他の二次小説で戦闘描写をうまく書いている作者さん達には心から敬服してしまいます。いったいどうしたらあそこまでうまく書けるのかと…。
ともかく何とか完成させてみたのが下にありますのでご覧いただければと思います…。
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎ……そしてまた春が来る。それが何度か続いて月日が経った頃。時代は光和と元号が改められるも、漢王朝では依然として…いや、それ以上に宦官達によって好き勝手な政が行われており、地方では野盗などが、北方の辺境では匈奴や鮮卑と言った騎馬民族が幾度も略奪をせんと暴れまわり、ますます混沌とした状況が続いていた。
さてそんな中、中華は豫洲沛国近辺の平野を栗毛の駿馬に乗ってのんびりと進む一人の
だがその背中を見てみると、その少女には不釣り合いと思える灰色の柄と、その両端に刃が取り付けられているのか袋で覆っており、さらにその片方には鋭利に磨かれた紺碧色の斧の刃が取り付けられている形状をした長柄の戦斧がひときわ目を引く。しかし当の本人はと言うと……。
「ほえー…………お日様があったかいなー…………」
…などとのんびりとした空気を纏ってまったりとし、それを彼女を乗せている馬は何とも呆れた様な仕草をした。だが、やがて彼女はその濃紫色の瞳を空に向けて、ふと言葉を漏らした。
「・・・
唐突に声を掛けられた為その少女が声の方を見ると、彼女を囲う様にして下卑た笑みを浮かべながら手に剣や刀、槍や手斧を持った連中が十人以上立っていたのである。
「…誰?」
「誰だって?見ての通りの野盗様って奴らさ!さーてどうする?大人しく金目の物を置いて行くってんなら見逃してやってもいいぜ?いやって言うのなら、俺達が身ぐるみ引っぺがして持ってくだけだがなぁ!!」
ーギャハハハハハハッ!!
その頭目…野盗達の中でも長身で兜を被っている男が少女に声をかけると、周りの男たちも下卑た嘲笑を出し始める。少女はそれに何の感傷も湧かなかった・・・恐らくこいつらはこちらが大人しく従ったとしても、自分を辱める積りなのが手に取るようにわかるから。ならば自身の答えは…。
「……断る」
「何だとぉ…?」
「お前達に渡す物なんて……何一つ、ない」
「おい嬢ちゃん…今の状況、分かって言ってんのかぁ?こっちは十人、お前は一人。どう見ても勝ち目はねえぞ?なあチビ、デブ!」
「そうだぜ!大人しく金目の物を渡しやがれっ!」
「そ、そうすれば、痛い目見ずに、済むんだな」
頭目の恐喝に続くようにしてその子分頭だろうか?頭に黄色の布を巻いているかなり小柄な体格をした男と、頭に黄色の布を巻いているがかなりの巨躯で肥満体の体格をした男も少女に脅しをかける。すると…。
ーヒラリっ、スタッ
「茉莉(まつり)、少し離れてて…」
少女は自身が乗っていた駿馬ー茉莉と言う名前らしいーからヒラリと飛び降りて声をかけると、その駿馬は分かったと言う様に首を動かし、野盗の間を抜けて少し離れた場所で止まるとこちらの様に首を向けていた。
そして少女は背中に背負っている長柄の戦斧を手に取ると、柄の両端に被せてある袋を取り外す。
ーファサッ
そこに現れたのは…紺碧色に光を放つ斧の刃と同じく、紺碧色に光り輝く刃が柄の両端に備え付けられていた。そしてその戦斧を頭上で回転させると、それを一分の隙無く構えてみせた。その貌には先ほどののんびりとした空気は一片も無く、その瞳には徹底した敵意が宿っていた。
ービュンビュンビュンビュンビュン……ブンッ!
「っ!?」
「こ、こいつ…この数とやり合う気かよ!?」
「!?あの両刃の刃をつけてる戦斧…それにあの紫の瞳と首に巻いている布きれ…。お、お頭!こいつ『大斧の徐晃』だ!?」
「な、何いっ!?は、ハッタリじゃあねえのか!?」
「いや間違いねえ!?俺が前いた野盗の集団はこいつに潰されたんだ!確かにこいつだぜお頭!?」
賊の一人が口にしたのを皮切りに野盗達が口々に畏怖を宿した言葉を口にし始め、頭目がそれを否定するも……少女は戦斧を頭上に掲げて名乗りを上げた!
「我……姓は徐、名は晃、字を公明。この名と我が武、あの世でしかと語り継げ」
『っ!????』
少女……徐晃の名乗り声に、野盗達は心から闘志を失った。近頃野盗達の間で噂になっている『大斧の徐晃』…その見かけとは裏腹に手にした長柄の戦斧を巧みに操る武勇を以て潰された野盗の集団は数知れず。そんな噂が彼らの間で流れており、そして今目の前にその徐晃がいる!それだけで彼らの戦意をへし折るには十分すぎた。しかし…。
「ひ、怯むんじゃねえ!?こっちは十人以上いるんだ!数で圧し包んじまえ!」
そう言う頭目もビビッている物の、確かに頭目の言う通りでもある。そう言われて多少戦意を取り戻したのか、野盗達が徐晃を囲む様に移動し、そこで武器を構える。これに対し徐晃もまた頭上で構えていた戦斧を腰の辺りに下ろし、いつでも相手を斬り倒せるように身構える。そうして互いに隙を探っていた時…。
「………………ああ」
「?」
ふと徐晃は自身の鼓膜に誰かの叫び声を感じ取る。構えを解かずに首を左右に振って確かめるも、そこにいるのは腰が退けてはいるものの彼女に襲いかかろうと虎視眈々と隙を探っている野盗達ぐらいしかいない。「気のせいか」、そう思って賊達の方に向き直った直後…。
「………あああ!?」
また聞こえた、今度は前よりも大きくだ。賊達の方を見ると彼らの方も先ほどの声が聞こえたのか首をあちらこちらに向けている。
「……ああああっ!?」
またも大きく聞こえた。しかし周りを見ても野盗以外誰もいない。………まさか?そう思った徐晃は不意に上を見上げる。そして、彼女は驚愕に目を見開いたまま、そのままの状態で硬直した。彼女の眼前にはどこまでも澄み渡っている青空が広がっている。それはいいのだ、別に大した事では無い。問題は…。
ーヒュウウウウウウウウウウッ!!
「うわあああああああああああっ!????」
その広がっている
「…………わー」
これに対しさすがの徐晃も呆けたような声を上げるので精いっぱいだ。『呆けている場合か!』と突っ込みを入れたいと思うのも道理だろうが、かの徐晃にしてもこの事態は想定外にも程があった。何せ空から人間が降ってくるなどどう考えても『有り得ない』からだ。その為いつもの様に即座に反応する事も出来ないまま…。
ーゴイ―――――――――ン!!
……何とも小気味よい、そんな感じの擬音と共に徐晃の頭に衝撃が走った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「あうう…!?」
…空から落ちてきた青年と頭をぶつけ合った徐晃は暫くの間頭を抱え、うつ伏せの状態で転がりながら悶絶していたが…やがて自身が置かれていた状況を思い出し、転がっている自身の戦斧を手にして顔を上げると、そこには彼女を護る様にして立ちはだかる青年の姿があった。純白の、まるで上等の絹でも使っているかのような光沢を放つ装束を纏う姿はどう見てもただの青年には見えない…しかし相手は人殺しをも平然と行う連中、黙って見ている訳にはいかない。
「……っ、逃げて。このままじゃ…」
徐晃はそう言って青年に逃亡するように勧めるも…その青年は賊達から目を背ける事も無く、首を振って答えた。
「それは出来ないよ。君の様な少女をよってたかって甚振ろうとしているのを見て見ぬ振りをするほど、俺は人として堕ちてはいない積りだから。だから、安心してほしい」
そう言うと青年は徐晃を安心させようとしたのか、彼女の方に振り返って染み入る様な微笑みを見せた。その微笑む姿と他者を護ろうとする姿を、徐晃は自身が敬愛する肉親と重ねていた。
「兄、上…?」
徐晃が呆けたように言葉を零すのを尻目に、その青年は無手の状態であるにも拘らず、まるで剣を持っているかのように手を構えると左足を前に出し、右手を耳の辺りまで上げて、左手を軽く添えるという態勢になった。
「はっ、馬鹿野郎が!剣も持ってねえのに何やってんだ!?野郎どもやっちまええええ!!!」
『うおおおおおおおおおおっ!!!!』
その青年の挙動を罵った頭目の指示に賊達は一斉に襲いかかろうとした……その時である。
「キィエ――――――――イ!!!」
…大喝一声。徐晃には今、自分を護る様にして立っていた青年が発した声をそう感じとってしまわざるを得なかった。それは正に声その物を斬撃として放ったのではないか、と思えるほどの凄まじい力が込められた声だったのである。そしてその一喝は今まさに襲いかかろうとしていた賊達が思わず放心してしまい、身動き一つ取れずに固まってしまっていた。
「…っ!せいっ!」
ーがしっ、ドゴッ!
「ぐばっ!?」
ーズザザッ!
その隙を青年は見逃していなかった。青年は一番手前まで近づいていた槍を持っている賊に近づくと、その穂先に近い柄の部分を持ちながら体当たりを喰らわせて吹っ飛ばした。そして槍を手にすると…。
「ふんっ!」
ーベキッ!!
「えっ…?」
『なっ!?』
なんとその青年は槍の穂先とそれに近い柄の部分を膝にぶつけてへし折ってしまった。後に残ったのは柄の部分だけの棒切れのみ。これには徐晃はおろか賊達も驚きを隠せなかったが、彼は意にも介さずそれを手にするとそれを先程の構えをしてみせた!
「ば、馬鹿野郎が!そんな棒切れで何が出来るってんだ!!」
これを見た他の賊達が襲いかかり、槍を持っている賊が持っている槍を突き出した!しかしその青年はその攻撃を難なく躱すと…。
「キィエーイ!!!」
先ほどよりも若干声の力は弱いものの、再び大喝を放ちながら槍の柄を振り下ろす!これに対し賊も槍を頭上に構えて受けようとしたのだが…。
ーべきっ!!ぼごんっ!!
「あ、あがが…っ(ブクブクブク……)!?」
―ずずううん…。
何と……その青年が振り下ろした棒切れとなった槍の柄は、あろう事か賊が防御のために構えた槍の柄をへし折り、その勢いのまま賊の頭に痛撃を与えてみせたのである。これには男も為す術もなく口から泡を吹きながら地面に倒れ伏した。
それからの光景を徐晃は驚愕の表情で見続けていた。その青年は襲いかかる賊の攻撃を最小限の動きで躱しつつ、手にしている武器とも言えない棒切れである穂先を喪った槍の柄による一撃を以て次々と沈黙せしめているのである。ある賊は彼の一撃を以て腕をへし折られ、ある賊は肩の骨を砕かれる。中には刀を以て防いだにも拘らず、その一撃の威力の強さに頭蓋に刀の峰が食い込んで命を落とす者までいる始末…!
そしてとうとう残っているのは賊の頭目である長身の男と彼がデブ、チビと呼んでいる小男と大男。そして弓矢を持っていた男一人だけとなっていた。しかも驚くべき事に、その青年は数十人いた賊の連中を一人で叩きのめしてみせたにも拘らず、息一つ切らす事無く悠然と構えていたのである……。
「…で、まだやるか?大人しく退いてくれるのならそれでいいんだけどな」
「う、うるせえ!ここまでやられて黙ってられるかあああああ!!」
そう言ってチビと呼ばれた小男が短剣で突きかかってくるものの、その青年は放たれた刺突を難なく躱して…。
―ブンッ、ベキイっ!!
「ぎゃあああああっ!?」
ーびゅっ、どごっ!
「ぐええっ…!?」
そうして振り下ろした一撃で彼の腕をへし折った直後に、彼の胴体に一撃を叩き込んで地面に沈めた!
「チビいいい!?お前、許さねえんだなああああ!!」
すると今度はデブと呼ばれた肥満体の大男が猛然と襲いかかって手斧を振り下ろしてきたが、青年はこれも難なく後ろに跳躍して躱す。この為デブが再び近づこうと顔をあげて…驚愕に顔を染めた。
「うえ…っ!?」
何とかなり後ろに跳躍していたはずの青年が目の前で跳躍しながら棒切れを振り下ろそうとしている姿が目に映ったと思った直後…。
ーぼごっ!
「ぐへえ…っ!?」
脳天に痛撃を受けたデブはうめき声をあげながら後ろに倒れ始める。だが…。
ーボキッ!
「っ!?しまった…!?」
ここまでの戦いで槍の柄自体が疲弊していた上にかなりの肥満体をしたデブに一撃を加えた事が災いしたのか、青年が使っていた槍の柄はまたもへし折れ、もはやそこらの棒切れ同然となり果ててしまったのである。
「あ、兄貴……あいつの、得物は壊れた。今だなあ……!」
ーズズウウウン!
「良くやったぞデブ!!」
ーダッ!
それを見たデブが頭目(アニキと呼ばれていた)に伝えながら倒れたのと同時に頭目がデブを褒めながら武器を喪って無手となった青年に止めを刺そうと襲いかかった!
「くたばりやがっ……!?」
そう言って手にした剣を振り下ろそうとした瞬間彼の目に飛び込んだのは…それよりも早く彼の懐に潜り込んだ青年の姿だった。そして…。
-がしっ!
「おうりゃあああああ!!!」
―ブンッ、ドゴオオン!!
「ご、ごふうっ!?」
青年は頭目の剣を持っている手を掴むと、そのまま彼を投げ飛ばしてみせたのである!その一撃は頭目を地面にめり込ませ、沈黙させるには十分すぎ、頭目はそのまま気絶した……!
「…さて、後はお前一人だけだな」
「ひっ!?ち、畜生!!」
青年の呼びかけに怯んだ賊の一人は慌てて矢を番えて放とうとし……。
「し、死にやが「茉莉」なっ!?」
―パカラッパカラッ、ドゴンッ!!
「げ、げふっ…!?」
その寸前に徐晃が声をかけたのに応えるかのように駆けだした彼女の乗騎の体当たりで沈黙した…。こうして彼らは虎口を脱したのである。
・・・・・・・・・・・・・
「えっと…さっきはごめん。その、頭をぶつけちゃって…」
「大丈夫…もう平気になったから。それよりも、ありがとう。私を助けてくれて……」
「いや、別にいいよ。えっと…」
「私は…徐晃、徐晃公明。貴方の名前は?」
徐晃が自己紹介をするとその青年はとても驚いたような顔色を見せたが…やがて自身も自らの名を名乗った。
「俺は…
・・・・・・・・・・・・・・・
外史に降り立った『天の御遣い』。彼は降り立つ前、自らの力のある事を悩む日々を送っていた。それは何故なのか…続きは次回のお楽しみ。
…何とか、終わりました。俺、燃え尽きちまったよ…真っ白に。
さて冗談はこれで置いておくとして。今回の投稿で北郷君が登場しましたが…私の小説では『力があるも、その力故に迷いを持つ人物』をコンセプトとして目指すつもりです。…私の拙い文才でどこまで表現できるのか甚だ疑問ですが。
…こんなネガティブ思考な作者ですが、温かく見守ってくださると嬉しいです。次回は閑話で北郷君の苦悩を題材にしたものを書こうと思います…。