた時にはこの気を失った少女が孤軍奮闘して村を護っていたのだ。…私が助太刀せねば危なかったところだがな」
愛紗がそう言って気を失っている少女に目を向け、村長も驚きつつも村を護ってくれた少女に感謝が尽きなかった。
「っ!この少女が…思えばこの少女が全身を土埃や傷だらけにしながらもこの村に訪れ、避難を呼びかけてくださらなければ儂らはどうなっていた事か…!まことに、感謝に堪えませぬ…!」
「長老、この少女を休ませたい。どこか療養できるような場所はないだろうか?」
「それでしたら儂の家にお越し下され!貴方様にもお礼をしたいので…!」
長老の提案に、愛紗も鷹揚に頷いた…。その後周囲を捜索していた紅葉も避難していた村人と鉢合わせた事で共に戻ってきたのは言うまでもない。
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「……ここ、は?」
少女が目を覚ますと、そこは小ぢんまりとした屋敷の一室だった。そして自分は今その一室に寝かされており、近くには水で濡らしてある手ぬぐいが入れてある盆が置かれていた。
「気が付いたか?」
そして自分にかけられた声に気づき、少女が声の方に目をやると…そこには先ほど自分を助けてくれ、手を差し伸べてくれた黒髪の女性が安心させようと言う風に微笑みながら座っていたのである。
「貴方は、さっきの…ここは…。っ!?村は!?あいつらは!?」
少女が慌てて起き上がろうとするも、背中に痛みが走って顔を歪め、それを見た黒髪の女性もまた彼女を優しく宥めた。
「まずは落ち着け、手当てが済んだばかりでまだ傷が癒えた訳ではないのだからな。…ここはこの村の村長の家だ。それと村を襲おうとした賊共もすでに逃散していった。…そなたが孤軍奮闘したおかげで、村は救われたのだ。だから安心すると良い」
黒髪の女性の言葉に、少女は心底安堵した様な溜息を吐きながら再び横になった。それを見て安心したのか、黒髪の女性は名乗り始めた。
「そういえばまだ挨拶をしていなかったな…改めて、私は関羽。字を雲長と言う。貴公の名を聞かせてくれるか?」
黒髪の女性…関羽が名乗ったのを見た少女は、自分もまた己が名を名乗ったのである。
「あ、あたしは…りょ、
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三国志において長く生きた武将と言うのは非常に少ない。まして戦乱の世であった以上数多の将星が綺羅星の如く存在し、時に争った末に堕ちて行ったのだから。そんな三国志の中において黄巾の乱から蜀漢の滅亡と言う歴史を見届けるほどに長く生きた武将が、蜀に仕えた『
正史においては関羽の下で手簿(帳簿をつかさどる人)として登場する。関羽が呉の呂蒙に敗れた後は呉に投降していたのだが、関羽の仇を討ちたいと言う想いは強く劉備の元に戻る為に、自分が死んだというデマを流しておいた母親と共に呉を脱し、関羽の敵討ちに呉征伐に出ていた劉備と出会い帰参を果たした。
劉備が没した後はその遺志を継いだ諸葛亮やその愛弟子となった姜維に従軍して数多くの戦場に立ち、多くの勲功を上げて見せた。果断激烈な人物であったとされており、張翼とともに大将となったとき、人々は「前に王平・
蜀漢の末期では、老齢ながら蜀漢を支える要の一人となるも、263年に魏が攻めてきた時、姜維・張翼と共に剣閣を守備し最後まで抵抗したが、迂回した鄧艾によって成都が陥落したため降伏し、その翌年である264年に洛陽に連行される途上で病死したと言う。
三国志演義においては、諸葛亮や姜維に従軍して活躍したのは間違いないのだが、北伐の際に司馬懿をあと一歩の所まで追い詰めた時の事…この時司馬懿は分かれ道まで逃げてきた時に自分が被っていた兜を道の一方に投げ捨てるとそれとは逆の道に逃げ、追ってきた廖化は投げ捨てられた兜を見てそっちの方に追いかけてしまい、司馬懿を取り逃がしてしまった。
諸葛亮は司馬懿の兜を手に入れた廖化の戦功を評価したものの、「もし関羽なら(意図を見抜いて)司馬懿を捕らえることが出来ただろう」と、思い耽ったとされ、後世においてこの時の逸話がもとになった「蜀中に大将なし。廖化を先鋒にする(蜀中無大将、廖化作先鋒)」と言う諺が生まれる事となったのである…。
ちなみに廖化と言うのは改名した名前であり、元の名は廖淳(あるいは惇とも言われている)であったとされている。
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「そうか…廖淳と言うのか。お前の戦いぶりは見届けさせてもらったが、実に見事な戦ぶりだったな。それに、村人に危害が加えられない様に避難を呼びかけ、その後単身村に残って奴らを釘付けにしていたと言うではないか。民の犠牲を良しとしないその心も、見事であった」
愛紗が廖淳の名乗りを聞き、先ほどの孤軍奮闘ぶりと民草を巻き込ませまいと言う気概を見せた事を褒め称えたのだが…当の廖淳は居たたまれない気持ちでいっぱいだった。
「っ…あたしは、貴方にそんな風に褒め称えられる様な人間じゃないです。あたしは…村を襲おうとしたあいつらの、仲間でもあったから」
そう言うと彼女はこれまでの事をぽつりぽつりと語り始めた…天変地異などによる凶作で苦しむ民やそんな彼らにも徴税で搾り取ろうとする役人を見ても、何もできずにいる日々を送っていた事。村に立ち寄った黄色い鉢巻を頭に巻き、朝廷への反抗を高らかに叫ぶ者達の言葉に心打たれ、年老いた母親と喧嘩別れをして家を飛び出し、彼らの仲間になった事。
そうして仲間となって共に行動していたものの、あろう事か悪徳役人もおらず平穏な日々を送っているこの村を襲撃し、略奪を行おうとしていた頭目を殴り飛ばして脱走した事などを…。
「あたし…本当にバカでした。聞こえの良い言葉に聞き惚れるあまり、何が正しくて何が間違いか…それを考える事をしないで、よく考えろって叱ってきた母さんとも喧嘩別れして家を飛び出して…多少悪徳役人とかを倒していい気になっていて、そしたら役人に苦しめられてもいない、平穏なこの村を襲って略奪しようとか言い出した連中を止められないで…」
そう言い続ける廖淳は、我知らぬ内に瞳から大粒の涙をこぼしながら悔しそうに吐き出していたのである…苦しんでいる人たちを救う為に黄巾の者達に加わったと言うのに、いつの間にか苦しんでいる民草を標的にした略奪に加わろうとしていたのだから。
廖淳の告白を愛紗は静かに聞き続けていたが…やがて廖淳を真っ直ぐに見据えながら問いかけた。
「…廖淳、お前に一つ問いたい。ではお前は、この先どうしたいのだ?」
「どうって…?」
「お前が自分の愚かさを悔やみ、過去を悔やんでいるのは分かった。だが…これから先をお前はどうしたいのだ?ただ己の過去を悔やんで泣き悔やんでいるだけなのか、それとも…」
そう言って愛紗はいったん言葉を切り…一呼吸おいてから問いかけた。
「この出来事を戒めとして、新しい道を探すかだ」
「新しい、道…」
「ああ。起きてしまった過去は変える事は出来ない、だがだからと言って過去を悔やむあまり立ち止まっていても何も始まらない。…私がそうだったようにな」
「っ?関羽様も、そんな事があったんですか?」
廖淳の問いかけに、愛紗も頷いて事情を語りだした。
ー…私が嘗て陽県にいた時、十常侍の筆頭である張譲の親族である張朔が新しい太守として赴任する事になった。だがその男は、かつて私が生まれた解県の太守でもあり…私の両親が命を落とす切欠にもなった男だったのだ。…両親の仇を討とうとした私の下に駆け付けたのが、徐来芳明…私にとって掛け替えのない、大切な男だった。
ーそうして徐来は…あいつは私に代わって張朔を手にかけると、私を庇って咎人になってしまった。本来なら、私も共に罪を被らねばならなかったのを、あいつ一人に背負わせてしまったのだ。好いていた男が罪を被るのを止められなかった…その事実に私は心が折れ、一度は武の道を捨てようかと思っていたのだ。
そこまで言って一旦愛紗は言葉を切り、暫く黙ってから口を開いた。
「だが…私は再び立ち上がった。私が武を磨き続けてきたのは、悪政を敷く役人達や我欲のままに牙を剥く賊共によって苦しめられる民草を救いたい…幼い頃の私の様に、大切な人を失う悲しみを抱く人を一人でも少なくしたいからこそ武を志したという事を想いだしたのだ。そして…今この時もこの大陸を放浪するあいつと、壮也と再び出会い、あいつの傍らにいたい…その為に私は今ここにいる」
そう言い切った愛紗は、そのまま黙り込んでいたが…一言だけ問いかけた。
「…今の話を聞いてどう思った?私を情けないと思うか?」
愛紗の問いかけに対し…廖淳の答えは、『否』だった。彼女は首を横に振りながら答えた。
「そんな…そんなことありません!!関羽様の方が一番辛くて、苦しんでいたにも拘らず立ち上がって見せた!それに…愛する人と再会したいって気持ちは、間違いじゃないと思います!」
「…そうか」
廖淳の答えに愛紗は嬉しそうに微笑んだ。そして愛紗は立ち上がると部屋から出ようとして…その前に立ち止まり、廖淳に声をかける。
「何はともあれ、先ずは傷を癒す事から始める事だ。私達もそれまでこの村に逗留しているつもりだ…それまで、よく考えておくといい」
そう言い残し、愛紗は部屋を出て行った。残された廖淳は包帯が巻かれている肩を抑えながら、これからの事を考え始めた…。
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それから数日が経った頃、逃げ散った賊が再び来襲する可能性を考えて村に逗留する事になった愛紗の下に、傷が癒えて動ける様になった廖淳が愛紗の下に現れた。廖淳は跪き、拱手をしながら願い出た。
「…関羽様。こんな事を頼むのは失礼かもしれませんけど、あたしを貴方のお供として連れて行ってください!あたし…このまま立ち止まっていたくはない!関羽様の様に、苦しむ人々を一人でも多く助けたい…嘗て抱いたその思いは、絶対に間違いじゃないって思っているから!…あたしは足を洗ったとはいっても賊上がりで、関羽様のお供には相応しくないかもしれません!でも、どうかあたしを関羽様のお供として共に行くことをお許しください!」
そう言って頭を地面に擦り付けながら願い出た廖淳に、愛紗はしばし瞑目していたが…やがて片膝をつきながら廖淳を起こすと、彼女の瞳を真っ直ぐに見据えながら問いかけた。
「…それがお前が考え、選んだ選択なのだな?」
「っ!はいっ、その通りです!」
「そうか…ならば良い。見ての通り私は流浪の身、仕えるべき主を持たない身の上だが…それでも私についていきたいと言うお前の意思を尊重しよう」
愛紗がそう言うと、廖淳は喜色満面と言う感じで笑顔になり、嬉しそうに頷いた。
「あ、ありがとうございます!この廖淳、一命を賭して関羽様を支えるつもりです!『だがその前にだ』えっ…?」
愛紗はそう言いながら廖淳の肩に手をやりながら、呟いた。
「愛紗、それが私の真名だ。主従になるのなら、互いに互いの真名を預けるのは当然の事だろう?…お前の真名も、私に預けてくれるか?」
愛紗の言葉に、廖淳は初め言っている意味を理解できずに呆然としていたが…やがて大粒の涙を流しながら拱手をしつつ深々と頭を下げていた。
「…っ!!も、もぢろん、でず…!!あ、あたしの真名は
廖淳は泣き崩れながらも真名を愛紗に預け、愛紗も力強く頷きながらそれを受け取ったのである…。
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やがて泣き止んだ廖淳…里香が涙を手で拭うと、意を決した様に愛紗に声をかけた。
「愛紗様…あたし、一つ決めた事があるんです。聞いてもらえますか?」
「決めた事?」
愛紗が問いかけると、里香は力強く頷いて続ける。
「名前を変えようと思うんです…過去と決別して、新しい生き方を歩むために」
「そうか…名前は決めているのか?」
その問いかけに対し、里香は頷いて名乗りを上げた。
「『廖化』…そう名乗ろうと思います。新しい生き方に変わるって意味を込めて…!」
「廖化、か。うむ、良い名だ。だが…ならばまずはご母堂の下に行って、その許しを得てからにするのだな」
「は、はい!」
愛紗の指摘に思い出したように慌てる里香…それを見て愛紗も苦笑しながらも、自分の道を新たに見出した彼女の旅立ちを温かい目で見守る事としたのである。
後に『軍神』、『義将』と称される事となる関雲長…彼女が率いた『関家軍』において彼女を支えた三人の腹心。一の従者として知られる事になる『韋駄天』こと周倉に続き、二の従者として彼女に終生忠義を尽くす事となる、『波濤』の二つ名を以て称される廖化が、ここに誕生した瞬間であった…。
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その後村を離れた愛紗達は新たに旅の供となった廖化こと里香を連れて、彼女の故郷を訪れていた。因みに周倉は…新たな仲間となり旅の供となった廖化とは馬が合ったのか、たちどころに肝胆相照らす仲となっていた。
里香の母親は彼女の姿を見るまでは憔悴しきったように家の前を掃除していたのだが…彼女の姿を見た途端、涙を流しながら里香に近づき、彼女を強く抱きしめて泣き続けた。そして喧嘩別れをして飛び出した事を叱りつけたかと思うと、無事である事を知ってさらに嬉し泣きをする有様だった。
やがて里香が愛紗の従者として共に旅をする事、自らの名前であった『廖淳』を『廖化』に改めた事を報告すると…里香の母親は暫し黙り込んでいたが、愛紗の方に向き直ると深々と頭を下げた。
「関羽様、我が娘をお助けいただいた事…母として心から感謝申し上げます。見ての通り娘は一度決めたら梃子でも曲げない頑固者。迷惑をかける事もあるかもしれませんが、努力を惜しまぬ真っ直ぐな性根を持っております。こんな娘ですが、どうか関羽様の下で教え導いてくださいませ」
里香の母親の言葉に、愛紗もまた力強く頷いてこれに応えた。
「ご母堂殿、貴方の願いしかと聞き届けます。里香はきっと、私をよく支えてくれるでしょうから」
そうして翌日、里香は母親と別れるのを見届けた愛紗は再び旅をする事となったのである。
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その最中、愛紗は紅葉から近頃の天下の様相を聞かされていた。周倉は時折、関羽の元を離れてはその健脚を以て大陸中を駆け巡って情報を集める様な事をしていたのである。
「黄巾賊?」
「はい。元々は『数え役萬☆姉妹(かぞえやくまん・しすたぁず)』って呼ばれた一団が『黄巾党』っていう名前に改名して、軍隊を作る一方で古参の構成員だった
紅葉が各地を駆け巡った事で得た情報を聞いた愛紗は、しばし感心する様に下あごに手を当てながら思案していた。
「…初めは漢朝を内側から変えようとしていたのか。地和達も性急に動こうとしなかったのは良い事かもしれんが…だが、黄巾賊とは?」
「それがさらにややこしい感じになってるんです…初めは黄巾党の内部では頭目である張三姉妹を含めた、『漢朝を討ち倒し、罪なき民草が貧困に苦しめられない國を作る』って言うのを目的に掲げている『黄巾軍』ってのが主流でその様に動いていたんですけど、次第に『そんなこと知った事じゃねえ。好きなように生きて何が悪い!』って言う…言うなれば骨の髄まで弱い者から奪う事しか頭にない賊共が主に集まってできた『黄巾賊』ってのが生まれちゃって、それで黄巾党内部が真っ二つに割れちゃってるみたいなんです」
紅葉がそう答えると、里香が合点がいったように納得していた。
「…あたしが加わっていたのも、その黄巾賊って奴らだったのね」
「それで、今はその『黄巾党』にどのような将帥がいるのだ?」
「そうですね…まず黄巾軍では張三姉妹である張角、張宝、張梁。それと青洲黄巾軍を率いている
「…そいつらってどうしようもない奴らね。天変地異とか、悪徳役人に苦しんでいる民草を狙って略奪とかしようって考えるなんて」
里香が憤然やるせないと言う感じで憤っているのを見て、紅葉もまた悔しそうに答えていた。
「まあ、元々強気に媚び諂い、弱気に強く出るような賊共だからね…。黄巾党に加わったのも寄らば大樹の陰…って考えがあったんだと思う。…『鶏口となるも牛後になるなかれ』っていう考え自体、そいつらになかったって事だね」
「よもや黄巾党の内部でここまで分裂、対立をしていたとはな…他にも将帥がいるのか?」
「はい、その通りです。先に出て来た青洲黄巾軍の管亥なんですけど、潁川や汝南の黄巾賊の頭目である
その言葉を聞いた愛紗はふと思い至った。
「白波賊?そういえば、私が河東郡で宗也と共に暮らしていた時に、私達の村を度々襲いに来ていた賊共を返り討ちにしていたが…そいつらだったのか。あの時も相当に討ち取って追い返してはいたが…」
「他にも幽州の元中山太守であった
「動きが読めない…何者だ?」
紅葉の最後の言葉に愛紗が気にかかって問いかけると、紅葉も頷きながらこれに応えた。
「并州を根城にして割拠している、罪人や賊を糾合した百万もの大軍を擁している『黒山賊』…その頭目である
「漢朝に歩み寄るって…腐敗している奴らに媚びを売ってるってこと?」
里香が信じられないと言う感じで問いかけたのに対し、愛紗は冷静に分析を行っていた。
「いや、違うな…その牛角と言う女傑には見えていたのだろう。この反乱が上手く行く可能性が低い事を。…軍という物は多くなればなるほど、統率を取るのが難しくなる。黄巾党も大規模になりはしたものの、その内部は黄巾軍と黄巾賊と言う二つの勢力に真っ二つに分かれて対立し、黄巾賊の狼藉によって黄巾軍もまた民草から敵と認識されるようになっている以上、漢朝も討伐軍を差し向ける好機を得ていると見たのだろうな…」
愛紗が冷静に分析したのを見て、紅葉も相槌を打つ様に頷いた。
「仰る通りです。現に朝廷内でも牛角の提案を受諾しようっていう動きがあるらしいです。彼らの帰順を許すだけで百万の軍勢が簡単に手に入るんですからね…それに黒山賊にはもう一人傑物がいるんです。牛角の妹分で黒山賊の副頭領を務めている…名は『
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并州…前漢の武帝が全国を13州に分割し各州に刺史を設置した際、山西省の大部分と河北省・内モンゴル自治区の一部(今日黄土高原が広がる地域)を并州とし、太原・上党・西河・朔方・五原・雲中・定襄・雁門の9郡管轄した土地である。
後に後漢末の混乱期において異民族の侵入が続くなどして州治となっている晋陽以外では、無法地帯そのものとなっており、その内の一つである上党が百万の大軍勢を抱えると豪語する黒山賊の本拠地となっていた。
しかしその本拠地となっている上党では、賊によって支配されているとは思えないほどに秩序が保たれていた。これは百万と言う大軍勢を持つ黒山賊の存在が異民族やそれ以外の賊達の蠢動を許さない抑止力となっていると言うのもあるが、それ以上に彼らを率いる指導者の存在が黒山賊の者達に乱暴狼藉を許さない要石となっていたからである。
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「…え、えっと姉御、もう一度言ってくれない?あたしに頭目の座を譲るって…冗談でしょ?」
上党の町の中央に作られた宮城の一室…そこに栗色のポニーテールをし、緋色の瞳を持つスレンダーな体格をしている少女が美しい黒髪を靡かせ、黒い瞳を持つ賊の頭目とは思えないほどの美麗な顔立ちをした女性に詰め寄っていた。
「冗談でこんな事は言わないよ。黒山賊の頭目…次の頭目はあんたに決めてる」
「いやいや噓でしょ姉御!?なんであたし!?まだ姉御ピンピンしてるじゃない!?」
そう言って翻意を促そうとする目の前の少女に対し、椅子に座っていた女性は息をつくと立ち上がって窓の外を眺めながら呟いた。
「
女性の問いかけに、炟と呼ばれた少女は少し考えこんだが…すぐさま答えを出した。
「それは…うん、多分無理かな。頭目の張三姉妹達が何とか軌道修正したり、黄巾賊の連中を説得したりしてるみたいだけど、連中聞く耳持とうとしてないし。それどころか連中が好き勝手している事で黄巾軍の奴らも民草からは『同じ黄巾の連中だ!』って毛嫌いされ始めてるみたいだから。…ひょっとして
炟の予想に対し、陽炎と呼ばれた女性も満足そうに頷いて続ける。
「ああその通りさ。漢朝を…国を相手取るには一にも二にも団結が必要にならなきゃならない。黄巾党は食い詰めた民草や燻ぶっていた武芸者、それに賊共を糾合して纏める事で大勢力を築き上げた。現に華北や中原を席巻するほどの勢力で、漢朝も警戒を向けているほどにね。けど、そうした連中の手綱を握る事に失敗した…賊って言うのは言うなりゃ血に飢えた獣さ。抑えていないと連中はめいめい勝手に暴れ回る…」
そう言って陽炎と呼ばれた女性は結論を導き出した。
「最初期の様にまだ数が揃っていない時ならそうした賊達に調練を施して矯正する事は出来たかもしれない。けど数を揃えようとするあまり、次第にその調練が不十分になっていった。その結果が今の内部対立に繋がっているって事さ。…あの子達の懇願を受け入れておいて助けないのは不義理かもしれないが、内部対立している今となっちゃあ、腐ってても正規軍を抱えている漢の連中を倒す事は出来ないって事さ」
「…だから陽炎の姉御は、漢の連中に帰順を持ち掛けたって事?何度も連中を返り討ちにしておいて?」
炟がそう問いかけると、陽炎は不敵な笑みを浮かべながら頷いた。
「当たり前だろ?こっちの力を示さないで帰順を申し出た所で使いつぶされるか、報奨を授けるとか言って呼び寄せられたところで袋叩きにされるってのが落ちって奴さ。下手に手を出そうとすれば火傷じゃすまない…そう示してから申し出れば、漢の連中も下手に手出しをしなくなるって事さ。…もっとも、連中もただでは認めようとしないようだけどね」
そう言って陽炎が漢から送られてきた書状を炟に手渡してきた為、書面に目を通した所…彼女の顔が不機嫌に歪んでいった。
「…『帰順を認める代わりに、現頭領の頸を献上するべし』ねぇ?随分な条件を突き付けて来たじゃない、漢の連中」
「まあ、奴らがこういう条件を突き付けてくるのは織り込み済みさ。…用意は整えてるんでね。おい、持ってきな!」
陽炎が部屋の外にいる兵卒に呼びかけると、兵卒が何かを載せている盆を持って入ってきた…それは『斬り落とされたばかりの生首』だったのである。
「あたしに似た死人の頸を化粧してあたしに似せた偽頸さ。こいつを持ってあんたが洛陽に赴けば、帰順は認めてくれるはずだよ」
「…けど大丈夫なの?幾ら化粧を施しているからって、ばれたらそれこそ厄介だと思うけど…?」
炟が不安を示すのを見た陽炎は、愉快そうに大笑いすると彼女の肩をバシバシ叩きながら安心させるように言葉をかけた。
「あっはっは!心配するんじゃないよ!今の漢を牛耳ってる宦官共は賊共の顔を知ろうとしない連中ばかりさ。何よりここで帰順を認めなきゃ、それこそ都の近くに百万の軍勢って言う、鎖に繋がれてない猛獣がい続けるんだからね?それに、だからこそあたしは暫く雲隠れするのさ。万が一感づかれたとしても、手出しができないようにね」
「いたたたた!?痛いって姉御!?…って雲隠れって、どこ行くのさ?」
「匈奴の縄張りだよ。南匈奴の単于である『
そう言い切ると陽炎は、愛用の二股の矛を手にするとそのまま部屋を出ようとして…いったん立ち止まり炟と呼ばれた少女に顔を向けて別れの言葉をかけたのである。
「…いいかい?頭領の座を譲った以上これからはあんたがこの百万の軍勢を抱える黒山賊の頭領なんだ。気を引き締めて臨むんだよ、褚燕…いや、『張飛燕』?」
「っ!…当たり前よ!牛角の姉御、後はあたしがしっかりと手綱を握って見せるわよ!…だから姉御、次に会う時まで元気で!」
そうして黒山賊の頭目であった陽炎こと『張牛角』と、その副頭目であり牛角から頭目の座を譲られた事で『張燕』と改名した『褚燕』はこうして別れる事になったのである…。
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『黒山賊、漢朝に帰順せり』…この報は漢に属する軍閥のみならず黄巾党においても激震を齎した。
【距鹿:黄巾党本拠】
その報が届いたことで、張三姉妹達は失意に沈んでいた。黒山賊はその本拠が并州と言う司隷…即ち都である洛陽にもほど近い所に割拠していた事で牽制の役目を担っていた彼らが降伏したという事は、漢朝も本腰を入れてこちらに討伐の軍を差し向けることに他ならなかったのである。
「…陽炎さん」
「天和姉さん、気を落とさないで。…炟さんからの密書で、陽炎さんは死んだ事にして姿を隠しているみたい。だからこれでお別れって訳じゃ…」
陽炎こと牛角の死を聞いた天和が悲しげに俯くのを見て、人和が慰めているのだが…地和は口惜しそうに顔を歪めていた。
「天和姉さん、人和…これはかなり拙い事になったわ」
「拙いって…?」
「…黒山賊の帰順による、官軍の反撃ですね?地和姉さん」
地和の呟きに戸惑いを隠せない天和に対し、人和は冷静に分析してから問いかけると地和は頷いた。
「うん…陽炎さんや炟さん達黒山賊がいてくれたからこそ、漢朝も下手に軍を動かせずにいた。けれど黒山賊が降伏した以上、漢朝も討伐軍を組織してあたし達を叩き潰すでしょうね。だからこそちぃ達もこれに備えないといけないのに…ああもう!黄巾賊の奴ら、全然ちぃ達の指示を聞こうとしない!!」
そう言い放ち、地和は怒り心頭と言う感じで卓を叩く。その場に卓を叩いた音が響き渡る中、天和は益々悲しそうに顔を歪めてしまった。
「…悲しいよね。辛い思いを、苦しい思いをしてきたのなら一緒に世の中を変えようって思って呼びかけて、それでみんな集まってくれたのに…自分勝手に暴れて、弱い人たちを苦しめる様になっちゃうなんて…」
天和の言葉に、地和や人和が慰め始めた。
「天和姉さん、貴方だけの責任ではありません。これは私たち全員の責任です」
「そうよ天和姉さん…最初の頃はそれほど数も少なかったし、しっかり教練を施してちゃんとした軍隊…『方』を作る事が出来た。けれど次第に数が増えてくるとそうした教練が少しずつおざなりになって行っちゃった。その結果が黄巾賊って呼ばれる連中の誕生と跋扈だもの…」
地和がそう声をかけて溜息をついたのだが…やがて、嘗て別れた愛紗の言葉を思い返していた。
ーなら忠告だけはしておく。そうして軍を作るのはいい。だが彼らの手綱はしっかりと取っておくことだ。
ー地和達が集めている武芸者は殆どがならず者か賊を生業とする者達が多いのだろう?ならば、お前達の軍が大きくなればなるほどに、彼らは地和達の目の届かぬ所で民草に乱暴狼藉を働くかも知れない。だからこそ、そうした者達の手綱を離す事はするなよ?
「……愛紗、貴方の忠告は正しかったよ。けれどちぃ達、失敗しちゃったみたい…。御免なさい壮也。ひょっとしたら、もう貴方に会えないかもしれないね」
そう呟いて窓の外を見る地和…彼女の目からはいつの間にか一筋の涙が流れ落ちており、それを見た天和や人和はかける言葉が見つからなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・
【洛陽・宮中】
一方、漢朝の首都である洛陽。その宮中において王朝の腐敗の元凶と言える者達…十常侍が一堂に会し、太平道の現状を精査していた。その頭目と言える張譲もまた持ち込まれた情報に目を通していた。
「…成程ね。今の黄巾党内部は黄巾軍と言う組織と黄巾賊と言う組織に二分され、互いに対立している…か」
部下からの報告が記された竹簡に目を通した張譲だったが…一通り目を通したかと思うと、心底退屈そうに竹簡を卓に放り投げると、椅子に座って不満そうに不貞腐れはじめた。
「退屈だ、ああ退屈だ…このまま漢朝を、僕達の栄華を引っ繰り返してみせるのかと内心小躍りして待ち構えていたと言うのに、蓋を開けてみれば内部対立で身動きが取れなくなってるなんて…ああつまらない!」
そう吐き捨てる張譲に、他の十常侍達は冷や汗を流してしまっていた。自分達の様な権力を持つ存在に比べれば、はるかに取るに足らないような百姓や貧民と言った連中がよもやここまでの大勢力を作り出し、軍団を組織までしていた…それだけでも宦官である彼らは度肝を抜かれたと言うのに、このお方にしてみればそれを『退屈』の一言で片づけてしまうのだから!
「し、しかし張譲様?奴らは軍団を組織する一方でこの洛陽に人を送り、漢朝を内部から揺るがそうとした事は事実ですし、寧ろその様な手段を取って見せた連中は侮れないのではないでしょうか…?!」
そんな張譲に対し、十常侍の一人である
「けれどその企みだって、馬元義と言う男の部下の密告でご破算になったじゃないか?…まあ考えてみれば、人間と言う生き物は遠大な理想を叶えようとするより、目先の富を選ぶような存在だ。密告をして金品を貰えるならそっちがいいと思った…という事さ。全く、部下の手綱位しっかりと握っていればこんな事にはならなかったろうに」
そう言って、傍から見れば密告によって命を落とした馬元義の不手際に呆れる…もっと言うとその失敗の原因を指摘する張譲に対し、他の十常侍らはますます顔をひきつらせた。彼にしてみれば太平道の計画がこのような形でご破算になった事が心底不満だったのだという事なのだろう…。
彼らは改めて張譲の大胆不敵、恐れ知らずさに肝を冷やしたのである…やがて思い返した様に張譲は近くにいた十常侍の一人である
「ああそうそう…。その密告してきた男…確か唐周だっけ?彼はその後どうなったんだい?報奨を貰った後、洛陽から立ち去ったと思ったんだが」
「は…ははっ!調べてみましたところ、洛陽の城外から離れた所で死体となって発見されておりました!何者かに殺されたようで報奨金もなくなっていたとか…ま、まさか張譲様が?」
ふと郭勝は自分の脳裏に浮かんだ予想…それを浮かべてしまった事で引きつった顔をしながら恐る恐る張譲に問いかけると、彼は穏やかな笑みを浮かべながら答えた。
「いや?僕は何もしてないよ?どうせ金目当ての流民に嬲り殺しにされたという所だろうね?最も…あんな奴にくれてやる金がもったいないと思った
「は、ははぁ!!」
むしろそれが答えだろう…!?心中でそう零しながらも郭勝はお首に出す事もなく頭を下げた。藪蛇をつつくわけにはいかないと思ったからだ…。
「それより今の問題は黄巾党の連中だね。
「はっ。まだ届いては『失礼いたします…!』…どうやら丁度良く来たようですな」
その時彼らが一堂に会している部屋に十常侍に与している宦官が入って来た。彼は竹簡を持っており、曹節に差し出すと直ぐ様部屋から退出する。
そして曹節もまた張譲にその竹簡を差し出し、彼がその竹簡を開いて中を一瞥すると…不満そうに溜息をつくと竹簡を卓に投げ捨てた。
「どうやら黄の報告を受けた陛下が討伐軍を組織する様に命じたようだね。…はあ。これでまた退屈な日々に逆戻りか。つまらない事だ」
そう言って部屋を後にする張譲…その後ろ姿を見送りつつ、他の十常侍達はつくづく張譲の不敵さに戦々恐々とするより他なかった。
「…つくづく、あのお方を敵に回さないでよかったと思った事は無いわい」
「全く…これだけの栄耀栄華を欲しいままにしておきながら、それを覆すような出来事を喜々として待ち望むなど、並大抵の器ではないわ…」
「あのお方がその気になったら、国を立て直す事も出来るのではないか?」
「いや、本人にその気はないそうだ…だが、それが出来てしまうかもしれないと思ってしまうだけでも、あのお方の器が計り知れぬ…」
そう呟きながら、彼らは続々とその場を後にしたのである…。
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「それじゃあ黄?次来るときは新しいお菓子を用意してきてね?貴方の作るお菓子、とてもおいしくて楽しみにしてるんだから!」
「はい
漢王朝の現在の皇帝である劉宏のいる後宮…その一室から出てきたのは青に近い紺色の髪に金色の瞳を持つ、愛らしさを感じさせる風貌をした女性だった。
彼女の名は
黄巾を巻いた賊の討伐軍を立ち上げる…それを趙忠にとって愛らしく、全身全霊を以て甘やかしている劉宏に話して了承を得る。正直に言うとこんな話をあの愛らしいとしか言いようのない劉宏に聞かせたくないと思っていたのだが、十常侍の首魁と言える張譲の指示とあっては聞かない訳にはいかない。
ましてあの不敵かつ神すら畏れぬと言う言葉がこれ以上ないほどに似合っている張譲に歯向かったとしたら、きっと今の地位…劉宏の傍仕えと言う趙忠にとっては至福の居場所を簡単に奪われかねないと思ったから。
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『あら黄、今日は新しいお菓子を持ってこなかったの?』
『え、ええ…。それが、本日は陛下…空丹様に許可を得るために参上した次第で。陛下は黄巾党と呼ばれる者達をご存じですか?』
『コウキントウ?何それ?どんなお菓子なのかしら?』
『い、いえお菓子ではなく…近頃世を騒がせている連中なんです。ここ最近連中が暴れ回っている事で、お菓子を作る材料の流通が滞っているみたいでして…』
『何ですって!?…それは許せないわね。分かったわ黄、そのコウキントウって言う者達の討伐を漢王朝皇帝として許可するわ!私の楽しみである黄のお菓子を作らせないでいる事を後悔させてやるんだから!』
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こんな会話が交わされていたが、兎にも角にも黄巾党の討伐の許可を得る事が出来た趙忠は部下である宦官に事の次第を記した竹簡を張譲に渡す様に命じてゆかせたのである。
「ふう…張譲さんに使者は送っておいたし、とりあえずひと段落はついたとみていいでしょうか?」
そう思いながら廊下を歩いていると…趙忠の前に薄緑色の髪を靡かせ、紅玉を思わせる緋色の瞳をした女性が姿を見せた。その身には清楚な雰囲気を感じさせており、静かにしていれば異性を引き寄せるのは間違いない事だろう。
「あら、趙忠じゃない。陛下に何か用でもあったのかしら?」
「…これは何太后様、ご機嫌麗しゅう」
だが、微笑みながら挨拶をかけつつ現れた女性に対して趙忠は嫌悪感を露にしながら社交辞令的な挨拶を返しただけだった。何故なら趙忠はこの女性の事を、あまり好んでいなかったからである。
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彼女の名は何太后。漢朝の武官の一人である何進の妹であり、皇帝の妃である皇后…即ち太后となった人物である。
元々は姉の何進が市井の肉屋である様に彼女もまた市井に住む一人の娘に過ぎなかったのだが、幸運な事に劉宏に見初められた事が切っ掛けで皇后と言う、市井の人間と言う下層の人間では一生望んでも得られないような地位を得る事が出来たのである。
しかしその清楚な雰囲気とは裏腹に、市井で暮らしていた頃から『こんな貧しい暮らしで一生を終えたくない』と言う願望があり、さらに朝廷内で贅沢を覚えてからそれに執着する様になっていた。その為それを失うぐらいならば平気で色仕掛けを行うなど、目的のためなら手段を択ばない一面を持っていたのだ。
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「あらつれない返事。貴方達十常侍の方々とも懇意にしているのに…そもそも私の真名だって預けているのよ?もう少し愛想を見せてくれてもいいと思うわよ?」
「ええそうですね?最も…貴方の場合『手に入れる事の出来た栄華を失いたくないから』私達と懇意にしているだけでしょう?そんな方の真名なんて口にしたくもないですけど?」
趙忠…黄の痛烈な発言に、流石の何太后も顔を顰めるより他なかった。
「…忠告しておきますが、あまり好き勝手な事をしない事ですね。貴方が今の地位に就けたのも…偏に私達十常侍の首魁たる張譲さんの采配によるもの。けれどあの方は栄華を極めながらも、それを覆す何かを待ち望む不敵さと、子供の様な無邪気さ…そして残酷さを持つお方。もしあのお方の気が変わったのならば…いとも簡単にその栄華を失う事になる事を、お忘れなきように」
そう言い残し、黄はすたすたとその場を立ち去っていった…。
「…忌々しい事ね。けれど、私が今の栄華を手に入れられたのも奴らの力あってこそね…ああ腹が立つ!」
その後ろ姿を見ながら、何太后は憤然遣る瀬無いと言う感じに地団駄を踏みながらその場を後にした…。
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それから間もなく、王宮の大広間において張譲が勅令を読み上げ、呼びつけた何進に名を下した。
「何進将軍、劉宏陛下からの勅を申し渡す。貴公を大将軍に任命し、世を騒がす黄巾党の討伐を命ずる」
「拝命いたします…(…忌々しい玉無し共めが、余をその様に見下しおって。今に見ておれ…黄巾党などと言う賊如き、捻り潰してくれるわ)」
そうして何進は同じ様に漢に仕えている将軍である皇甫嵩や盧植、朱儁と言った者達に兵権を授けて討伐軍を組織する一方で、諸国にいる軍閥の者達に使者を送り付け、討伐軍への参加を求めたのである。
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【潁川・頓丘県】
頓丘県の県令に任じられている曹操の屋敷…そこでは華琳が股肱の臣と言える春蘭と秋蘭に桂花。そして彼女の下で経験を積んでいる北郷一刀らを呼びつけていた。
華琳の招集命令を受けた一刀が屋敷の広間に赴くと、そこには自身が仕える事になった主君の華琳に同輩となった春蘭と秋蘭、華琳の軍師を務めている桂花らがいたのだが…それ以外にも初めて見る顔ぶれがいた。
まず一刀から見て華琳の左側に立ち、華琳の近くに立っている一人は華琳と同じ金髪を左側に流すようなドリルのポニーテールにし、紫色の瞳をしている袖のない軽装の装束を纏った女性。
次にその隣にいる一人は同じく金髪を髪先の方がカールを巻いている髪型をし、左頭部に花の髪飾りを付けている紫色の瞳をしているひらひらのついた袖が印象的な装束を纏った女性。
そしてその隣にいる一人は同じく金髪をドリルを思わせる様にカールを巻いた髪型をし、可愛さと妖艶さを感じさせる装束を纏い、ウサギのぬいぐるみを手にしている薄い黄色の瞳をした女性であった…。
「来たわね一刀?少し遅かったようだけど…」
「ごめん華琳。鍛錬用の道具を片付けてから来たものだから…ところで、彼女達は?」
一刀が見慣れない少女達に戸惑っていると、合点がいったように華琳が紹介し始めた。
「成程ね…そういえばまだ紹介してなかったわね?彼女達は私の従妹達…まず私の左側に立ち、私に近い所にいるのは曹仁よ」
華琳が紹介をすると、紹介をされた少女が元気そうに手を挙げて名乗りを上げた。
「初めましてっすー!私は華琳姉の従妹、曹仁!字は子孝って言うっす!宜しく頼むっすよ一刀さん!」
「次に
華琳がそう紹介をすると、紹介をされた少女は拱手をしながらお辞儀をしてきた。
「華琳姉様から話は伺っております。私は曹純、字は子和と申します。宜しくお願いしますね?」
「そしてその隣にいるのが私の従妹の一人である曹洪。金銭感覚に優れていて曹家の金庫番を任せているの」
そして華琳が曹純の隣にいる少女の紹介をしたのだが…当の本人は一刀の事を疑念に満ちた目で見ていたのだが、やがて華琳の視線を感じたのか咳払いをしてから名乗りだした。
「…こほん。私は華琳姉様の従妹、曹洪。字を子廉と申しますわ。見知りおかなくても結構ですが、一応名乗っておきますわよ?」
そう名乗った曹洪であるが…一刀は薄々察していた。どうやら彼女は桂花の様に、異性に対してかなり辛辣に見ているという事に。やがて一刀のそんな想いを察して見せたのか、華琳は溜息を一つ付いてから曹洪を窘めた。
「…
「っ!?は、はい華琳姉様…」
華琳の叱責に曹洪は慌てて拱手をしながら頭を下げたのを見た華琳は、集まった者達を見渡してから言葉を発した。
「…皆をこうして呼びつけたのは他でもない。既に知っている者もいるだろうが、昨今世を乱している黄巾党…その討伐が決定され、何進殿が大将軍に任じられることになったわ。そして何進大将軍から諸国の軍閥らに対して、その討伐軍への参加を求める書状が届けられたの」
華琳はそう言って中央から届けられた書簡を取り出し、皆に見える様に掲げた。
「そして私に対しては、何進将軍は私を騎都尉(皇帝の侍従武官)に任じ、皇甫嵩殿と朱儁殿の配下に入って黄巾党の討伐に参加せよ、と命じて来た。…皆、心しなさい!この黄巾討伐こそ、この曹孟徳が乱世を鎮め、天下を安んずる第一歩だという事を!」
華琳の宣言に、春蘭達を始めとした者達が一斉に拱手をして頭を垂れる中、一刀もまた訪れるであろう戦いの予感に体が震え、掌に汗をかいているのに気づいていた。
ー…体が、震えている。それに掌に汗も…。そうか…これから俺も戦場に赴いて、人を殺す事になるんだから。けど、後悔は絶対にしない。俺は決めたから…華琳の作る未来のために、戦い続けるんだってことを。
そう心の中で決意を固めていた一刀は、手を握りしめながら瞑目していたのだが…やがて強い決意を感じさせるように目を見開いたのである。そして、それを見た華琳が満足そうに頷いたのは言うまでもない…。
そして華琳は椅子から立ち上がると、その場に集っていた者達に号令をかける。
「桂花!栄華と共に兵站の準備を!春蘭、秋蘭!動ける兵を用意し、いつでも出陣できるように!兵は神速を貴ぶ!皆の働きに期待する!」
『はっ!』
かくして、後に『治世の能臣、乱世の奸雄』と称され三国志の一角を担う事になる曹操孟徳の覇道はここから始まる事となったのである…!
・・・・・・・・・・・・・・・
【荊州・長沙】
何進による諸国の軍閥に対する黄巾党討伐軍への参加を求める書状は、長沙に赴任していた孫堅こと炎蓮の下へも届けられていた。
「黄巾党ねぇ…中々楽しめそうな相手じゃねえか」
「姉上、久々に戦いに参加できるのが嬉しいのは分からなくもないが、少しは落ち着いたらどうだ?」
討伐軍への参加を求める書簡を見て、久々に戦いの空気を感じられると喜色満面と言う感じに顔を綻ばせていた炎蓮だったが、そんな彼女を窘めるような声をかけて来た人物がいた。
炎蓮や雪蓮らと同じ浅黒い肌に琥珀を思わせる金色の瞳をしているのだが、髪の色が灰銀を思わせる感じの長髪をポニーテールにした、真紅の軽鎧を纏っている女性…彼女の名は『孫静』と言って、炎蓮こと孫堅の妹であり、雪蓮こと孫策や、蓮華こと孫権の叔母にあたる人物だ。
宗也が長沙で世話になっていた時は、炎蓮達の出生地である廬江郡舒県で雪蓮らの妹である『孫尚香』の教育係を務めていた為、彼と顔を合わせる事がなかったのである。
「おいおいしょうがねえだろ
炎蓮があっけらかんとした感じでそう答えると、玉蓮と真名で呼ばれた孫静は、苦笑しながら姉の剛毅さを褒め称えていた。
「…まあ、確かに姉上に『戦に参加せずに大人しくしていろ』と言った所で、聞くわけもないだろうがな」
「だろ!…しかし、存外呆気なく決着が付きそうな気がするんだよなぁ。聞く所じゃ、今の黄巾党の内部は黄巾軍って言う奴らと黄巾賊って言う奴らで真っ二つに割れて対立してるみたいじゃねえか。漁夫の利を突くってのはどうにも好きになれねえんだが…」
「仕方ないだろう?ここまで大きく膨れ上がったはいいものの、兵の調練などをおざなりにしていたらしいのだ。そのせいで黄巾党内部で対立しているとなれば、各個撃破すればいいだけの事。戦が早く終わるのはいい事だと思うがな」
「分かってるんだよそんな事はよぉ!…仕方ねえからさっさと終わらせに行くか。玉蓮、留守は任せるぜ?」
炎蓮がそう呼びかけると、玉蓮は拱手をしながら頭を下げた。
「任せておけ。…む?姉上、腰に下げておるのはいつもの南海覇王ではないな?それが私が長沙にいなかった時に壮也と呼ばれた若者に作ってもらったと言う…」
玉蓮がふと、彼女の腰に帯刀しているのが普段姉である炎蓮が愛用しているはずの南海覇王ではない、横を向いた虎の頭部を思わせる鍔に、鍔に近い部分が深い青色をし、先端にいくに従って水色になっていくと言う刀身を持った九環刀が下げられていたのである。
「おお、そうそう!壮也の奴がオレへの贈り物として作ってくれた得物でな?『
そう言いながらからからと笑って見せる炎蓮に対し、玉蓮は頭が痛くなって手で押さえながらため息をついた…。
「…姉上。南海覇王は我ら孫一族に伝わる家宝なのだぞ?それを放り出すなど…」
「心配すんなよ!南海覇王は雪蓮の奴に預けてるって!…お前にもあいつに会わせてやりたかったもんだぜ?」
炎蓮の呟きが耳に入った玉蓮は、眼を鋭くして問いかけた。
「…徐来芳明、だったか。聞く所によれば朝廷を牛耳る十常侍の首魁、張譲の親族を手にかけて遁走した事で賞金首となったらしいが…姉上がそれほどまで信頼を置くとは驚きだな?」
「おうよっ!それに雪蓮の奴もあいつにぞっこんだったんだぞ?」
「あの雪蓮がか…!?俄には信じられんが…いや、姉上が言うのならそうなのだろうな」
「ああ!それじゃあ戦の支度にとりかかるか…玉蓮。留守の間、宜しく頼むぞ?」
そう言って炎蓮が玉蓮の肩に手を置きながら、不敵な笑みを浮かべて呟くと、玉蓮もまた力強く微笑みながら頷いたのであった。
「任せておけ。姉上は思う存分、戦って来い。江東の虎に恥じぬ程にな」
・・・・・・・・・・・・・
「姉様!母様から黄巾討伐の為の準備をせよと!」
教練場において将兵の鍛錬に勤しんでいた雪蓮の下に、蓮華が息を切らせながら駆け付けてきて、母である炎蓮からの指示を伝えて来た。
「そう?いよいよ戦って事ね…!」
「そうだな…雪蓮、随分嬉しそうだが?」
だが、蓮華からの伝言に雪蓮は喜色めいた様に顔を微笑ませていたのを見て、冥凛が問いかけると、彼女は嬉しそうに答えた。
「当然じゃない♪今まで賊の討伐ぐらいしかしてこなかった私達にとって、初めての大戦の参加になるのよ?やる気が湧かない訳が無いじゃないの!」
「ふっ…それでこそ雪蓮、と言う奴だな」
「そう言う事!…全員、集合しなさい!」
やがて雪蓮の号令を受け、教練場で鍛錬に励んでいた将軍見習いの者達が集合する。そうして集まった者達を見回し、集まったのを確認してから雪蓮が言を発した。
「今、母様から黄巾討伐の為の準備をせよと命じられた!この戦い、恐らく将軍見習いである貴方達にも参戦するように言われるだろう!だが臆する事は無い!貴方達は祭や粋怜、真耶や千冬達に鍛えられてここまで来た!罪なき民草に牙を剥くしか出来ぬ獣共如き、我ら孫呉の敵ではない!磨き続けた力量を発揮する時は来た!存分に振るうように!」
その号令は教練場にいる全ての将兵に聞こえるぐらいに響き渡り、それが終わった時…彼らは全員拱手をしながら頭を下げたのである。
「(…思春、此度の戦において私は貴様に負けぬ大功を立てて見せるぞ!)」
ある者は同輩であり好敵手でもある相手に負けぬと奮い立ち…。
「(いよいよ初陣ですわね…気を引き締めていきましょう!)」
ある者はこれより始まる戦いに向けて気を引き締め…。
「(黒兎、無茶はしないようにね?)」
「(心配はいらん!私の心配よりも自分の心配をしているのだな白百合よ!)」
ある者は同輩同士で互いの無事を祈り…。
「(よっし!ここで思う存分手柄を挙げて報奨がっぽりいただくんだから!)」
「(紫龍、へまをしたら承知しないわよ?妹分が死ぬのなんて見たくないんだからね?)」
ある者は意気軒高としている同輩を窘めながら無事を祈るなど…それぞれに違いはあったが、彼女達もまたこれより始まるであろう戦いに向けて気を引き締める事になる…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【幽州・薊】
黄巾討伐への参加を求める書簡は中華は北端に位置する幽州…その刺史を務める劉虞の下にも届けられていた。
「白蓮さん、朝廷から黄巾党討伐に参陣する様にとの書簡が届きました。私達もこれに参加するので兵の支度をお願いできますか?」
「黄巾討伐か…ああ分かった。あっ…それなんだけど、桃香達はどうする?」
藤乃の指示を受けて白蓮も早速準備を始めようとしたのだが…彼女はふと脳裏に浮かんだ、藤乃の下で働くようになった学友について問いかけていた。
「桃香さんですか…正直に言うと、今回は留守を任せようかと思っています。私達が戦う事になるのは幽州を根城に割拠している張純率いる黄巾賊の者達…賊に身を落としたとしても元は民草。桃香さんの事ですから彼らと相対したとしたら、恐らく戦う事を躊躇するかもしれません。ですから『待ってください!』っ!桃香さん?」
だがそこに巡察から帰って来た劉備こと桃香が、義妹である張飛こと鈴々と、劉備の下で客将として留まっている趙雲こと星を連れて現れたのである。
「藤乃さんの言いたい事は分かります…で、でも!黄巾賊によって弱い人々が苦しめられているのを、黙って見ていたくはないんです!ですから、私も今回の黄巾討伐に参加させてください!」
「鈴々達も手伝うのだ!鈴々も藤乃お姉ちゃんや白蓮お姉ちゃん達の助けになりたいのだ!」
「我らは劉虞殿の下で世話になっている身…無駄飯喰らいと言われたくはないですしな?」
桃香の必死の宣言に加え、鈴々や星達も参加を求めて来たのだが…藤乃はやはり受け入れられないでいた。星こと趙雲は武人として戦う覚悟は出来ているだろう。鈴々の方は思考が子供のそれであり、ただ純粋に自分達の力になりたいから…と言う理由で戦場に立つのだと言う感じではあるが、戦う覚悟は出来ているかもしれない。
だが…劉備こと桃香はどうしてもその優しさが前に出る事が多かった。
それは藤乃の下で働く様になり、桃香が巡察などに出るとその優しさからか領民達から慕われる事が多いのを多々見た事がある藤乃は、彼女に『人を惹き付ける魅力』がある事を十二分に理解していた。
しかしだ…優しいだけでは、この乱れた世を生き抜く事は難しい。一度戦場に出たのであればその優しさを捨て、相対した敵を殺さなければ生き残れない。ましてそれが…貧困などで生活に窮した事で賊に身を落とした嘗ての民草であろうとも。
そして刺史と言う、人を治める立場を務めている藤乃の目にはどうしても、桃香が戦場に出たとしても『剣を構えても、躊躇して身動きが取れない』ようにしか見えなかったのである。
それを察した白蓮がゆっくりと桃香に近づくと、念を押す様に問いかけた。
「桃香…分かってると思うけど、私達が行くのは戦場だ。戦場に立ったとしたら、鈴々や星の後ろに隠れているだけじゃ駄目だって事もある。時には…自分の手で相手を殺さなくちゃいけないって事も覚悟しなきゃいけない。それを分かって、言ってるんだよな?」
その、嘗て私塾に通っていた時の学友だった白蓮とは打って変わり、強い覚悟を秘めた瞳を見た桃香は思わず後ずさりそうになったが…それでも必死に踏みとどまって頷いた。
「…っ、うん。分かってる…!」
「…分かった。藤乃!桃香達も連れて行ってくれ。桃香も悩んで、迷った末に決めたんだ。ならその意思を尊重するべきだと思うんだが…」
「白蓮さん…分かりました。では桃香さん、準備をお願いしますね?」
「は、はい…!」
こうして、史実や演義などにおいて三国志の一角を担う『蜀』を築く事になる劉備もまた、黄巾討伐に参加する事になったのだが…その道行は、苦難に彩られる事になる。
・・・・・・・・・・・・・・・・
かくして黄巾党討伐の勅が下り、諸将は黄巾党の軍勢と干戈を交える。張三姉妹、そして討伐軍に加わった者達の行方はいかに…?続きは次回の講釈で。
今回登場したオリジナル武将
『廖化』(容姿、性格は『ソードアートオンライン』のリズベットこと篠崎里香を参考にしました!)
荊州は襄陽郡中廬県出身である、嘗て黄巾党に属していた少女。真名は『里香』。
天変地異や圧政によって苦しめられている民草の苦しみを良しとせず、その頃に自分の故郷を訪れていた黄巾党のメンバーの呼びかけに感銘を受け、母親と口論の末に家を飛び出して黄巾党に参加した。
しかし合流した先が民草からの略奪を欲していた黄巾賊であった事、そして同じ荊州の村を標的として略奪をしようとしていた事からその頭目を殴り飛ばして脱退。
その後標的とされていた村に駆け付けて村人達を避難させた後、単身村に残って襲い掛かってきた黄巾賊達を迎え撃っていたものの、多勢に無勢で窮地に立たされた所を近くを通りかかっていた愛紗達に救われる。
その姿に感銘を受けて同行を申し出た結果、愛紗達と共に旅をする事に。熱意の余り先走る悪癖こそあるものの、苦しむ民草を救いたいと言う想いは本物。武器は双節棍(いわゆるヌンチャク)
正史、演義ともに蜀に属して活躍をした武将なのだが…中国においては北伐の際、敗走している司馬懿を追撃するも分かれ道でわざと逃げ道とは逆の方に兜を落とした司馬懿により、兜を見つけた廖化はそれを真に受けて兜があった方へ行ったために取り逃がすと言う失態を犯してしまい、「蜀中无大将廖化作先鋒」と言う、人材に乏しい状況を嘆く意味で使われる言葉として残ってしまった。
『張牛角』(容姿、性格は『ゴールデンカムイ』のソフィア・ゴールデンハンドの若かりし頃を参考にしました!)
并州で一大勢力を誇っていた黒山賊の頭領を務めていた女傑。その麗しい美貌とは裏腹に親分肌に溢れ、腕っぷしの強さも一級品。真名は『陽炎』。
天和達張三姉妹の要請を受けて助勢していたが、やがて黄巾党内部で黄巾軍と黄巾賊の対立が勃発するようになると、腐っても正規軍を抱えている朝廷に抗するのは難しいと判断、朝廷側の討伐軍を度々蹴散らす一方で秘かに接近し、黒山賊の降伏を認めさせるなど時勢を読む目にも長けていた。
現在は頭領の座を副頭領だった褚燕こと張燕に譲り、自身は死んだ事にして南匈奴の縄張りに逃れている。武器は二股に分かれた穂先の矛(戦国無双シリーズの前田慶次が使用している武器)
正史三国志における『張燕伝』に記述がある人物。張燕と共に黒山賊を率いて暴れ回っていたが、戦いの中で流れ矢を受けて戦死。その際に頭領の座を張燕に譲ったとされている。
『張燕』(容姿、性格は『魔法科高校の劣等生』の千葉エリカを参考にしました!)
黒山賊における副頭領の地位に就いていた少女。二丁斧の扱いに優れ、また飛び抜けた敏捷さを持っていた事から『張飛燕』とも称された女傑でもある。真名は『炟』。
頭領であった張牛角こと陽炎の事を『姉御』と呼んで慕っており、漢朝に帰順する事になった際に死んだ事にして姿を隠す事になった陽炎から黒山賊の頭領の座を譲られる事になった。武器は前述にもある様に二丁斧。
三国志において黒山賊と言う賊の頭領を務めながら漢朝に帰順して事実上の支配権容認を認めさせたり、公孫瓚と手を組んで袁紹に対抗したり、曹操が袁紹を打ち破って冀州を征しようとした際には、先んじて曹操に降伏するなど時勢を読む目に長けていたと思われる。
『孫静』(容姿、性格は『コードギアス』のヴィレッタ・ヌゥを参考にしました!)
炎蓮こと孫堅の妹であり、雪蓮や蓮華らの叔母にあたる女性。真名は『玉蓮』。
表立っての武功をあげている訳ではないものの、重要な拠点などの防衛などにおいて炎蓮が祭達宿将に次いで留守を任せている人物。また三女である『孫尚香』の教育係なども任せているなど、『縁の下の力持ち』と言う立ち位置にある。
姉の戦狂いな所に辟易してはいるものの、それでこそ孫文台であるとその意思を尊重しており、姉が十全に働けるように留守を預かる事が自身の役目と考える理知的な性格の持ち主。武器は剣(三国無双5において陸遜が使用していたような剣)。
正史において兄である孫堅から、その息子達である孫策・孫権らをよく支えた老臣と言っても過言ではない人物で、江東制覇に乗り出すも割拠していた群雄の一人である王朗に苦戦を強いられていた孫策に的確な助言を齎し、勝利に貢献した。
しかしその後故郷に留まる事を望んで官職を辞し、後に孫権が後を継いだ時も一時的に昭儀中郎将まで上るものの、再び職を辞して故郷で晩年を過ごし、死去した。
ちなみにその息子には荊州争奪戦において関羽を捕らえて見せると言う大功を上げた孫皎や、孫策・孫権の弟である孫翊の死後、丹陽の太守に任じられた孫瑜などがいる。